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『ダゲレオタイプの女』(2016)/本作のあらすじ同様、現実世界から隔絶されたような黒沢幽霊映画inパリ👱‍♀️📷

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原題:La Femme de la plaque argentique 監督&脚本:黒沢清
製作国:フランス、ベルギー、日本 上映時間:131分

 

 

これはレンタルで観よーと思ってたけど、どういうわけかGoogle PlayとかiTunesストアなどのデジタルレンタルに一向に入って来ず、まだ観てないのにBlu-rayとか買うほど熱狂的に観たいわけでもないので未見状態が続いていた。‥ちなみに同じ理由でロブ・ゾンビの「31 (2016)」も観れてない。これらは何でレンタルにならないんだろ?ツタヤ独占レンタルとかなのか?ツタヤも5年くらい行ってないし更新料払いたくないから永遠に行かないし‥観れないなーとか思ってたら昨夜ちょうど、あまり利用しないのでHuluを退会したらフォロワーの方に「Huluにダゲレオタイプありますよ」と教えていただいたおかげで観れました。

黒沢清監督はJホラーブームが去って以降、ここ10年くらい、一作撮るたびに監督本人が「これが映画撮るの最後か?」とか思ったら海外とかWOWOWから声がかかったりして何だかんだ監督作が不思議と途切れてない印象。本作もフランスやベルギーとの制作で初の海外映画監督作って事になるのか?
ネタバレあり

 

 

主人公は、バイトや派遣などで食いつないでいるフリーターの青年。黒沢映画の主人公って大抵、オッサンか空虚な青年か辛いことが遭う女性この三通りが多い印象。
主人公は漠然とした幸福を思い描いているだけで特に何も考えてない感じの青年。
彼は高名な写真家の屋敷で彼の助手として雇われる。
写真家は、有名なファッション写真家だったが、妻が死んで以降は半引退状態で、一人娘を被写体として取り憑かれたようにダゲレオタイプの写真だけを撮っている。
ダゲレオタイプ=銀板に直接ポジ画像を焼き付けるため長時間の露光が必要なため、被写体は、全身を特殊な器具で固定拘束して数十分から一時間以上の間、動かずに静止していなければならない撮影法。まるで生きているかのような写真が撮れるという)
そして時には、ダゲレオタイプでファッション写真撮ったり、ダゲレオタイプで写真を残して欲しい老女を撮ったり、時には亡くなってしまった赤ん坊の撮影を頼まれたりもしている。あとはひたすら娘を固定して撮影しているだけだ。
ダゲレオタイプ撮影されることに何か根源的な恐怖を感じているらしい、この娘は至って普通の女性。父が心配で家を出れないでいるが本当は家を出て一人暮らししたがっている。
主人公はこの娘と恋に落ちる。といっても黒沢監督は恋愛描写を念入りに描くような人じゃないので、割と「いつこいつを好きになった?」って感じなのだが娘が青年に唐突にキスして、青年も娘を好きになる。他の映画もそうだが本作は「いつの間にかそうなってた」って感じで重大な心変わりが全てヌルっと移行していく。不自然といえば不自然と言えなくもないが本作はまだ不自然じゃないほうに入ると思う。
そして(黒沢監督の映画はどれもそうだが)全体的に現実味がなく、そして「フランス郊外の、俗世間と隔絶された古い屋敷」という舞台もあいまって全編ボンヤリした夢の中にいるような雰囲気。それでいてストーリーは水木しげるの短編とか昔話にありそうなお話。このまま本作の時代を中世とかにしてもそのまま通用しそう。
黒沢監督は著作の中で「東京は絵になる構図がなさすぎて大変だ」みたいな事を言ってたり、また怪奇映画が好きなためか古い洋館で撮りたがってただけあって、本作の舞台‥パリ郊外や古い屋敷の描写はめちゃくちゃ美しい。

 

 

写真家は、屋敷で時折、死んだ妻を見かける。または自分に話しかける声が聞こえる。
黒沢幽霊もワールドワイドになりましたね。。フランス人幽霊なので美しいが日本人幽霊のような怖さはない。やはりフランス人にとってはこの方が怖いのかな?
また、ホラー映画的な恐ろしい出し方じゃなくて「岸辺の旅」の少女幽霊みたいな儚い感じで出てくる。ドラマ重視のせいなのかな。
写真家の妻は仕事にかまけていたら自殺してしまったという事で、妻の霊は写真家の罪悪感が可視化されたものだろう。
やがて娘も、見事なロングカット階段落ちで突然死してしまう。
なんで?と意味がわからなかったが、妻子ともに写真家の因果で死んだことが後半わかる。
娘を愛し始めていた主人公は、彼女を病院に連れていくが車がスリップして娘が車外に転落。だが生きているしさっきまであった傷もなくなっており一緒に家に帰る。当然、娘はもう死んで幽霊になっているのだが、それは視聴者には丸わかり。そんな場面が割と中盤であり、それ以降は娘を死んだことを主人公だけが知らないという感じで進んでいくのが面白かった。
娘を失った、という事は唯一の生きがいだったダゲレオタイプも失ってしまい更に失意の状態の写真家は、娘は生きていると言う主人公に「お前は夢の中に逃げ込んで現実を見ていないだけだ」と、そのままの事を言う。
こうして、写真家は「妻と娘を死に追いやった罪悪感」、主人公は「自分に都合のいい妄想」として、それぞれ妻と娘の幽霊を見ながら過ごす。
主人公は主人公で、本当は娘が死んだと気付いているのだが(娘が落ちたと思われる川を見に行ったりもする)、その認識を意識下に降りてこないように、今までどおり現実を見ないという方法で娘の死を意識の外に追いやり、娘の幽霊と過ごしていく。
で、書くの忘れてたが写真家の屋敷と土地を高額で買い取ろうとしている開発者がいる。青年は、写真家を説得して家と土地を売らせることで大金を得ようと画策する。
やがて、写真家の妻と娘が死んだ理由は彼に大きな原因があったことがわかり、ほどなくして写真家は遂に妻(罪悪感)につかまってしまう。
では主人公はというと、写真家に家と土地を売らせるという野望が唐突に転がり始めて破滅する。ここは恋愛描写同様「何でそうなる?」って感じで、かなり強引。海外の批評を検索してみたらこの辺を批判されてるっぽい。黒沢監督のファンじゃない人が「トウキョウソナタ」観た時に「役所広司が出てくるまではよかったが、それ以降ついていけない」と言う感想と似たようなもんだろう。黒沢監督ファンならトウキョウソナタも本作も「いや、そこからが本番で良いんだよ!」と言うところで僕も以前ならそう思ってた気がするが、最近、前ほど黒沢監督への関心が薄れてきてる事もあって「唐突な恋愛とか唐突な主人公の野望とかはあまり乗れないな」という感じがあった。
まぁ主人公の暴走は、好きになった娘を失ってしまったので狂気に自ら飲まれていったって事なんだろうきっと。

 

 

そういった感じで、フランス映画ではあったが人と場所以外はもうめちゃくちゃ黒沢監督の映画っぽかった。終盤に顔がバッチリ見えてる死んだ妻のスローモーション幽霊も良かった。
もしこれが邦画だったら‥主人公は染谷将太で、ヒロインは夏帆だろう。そんで写真家は諏訪太朗しかあり得ない(ほぼ同一人物)。
本作の主人公たちや屋敷同様、この映画も現代の現実世界から完全に隔絶してるなぁ‥という感じがした。勿論そうしたかったんだろうから、それでいいのだが最近の僕は個人的に現実とリンクした、とてもわかりやすい映画を好む感じになってるので以前ほど熱狂はしなかった。なのでダゲレオタイプと死がどう結びついてるかとかはもっと支持してるちゃんとした人の記事とか検索した方がいいです。
あ、だけど写真家が語る芸術論は「これ黒沢監督の考えなのかな?」と興味深かった。
だから主人公はフリーター青年じゃなくて、写真家にすればよかったんじゃないか?と今思った。でも、普通にいい幽霊映画だとは思いました。

 

 

そんな感じでした

「岸辺の旅 (2015)」黒沢清/幽霊が黄泉平坂で宇宙の終りと始まりを語る場面に感動👫👻 - gock221B

「復讐 運命の訪問者 (1997)」黒沢清/監督の作品の中でもエンターテイメント性が高い映画 - gock221B

「893(ヤクザ)タクシー (1994)」 黒沢清/やとわれ仕事ゆえのエンタメ性と縛られた中での製作の姿勢 🚕 - gock221B

「クリーピー 偽りの隣人(2016)」黒沢清/大変な怪作だが毒気にあてられすぎてか好きになれなかった🏠🏡 - gock221B

「ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985)」黒沢清/洞口依子の可愛らしさと大学のフワフワした感じ - gock221B

「散歩する侵略者 (2017)」黒沢清/理由はよく分からんが黒沢映画の壊れた夫婦もの観ると物凄く胸に来る👉 - gock221B

「予兆 散歩する侵略者 劇場版 (2017)」黒沢清/本編の方は愛の話だったが、こっちは〈心の弱さ=悪〉という闘いがメイン 👉 - gock221B

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Dagereotaipu no onna (2016) - IMDb

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『ラブ、デス&ロボット』(2019) 全18話/全体的に楽しかったがセンスが抜きん出てる三本が特にお気に入り💓💀🤖

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原題:Love,Death + Robot 企画&製作総指揮:ティム・ミラーデヴィッド・フィンチャー
製作国:アメリカ 制作局:Netflix 配信時間:各話10分前後、全18話

 

 

 

最近、普段あまり自分が観ない‥つまり女性に人気のものを観ようと「クィア・アイ (2018-)」とかVOGUEチャンネル動画とか観たら新鮮で、どれも凄く面白かった今日この頃。
本作はNetflix配信オリジナル作品。10前後の短編アニメが全18話。
色んなクリエーターが集まって作ったSFアニメの短編集。「SEX、暴力、ロボット」などをテーマにしたもの(といっても大抵のSF‥いや大抵の映画やフィクションはSEXと暴力がテーマだが)
製作総指揮者のうちデヴィッド・フィンチャーだけ参加してない。制作しただけなのか、それともシ-ズン2以降で監督もやるのかどうかは知らん。
日本のアニメは加齢と共に全然観なくなったが海外アニメやカートゥーンは今でも好きだし、短編アニメという形式も結構好き。オムニバスSFアニメ作品にありがちな、良作画がガンガン動いて製作者が描きたいシュチュエーションや風刺を描いた作品が多い。海外短編アニメといえば大体そんな感じ。
オムニバスSFアニメのアムにバス映画と言うと大友克洋が関わった「迷宮物語 (1987)」「MEMORIES (1995)」「SHORT PEACE (2013)」なども好きだった。海外作品で有名なものというと「アニマトリックス (2003)」「バットマン ゴッサムナイト (2008)」などだが、これらも日本人監督が多く関わってたね。どれも必見!という程ではないが、その代り絶対にハズレもないという印象で大抵楽しめる。中でも一番好きなのは「ヘヴィメタル (1981)」という大人向けコミックをカナダで制作したアニメ映画で、これは今でもめちゃくちゃ好き。
いつもは採点しないが今回は5点満点で採点してみた。★2が「普通」★5が「最高」。
ネタバレあり

 

 

💓💀🤖

 

 

第01話「ソニーの切り札」 17分 ★★
洋ゲーっぽい感じのフォトリアル系3DスティックCGアニメ。凶暴なモンスター同士を戦わせる地下闘技場で連戦連勝の女性ソニーの話。ソニーは悪い男に酷い目に遭った過去があり、全体的に「ソニーが悪い男に復讐する。悪い男に味方する悪い女にもな」的なテーマがある。ソニーポケモンが悪いモンスターにやられそうになる場面も、まるでFUCKされてるかのような撮られ方してる。

 

 

第02話「ロボット・トリオ」 11分 ★★
PIXARっぽい3DCGアニメ。ストーリーも人類が絶滅した後の世界を3体の無機質で可愛いロボットがうろつく「ウォーリー」みたいな話。ゲーム機の進化系らしき慌て者の背の高いロボット、子守り機械が発展したワンパク坊や的性格のチビロボット、有能女性秘書的な性格の警備ロボとかダーレクみたいな非人間型ロボット、の三体。三体は自滅した人類を憂いながら、しぶとく生き残った猫を拾う。短編にありがちな風刺系ストーリー。「愚かな人類は自ら滅びた」という風刺には全く文句ないのだが自分が生まれる前からずーっと言われてる風刺なだけにもはや何も言ってないに等しい無風状態に感じるのは僕だけだろうか?それともそんな感じ方こそが良くないのかもしれない、とか考えた。
英語苦手でリスニング全然出来ないのでわかってない癖に、こういう事いうのも生意気だとは思うが、翻訳者の人はギャグなどの意味がわかっておらず、意味不明な字幕になってるところが多々あった気がする。

 

 

第03話「目撃者」 12分 ★★★★★
原題「The Witness」。「スパイダーマン:スパイダーバース (2018)」のコンセプトアートのイケメンアニメーターAlberto Mielgo氏の監督&脚本&アニメ制作によるカートゥーン風3DCGアニメ。
自部屋の向かいのビルで起きた殺人犯の男と目が合ってしまったストリッパーの女性が、殺人犯に追われてアジアンテイストな街を逃走する話。
論理的なストーリーではなく疾走感と共に悪夢的状況がループしてるだけ点という‥SFというよりトワイライトゾーン的な(世にも奇妙な物語と言った方が伝わるか)不思議な話。SF要素は「街がかろうじて近未来‥か?」というところくらいしかなく、別にホラーのオムニバスに入れようとしても入れられる感じ。
本作の中でこれがブッチギリで良かった。もう小さいサムネイル見ただけで「あ!これは!」という感じで光っていた。
アルベルト氏のキャラデザやカッコいい街並みやカッコいい裏路地や室内、その色彩やキャラの挙動やカメラワークなど‥アニメの原初的な快楽要素がどれも唯一無二のものでカッコいい。そういった色んなカッコよさは、どれも良さを説明しにくい要素ばかりなので「ここがこうだから素晴らしい」などと論理的に語るのが難しいので見た瞬間に良いと思わない人に良さを伝えることは不可能。もう「センスがすごい!」とかバカみたいな褒め方しかできんがとにかく好き。
台詞も数個しかないがハッキリ言って台詞一切なくても伝わるので、この際だから台詞無しでも良かったかもしれない。
特に怪しげな風俗店でのストリップシーンがめちゃくちゃカッコいい。音楽も
これは既に何度も観たしマイリストやブックマークにも入れとこう。
Alberto Mielgo official site

 

 

 

第04話「スーツ」17分 ★★
「Mrインクレディブル」的なカートゥーン風3DCGアニメ。
農場主たちが農場を荒らす「害虫」退治に出かける。ただし害虫とは体長3mくらいの無数のモンスターで、農場主達は全長10mくらいの自作のロボットに乗って駆除するという牧場版パシフィック・リム的な話。
登場する農場主の主人公ハンク夫婦、そのお隣さんジェイク夫婦、近所のロシア人風ワイルドおばさん‥などが出てくるが彼らは極端に80年代SFアクションに出てきそうなステレオタイプアメリカ人キャラ。そして主人公の吹き替えは大塚明夫。死にそうな状況にも関わらず「結婚式当日の、君のママよりおっかないぞ!」とか、そういった如何にもなアメリカンなジョークを言ってはショットガンをぶっ放し、そしてまたジョークを言う‥といった感じ。ストーリーの展開も凄く80年代SFアクション的‥「エイリアン2」みたいな感じ。日本のアラフォー男性も好きそうな洋画劇場的な、実家以上の安心感が楽しめる。何度もステレオタイプだと言ってきたが不思議な感動が湧いてくる。それもまた実家の懐かしさに似た感慨なのかもしれない。

 


第05話「魂をむさぼる魔物」 13分 ★★★
「アニメーターが描き殴った設定資料」のような絵柄の手書き風アニメ。といってもわざとそんな絵柄にしてるだけで実は凄く丁寧だし全編13分だが日本の深夜アニメ13話分全て足したよりもよく動く。
遺跡で眠りから覚めてしまった吸血モンスターから研究者を護る傭兵達の話。
戦闘シーンや人体破壊描写をやりたくて作ったんだろうという感じが出ていてよかった。俺は一番好きな映画がジョン・カーペンターの「ゴースト・オブ・マーズ」だし、なまじ起承転結がキッチリあるものより、こういった映画の衝動的一場面だけ抜き出したかのような状況だけ描いた短編の方が好き。
主人公の傭兵は奇しくも、一個前のロボットの話の主人公とほぼ同じ風貌。吹き替えも大塚明夫によく似た声の人だった。きっと大塚明夫にしたかったけど二連族だとなんだから似た声の声優をあてがったんだろうなと思った。女性隊員の吹き替えした声優の演技が凄い良かった。
この話のモンスターも猫が弱点。このアンソロジーにはやたらと猫が出てくる(そして猫は大抵強さランクが上)。猫好きが多い作り手、これ観てる僕も猫を膝に乗せて観てたし、妙な共感を感じた。

 


第06話「ヨーグルトの世界征服」 6分 ★★
全員同じ顔をした人形劇のような3DCGアニメ。
超高度な知能を持ったヨーグルトが誕生して人間社会を支配する話。
支配と言ってもヨーグルトは至って平和主義者かつ賢すぎるだけで、そうなってしまっただけ。一方、人類はヨーグルトの言うとおりしてれば進歩できるのだが、私欲に走ってヨーグルトの言うとおりせずに衰退。人類の代わりに地球を統治したヨーグルトは愚かな人類に見切りを付けて宇宙に旅立つ。ヨーグルトに見放された人類の未来が不安‥という風刺的ストーリー。

 


第07話「わし座領域のかなた」 16分 ★★★
フォトリアル系3DCGアニメ。宇宙船の船長がコールドスリープから目覚めると光速移動中に航路を外れてしまっていた話。そこへ知り合いのセクシー女性が助けに来てくれたのでSEXしまくる。「3DCGキャラがファックしまくる場面」とかって見かける機会がないので凄く珍しいものを観た気持ちになれた。
そしてSF短編アニメに多いバッドエンド。バッドエンドだと「SF短編アニメ観てるわ~」という気分になれていいですね。
主人公はヒュー・ジャックマンそっくり過ぎてヒヤヒヤする。この主人公に限らず本作に出てくるカッコいい主人公はヒゲを生やしたマッチョで優しい白人中年男性が多い。「俺たちアメリカ人の理想像=胸毛とヒゲをたくわえてタンクトップ着たヒュー・ジャックマン」といったところか。

 


第08話「グッド・ハンティング」 17分 ★★★
中国系アメリカ人のケン・リュウ‥という波動昇龍拳の使い手みたいな名前の小説家の脚本による2Dアニメ。妖怪ハンターをしていた中国人青年と、彼が幼い頃に助けた何にでも化けられる妖狐の少女。イギリスに統治されて変わっていく中国の状況にあわせて主人公の青年は退魔師を辞めて機械技師となり、妖狐の少女は娼婦になる。
男によって辛い目にあってばかりの人生だった妖狐はある日、客に身体を切り刻まれ、主人公青年の手でサイボーグ妖狐となり男達を狩る側に戻る‥という話。
これは結構好きだが、こういう辛い話は短い時間だと辛い場面を高濃度で飲まされて辛いので、こういう辛い話はもう少し水で割れて飲みやすい長編で観た方がいいかもしれない。太ったオッサンのセル画チンコが見れるのが新鮮。
神や妖怪が支配していた時代が、西洋による近代化によって機械の時代になってしまう様を僅か10数分の短時間で見せられるのが圧巻。

 


第09話「ゴミ捨て場」 10分 ★★★
カートゥーン風3DCGアニメ。ゴミ捨て場に住む老人の元に立ち退きを要求する検査官がやって来て‥という大友克洋が描きそうな話。「とにかく3DCGで汚いジジイを描きたい」という熱意を感じた。凄くSFアニメ短編っぽくて好き。
原作のジョー・R・ランズデールは、僕も20代の時に『ボトムズ』『ダークライン』やハップ&レナードシリーズなどにハマった作家だったので久々に再会して嬉しかった。

 


第10話「シェイプ・シフター」 16分 ★★
フォトリアル系3DCGアニメ。アフガニスタンに侵攻した米軍に雇われたワーウルフ(狼男)の傭兵コンビ。2人の前に同じ力を持つ狼男が立ちはだかる。
「狼男同士の戦闘を描きたかったんだろうな」という感じが凄く出ていた。
狼男って、破壊衝動や性欲のメタファーだと思うが、そういう衝動をむき出しにする性質が現代の文明社会と合ってないから大抵悲しい目に遭ってしまう。「それなら戦争が適材適所では?」と戦地に狼男を配置したが、やはり悲しい感じになってしまう。そんな悲しいモンスターなのかもね。

 


第11話「救いの手」 10分 ★★★
本作中で最もフォトリアルだった3DCGアニメ。
船外活動中に、事故で宇宙空間で身動きできなくなった宇宙飛行士の女性。
「数m先には宇宙船があるのだが戻る推進力がない。数分後、酸素が尽きる前に彼女は、どうやって船まで戻るか」という話。
凄く好きなタイプの短編だったけど、こういう内容なら実写で観た方が良いような気もした。でもきっと「どれだけ本物そっくりの3DCGでアニメが作れるか」みたいな事をしたかったんだろうから、これでいいんでしょうね。それに、これを実写でやったら痛そう過ぎるからアニメの方がいいのかもしれん。

 


第12話「フィッシュ・ナイト」 10分 ★★★★
オルタナ系コミック風の3DCGアニメ。キャラクターの輪郭にわざわざ黒い枠線を付けてコミック風にしてる。「ヘヴィ・メタル」を思い出すね。
車が故障して砂漠でひと晩、野宿しなければいけなくなったセールスマンのくたびれたオッサンとポジティブで元気な若手。夜中に2人が目覚めると砂漠は太古の海と同化していた‥という幻想的な話。深夜の砂漠で光る海洋生物達が空中を泳ぐという幻想的な風景を描きたかったのかな。
それを見た若手がはしゃぎすぎで「そんなに、はしゃぐ?!」と思っていると、ほどなくして若手が即死したので可笑しかった。
太古の海で、はしゃぐから‥はしゃいじゃうから、そういう風に‥なっちゃうんでしょ‥!お調子‥者が‥!」と、Ζガンダムカミーユ・ビダン風に突っ込むことが出来て有意義な時間を過ごす事ができました。ドラッギーでもあり好みの話だった。
第9話「ゴミ捨て場」同様、ジョー・R・ランズデール原作の話らしい。

 


第13話「ラッキー・サーティーン」 14分 ★★★
フォトリアル系3DCGアニメ。どこか違う惑星の話っぽい。乗組員が皆死んでしまい悪魔の数字が付けられてるせいで「呪われた軍用機」と呼ばれる古い軍用機ラッキー13を押し付けられた新人黒人女性兵士の話。
フォトリアル3DCGアニメだと悪い意味で「何かゲームのムービー映像観てる気分になるな」と思ってしまうもので、本作に何本かあるフォトリアル系3DCGアニメの中でも、この話のアニメは一番大したことない感じで一番悪い意味でゲームのムービーっぽいので最初は惹かれずに流し見してたが、このページ書くために見返したら凄く良い内容だったので反省した。
戦闘機がアクションする映画も多いようで実はあまりないので新鮮だったし。
主人公は呪われた軍用機で何度も英雄的活躍をして生き延びていた、ある日遂にピンチが訪れるという話。
呪われた軍用機と言われているだけあって、まるで意思があるかのようにラッキー13目線(監視カメラ)で主人公を見つめる場面がある。
また敵に囲まれて主人公が逃げようとすると手を引くかのようにベルトが引っかかるが、それは敵の爆撃を先読みして主人公を助けるため‥のように見えたり、主人公が仕方なく自爆させようとするが自爆しないので、主人公は「自爆したくない?」と思い、愛しいラッキー13に群がる憎い敵を追い払おうと銃撃する。するとラッキーは敵を最大に引きつけたためか、もしくは主人公が単純に危ないと思ったからなのか、わからないが自らの意思でそうしたかのように自爆する。
全部、偶然なのか、それともラッキーが意志を持って主人公のためにしたのかどちらにも取れるように描写してるのが凄く良いなと思いました。
最近「あと少しでプログラムや機械にガチで情を抱けそうだ」と思うことがよくあるので、こういう話は昔よりも荒唐無稽ではないリアルな話に思えてきた自分の内面も面白かった。

 

 

第14話「ジーマ・ブルー」 10分 ★★★★
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原題「Zima Blue」。カナダ人のグラフィックアーティスト兼アニメーターのRobert Valleyが監督した、彼の画がそのまま動く2D手描きアニメ。
この人のことは何年か前にネットしててたまたま見つけて、ここ数年「最もカッコいい絵柄の人」と記憶してたが、まさか映像作品の監督として彼のアニメが観れるとはね。これもまたサムネイル見ただけで「あれっ?!まさか、あの画の人やん!」と色めき立ちました。
ブルーのアート作品にこだわる宇宙的な名声を誇る不老不死のサイボーグ芸術家ジーマ。不死身&不老不死となって宇宙のあらゆる所に赴き人生最後の芸術を披露する直前のジーマの所に、クールな女性ジャーナリストがやって来た。100年ぶりのインタビューを受けるために‥という話。
話よりも僕としては彼の「最もカッコいい絵柄」が動くところが見もの。カッコよさを維持するためか、あまり動かないというコミックアニメーション状態だけど画がカッコ良すぎて別に気にならない。‥いや、むしろこの絵柄は極力、動かない方がカッコいいのかもしれん。これもまた「作品のセンス」に高得点を付けたパターンなので、このアートがカッコいいと思わない人にとってはどうでもいいだろうが僕はめちゃくちゃ好き。
ストーリーとしては、一から無限大に至った才能が再び自らの意思で一に戻るという話。他愛もないと思うことも出来るがプールからそこまで発想するのは中々出来るもんじゃないって気もするし、好きだな。
Robert Valley on Vimeo

 

 

第15話「ブラインド・スポット」 8分 ★★★
カートゥーン風3DCGアニメ。サイボーグ盗賊団が輸送軍を襲撃するが思いのほか強敵で仲間は次々と倒れていく‥という話。
ゲーム「ボーダーランズ」シリーズみたいな、凄く真面目な人が考えた「イカれた奴ら」の大活躍という感じ。クールな兄貴とワイルド姉貴と大柄ワイルド兄貴そしてオタっぽい若手サイボーグ、そしてサポートロボットというステレオタイプなチーム。高校生や大学生の孤独な少年が「こんな風な友達できないかなぁ」と思いながら深夜に観ていそうなアニメ。そんな架空の少年を勝手に空想して「俺がいるぞ‥」などと同情し始めて「頭がおかしくなりかけてるな」と我に返った。ストーリーは無いようなものだけど、やはり本作も凄くよくアクションするので「幾らストーリーがあっても何もない部屋で観念的な会話してばかりのアニメより、こういう内容なくてもよく動くアニメの方が100倍いいな」と思った。なんか嫌味な感想文になったが一言で言うとなかなか面白かった。

 

 

第16話「氷河時代」 10分 ★★★★
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原題「Ice Age」。「デッドプール (2016)」の監督で、今年公開の「ターミネーター:ダークフェイト (2019)」の監督&脚本であるティム・ミラーによる監督&脚本作。この作品だけ基本実写、だけど冷凍庫の中だけ3DCG‥というアニメ。
これもサムネイル見た時「あれ?実写?」と思った。冷凍庫の中がCGとは言え、これをアニメ作品というのは割と反則ギリギリな感じもする。
引っ越してきたカップル(女性の方はメアリー・エリザベス・ウィンステッド)が入居したアパートには古ぼけた冷蔵庫があった。そしてその冷凍庫を開けると小さな人類の小さな文明があり、それは光速で発展していく‥。
まぁこういう話は昔から漫画でもよくあるが大抵、滅びる。本作でも高速で発展していき、戦争が起き‥絶滅したのでガッカリしたカップルは寝るが翌朝、冷凍庫を開いたら実は滅びきってはおらず再び栄えてたのでカップルは抱き合って喜び、冷凍庫ミニ人間達の社会は、人間を凌ぐ高度な科学技術を持った未来社会となるが結局滅びる。
そういった風刺的な短編はあまり好きではないが、本作の場合意外なオチがなかったこと(個人的に、短編でしっかりしたオチがあると何だか恥ずかしいのでオチなしの話の方が好き)、なんだかミニ社会が栄えて滅びるまでの流れが、この2人のカップルが付いたり離れたりする様子のメタファーにも思えたこと、メアリー・エリザベス・ウィンステッドが好きなこと‥など組み合わさって気に入った。
カップルが冷凍庫の中のミニ世界に最初に気付くのは、乾杯の酒を飲むために彼氏が冷凍庫から氷を出すところで「1個の小さな氷の中に凄く小さいマンモスがいた」というもので、このシーンのSF的ワクワク感にしびれた。
またミニ人間達からも冷凍庫を覗いているカップルは見えていて、しかし高速で動くミニ人間にとっては2人は一生微動だにしない風景にしか見えないはずで、ミニ人間たちが「何だか神がずっと見てらぁ」って感じで言ってるのもワクワクした。

 

第17話「歴史改変」 7分 ★★
絵本のような絵柄の3DCGアニメ。「もしヒトラーがあり得ない死に方したら、それぞれのマルチバース(平行世界)はどうなるか?」という風刺ギャグ。
ヒトラーナチスはクソ野郎どもなので確かに未来永劫いくらでもシェアして叩き続けても良い人物だとは思い、その事に対しては異論ないんだけど、そんな幾らでも叩いていいヒトラーを無様に殺し続けたり恥ずかしい目に遭わせ続けるというギャグの連続を観てると何だか気恥ずくなっていった。何というかヒトラーをどれだけ殺してもいいとは思うが、あまりにもそのまま過ぎて「学校から帰ったら手を洗いましょう」みたいな当たり前のことを改まって言われてるかのような気分になるというか‥とにかく今更ヒトラーのような悪人を辱めるならもう少し工夫しないと気恥ずかしくなるなと思った。

 

 

第18話「秘密戦争」 16分 ★★
フォトリアル系3DCGアニメ。シベリアの古代の森を進む赤軍部隊が邪悪な怪物たちと遭遇する。
本作に出てくる勇ましい系の「俺たちの理想像」主人公はヒュー・ジャックマンだったり髭たくわえ系マッチョ白人が多かったが本作の主人公はリー・ヴァン・クリーフ(「夕陽のガンマン」「続夕陽のガンマン」とか「ニューヨーク1997」でお馴染みの禿鷹みたいな風貌のおじさん)によく似てた。
悪魔崇拝の儀式で現世に現れた怪物たちと戦う。しかしこのアニメそのものはいいけど、このモンスターもまたつまんないデザインだな‥。
アメリカ映画とかアメコミとかアメリカのカートゥーンとかアメリカン文学とか洋ゲーとか‥アメリカのエンタメフィクションは大抵好きだけど、このアニメに限らず、アメリカのフィクションに出てくるモンスターって大抵デザインがしょうもないね?ヒーローとか機械とか色んなデザインは秀逸なのに、怪獣やモンスターはどれも凡庸なのが不思議だ。
凄いのって「エイリアン」のゼノモーフしか浮かんでこない。あとは動物とか人間を変形させたものばかりだよね。モチーフがないモンスターは大抵この作品やゴジラのムートーとかクローバーフィールドモンスターみたいに鼻のない手の長いしょうもないやつが多い。「神と悪魔しか存在しないせいかアメリカ人は日本にいる多くの神や妖怪の数々を知ったら驚く」とよく聞くし、アメリカのモンスターがつまんない理由はキリスト教のせいなのかな?または神話が無いから?ウルトラ怪獣みたいに芸術家にモンスターデザインさせれば良いの出てくるのかな。話が逸れたがこのアニメ自体は別に悪くなかった。普通

 

 

💓💀🤖 

 

 

そういった感じで僕のお気に入りはダントツでEp.03「目撃者」。
次にEp.14「ジーマ・ブルー」、三位がEp.
16「氷河時代って感じ。
やっぱり自分は一目見た時のインパクトが強いものとか何か一点だけ抜きん出てるものとかカッコ良すぎるものが好きなんだなと感じた。
「絵柄やアイデアは凡庸だが、単純にいい話」って感じなものの中で好きな話は「ラッキー・サーティーン」かな。
でも全話、つまんないものはなかったし全体的に高レベルで楽しかった。
SF縛りのせいか全体的にヲタ度が高く男性向けな作品が多かったですね。まぁ俺は男だから男性向けでも構わないんだけど、もう少しオルタナ系とか女性向けの作品も加えてバリエーションを広げるといいかも。また男性向けオムニバス海外アニメにしては、ドラッギーなものが少なかったのでそっちの成分ももう少し欲しかった。
これはシーズン2とか3とか続いていって欲しいですね。

 

 

 

そんな感じでした

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〈他のティム・ミラー監督作〉
「デッドプール (2016)」一切リアクションしない中学生男子みたいなヴィラン以外は好き❌ - gock221B

「スパイダーマン:スパイダーバース (2018)」情報量多くて疲れたが傑作でしょう。キャラはプラウラーとグウェンが特に良かったです🕷 - gock221B
『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)/意外と良かった!新キャラ良かったのでシュワとサラ・コナーはむしろ居なくてよかった💀 - gock221B

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ラブ、デス&ロボット | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
Love, Death & Robots (TV Series 2019– ) - IMDb

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『キャプテン・マーベル』(2019)/偉そうな男をぶっ飛ばせキャロル!😼


原題:Captain Marvel 制作:ケヴィン・ファイギほか 制作スタジオ:MARVELスタジオ
監督&脚本:アンナ・ボーデン&ライアン・フレック 脚本:ジャック・シェイファーほか

製作国:アメリカ 上映時間:124分 
シリーズ:マーベル・シネマティック・ユニバース

 

 

 

つい先日「アベンジャーズ/エンドゲーム (2019)」の新しい予告が配信されてMCU界隈が盛り上がってる今日この頃。本作が公開されたので観に行った。
基本ネタバレなしだがスタン・リーのGIF画像以降はネタバレありなので未見の人はスタンまで行ったら読むのを止めた方がいい。
マーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)21作目。フェイズ3の9作目。
だが「キャプテン・マーベル」という新規タイトルの一作目なので、本作からでも入っていける。彼女キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(以下キャロル)という新ヒーローが登場するのも本作が初めて。
ちなみに「アベンジャーズ/インフィニティウォー (2018)」(以下IW)で、フューリーがポケベルでSOSを発信した直後、サノス必殺のザ・デシメーション(全宇宙の半数を消滅させる指パッチン)で灰になってしまったが、発信先がキャプテン・マーベルだとわかる‥というのがIWのラストシーンだった(しかし彼女の名前も姿もまだスクリーンに登場していない)。
女性ヒーローの看板単体作としても初めて。DCの「ワンダーウーマン」に遅れを取っての公開なので「女性ヒーロー映画」としてもどんな内容なのか期待された(ちなみにMCUではフェイズ2辺りで「ブラックウィドウ」単体作を作りたかったらしいが、その当時MCU上層部に居たレイシストの責任者に「女性ヒーローなんてヒットするわけない」とストップされていた。そのオッサンは後に任を解かれ外部で制作した作品が大失敗して消えた。もちろん証拠はない噂レベルの話だが妙に信憑性があるので僕は本当だと思ってる)
本作は公開前‥つまりつい最近「ブラックパンサー」公開前の時みたいに映画レビューサイトが荒らされた。
誰が荒らしてるのかよく知らないけどブラックパンサーの時は黒人ヒーロー&黒人スタッフ、本作の場合は女性ヒーローだから、マイノリティのヒーローの活躍が気に入らない人達が荒らしてたと思われるので反ポリコレの流れなのかな?(長くなるから、この話題は省くが興味ある人はググって下さい)
ブラックパンサー」は、そんなレイシスト?の荒らしを跳ね除けて超絶大ヒット、そしてアメコミ映画史上初のアカデミー賞を3つも穫る、という歴史的な大成功を収めた。そして本作も、アメリカ本国では日本より早く先週公開されたが大ヒット。さすがに「ブラックパンサー」の超絶ヒットには負けるが、単独作より先に「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で初登場して活躍してたブラックパンサーと違って、キャプテンマーベルは初登場なわけで「初登場ヒーローの一作目」としては最大ヒットのヒーロー映画と言える。

 

 


監督脚本のコンビは「キャプテン・アメリカ」2&3作目や「アベンジャーズ」3&4作目を監督したルッソ兄弟同様、ドラマやラブコメの小品しか撮ってないから全然知らない男女コンビ監督(こういう監督って一体どうやって判断して採用してるんだろ?) 
脚本は4人クレジットされてるが、この中のジャック・シェイファー氏(男みたいな名前だけど女性)が中心人物っぽい。このジャック氏はフェイズ4で制作公開が予定されている「ブラックウィドウ」単独作の脚本、また今年新しく始めるディズニー独自の配信サービス〈Disney+〉で配信されるMCUドラマ「ザ・ビジョン&スカーレット・ウィッチ (仮) (2019)」では製作総指揮と脚本を担当するらしい。
どれも女性ヒーローばかりだ。つまり、この人は〈MCU女性ヒーロー担当〉みたいな役回りなんだろう。
キャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンも好きなので楽しみだった。最近こういう、顔の中心にパーツが集まった意志の強そうな顔の女性が好きだ(「ひよっこ」主演の役づくりで少し太った有村架純とか)
ちなみに原作のキャプテン・マーベル自体のことはよく知らん。
40代の者の多くはそうだろうが90年代の第二次アメコミブームで「X-MENのローグにパワーと記憶を奪われた気の毒な女性ヒーローMs.マーベル」として知り、2000年代は「アベンジャーズにいる金髪巨乳ハイレグの、妙にセクシーな女性ヒーローMsマーベル」というイメージで、10年代に入ると(アメコミ全体の女性キャラは皆そうだが)ポリコレの流れが入ってレオタードみたいなSEXYコスチュームではないカッコいい系のスタイルになり「MARVEL女性ヒーローの代表ポジションの強くて自立した女性キャラ、キャプテンマーベル」となったイメージ‥という浅い認識。彼女に憧れる中東系少女カマラさんがMsマーベルを引き継ぎ、そのカマラちゃんも人気。
キャプテンマーベルを名乗る前の「Ms.マーベル」時代のキャロルは、妙にセクシーな格好でやたら艶かしくやられたり、編集の都合で記憶やパワーや名前を頻繁に失ったり変更させられたり、敵エイリアンに体外受精させられて女性団体に怒られて大問題になったりアル中にさせられたりと、割と酷い目に遭ってきた歴史がある(‥と言っても過去の連載を読んでたわけでもなく情報として知ってるだけなので詳しく知りたい人は読むか詳しいサイトに行って下さい)。それらを念頭に置いて本作を観ると映画の展開にそういった歴史が折り込まれている感じするし終盤で更に盛り上がることができるはずだ。

 

 


本作は去年くらいからMCU総合製作者ケビン・ファイギが「今までのようなヒーローのオリジン(誕生譚)とは違う」と語っていて、僕的にはそこが一番楽しみだった。
というのもMCUの一作目‥つまりオリジンはテンプレが決まっていてマンネリ気味だった。
「人物紹介しつつ何か起きてパワーや動機を手にして活躍し始める」→「主人公ヒーローを悪人化した敵が現れ苦戦したり挫折する」→「困難を乗り越え勝利」
と、殆どこれ。「アイアンマン」一作目の構成。堅い造りだが、さすがに飽きてきた。
その飽き加減が最高潮に達したのが「ドクター・ストレンジ」で、ストレンジのキャラやサイケデリックな映像やドルマムゥの退け方は面白かったが、このモロに「アイアンマン」一作目と同じ流れやキャラに対して「飽きた」という感想が多くて辛かった(僕は好き)。素晴らしい美術やメッセージや人事でアカデミー賞を幾つも獲った「ブラック・パンサー」も、ざっくりとしたストーリーはこの流れだった(ただブラックパンサーは、作品に付随する要素やキャラや美術が凄かった)。
MCUじゃないけど他の制作会社のアメコミ映画も大体この流れで「ヴェノム (2018)」なんかは予告編観ただけで「ああ、エディが研究所でシンビオートに寄生されて悪者を倒したりヒロインを護りつつ悪のシンビオートに苦戦しつつも倒すのね。ポストクレジット(エンドクレジットの後のおまけ映像)は、刑務所にいる死刑囚(カーネイジ)がニヤリとして終わるんだろう」と想像したら丸っきりそのまんまだった。カーネイジまで当たってしまうとキツイものがある。
そんなテンプレがやっと大きく変わると聞いて、僕は「エンドゲーム」へのヒキなどよりも、そこに地味に期待していた。そして実際、飽きてしまったアイアンマン作劇法や「ヒーローの影としてのヴィラン」などは無くなり今までで一番面白い一作目だった。 
一言で言うと「記憶を失った主人公が『自分が何者なのか』を探っていく」形式で進んでいくので、観客は主人公ヴァース同様、真相を徐々にしっていく事になる。
勿論ある程度の予想はできるが、上手いこと予想を外し展開がずっと新鮮なままで、僕は凄く面白かったです。予告編や原作やキャスティングやオモチャバレにより色々予想はできてたんだが、制作陣はその「バレている情報」をも上手く使って騙してくるので「おおっ」と思いました(マー・ヴェルとスプリームインテリジェンスの関係とか)。原作のキャラを知っている人さえ上手に騙すやり方がスマートでした。

 

😺

 

HIGHER, FURTHER, FASTER
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ではどういう話なのか(やっと映画の話に入れた‥)。
あ、ところでネタバレは少なめにするが、後半は少しネタバレが入ると思う。
ネタバレなしで観た方が面白いので、このページの後半は読まない方が良いと思う。
ちなみに僕は本作、MCU全21作中、2番目くらいに気に入りました。今まで観たアメコミ映画やドラマ‥80本くらい?の中でもベスト3に入るくらい好きだわ。だけど不特定多数の人が本作をそこまで気にいるかというと、それはないと思う。それは後半語る。
ところで、いつものMARVELロゴが出るところが凄い‥。観ればわかる、MARVELファンなら度肝を抜かれるはずだ。
映画が始まると彼女キャロルが目覚める。場所はクリー帝国。
‥いや彼女はキャロルという名前ではなく〈ヴァース〉という名で呼ばれているクリーの特殊部隊スターフォースの一員。
クリーというのはスクラルやシャイアと並ぶ、MARVEL世界の宇宙の列強種族。
クリーは、変身を得意とするスクラルと数千年に渡る戦争を続けている。
過去に出てきたクリー人といえば「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」に出てきたロナンやコラスが属する(そして本作にも若い時のロナンとコラスが出てくる)
ヴァースは記憶を失っており、寝ている時に、彼女の過去の人生らしき地球での記憶の断片を夢で見るが思い出せない。
幼少期の彼女が男子に混じってカートレースに参加して転倒する記憶。米軍のブートキャンプで男に混じって訓練するが男たちのように活躍できず転倒する記憶。大破した戦闘機の近くで年配の女性(アネット・ベニング)と共に負傷した彼女‥など。
負けず嫌いの彼女が、各時期で色々頑張ってはいるが男には敵わず苦汁を舐めて「女が出しゃばるな」となじられる様子が強調される。上司であり師匠であるヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)とも格闘訓練をするが、やはり敵わず地面に組み伏せられる。
いつも彼女はパワーを開放したがってるが、ヨン・ロッグに「感情のままに行動してはいけない。自分を制御するんだ」と諭されている。
ヴァースは過去に事故か何かがあり、クリーを統治している超高度AI〈スプリーム・インテリジェンス〉によって蘇生の処置を受けてパワーを授かり、フォトンブラストという熱を伴った衝撃波を発射できるクリーの兵士となった。
記憶を失ったヴァースによる、スクラルと戦いながら記憶(自分)を取り戻す旅。そして「苦汁を舐め続けてきた女性主人公が自分のアイデンティティを取り戻して立ち上がる物語なんだろうな」という事を予感させる。

 

 

 

ヴァースは、上司ヨン・ロッグやスターフォースの仲間と共にスクラルと戦い、地球に落下する。そこは1995年のアメリカだった。
彼女は、まだ40代だった時のSHIELD隊員ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)と出会って彼と行動を共にする。地球人に化けて市井に紛れたスクラル人を倒すためだ。
まだ新人のコールソンも「アベンジャーズ (2012)」以来、久々に映画に登場する。出番はめっちゃ短いが「直感で正しいことを感じ取り選択できる」という素質を見せる。
ヴァースは、フューリーとコンビを組んでスクラルを追いつつも、昔から夢の中に頻繁に出てくるアネット・ベニング演じる「自分がかつて尊敬していたらしい年配の女性」について調査し、自分の過去に何があったのか探っていく。
予告編で話題となった「老婆に化けたスクラル人をぶん殴る」場面も良かった。
スクラルらしき者を追ったヴァースは、駅で老婆とすれ違う「あっ予告編のあの老婆だ!」と思った。だが、その老婆はどっか行ってしまう。電車に乗り込んだヴァース。座席には駅で降りたはずの老婆が座っている。つまり「一度、目にした者をコピーできる」能力を持ったスクラルが化けたのだ。ヴァースはすぐさまスクラルババアをぶん殴る!
本作の良いところは、このように一々説明しないところ‥つまり観客を信頼してるから良い。こないだ観た「アクアマン」は楽しめはしたのだが、キッズにもわかりやすいようにかキャラが台詞で状況をいちいち説明するのが続いて大味に感じただけに、本作の映像で説明する感じは凄く良かった(アベンジャー計画誕生の瞬間も見せないところが良かった)。
だが、アネット・ベニング演じる女性周りの事や、スクラル人の事情などが説明少なくてどんどん進んでいくので、かなりわかりにくかった。
まぁ映画を観てれば大体の流れや各キャラの目的はわかるので鑑賞には問題ないのだが、そもそもクリーとスクラルについてやクリースクラル戦争については、もっと映像付きで語るべきだったし、アネット・ベニングとか光速エンジンとかコアについてもっと話す場面が必要だっただろう。説明しなくてもわかるのに全部説明してくる「アクアマン」と真逆で、本作は説明少なすぎて「エイジ・オブ・ウルトロン」でソーが全裸で水たまりに入って悶絶してるシーン観て「え、何してるん?さっきから」と思った時のことを思い出した。
場面場面のの結果を観て大体はわかるし「エンジンの中のコアがマクガフィンなわけね」と、映画ファンとして対処した。吹き替えで観た方が判りやすかったのかも?
ここまでがまだ映画の前半くらいなんだがここから下はネタバレあり

 

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‥まだ映画の半分くらいまでしか話してないんだが長くなった。
何年も続けて出来たブログのテンプレを捨てて一から構築しながら書いてるから、目覚めて今観たばかりの夢の話を話してる奴みたいな まとまらない長文になってる。
まぁとにかく、この映画は地球に落ちて以降、どんどん面白くなる!
近年の他のアメコミ映画で「ワンダーウーマン」や「ブラックパンサー」は、序盤~中盤が本当に神!って感じで良かったのだが、どちらも終盤のバトルがイマイチだった。
映画というのは終盤や結末をショボく感じてしまうと映画全体の印象もショボく感じてしまう(逆に終わりがめちゃくちゃ良いと、ショボかった前半などもよく思えてきたりする)
本作は、記憶を失ったヴァースと共に、霧の中を進んでいくようなミステリアスな前半。フューリーや猫のグースやランボー母娘との愉快な中盤。ヴァースが真相を知って〈キャロル・ダンヴァース〉となり覚醒する後半‥!と、どんどん右肩上がりに面白くなり盛り上がって終わる、理想的な流れ。
ヴァースも「記憶喪失だが‥まぁ悩んでも仕方ないし、とりあえず頑張るか」というサバサバした感じで頑張るのも良いし、中盤までは無表情なんだけどフューリー達と一緒に行動してる中だんだん態度がほぐれてきて、たまにニヤニヤしてフューリーをからかったりする態度も凄く好き(僕は女性のニヤニヤ顔が好き)
そんな感じで楽しんでいると、今まで恐ろしい敵だと思ってたスクラル人のベン・メンデルソーン演じるタロスがカーディガン着てジュース飲みながら気さくに出てくる。
ここは凄く意表を突かれたシーン!ざわ‥としました。
ただジュース飲んでるだけなんだが、ただそれだけで「MARVELにわらわらとよく出てくる悪い宇宙人スクラル」という固定観念が壊れ「個性のある一人のスクラル人タロス」が急に現れた感じ。
それまでも変身する人間が被るギャグがあったり、仲間の死を丁寧に悲しんだりするシーンはあったのだが、それらは「よくあるシーン」として処理していた。だが、こんな感じでジュースを飲まれると一気に親しみが持てるもんなんだな。このシーンはMCU好きなシーンBEST10に入れておこう。
しかも敵だと思っていたタロスは何と敵ではなく、キャロルは今まで自分が属していたクリーと闘うことになる。キャロル&フューリーと共に。意外。
MARVEL好きとして「スクラル人=ただの悪い異星人」という先入観に付け込まれた!
そして「『スクラル=敵』だなんて‥偏見が強いね‥。そんなんで2020年代を迎えられるのかな?オールドタイプのおじさん‥笑」と刺された感じがした。そしてその良い意味での裏切られた感覚は嬉しいものだった(だけど悪いスクラルも見たいので本来の悪いスクラルは次作で出してほしい)。
そんな感じで、観てるこちらも「記憶がない」→「敵と味方の状況が反転する」というヴァースの主観と同調して映画を観ていく感じだったのでシンクロ率が高かった。
また映画の舞台は90年代。中年の僕が10代後半~20代前半という青春の時だったので懐かしい。グランジとか。ヴァース‥いやキャロルが着るファッションや遅いインターネット回線。。
途中、手に入れた音声データをパソコンで再生するシーンがある。
90年代のPCなので音源を読み込んで再生するまで、凄ーく時間がかかる。
クリー帝国に居たキャロルやスクラル帝国のタロスなど、科学が発達した社会に居た者達は「おいおい、一体何してんだ?」と言う。
しかし、これが普通である90年代の地球人であるフューリーとランボーは「何って‥音源を読み込んでるんだが?」と不思議そうに言う。
僕も20年前はフューリー&ランボーと同じ感覚だったはずなのに、当時の僕やフューリー達から見て未来人となった40代の中年になった俺は異星人であるキャロル&タロスと同じように「何だよ‥このショボい機械‥。音声再生するだけで何十秒かかってんだよ」と、2つの時代2つの視線から物事を同時に見てる感覚で面白かった(この映画、若者より俺の方が面白いと思う)
またカルチャーや舞台設定だけでなく、本作は説明の少なさやドライさなどにも90年代を感じた。
キャロルが記憶喪失のせいとはいえ「90年代っぽいドライで空虚な若者」に見えるところから始まり、さっきのタロスのジュース飲みや猫のグース、ヨン・ロッグとのラストバトルなどでのスカシっぷりなど全体的に90年代っぽい‥、もっと言うと90年代は90年代でもガンズではなくニルヴァーナ‥全体的にグランジっぽい。

 

 


実際、キャロル覚醒直前の重要な場面でニルヴァーナ「Come As You Are」が流れる
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この曲が流れる場面は覚醒直前のキャロルがインナースペースの中でマインド拘束を破ってパワーを手にしようと、もがいてる場面。
だがこの後に起こる覚醒は新たにパワーを得るというよりも、実は最初から持っていた勇気とパワーを「思い出す」ことによって目覚めさせるという場面だった。
キャロルは最初から強かった。ただそれを忘れていただけだ。
そこで流れるこの曲はカート・コヴァーンが「君はそのままで良い」「もし君が、ありのままの自分でいられてないのなら急いだ方が良い。1秒でも早く自分の為に費やしてくれ」と唄う。そのまま。歌詞は日本語字幕にしてくれてたらもっと良かったのに。

本来のスーパーパワーを取り戻したキャロルは単身、ロナンの宇宙艦隊を迎撃する。その宇宙戦で流れる曲がこれ、
www.youtube.comこれがまた映像と全く合ってないんだけど「一見、合ってないけど己の人生に纏わりつく鎖を断ち切って宇宙空間を飛翔しながら『キャホー!』と叫んで盛りあがってるキャロル脳内ではこれが流れてるんだろう、きっと!」と思えて良かった。
「(だけど‥)」という含みをもたせながら「私はただの女の子」と繰り返して唄うこの曲をバックに、キャロルは歌詞の表面的な文言や間抜けな曲調とは丸っきり正反対の超新星爆発のようなパワーでロナン艦隊を殲滅する。
どちらも本来なら勇ましい曲や、もっとカッコいい90年代ソングの方が合う場面だったと思うが、あえてこういった曲を選んだんだろうと思った。そしてこの「ひねり」が凄く90年代っぽい感覚だなぁと思った。これが異化効果を産んで、より感動的になった気がするがどうか?
本作を観た欧米人の方が「歌詞がそのまんま過ぎて恥ずかしい」「単純に曲がダサい」と言ってたのも見かけた。そういえば「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」で懐メロや童謡が流れた時「うわ、恥ずい選曲‥」と思ったので、あの感じか?英語ネイティブの方の中にはそう思う人もいるのかもしれないが僕としては「MCUヒーロー最強の攻撃力を見せながら『私はただの女の子』って歌詞のダサい唄が流れてるなんて超かっこいいな」と感動しました。
MARVELが公開した本作の90年代ソング挿入歌の一覧

 

 
自分を失って生きていた「クリー人ヴァース」は「空軍に所属していた地球人キャロル・ダンヴァース」としての記憶と名前を取り戻す。
敵だと思っていたスクラルは敵ではなく。救ってくれて育ててくれてたと思っていたヨン・ロッグやスプリーム・インテリジェンスは自分を騙していた。それだけではなく、ヨン・ロッグはヴァースに対して、パワーを制御できるように訓練してくれていたわけではなくパワーを発揮できないように抑え込まれていたのだ。
しかもキャロルのフォトンブラストなどのパワーは、ヨン・ロッグ曰く「私の青い血液を注入してできたもの」だという。そして彼の承認なくしてはパワーは使えない。
幼い頃から女性故に、常に男性に遅れを取ってきたキャロル。師だと思っていたヨン・ロッグに体液を注入され心身ともにコントロールされていた。現実世界に当てはめると性的暴行&精神的DV&パワハラモラハラといったところか。一言で言うと悪い男。
ところで原作のキャロルは大昔の連載で、敵に体外受精で妊娠出産させられるという衝撃的展開があったという。ヨンロッグとのこういったパワハラ的関係はそれを反映したものかもしれない。
男に遅れを取り続けてきた半生だったキャロルは、ヨンロッグという悪い男によって再び囚われ、スプリームインテリジェンスに洗脳される。このままでは、また記憶を失い死ぬまで搾取される。
だが今のキャロルには、尊敬する女性マー・ヴェル(原作では男だった初代キャプテン・マーベル)の記憶、親友マリア・ランボー、その娘モニカなどの女性の味方。そして新しく出来た楽しいお友達フューリーや猫のグースやタロス、タロスの家族がいた。
その想いがキャロ氏の体内で屈折、反射を繰り返しやがてスパーク‥。
キャロ氏の真のパワーの源は、ヨン・ロッグの影響などより更に奥にあり、そしてそれはクリー人パワーの数十倍ものパウワーだった。
身体に染み込んだテッセラクトaka四次元キューブ(スペース・ストーン)のパワー。そしてその核にあるキャロ氏本人が元々持っていた強い人間力。その全てがクリーの青い血を塗り替えて現出。
そして過去の記憶が完全に蘇る。キャロル覚醒。
今のキャロルだけではない。ゴーカートで男子に負けて転倒し男に「女には無理だよwww」と、なじられた幼女キャロルが立ち上がり、浜辺で喧嘩した?少女時代のキャロルが立ち上がる。ブートキャンプで男子生徒に野次られて転倒したキャロルも立ち上がり、光速エンジン実験で墜落したキャロルも‥全時代で男に舐められて男にバカにされた全てのキャロルが同時に立ち上がる!
記憶が混線し「男に敗北ばかりしてきた過去」という記憶は不完全なもので実際には「一度敗北するが、その全てでキャロルは立ち上がった」それがキャロルだったのだ。
キャロルは四次元キューブからパワーを得る遥か以前からヒーローだったのだ。
彼女の本質が目覚め、しょうもない男達を討つ。ここは「アベンジャーズ」でのアッセンブルや、ガーディアンズの「手を取って」と同じくらい感動した。
‥いや、これは覚醒というよりも、ただ思い出しただけ。
キャロルはただ過去の自分を思い出しただけで超新星爆発レベルのパワーを手にした。
偉そうに「感情を抑えろ」と言っていたヨン・ロッグはこれを恐れて抑え込んでいたのだ。
別に俺はフェミニストでも何でもないがマイノリティ‥貧乏な中年独身男性という社会的地位の低い者として「キャロルがんばれ!偉そうな奴らをやっつけろ!」と、東映まんが祭りを観る幼児のように応援できた。
真の力に目覚めたキャロルにとって、今まで一度も勝てなかった師匠ヨン・ロッグなど、もはや敵ではなかった。パワーでは勝ち目が無いことを悟ったヨン・ロッグは銃を捨て、キャロルに勝っている格闘技戦を持ちかける。
ヨン・ロッグ「スーパーパワーなんて捨てて、かかってこい!キャロル」
かつてキャロルを抑え込めていた時のように「男らしい公平さ」を演出するヨン・ロッグ。
しかしキャロルにとって「(彼に都合のいい)男らしい公平さを持った戦い」など何の価値もない。キャロルは「レイダース」のインディ・ジョーンズよろしく、ヨン・ロッグを普通にフォトンブラストで吹き飛ばす。そして僕が最も好きな勝ち方「惨めに生きながらえさせる」でもってヨン・ロッグを宇宙に送り返す。
このヨン・ロッグ。ここまで「情けない男」ヴィランは珍しくて、それを大物イケメンのジュード・ロウがやってるのでかなりいいですね。多分だけど本作観ずに批評サイトを荒らしてた人ってこのヨンロッグみたいな人‥って印象だからヨンをぶっ飛ばしつつ大ヒットしてるのがかなり爽快感ありますな。MCUヴィランでもかなりポイント高い名ヴィランだわ。
※追記:台本の段階では、この宇宙に送り返されたヨンログ「マイティ・ソー:バトルロイヤル」のサカールに到着するというオチだったらしい。ということは当然、剣闘士となって「ヨンログがキャロルとやりたがっていた『男らしい果たし合い』をさせられる。死ぬまで」って事だろうから、これはこれで最高のオチだと言える。
そういえばヨン・ロッグは事前にロナン艦隊を呼んでいた。ロナンは地球を爆撃する。このままでは地球は終わりだ。だが覚醒したキャロルはギュネイ・ガスのように弾頭を全て撃ち落とす。そしてそのまま「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」一作目で、〈ガーディアンズ+ヨンドゥのラヴェジャーズ+ノヴァ軍〉が苦戦したりノヴァ軍戦闘機数万機が全滅させられたロナン宇宙戦艦を生身で3秒で撃墜した。
今まで「キャプテンマーベルはMARVEL最強!」などと宣伝されても「キャプテン・マーベルは強いけど、せいぜいソーくらいの強さじゃない?」と思ってたけど、こんなに強かったとは‥。テッセラクト(スペース・ストーン)と同じくらいのパワーを持ってるのかな?
ガーディアンズの時のロナン戦艦はロナンがパワー・ストーンを所有してたから今より強かったのかもしれんが、それにしても巨大戦艦を豆腐みたいにぶっ壊すんだから超強いのは間違いない。何かもうガンダムより強い。
アクション少なめの本作だったが、まるで過去の原作コミックのようにパワハラによって改鼠させられてた記憶や名前を跳ね除けて記憶を取り戻したら数千倍強くなって全て殲滅するという真ゲッターロボ的なダイナミックな終盤は感動したし気落ち良かった。
ついでに猫のグースも大人グルートより強かったし。キャロルだけで長文になってしまい書く暇なかったがフューリーやマリア・ランボーも大活躍してたし。
「悪い男の言いなりになっていた自信のないクリー人女性ヴァースは、無限のコズミックパワーを得た強い地球人女性キャロル・ダンヴァースだった」「悪の異星人スクラルは居場所を求めて彷徨う善良な異星人だった」「悪の帝国スクラルを叩くクリーのスターフォースは侵略者だった」「頼もしい武人である師ヨン・ロッグは只の情けないパワハラ親父だった」「ヴァースの上司である全知全能シュプリームインテリジェンスと、キャロルが尊敬したマー・ヴェルは見た目が同じ」「カワイイ猫ちゃんグースはめちゃくちゃ恐ろしい宇宙生物だった」「勇猛な悲劇によって失われたと思わされてたフューリーの失明は間抜けな理由だった」などなど‥、本作は「ツイン・ピークス」風に言うなら「フクロウはフクロウではない」つまり「人は見た目とは違う」というテーマをはらんでいた。まったく素晴らしいね。。
観る前は全く期待してなかったタロスも凄く魅力的だった。再登場して欲しい。
逆にスターフォースはかなりガッカリだったな。ヨン・ロッグは「情けない酷い男」としてネガティブ方向に大活躍して良いヴィランだったが他の隊員‥、特にジェンマ・チャン好きなのでミン・エルヴァには期待してたがどうでもいい役だったね(ドクターになって再登場できなさそうだしX-MENリブートでサイロック役やってほしい)。再登場したロナンやコラスも、別に彼らじゃなくてもいいようなキャラだったし。
さっき言ったようにヘンテコな90年代選曲も良かった。同じように懐メロを流したガーディアンズの曲は、自分が生まれるか生まれてないか頃の曲だったのでピンとこなかったが、本作の90年代楽曲は、ニルヴァーナ1stはよく聴いてたし他の曲は持ってなかったが聞き覚えがあるし、懐かしく感じた。80年代ばかりじゃなくて90年代オマージュ映画が今後も増えればいいな。
まぁそんな感じで、僕は本作とキャロルというキャラを凄く気に入りました。
ちなみに「ガーディアンズ」シリーズや「マイティ・ソー:バトルロイヤル」ではジャック・カービーっぽいサイケデリック宇宙だったので、本作は違う感じにするために、それらのサイケデリック宇宙描写を外してリアル寄りにしたらしい。サイケな方が好きだが本作の場合は、幻惑されるよりリアルめな方が「実は地球人だったキャロル」の感触をより味わえるのでこれで良かったんだろう。
とにかく近寄りがたい気高さと美しさを押し出した「ワンダーウーマン」との違いは、キャロルは親しみやすさが強いってとこだろう(このダイアナとキャロルの対比はそのままDCとMARVELの違いとしても見れそう)
アメコミ興味ない只の映画好きも喜びそう。地球に落ちるまでの低いところでずっとドンドン‥と太鼓が鳴ってるかのような妙なテンションは「これ本当にディズニーのMARVEL作品か?」というオフビートな感じでドキドキした。映像も、書庫でグースが映るカットとかカッコいい。今の目で観れば地味なフェイズ1を洗練させた感じ。
人によって評価が大きく違いそうだけど僕はめちゃくちゃ好きだった。
「本作とガーディアンズ一作目、どちらかがMCU全作の中で一番好き」ってくらい好きだ。観たばかりだし今はこれが一番面白いってことにしとこう。

 

 

 

そういえば本作での故スタン・リーのカメオ出演はスタン・リー本人がケビン・スミスの映画「モール・ラッツ (1995)」にカメオ出演するために台本を読んでいるところだったらしい。つまり本作のスタン・リーは90年代のスタン・リー本人を演じてたんだね。台本の表紙とか見てなかった。帰ってネット記事読んで知った。
本作が発表された時に「ミズ・マーベル」の布石として「カマラちゃんがTVでキャロルの活躍見て憧れる場面があるに違いない」と期待したが舞台が90年代なのとモニカ・ランボーが出たから無いなと思った。だからカマラちゃんは当分先みたいだが、このMCU版キャロルさん、めちゃくちゃ気に入ったから当分はキャロルだけ見ていたい。
次は、来月の「アベンジャーズ/エンドゲーム (2019)」か。
一作目「アイアンマン (2008)」から「アベンジャーズ/エンドゲーム (2019)」までの22作品までの展開に「インフィニティ・サーガ」という名称が付いた。
エンドゲーム楽しみだ

 

 

 

そんな感じでした

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『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)/シャン・チーとケイティと中盤までのアクションとストーリーが最高⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕ - gock221B

 

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Captain Marvel (Movie, 2019) Trailer, Release Date, Cast, Poster | Marvel
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キャプテン・マーベル (ShoPro Books)

キャプテン・マーベル (ShoPro Books)

 

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「THE GUILTY/ギルティ (2018)」電話の向こうが一切映らないという構成を上手く使って電話の向こうに地獄を‥🎧

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原題:Den skyldige 監督&脚本:グスタフ・モーラー
製作国:デンマーク 上映時間:88分

 

 

警察の緊急通報司令室オペレーターの男が電話で話してるだけというデンマーク映画。随分と評判になったそうです。
公開初日だしネタバレ殆どなしの薄い感じで。。 

 

 

 

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警察官アスガーは一線を退き緊急通報指令室オペレーターとして働いていた。
そんなある夜、一本の電話を受ける。それは今まさに誘拐されている最中の女性イーベンからの通報。
アスガーは電話から聞こえる音だけを手がかりに、見えざる事件を解決することはできるのか――という話。
もうすぐアスガーの夜勤が終わろうとしている時から話が始まる。
かかってくる緊急通報は引ったくりとか転んだとかそういう些細なものばかり。
主人公アスガーは元からオペレーターだったわけではなく、バリバリ現場に顔出してた警官だったが、あつ事件があり裁判を受ける直前のため緊急通報の電話番している。
だから普段はもっと現場に出ていた男。
そのため、このオペレーターの仕事は緊急通報を受けた際パトロール中のパトカーに指示を出す係の人に状況を知らせるだけ‥の仕事なんだが、アスガーの場合、解決できそうなら指示を出して能動的に事件を解決しようとする。そんな行動を、パトカーに指示出す係の人に咎められるとキレて、独自に警官時の相棒などに直接電話して急行させたりする。
‥どうでもいいが通報してくる奴らはどいつもこいつも慌ててるせいか自分が今いる場所とか現場の状況とか全然言わず、場所を訊いても「パトカー送ってくれ!」→「ですから場所を言ってください」→「馬鹿野郎!早く‥!早くパトカーをよ~あうあう」みたいな感じで要領を得ない。
もし自分がこの仕事に就いたら「場所と状況を先に言えバカ!じゃないと何も出来ねーだろうがボケがよ」と通報者に対してキレてしまいそうだ。‥いや、それは映画を観てるからそう思うだけで、実際に勤務したらマシーンのように機械的な対応するだけだろうな、とか想像しながら観ていた。
オペレーターの前にはPCがあり、電話がかかってきた瞬間に、相手のいるおおまかな場所(半径数百mくらい?)と電話の持ち主、職業などがパッと一発で出る。こんなに一発で出るもんなんですねぇ。
上のあらすじにも書いたが「今まさに男に誘拐されている最中」だという女性イーベンからのSOS電話がかかってくる。
誘拐した男は、イーベンが自分の娘と喋ってると思い込んでいるらしい。
だからイーベンは能動的に話すことができないので、アスガーは「YESかNO、どちらかだけで返事できる質問」を繰り返し、居場所や行き先を知ろうとする。
アスガーは隣のサブの部屋に移動してそこで仕事をし始める。
これはさっき言ったように自分のスマホから元相棒に電話して捜査してもらうため。
そしてイーベンやイーベンの家族に電話したり逆にかかってきたり、途中で切れたり、またかかってきたり‥コーベンの家に警官を急行させて娘を保護させたり‥と、映画の舞台は全く変わらないが色々と二転三転する。

 

 


映像としては、サブの部屋で電話しているアスガーの顔を見るしかない。
スクリーンいっぱいにアスガーの顔面の三分の一くらい映ってて、すげードアップ。
本当に、こんなに同性の刈り上げ部分をずーっと見つめたのは始めてだ。
きっとアスガーの感情や思考、また電話の向こうの状況などを想像して欲しいという事だろう。映画の舞台は最後までアスガーが働いてる部屋以外一切映らないので会話を聞いて想像するしかない。だが明快なので判りにくいという事はない。
こんなにも画変わりしないサウンドノベルゲームみたいな映画なのにも関わらず最後まで集中して面白く観れた。
我々、観客は観てるうちにアスガーとシンクロして電話の向こう側を、電話相手との会話や物音、警察ネットワークに登録されてる電話の持ち主などの情報から、一体何が起きてるのか推測して、被害者を救出できるように指示を出していくしかない。
アスガーにシンクロして観てた僕は全くもってアスガーと同じように感じていたのでアスガー同様「そ、そんな!?」と驚かされました。‥僕は、こういうミステリー仕立ての映画は一切何も推理せずボーっと観て登場人物と同じように「な、何だって~!」とアホっぽいリアクションしながら観るようにしてます(その方が楽しいので)。
電話の向こうの状況はかなり悲惨な事になっている。 
電話の向こう側が一切スクリーンに映らない本作の構成を逆手に取って、とても映画の画面では見せられないような惨状になっている。
アスガーの頑張りは事態を悪化させたようとも言えるが、コーベンとアスガー本人に最終的な「真実に向き合った上での救い」‥のようなものを与えたのはアスガーだと言えるので、その点ではきっと良かったのだろうと思った。
‥というか、俺がアスガーだったらコーベンにあんなに親身にならないだろうし、同じ結末を経ても裁判の件は当初のままにしとくだろうと思った。アスガーは優しいし誠実だよね。俺が薄情なのか、それともアスガーが誠実なのか、もしくはその両方か。。
ネタバレしないように書こうとしたら、只の映画紹介みたいなしょうもない内容になってしまったが折角観たので記念書き込み的な意味合いで書いといた。別に超傑作というわけではないし何度も観返したい要素もないけど割と誰が観ても最後まで楽しめる気はします。

※追記:TBSラジオクラウドで2020年11月21日までラジオドラマ的なものが限定公開中
radiocloud.jp

 

 

 

そんな感じでした

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映画『THE GUILTY ギルティ』公式サイト|10.16(水)Blu-ray&DVD発売

Den skyldige (2018) - IMDb

www.youtube.com

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「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル (2017)」どうしようもない人間達をアホみたいに描いているが同時に地球を離れて空中にいる時のトーニャへの愛も感じた👱‍♀️

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原題:I, Tonya 監督:クレイグ・ギレスピー
制作&主演:マーゴット・ロビー 
製作国:アメリカ 上映時間:120分

 

 

1990年代前半に活躍して、ライバルのナンシー・ケリガン選手襲撃事件に関わっていたとされるフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングの半生を描いた実話ベースの映画。
連日報道されてた事件だったが、その当時忙しくて‥というか20代の10年間全くTV観てなかったので彼女への知識も思い入れもなし。ついでにフィギュアスケートへの興味もゼロで全く観たことがない。ただ制作&主演のマーゴット・ロビーと実話ベースの映画が好きなだけ。実話だし完全にネタバレありスタイル

 

 

Story
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貧しい白人家庭に育った少女トーニャ・ハーディング(子役:マッケナ・グレイス)。
母親ラヴォナアリソン・ジャネイ)は娘のスケートの才能に気づき、彼女を一流のフィギュアスケート選手にして貧困から脱出しようと本格的にスケートを習わせるが、娘に愛情を示すことはなくトーニャはDVが日常の少女時代を過ごす。
やがて15歳になったトーニャマーゴット・ロビー)はジェフ・ギルーリーセバスチャン・スタン)と出会い、恋に落ちるが――

 

 

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マーゴット・ロビーは痩せてるが下半身が妙にムチムチしてるのでスケート選手役は合ってた感じ。
事件に関わったトーニャ周辺の、彼女ら彼らが語る証言を元にフィクション化している。
だから〈現在のトーニャ〉が「夫はすぐ殴ってきた」と語ると劇中のトーニャが夫に殴られてカメラ目線をするが、すぐさま〈現在の夫〉が「いや、むしろ彼女の方が暴力的だった」と語れば、劇中の〈当時のトーニャ〉が夫を殴り返したり銃をぶっ放したり‥と、そんな感じで進む。
つまり「羅生門」みたいに「真実は藪の中でどれが真実が定まっていない。だから彼らの複数あって、それぞれ違う証言を元に忠実に映像化する」という感じで展開する。
登場人物全員ホワイトトラッシュ(貧乏白人)なので、真剣に描くと観てられない痛々しい映画になった気がするが、彼ら全員アホの証言を元にコメディ形式に撮ってるので劇中で悲惨な事が起きていても全体的に可笑しいムードが漂う。そして複数の真実を描いてるように見えるが、その実ひとつの線にしか信憑性はなく結果的に「アホ達が全員適当な証言してたんだな」感が高まるストーリーとなっている。
幼女時代は「GIFTED/ギフテッド」で天才の娘役をしてた天才子役の彼女が、本作でもスケートの天才幼女を演じている。オシッコしたくても母にトイレ行くのを許されず小便たれ流しながらレッスンを続ける幼トーニャ。
やがて高校生くらいの時にMCUのバッキー役でお馴染みのセバスチャン・スタンと付き合い始め、マイルドヤンキーらしく速攻で結婚する。で、勿論すぐにDVし合って別れたり寄りを戻す‥などの繰り返し‥という底辺定番の流れ。どうせしょうもない原因だったに違いない喧嘩の原因など一切描かず、まるで意味なく殴り合ってるかのように描いてるから二人ともモノホンのアホに見えて可笑しい。
「あなた達の証言どおり描きましたよ‥」という構成を上手く使って完全に馬鹿にしてるとしか思えない雰囲気が可笑しい。その辺はアホのホワイトトラッシュなどを真剣に描いてるかのように見せかけて意地悪く可笑しい感じに描くのが上手いブコウスキーデヴィッド・リンチみたいで面白かった。
「バッキーの人はDVとかしそうにないからミスキャストじゃないか?」と最初は思ってたが、マーゴット・ロビーセバスチャン・スタンという可愛らしい顔の2人が殴り合う様は、子犬がじゃれ合ってるみたいで痛々しくないので「だから可愛い顔のセバスチャン氏をDV夫役にキャスティングしたのかもな」と思った。
また鬼ママ役の人の憎たらしさが凄い。ゴールデングローブ賞 助演女優賞、アカデミー助演女優賞を受賞したらしい。「ヘレディタリー/継承」のトニ・コレットっぽさもある。

 

 

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トーニャはアルベールビルオリンピックで四位に終わり、スケートを辞めて母と同じくウェイトレスをしていたが努力して順調に再びトップ選手に返り咲く。
最高の努力で得た最高の技術で最高の演技をしたはずが、どうにも最高の得点が出ないことに腹を立てて審査員を問い詰めると
審査員「スケートは技術だけじゃないんだよ」
審査員「君からは理想的なアメリカの家庭の温かさが感じられない」と言う。
トーニャは、その半生において「理想的なアメリカの家庭の温かさ」など知らない。
「才能はあるが、トーニャがどんなに努力しても一位の栄光は永遠に掴ませない」と告げられたようなものだ。
トーニャの夫ジェフは、脅迫状が来てビビって欠場したトーニャを見て「そうだ!トーニャのライバルのケリガンに脅迫状出してビビらせ、欠場させる事ができればトーニャの不戦勝になるのでは?」と思いたち、親友のニートのデブに相談。このデブ‥大柄はいい歳をして実家住まいで無職「自分は国のスパイとして暗躍している」などと妄言をいつも吐いている(最後のスタッフロールで「こいつは本当に言ってましたよ」と見せる)。
大柄はろくでもない知り合いに依頼し、ジェフの計画は「脅迫状を出してビビらせるだけ」だったのに、このジェフの親友のニート大柄のろくでもない知り合いの更にろくでもない知り合いは何故か棒でケリガンをブン殴って、ケリガンは次の大会を欠場。大事件となる。
FBIが捜査を始め、関係者は全員バカなのですぐにトーニャまで疑われる。
実際の真実は明らかになってないらしいが、大体上の流れが真実っぽい感じで描かれ、トーニャが指示した感じでは描かれなかった。だが知ってて見過ごした可能性も高い。実のところよくわからない。まぁ知ってた気がするけど‥。
マスコミやアメリカ国民によるトーニャ叩きについて〈現在のトーニャ〉は「大人になってもう一度虐待された気分だった。そう、お前らにな‥」とこちらを睨みつける。すごい迫力。彼女が語りかけてるのは本作を楽しんで観ている我々(広い目で見れば人類そのものの習性について断罪しているようにも見える)。実際、トーニャの上手くいかない人生や彼女周辺のアホな人達をめちゃくちゃ楽しんで観てたからな。当たってる。
そして今まで一度も褒めてくれた事がなかった鬼ママが初めて優しくしてくれた‥と思ったら酷い裏切りだったとか、裁判で二度とスケートできなくされたりして映画は終わる。
ちなみに〈現在の本物ジェフ〉はトーニャに悪いと思ってる感じで〈現在の本物ママ〉は未だに一切悪いと思ってない。
映画のラストは、彼女がトリプルアクセルを成功させた人生最高の瞬間‥〈空中でクルクルと華麗に回る過去の栄光の姿〉と〈スケートできなくなってボクシングの試合に出てブン殴られて惨めに空中をクルクル回ってる姿〉がシンクロする‥という最高のものだった。

 

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ケリガンをトーニャが殴ったのかどうかはハッキリしないが、トーニャが「理想的なアメリカの家庭の温かさ」を知らない事。そしてどうしようもない母と夫、その周りのどうしようもない人間たち、それらが集まってできた澱(おり)のようなものがケリガンを殴りトーニャの成功を阻んだといってもいいだろう。
「トーニャは生まれた瞬間に詰んでいた」という「ヘレディタリー/継承」にも通じるものを愉快に描いた映画だったとも言える。ベテラン女優が怖い顔のオカンを演じるという共通点もあるし。
トーニャは周りのカスどもを切れなかった。だから成功できなかった。だがそもそもカスじゃない人間を知らないトーニャがどうやってカスをカスだと判断できる?
だが、この映画は基本的に登場するどうしようもない人間たちをアホみたいに描いているが(実際アホなので仕方ない)トーニャのことを描く際は、どこか愛情のようなものを込めて描いてるように感じた。
最後の栄光と惨めさの同時スピンというラストも「氷上を舞ってたトーニャが落ちぶれて殴られて宙を舞ってますよ」という意地悪な視点、だけではなく「トーニャも基本どうしようもないが、あの華麗なトリプルアクセルで地球を離れて空中にいたトーニャが輝いていたのも事実」と言いたいようにも感じた。
そしてラストカットはボクシングでブン殴られてリングに倒れた、ろくでもない女トーニャが不敵な笑みを浮かべて立ち上がる瞬間なのだ。だから割と観終わった後はブラックジョーク的な印象よりも爽やかな人間讃歌を聴いた印象が残った。
というか俺、この映画内のトーニャみたいな女、好きかもしれん。

 

 

そんな感じでした

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