gock221B

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「ザ・サークル (2017)」世界の学級委員長エマ・ワトソンが、ネットによる全体主義に警鐘を鳴らす優等生映画📱

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原題:The Circle 監督&脚本&制作:ジェームズ・ポンソルト
原作&脚本:デイヴ・エガーズザ・サークル」 製作国:アメリカ 上映時間:110分

 

 

 

Netflixで配信が始まったので観た。小説が原作。「エマ・ワトソンが自らの私生活を24時間晒す」というセンセーショナルな内容に反してヒットしなかったことから、あまり期待せずに観たけど、結構面白かったです。 
意欲みなぎる24歳の女性メイエマ・ワトソン)は、親友アニー(カレン・ギラン)の口利きで、スティーブ・ジョブズを思わせるカリスマ経営者イーモン・ベイリートム・ハンクス)が作り上げた世界最大の超巨大SNS企業〈サークル〉に入社する。
〈サークル〉は、GoogleAppleFacebookTwitterを合わせたような大企業。
福利厚生や社員へのサービスがしっかりし過ぎている。
ネット記事などでよく見るGoogleとかAppleとかPIXARのなどの人気企業のように、社員はあらゆる高水準のサービスが無料で受けられるし「自由な発想で遊びのような事がそのままビッグビジネスに繋がり、それで楽しみながら儲かるだけでなく世界そのものをより良い方向に変革さえする」‥という、ああいった大企業のイメージそのものな楽園のような、皮肉ではなく「真の意識高い」系集団という感じ。そして社員が皆、ジョブズっぽい語り口で喋る(以下イノベーション喋り)。ジョブズ役とも言えるトム・ハンクスは正にジョブズのように巨大スクリーンの前でジョークを交えて全社員の前でイノベーション喋りする。イノベーションがどうとか‥楽しみながら世界をより良くするとか‥そういうやつね。全社員はウケたり感嘆しながら意識や知識を共有していく‥。
難病にかかっていたメイの父親も、サークルが派遣してくれた医師によって完治。
メイは入社後、タイジョン・ボイエガ)という青年と知り合う。
彼はSNS「サークル」のシステムを構築した有名な天才青年だった。入社直後でサークルに感嘆してばかりのメイに対し、タイはサークルやSNSサークルの危険性を語る。まぁ要は「プライベートが無くなって全体主義に繋がる」‥とかそういうこと。
日曜大工や自然を使ったアートをやっている自然派のメイの元カレっぽい男友達マーサは、サークルのせいで「動物を殺してアートを創っている」というデマを流されて「鹿殺し」の汚名を着せられ肩身の狭い思いをしていた。マーサはメイに「君のことは好きだったが、サークルなんて異常な世界にいる君にはついていけん」と言って絶交する。
ヤケになったメイは立ち入り禁止海域?でカヤックを爆走させていたら転覆。しかしメイを24時間監視していたらしいサークルのヘリによって救助される。
ずぶ濡れで意気消沈するメイに、トム・ハンクスは優しく語りかける。
トム・ハンクスカヤックでの航海は確かに楽しい。それが不法侵入なら特にね?笑」「だけど、僕らが監視してなければ君は今頃死んでいた」「それに、その深夜のイタズラを秘密にせず、大勢で共有すればもっと楽しめたと思わないかい?」
タイの懸念やマーサの絶交などでサークルへの不信感が鎌首をもたげていたメイだったが「法を犯して死にそうにだったところを助けられたが叱責されずウィットに飛んだ感じで同調されながら優しくもっと良くなる提案をされる」という「若者が一番オッサンにされたい態度」をトム・ハンクスにされて、メイは彼に、すっかり感服してしまった。
そしてメイはベイリー(トム・ハンクス)の「全人類が隠し事をせず完全に繋がり合えば、より良い世界になる」というベイリーの信念を拡張して〈あらゆる個人情報の共有〉を目指す事となる。つまり全世界、全人類に小型カメラを与えて「隠し事できない世界」を実現させようとする。そしてメイは、そのプロトタイプ。その大型プロジェクトのモニター社員に大抜擢される。それは超小型カメラでメイの日常生活を全て記録し、メイの視界も含めてリアルタイムで全世界に配信する新サービスの公開実験。「全世界、全人類を透明化する」というベイリーの理念を素直に全肯定し、自らのプライバシーをとことん公開していくメイ。
フォロワーは社内だけでなく世界中の人に及び、たちまちフォロワーは一千万人を超え、メイは一躍カリスマ的存在となっていく。

 

 

 

というのが中盤くらいまでで、ここまでは凄い面白い。
「(世界一可愛い)エマ・ワトソンがトイレ以外の24時間の生活を全世界に公開」と聞くと心がざわっとしてしまうが、エマ・ワトソンが主演してるだけあってSEXしたりとか着替えがどうとか、そういった下世話な下ネタ要素は当然ない。‥まぁエマ・ワトソンじゃなくても、そんな下世話な描写はないけどね。
エマ・ワトソンについてだが、ハリーポッターは殆ど観てないので数本しか観てないけど、美しいし彼女がやってるフェミニズム活動も好感持てるし彼女を見かけるたびに、その圧倒的大正義生徒会長オーラに圧倒され、あまり彼女をよく知らないにも関わらず「よく知らないがエマ・ワトソンに嫌われないように生きていきたい」という気持ちに自然とさせられたりする。そんな感じが彼女のパワーなのかもしれない。大ファンではないが「漠然と好き」という感じ。エマ・ワトソンが出馬したら「何となく」一票入れてしまう‥そんな曖昧な「エマ・ワトソン何となく層」にいるのが俺だ。
それにしても、いつも完璧なエマ・ワトソンが演じる女性メイ。そんな彼女が「トゥルーマン・ショー」みたいな私生活公開したらもっと大変な事だと思うが、劇中ではそうでもない。恐らく本作の主人公メイは、少女漫画の主人公みたいに「読者(視聴者)の我々から観ると美人すぎるけど、劇中では『どこにでもいる普通の女子』として描かれている」‥んだろうなと思った。まぁ普通の女性だとしても私生活を一千万人に全公開していれば異常なファンが大勢生まれてそうだがそういう奴らは出てこない。
その代りと言っては何だがメイの両親が性行為しているところをTV電話越しにメイが見てしまい。その結果、メイが見た両親の営みが全世界に配信されてしまう。
メイは「ちょっともう!映っちゃいけないものが映ってる~!なんなの~笑」といった感じで「ちょっとしたハプニング」として笑いにしたが、両親は「全世界に24時間自らを晒しているメイ」と毎日テレビ電話してるので自然と自分たちも毎日一千万人の人に見られてしまう、両親はその状況に耐えられずメイと連絡しなくなる。
またカレン・ギラン演じる過労死寸前で疲弊していた同僚アニーも、メイが始めた、このイカれた企画についていけなくなり疎遠になってしまう。そしてアニーが言うには「皆は信奉してるけど社長と副社長は犯罪そのものみたいな事してるのよ。私はそれを連日徹夜でもみ消してる。もうウンザリよ」と疲れ果てている。
政府や大企業に雇われたエンジニアが、政府や大企業に都合の悪い情報を連日連夜消してるうちに病んでいく、だが守秘義務があるので更に病んで潰れていく‥という人物の集合体がこのアニーだ。
この企画を始めた結果、親友、男友達、両親‥などの大事な人に関係を一時停止されたメイ。しんどいが何とかモニター期間を終え、この〈全世界、全人類の24時間監視システム〉は完成に近づく。
メイは社長のように、モニターをバックに全社員の前でシステムを発表する。
たとえばテストとして「全世界のみんな!この子供殺しの逃亡犯を探して!」と逃亡犯の顔写真を全世界に発信するメイ。逃亡中だった殺人犯は何と20分足らずで見つかり逮捕される。全人類もカメラを持ってるのでその様子も生中継されている。
「プライバシーこそ阻害されるが犯罪の90%は無くせる」という、このシステムの威力を見せつけた。だが「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」のインサイト計画に似すぎていて暗雲立ち込める。
次に人々がサーチをリクエストしたのは、メイを絶交した個人主義者マーサだった。
「メイはマーサに絶交されて落ち込んでるから、マーサを見つけて仲直りさせちゃおう!」というノリだ。メイは「やめて!マーサはこういう事が苦手なの!」と言うが盛り上がってる独善的な同調圧力には勝てず全人類サーチがスタートする。
‥と言えば何が起きるかは想像つくだろう。
誰もが想像しうる悲劇が起きて、傷心のメイは目を覚ましてアニーや両親と仲直り、そして毎週やってる衆人環視のプレゼンテーション会合で、気さくなオッサンを気取りつつ自らの手は汚さず全人類のプライバシーを阻害しながら自分のプライバシーは死守して利権をむさぼるトム・ハンクスと副社長に反旗を翻す。衆人環視の中、人々はメイを支持しているのでトム・ハンクス達は逆らえず「彼女に見事にしてやられたな笑」
メイが勝った。終わり
うん、観ていた僕は確かに、完璧なエマ・ワトソン演じるメイが洗脳から解き放たれて親友や両親と仲直りして体制を刺して欲しかったよ?
だけどそれが残り5~10分くらいであっさり実現してしまい。ラスボスであるトム・ハンクスも「やられた~僕の負けだ~笑」みたいな態度を取られたら「‥いや、これメイの妄想やろ!」としか思えないよね。もしくは「これ、映画本編が終わった近日中にメイは暗殺されて情報操作されるだろ」と逆に不安になっちゃうよね。
原作がどうなるのかは知らないが「マーサに起きた悲劇で〈サークルの危険性〉を思い知ったメイは洗脳から解かれ、アニーやタイの協力も得てトム・ハンクスを討とうとする。だが志半ばでトム・ハンクスに返り討ちされ死亡。だがメイの残した盗聴とか盗撮映像が全世界に公開される装置が動き出した‥」こんな「ゼイリブ」とか「ウォッチメン」みたいな終わり方が丁度いいやろ。
洗脳されてたエマ・ワトソンがハッと気づいて5分くらいで完全勝利。両親も親友も全て取り戻す。ラスボスのトム・ハンクスもそこまで邪悪に足掻くわけでもなくスマブラで負けたかのようなヤレヤレムード。「ごめん、僕が悪かったよ」などと言い出しかねない雰囲気。
こうあって欲しい。こうあって欲しいけど、こんなこと現実では起こり得ないだろ。
勿論そうあってほしい。エマ・ワトソンが苦しむところも見たくないし皆が笑顔でいて欲しい。それでいいと思ってる、人間はそうあるべきだと思ってる。気ままに?楽しく?平和に人生を送る?冗談じゃない。世界はそんな風になってないじゃないか!
黒沢清「CURE」の役所広司は置いといて、前半中盤は良かったけど終盤が絵に描いた餅っつーかお花畑すぎるっつーか楽園にでも住んでウルトラマンにでも護られてるかのようっつーか‥(坂本ジュリエッタ)。そんな感じでラストで一気にアホらしくなりました。原作通りなのかもしれないが、エマ・ワトソン主演作は割とこういう理想論的な映画が多いような‥カルト宗教に入った夫をエマワトが救出しにいく映画も似た感じだったし、脚本を選べる立場のエマ・ワトソンは理想主義的すぎる脚本を選んじゃったのかな?と少し思った。エマワト本人は高潔なので「当然こうあるべきやろ」と世界にもそれを求めてるのかもしれないな‥と思うのは穿ち過ぎかな?
またメイの両親がSEXして全世界に観られる場面も、本当はメイがやるべきだろう。別にエマ・ワトソンの濡れ場が観たいわけじゃないので、その場面は別に鮮明に映らなくても良いけど、とにかく「メイの両親が営みを見られて疎遠になられてメイが悲しむ」というのは遠回しすぎるだろ「メイがカメラのこと忘れてボーイフレンドとセックスして見られて監視システムに疑問を抱く」という方が自然だろう。
とにかくあらすじだけ聞くとめちゃくちゃ面白そうな本作が全然人気でなかった理由も後半でわかったね。
「一日中スマホ観てる人や自分をさらけ出し過ぎるのは危険」「GoogleAppleに世界征服されてない?」「全体主義はアカン!」といった分かりやすいストーリーや主張自体は僕も当然共感できるものだったしエマ・ワトソンもいつも通り美しかっただけに誰かの甘い妄想みたいな終盤が勿体無い一作でした。
この監督が、もしジョン・カーペンターデヴィッド・フィンチャーだったら、傑作だったに違いない。

 

 

 

そんな感じでした

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The Circle (2017) - IMDb

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Amazon: ザ・サークル (Kindle版)
Amazon: ザ・サークル 上 (ハヤカワ文庫)
Amazon: ザ・サークル 下 (ハヤカワ文庫)

ザ・サークル

ザ・サークル

  • デイヴエガーズ & 吉田恭子
  • 小説/文学
  • ¥1,600

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「アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲 (2019)」前作よりも都市伝説とオカルトを増量し、映画としての本編が更に薄くなったが楽しいよ🦖

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原題:Iron Sky: The Coming Race 監督&脚本:ティモ・ヴオレンソラ
製作国:フィンランド/ドイツ 上映時間:90分 シリーズ:「アイアン・スカイ」シリーズ

 

 


これ別にわざわざ映画館で観る気なかったけど時間を潰さなきゃいけなくなった街でやってたので観た。
前作「アイアン・スカイ (2012)」は、2006年に企画が始まって面白そうな予告編だけ作ってそれをカンヌ国際映画祭で公開し、クラウド・ファンディングでファンから1億円を集めて制作されたSFコメディ映画。そして7年越しの続編である本作もまた同じ様にクラウド・ファンディング1.5億円集めて制作された。
前作は「月の裏側に潜伏していた月面ナチスが、高度な科学力で作られたUFOで地球に侵略戦争を仕掛けてくる」という話だった。
ナチスに心酔している女性幹部リヒター、色々あって彼女はナチスの洗脳から解けて地球のアメリカ黒人男性ジェームズ・ワシントンと共に月面ナチスの野望を打ち砕く。
とにかく設定やあらすじがぶっ飛んでいて如何にも面白そうだったが、映画自体は割とこじんまりとした普通の作品で、悪くはないが予告編ほど印象に残らなかった。
今回は何もかも言ってしまう完全ネタバレ

 

 

 

前作のラスト、人類は月面ナチスを倒したのに、地球の各国は愚かにも月の資源をめぐり核戦争を起こして地球の文明は60億年の歴史を終えた。核戦争の影響で地球には氷河期が訪れた。
前作の主人公リヒターとジェームズはナチス月面移住区の良き指導者となり、つかの間の平和を甘受した。
そして30年経過したのが本作。
リヒターと、本作では既に亡くなっている黒人男性ジェームズの間に産まれた娘〈オビ〉は大人の女性に成長していた。ちなみに年老いたリヒターは月の女王となっていたが病にかかり余命幾ばくもない。生命の危険はリヒターだけでなく月の人たちも同様、月の資源は尽きる寸前。月面人たちは滅亡寸前であった。スティーブ・ジョブズiPhoneを神のように信奉し、iPhone以外の携帯電話を持っている信者を粛清する〈ジョブズ〉なるカルトのバカたちも勢力を拡大していた。
オビはある日、前作で倒したはずの月面ナチス総統ウド・キアー)を見つける。
彼はとある不思議なエネルギー物質を口にして延命してきたと言う。
そして彼の正体はレプティリアン(ヒト型爬虫類エイリアン)だった。
彼らレプティリアンは遥か昔の原始時代に地球にやってきて、映画「プロメテウス」みたいに人類を作り上げたという。
彼が言うには地球の北極と南極にある穴から入ると、地球内部の広大な空洞が有り、地球滅亡した現在でもその地下世界は健在。そしてレプティリアンが持ってきた神秘のエネルギー源が〈聖杯〉に入っており、それさえあれば月面人類は生き延びられる。神秘の物質を一欠片貰ったオビはリヒターに食わすと母は20歳くらい若返った。これならリヒターの病気も治せるし月面人滅亡も免れる。‥という事でオビは数人の仲間‥仲良しの怪力男、殆ど滅びてる地球からUFOで何とかやってきたロシア人の科学オタク青年、ジョブズ教信者達と共に地球に向かう。
だが地球の空洞に実在した地下都市アガルタは、アドルフ・ヒトラーを始めとしたドイツの秘密結社〈ヴリル協会〉が支配していた。
協会メンバーはヒトラーをボスとしてカリグラ、チンギス・カンスターリン毛沢東スターリン、人食い大統領アミン、ウルホ・ケッコネン、ビン・ラーディン、マーガレット・サッチャーウラジーミル・プーチン金正恩スティーブ・ジョブズマーク・ザッカーバーグ‥など、死んだと思われていた過去の独裁者や偉人や著名人が居た。そして彼らは全員レプティリアンだった。
「人類が地球の文明を発展させて来たのはレプティリアンの暗躍だった」という事。
ここまでならよくあるが、ジョブズザッカーバーグが居るというのが面白い。ちなみにザッカーバーグは「一日中、SNSや猫の動画とかに夢中にさせて地球人のオツムをバカにする」という役目。
前作で地球滅亡の口火を切ったアメリカ合衆国大統領(トランプではなくサラ・ペイリンをモデルにした女性キャラ)は、地球滅亡の責任を詰められて他のメンバーに食い殺される。
あと、アガルタには恐竜たちが生き残っており〈聖杯〉が発するエネルギーで小型の太陽が地下世界を照らしており、かつての地球の地表同様の美しい世界が広がっている。

 

 

 

‥と、ここまでで本編の後半くらいまでかかってた気がする。
前作もそうだが、このシリーズは設定こそがコアで、映画本編のストーリーや展開などは殆どおまけみたいなものなので、まぁこれでいい。
前作の〈生きていたナチス〉〈月の夜側に月面都市〉〈各文明国が宇宙戦艦を保有〉という設定に加えて本作では上記の〈レプティリアンが人類創生した〉〈地球空洞説〉〈小さな太陽がある地下世界〉〈恐竜戦車〉〈地下都市アガルタ〉〈秘密結社ヴリル協会〉〈生きていた独裁者〉など数々の都市伝説やオカルトが出てきて飽きさせない。
特に僕は最近、地球空洞説が大好きなので楽しかった。真偽の程はわからないが今の地球の科学では一定以上の地球内部がどうなっているかわからないので、本当に地下世界があってもおかしくないって言うじゃないですか。
映画の残り時間も少ないので、オビ達は襲いかかる独裁者達たちと恐竜戦車で争いながら聖杯をさっさとGET。地球に来たロシアUFOで月にさっさと帰る。普通の映画なら二時間くらいかけるところを10分で済ませてしまった。
せっかく出てきた独裁者や偉人達だが、出落ちでしかない彼らをじっくり描いている時間もないので、レプティリアンの本性丸出しでヨダレを垂らして襲いかかってくる只の蛮族でしかない。ジョブズも知性を全てどっかに落としたみたいでジョブズ教信者を踊り食いする。
早い話が、石川賢の「ゲッターロボ」みたいな話だ。
そんでアガルタ宇宙戦艦で地球を出発したヒトラーや恐竜たちは月を攻めてきた。
だが聖杯のレプティリアンのエネルギーを飲んで前作くらいの年齢にまで美しく若返ったリヒターはキャプテン・マーベルのように覚醒し、月面スーパー飛び蹴り一発でヒトラーと恐竜を瞬殺!やったぜ。だがウド・キアー演じる月面ナチス総統に銃殺された!泣きわめくオビを宇宙輸送船に押し込めて、月を捨て出航した月面人たち。追う月面ナチス総統。だがiPhoneの伏線を使って逆転勝利!(Appleを散々おちょくったがここでバランスを取った)
「どこへ行く?」「赤い星‥火星よ。80年後には着くから私たちの子供や孫に託しましょう」オビとロシア人青年は残りの人生を火星までの旅で平和に暮らしていく‥。
ラストショットは〈赤い星〉で誰でも想像する、続編を作ろうと思えば作れそうなオチがついて終わる。ゆるい映画だから人気キャラであるリヒターも若返ったことだし死なせなくてよかったのに。普通の映画なら「前の主人公は次世代に託して自己犠牲」が定番だが普通の映画じゃないので存命だったり生き返っても一向にかまわん。
低予算で恐らくCGに殆どの予算が使われていると思われる。敵のヴリル協会だが、兵士とかいっぱいいるはずなのに元大統領だった幹部たちやヒトラー自らが飛びかかってくる。まぁご愛嬌か。前作も本作もそうだがコメディでもいいけど、莫大な制作費をかけてシリアスな語り口で作られてたら、もっとハマれそうなのだが基本低予算のコメディだからね。全ての敵は一撃で絶命したりして‥とにかくすぐ死ぬ。「1コマ1ページごとにどんどん超展開が進んでいってしまう」という‥60年前のアメコミとか漫画をそのまま映画化したかのようだ。死さえもギャグとして扱うコメディ映画だとしても、せめて「マイティ・ソー:バトルロイヤル」みたいにシリアス要素もあれば‥と思ったが、あの境地まで達してる映画は他にないので無理な注文か。ロバート・ロドリゲスの映画にも言えるが出てくる登場人物全員が弱く見えるので「ヒトラーとかレプティリアン達も、俺が鉄パイプ持ってれば皆殺しに出来るんちゃうかな?」と思えてきてしまう。一発一発が軽いというかね。
さっきも言ったようにこのシリーズは「どうだい?この設定?面白いだろ」と見せつけてくる楽しい基本設定が映画のキモで、映画としての本編はオマケみたいなもんだ。だけどつまんないわけでもなくちゃんと作られてるけどね。
このシリーズで観れるものは他では観れないので独自の楽しさもある。
そして前作も本作も「特にもう一回観たりソフトを買う気には一切ならないが一回観る分には最後まで楽しめるよ」って感じだ。こう言うと貶してるようだが、そんな事はない。それと〈主人公が黒人女性〉〈ヒロインが男〉〈マッチョな怪力男が実はアレルギー持ちのゲイ〉などのキャラ設定は現代的だな、と思ったりもした。
海の家で食う焼きそば、みたいな、安いけど確実な面白さを持ったインディペンデント低予算SF映画。監督は、その範囲内で最大限に面白くしてると思う。だけど真っ赤な3作目はもういいかな‥(でもリヒター生き返るなら続き観たいかも)。

 

 

 

そんな感じでした

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映画『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』オフィシャルサイト

Iron Sky: The Coming Race (2019) - IMDb

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Amazon: アイアン・スカイ (竹書房映画文庫) ※前作のノベライズ

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「おとなの恋は、まわり道 (2018)」偏屈キアヌと屁理屈ウィノナが一時間半喋りつづける恋愛映画🧔🏻👩🏻‍🦰

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原題:Destination Wedding 監督&脚本:ヴィクター・レヴィン 製作国:アメリカ 上映時間:87分

 

 

 

キアヌ・リーヴスウィノナ・ライダーという「二人とも90年代を代表する元カリスマ的な俳優だったが私生活が荒れたり昔ほど大ヒット作に恵まれなかった二人だったが、どちらも近年、老若男女に大人気かつ大ヒット作に出演した」そんな2大スターの共演作。‥何か今、文章としてキャッチーだと思って「低迷してたが再ブレイクした2人」って雰囲気で書いたが、二人の出演作はずっと観てたし、あんまりそういう冷たい言い方はすべきではなかったかも。この2人のダブル主演での共演と言えばリチャード・リンクレイターフィリップ・K・ディックの小説を原作とした「スキャナー・ダークリー」とか、コッポラの「ドラキュラ」が思い浮かぶ。どっちも好きだわ。特にスキャナーはディック小説で一番好きだったし思い出深い。
そんな2人が本作ではアラフォー独身者を演じ、共通の知り合いである新郎のリゾート・ウェディングに参列して出逢うという話。
キアヌは仲の悪い新郎と異父兄弟で、ウィノナは新郎に少し前に捨てられたばかり。
2人は空港での初対面時からお互いを罵り合う。その後も席が偶然常に隣、という事が続きホテルの泊まる部屋まで隣で、disりあってるうちにコミュニケーションも増え、畑のような場所を歩いてるとネコ科の獣に出くわしたことでアドレナリンが分泌され切っ掛けとなったのか、その場でファックし、その後やがて惹かれ合う‥みたいな流れ。カジュアルにネタバレしてしまったが、大きな出来事は本編の90%は2人がずーっと喋っているだけというのが基本。その会話が本作のメインで後は全部舞台装置みたいなもんなので個人的にはネタバレしようがしまいが影響ない気がする。
で、台詞やキャラクターの性格というものは主演2人にしかなく、他の人物は台詞一言もなく画面の書き割りに過ぎない。二人の共通の知り合いだという〈新郎〉も一切喋ったりアップになったりもしない。2人芝居みたいなものか。
偏屈でめっちゃ喋るキアヌと屁理屈めっちゃ喋るウィノナが全編(ファックしてる時も)ずーっと喋ってる。ウディ・アレン映画のウディアレンの喋りを更に1.5倍増やした感じでちょっと台詞が多すぎる気もする。リンクレイターの「ウェイキング・ライフ」とか「スキャナーダークリー」みたいだ、幾ら何でも初対面の異性同士がこんなに喋りまくらんだろう、とは思うが映画にそんなツッコミしてもしょうがねー。きっと英語できる人が原語で観たら、もっと面白いのだろうが、そうじゃないので観終わる頃には何だか単純に疲れた。字幕だと台詞に対しての字幕がめちゃくちゃ少ない上に字幕が2人のトークに全く追いついてなくて若干ズレてる気もするので吹き替え推奨。
ウィノナ・ライダーは先週観た「ストレンジャー・シングス〈シーズン3〉」でも思ったが、相変わらず美人なんだけど近年急激に老けた気がする。長年の心労が響いたのか痩せすぎのせいか、あるいはその両方か。。個人的にはもう5kgくらい太って顔に丸みを帯びさせた方がいいと思うが大きなお世話だろう。そもそも女性の容姿について語る行為自体が何だか下卑ているのでこの話題はもうやめよう。
キアヌのおしゃべり偏屈野郎っていうこのキャラは何だか新鮮でいいなと思った。彼の過去に何があったのか‥?というか40代なので他人と深く関わった後の面倒臭さ、もしくは「人間は殆どの出会った人とは末永く付き合わない」そして、そうやって知り合った他人と離れる時の面白くもない空気を嫌い「だったら深く関わらなきゃいいだろう」と、他人に心を開かなくなったばかりか「いま君に心を開かないようにしている」と会話してる最中のウィノナに直接言いさえもする男。僕もアラサーの時は友達何人出来るかなって感じの性格だったのにも関わらずアラフォーの今では、知り合う前から縁の切れる時を想像してしまい、何だか何か始まる前に既に面倒くさくなってしまう‥そんな感じの性格になってしまった40代独身男性なのでおのずと(僭越ながら)キアヌのキャラに共感して観ていた。すみませんね‥恐縮です。「気まずさ」というのは実際気まずい相手の前に行けば数十秒や僅かな会話で霧散して後は普通に話せる‥というのも知ってるのだが何かもう「気まずい」という数秒間がもう面倒くさいと感じるようになってしまった。「何か、もう他人とか、それぞれ死ぬまでにあと一回づつ会えればそれでいいか」といった状態になってしまった。まぁこの状態も誰か知ってる人が死んでハッとして反省するなどの切っ掛けがあれば‥変わるのだろう。なかなか我ながら死人の考えみたいなヤバい状態にある気がする。
話を映画に戻そう。
このキアヌのキャラはそんな感じで自分と他人‥ウィノナの間にシャッターを下ろしたままで「君には全く興味ない」とか言って口喧嘩ばかり言ってる癖に、いざウィノナがピンチになったりすると「身体が勝手に動いて」彼女を助けたりする。これではウィノナのキャラがキアヌのキャラに好意を抱くのも無理ないな。そもそも本体がキアヌだしな。。いや、どうしようもなく身体が勝手に助けてしまうのだから最初からキアヌの方がウィノナを好きだったのかな。そもそも空港や機内で無視し合うわけでもなく延々と口喧嘩やり合ってる、という状態が既にSEXみたいなもんだし、2人の色んな動作や癖がシンクロしていた映画冒頭から惹かれ合ってたと観る方が自然か。
2人も疑っていたが、共通の知り合いだという嫌な新郎がわざと2人を隣り合わせ続けてくっつけたのかも知れない。また2人は新郎のことを「嫌な奴」だと言ってはいるが言ってるのは偏屈なキアヌと捨てられたウィノナだけだし「別に新郎は嫌な奴じゃないのでは?」という気もしてきた。答えが提示されなくて想像する余地がある方が面白いですね。提示されてたら「ナルホド」とか言って納得してそれで終わりだからな。具体的な答えがないという事を洞窟に喩えると、そこで大声(疑問)を出せば洞窟内に響く、そしてその響き(自分の考え)が跳ね返って帰ってきて「おもしろいね」と感じたりする。これが答えのない面白さではないだろうか。
ラストのキアヌが、今までのこのキャラと全く違う真摯な表情、ウィノナもまた往年の可愛らしい表情、2人がこの映画で初めてそれを見せるのはラストだけ。このラストは丁度いい爽やかさがあった。
このラスト観たら「ふたりとも映画冒頭から、このラスト数秒の素直なキャラだったら話はもっと早く、またこんな膨大な台詞量もいらなかったのでは?」と思ったが「これだけの遠回りやトラブルや偶然性(もしくは仕組まれ)がない限りアラフォー独身同士の男女は付き合い始めない」という事が言いたかったのだろうと思った。SEXの始まりの時お互い止める気なんてないのに止めようとしたりSEX中にずーっと喋ってるのも2人が付き合い出す流れと一緒だ。「アラフォーならではの挙動」とさっき書いた気がしたがこうしてみると何だか思春期の子にも思えてきた。年寄りが見たら確実に「可愛い2人」とか「ガキみたいな2人」とも思ったりしそうだ。中年というのは思春期とそう変わらないのかもな‥。劇中でキアヌ氏も「人は死ぬまで思春期」とか言ってたしな。本作は、2人と一緒にリゾート地を歩いてワイン飲んでる気持ちにもなれて楽しめた。以前から思ってたがキアヌがバイクで各国を転々とするというノーマン・リーダスがHuluでやってた配信番組みたいな『キアヌさんぽ』というコンテンツがあったらいいのになと思った。
「結局この映画の内容は、この何ともダサい邦題の通りだったな」と思わされてしまうのが何だか癪だが実際その通りだった。いや、だけど本作を観る人の多くは「キアヌとウィノナのこじらせアラフォー恋愛映画?へー観てみるか」と思って観始めるはずなので、こういった結末を示唆するダサい邦題はやはりダサいと思う。普通に「リゾート・ウェディング (2018)」でよかったんじゃないか?「ウェディング」がタイトルに入ってれば恋愛ものだとわかるだろう。それとも、この「こじらせた年長者の遠回り恋愛を示唆する邦題」じゃないと手に取らない奴が多いと思ったのだろうか?そんな奴はいやだね‥。だが映画会社の邦題を付ける人も当然、変な邦題というのは言われなくてもわかってるはずだろう。邦題付ける時に、マーケティングによる前例に習わず自分ひとりが責任取る覚悟で自由な邦題つけてたら会社の人間としてやっていけなさそうだし自然と似たような変な邦題が増えるんじゃないかな。‥などと、そこまで変過ぎる邦題でもない本作の邦題について内容ゼロなのに字数を取りすぎた。結局最初に言った「だせー邦題」という一言で話は既に終わっていたのだが本作の内容に習って、最初にわかっていた結論を後回しにして遠回りしてみた。だが特に気が利いてるわけでも面白くもないダサい結果になった。俺にお似合いだな?
それにしても気がついたら最近ヒーローとかバケモノが出てくる映画や爆発が起こるような映画ばかり観てたので(最近というか10代の時からずっとだが)、こうやって喋ってばかりの恋愛映画ひさびさに観て新鮮だった。おれの最近の映画鑑賞、バランスを欠いてたなと思った。何事もバランスよくしないと。しかも40代のこじらせた感じの男女の恋愛というのも自分に合ってたし、主演の2人が自分より歳上というのもいい。映画じゃなくて、もっと他に重要なことがあるだろう、ともう一人の自分が問いかけているような気もするが、それは明日考えることにしよう。

 

 

そんな感じでした

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Destination Wedding (2018) - IMDb

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『ストレンジャー・シングス 未知の世界』〈シーズン3〉(2019) 全8話/このシーズンが一番好き。アイス屋チームがお気に入り🍨

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原題:Stranger Things <Season.3> 原案&製作総指揮:マット・ダファー。ロス・ダファー 製作総指揮:ショーン・レヴィほか 制作&放映局:Netflix 製作国:アメリカ 放映時間:各話約50分、全8話

 

 

🍨1980年代のインディアナ州の架空の町〈ホーキンス〉を舞台に、メインキャストの殆どが子供やティーンその保護者などで、彼ら彼女らが友情や恋などのコミュニケーションを展開しつつ、異界のモンスターや超自然現象を研究する政府の研究所と闘うNetflixを代表する大人気ドラマ。
「ナイト・ミュージアム」シリーズなどを手がけたショーン・レヴィ制作で、イケメンのオタク双子監督ダファー兄弟が、少年時代に影響されたスティーブン・キング作品や「グーニーズ」、スティーブン・スピルバーグジョン・カーペンターなどを始めとするホラーやSFをオマージュした描写が多く、また80年代のポップカルチャーなどもふんだんに盛り込まれている。
あと子供が主人公で彼らの友情を描いているものの、ジュブナイルものやキッズ向けムービーではなく大人向け的な感じで進む。具体的にどこがそうなのか言うと、良い行いをした善人だろうと必然性がなかろうと死ぬ時は死ぬし決して生き返らないし、死の描写も結構むごい(シーズン1の冒頭でエルを拾って飯を食わせてくれたオッサンの死が未だに悲しい)。

🍦僕もシーズン1、2観てて、それなりに楽しんで製作者や出演者やドラマにも好感を抱いたんだが「なぜだか皆がウケてるほど面白く感じないな‥」と思った。
途中でコーヒー飲んだりトイレ行ったりという小休止はあったが全話7時間を一本の長い映画でも観るようにさらっと一気観できた(この分だとアベンジャーズが8時間くらいあっても休憩時間あればいけるなと思った)。
だけどシーズン1、2、3どれも似た感じなのに、何で1、2はイマイチで3は面白かったんだろう。何だか1と2は展開がやたらトロく感じたしSキングとかスピルバーグとかジョン・カーペンターとか80年代文化とか僕も勿論直撃世代で好きなのだが、それを衒いもなく「僕たちはこれが大好き」と押し出されすぎてて、そうなると別に嫌じゃないんだけど何だか接待されてるようで照れくさく感じるからその所為かも。スピルバーグの「レディ・プレイヤー・ワン」とかも映画そのものは面白かったけど「いや、俺もそれらのキャラやカルチャーは好きだけど、いいって‥こんなに出さんでも‥」と引いてしまった。製作者に好感は持つけど、そういう「自分が好きだった影響されたカルチャーをオマージュしまくった映画」というのは何だか気恥ずかしくなる。といってもそれは個人的な趣味嗜好なので他人に「ストレンジャーシングスいいよね」と言われたら「いいね」と答えるし、友達の子供に勧めるのに本作はピッタリなので勧めたりはする。
むしろシーズン2の時は本編よりも、その後に観たダファー兄弟やショーンと出演者による座談会「ストレンジャー・シングス 大解剖 」の方を何度も観た(これ今回もやってほしかった)。シーズン2は本編よりこの座談会の方が面白く、本編はながら観でさらっと一回観ただけだが何故か大解剖の方は何度も観た。
そんな感じで今までは乘りきれなかったが今回はバッチリはまった。
何で今回いけたのか?過去のシリーズでは独身中年男性の俺が感情移入しにくい幼すぎる子供達がメインだったが今回は彼ら彼女らも色気づき始めた中学生になって面白くなったからかな、しかも今回は子供達のドラマは現状維持路線で年長者キャラの活躍の方が多かったというのもあるかも。
ネタバレは、そこそこある。

 

 

🍨🍦

 

 

1985年インディアナ州の架空の田舎町ホーキンス
劇中、ホーキンスにはモール(デパートや映画館やレストランなどが一緒くたに内包された商業施設)が経てられ、そこがメインの舞台の一つになる。
アメリカではモール文化最盛期‥の時だっけ?人々は連日モールに押しかけ、それによって個人商店が閉店に追い込まれホーキンス市民は悪徳市長のところにデモに行っている。ジョイスコンビニエンスストアを連日閑散としており、モールの映画館では「バック・トゥ・ザ・フューチャー (1985)」「死霊のえじき (1985)」などが上映されている。
劇中の学校は夏休み。主人公たちは毎日遊びに忙しい。ジョナサン達年長組は高校を卒業したらしくジョナサン&ナンシーは新聞社に入社。スティーブはモールのアイスクリーム屋でバイトしている。
前回まではホーキンスに経てられた合衆国政府の研究所が敵だったが、今回は当時冷戦中だったソ連の巨大な超自然現象研究施設がホーキンスのモール地下に建造されており、またそれをサポートするホーキンスの悪徳市長も含めた彼らが敵となる。当時のアメリカ映画も大抵「何か陰謀を企ててるに違いない」ソ連アメリカの敵だった。当時の、その風潮を本作も反映している。だから本作のソ連人は一人を除いて全員が「ただただ単純に悪い」というキャラクターしか与えられていない、エイリアンの侵略と同じだ。だが当時のアメリカのエンタメ作品も大抵そうだった。では「それではロシア人は悪鬼羅刹扱いか?」という問題があるが、ロシア人の人間ドラマは後述するアレクセイというロシア人科学者ひとりによってちゃんと描かれている。モールを建てた悪徳市長はソ連と結託しており、その悪徳市長が強行して建てたモールの下にソ連の怪しい研究所が隠されている。メタファーというのも恥ずかしいわかり易さ。そしてモールによってホーキンスの善良な人々の生活は脅かされておりソ連の研究所によって世界の危機が訪れようとしている。つまり「モールのある地をぶっ潰せばいい」と、子供が観てもわかりやすい構図。
前回エルが超能力で閉じた異界〈裏の世界〉への入り口を彼らが大規模な装置でこじあけてしまった事で、人間を操る巨大モンスター〈マインド・フレイヤー〉がこっちの世界に来てしまった。過去2回世界を救った子供や大人たち‥彼らメインキャラが再び活躍して〈裏の世界〉へのゲートを閉じてモンスターを退治する‥それと同時に彼らのハートフル青春ドラマが繰り広げられる‥というのが以前と同じく今回の展開。
シーズン通してのストーリー構成も今までのものを踏襲しており、彼らメインキャラが4箇所の別の場所でそれぞれ町の異変を感じ、その4つのチームで別個に調査していくうちに巨大な陰謀や〈裏の世界〉からの侵略に気づき、ラストに全員がダスティンの緊急収集司令〈コード・レッド〉によりアッセンブルして奴らをぶっ潰す!というラストバトルに突入する‥という流れ。
大人も子供も楽しめる「わかりやすいが子供向けではない」ドラマ。
今回は、その大きく別けた3つのチームと敵による、4つに分けたチームごとに感想書くことにしよう。

 

 

 

〈エルのいる主人公子供チーム〉と〈ジョナサン&ナンシー〉
🍦成長した少年少女は、半ズボンとか子供っぽい格好してるから小学生のままなのかと思ったけど中学生くらいらしい、14歳くらいか? 女子はともかく男子が全員めっちゃデカくなってるのに半ズボン履いてるから何だか子供のコスプレしてるようにも見える。
かつて〈イレブン〉と呼ばれた超能力少女エル(ミリー・ボビー・ブラウン)は超能力を使いこなしており今回はバンバン行使しまくる。演じてるミリー・ボビー・ブラウン通称MBBは、今やかなりの大物スターになった。僕も彼女のファンだけど今回、仲間のピンチに現れてパワーを使う場面はスーパーヒーローみたいでめちゃくちゃカッコいい。だが酷使の結果が終盤出てくる。いつになるかわからないシーズン4での彼女は人間的成長とパワーの復活がテーマになるんだろう。
前回シーズン2では、そのエルとマイク、黒人少年ルーカスと転校生少女マックス、〈裏の世界〉に連れされられるが皆に助けられた少年ウィルと、その兄ジョナサンとマイクの姉ナンシーなど、カップルが三組も誕生した。
シーズン2つまたいでカップルが誕生する様は勿論ドラマチックだが、今回は3組とも「その恋愛の現状維持」というドラマが生まれにくい難しい展開。
マイクとエルは部屋にこもって毎日キスばかりしているのでエルの保護者であるホッパー署長が怒って二人を軽く引き離す。微笑ましい展開なのだが、まだ子供であるマイクにとっては一大事、しかもまだガキだから女子に対して上手く立ち回れないがためにエルとの間に不和が生じる。エルは同じくマックスに相談したら、マックスが異常に女子っぽいナイトっぷりを発揮し少女特有の強力なガール連帯が出来上がり男子達は戦々恐々とする。そして鈍感なマックスは自分より少しマシな程度のルーカスに相談しても名案は浮かばず、マイクとエルの仲がどんどんギクシャクしていってしまう。はっきり言って誰も悪くないし何の問題もないのに、ただ子供同士ってだけで上手くいかなくなってしまうというのが微笑ましい。大事件は起こらず現状維持だが何とかして人間ドラマを作るぞという工夫の結果が見れるのも良い。
またエルは別に「大いなる力には大いなる責任が伴う」ことを知るヒーローって訳でもなんでもない只の子供なので、超能力でイタズラしまくったり、痴話喧嘩中のマイクが遠くで何言ってるかをサイコダイバー能力で盗聴したりという「それ、やっていいんか?」って事を平気でする感じが如何にも子供って感じで良い(マイクにも「それルール違反だよ」と言われる)。ところでエルのサイコダイブしてる時の下が液体の真っ黒い空間って「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」から拝借したんだろうか?よくわからんがモダンでカッコいいよな。それにしてもモールでマックスとファッションショーしてる楽しい場面での、エルの気の利いた表情や演技を観て「この数年でエルも俗世間を知ったんだな」と思ったら、すぐ後で「え‥おにぎり?おにぎりって何?」みたいに野生の少女みたいな事言うのも可笑しかった。そうなると「ファッションショーでの気の利いた表情とか、これエルじゃなくて素のMBBやろ!」と思えてくるが、それはそれでストレンジャーシングスの仲良し現場が頭に浮かんできて「ハイテンションで撮影してる間にエルがただのMBBになっちゃったんだな」と思えて楽しい。
ダスティンはキャンプで「スージーという彼女が出来た」と言うが誰にも信じてもらえず、彼は後半までスティーブのところに行って彼とチームを組む(後述)
グループの中で一番子供っぽいウィルは、今までどおり「ダンジョンズ&ドラゴン」で仲間と遊びたいのだが、マイクとルーカスは自分たちの恋愛にかかりきりで相手してくれない。今までのように裏の世界に閉じ込められたりモンスターに取り憑かれたりはせず今回のウィルの役割は「マインド・フレイヤーがこの町に来ている‥?」という異変を察知したり「永遠に仲間とゲームしたりゴーストバスターズごっこして楽しめると思っていたけど自分が思ってた楽しい少年時代は終わりそう‥というか実はもう終わってて自分だけ取り残されてた」という現実に気がついてしまい自我崩壊して号泣する場面は今までより胸に来るものがあった。というのもウィルは今まで助けられるヒロインみたいな役割が多かったけど、この少年期の終わりのくだりは主体性が感じられるからかもしれない。この「いつまでも皆と遊んでいたかった‥」という切実な訴えは最終回でホッパーがエルに語る内容にも呼応しているので、実は少年期の終わりについてのくだりなんじゃなくて「変化する環境と共に変化するコミュニケーション」について言いたかったんだろうな。僕はいつも大体同じ遊びを永遠にしたかったけど皆は大人になって取り残され続ける側なのでウィルやホッパーの気持ちはよくわかる。
🍨前回恋人同士になった、ウィルの兄ジョナサンとマイクの姉ナンシー
この人達は弟といる場面が極端に少ないので彼らの兄や姉であるという事をよく忘れる。彼らはカップルそろって地元の新聞社でジョナサンはカメラマン、ナンシーは新人記者‥とは名ばかりでお茶くみばかりさせられている。女性蔑視の世の中、30年前は更にそれが激しかったことを反映している。トランプ似のオッサンのからかい方が異常に腹立つ。彼らの鼻を明かしてやろうと思ったナンシーはジョナサンを引っ張ってホーキンスに起きた「ネズミの異変」について独自に取材を始め、やがて何かを掴む。
ジョナサンは今まで通り頼りになるし優しいのだが、貧困というリアルを抱えているので「二人揃って新聞社をクビ」というリアルに打ちのめされ、こうなるとずっと味方してきたナンシーの味方を出来なくなり一時、不協和音が流れる。
ジョナサンとも喧嘩してしまい味方が居なくなったナンシー、すると、それまで暇を持て余した専業主婦でしかなかったナンシーとマイクのママがナンシーを慰める場面は感動的。ママがどういう人生を送ってきたのかも、言わなくてもわかるつくり。ナンシー母娘はセクハラやパワハラに悩まされるアメリカ女性の象徴のような役割を与えられている。
関係ないけどハリウッド女優って肉付きよかったり筋トレでマッチョな女性が多いせいか、このナンシーを演じるナタリア・ダイアーは少女漫画みたいに異常に華奢すぎる身体つきをしていて、そんな女優がアメリカ映画に出てくることは滅多にないので逆に目立つなぁと思った。そんな細い彼女がショットガンを連射する姿もかっこいい。
ジョナサンとナンシーは、割と前回までで成長しきった感じなので今回はベテランヒーローみたいに活躍するし病院でのモンスターとの対決もカッコいい。あまりに成長しきったのでもう次からは何か事件に巻き込まれない限り殆ど出てこない気もする。出てくるとしたらホッパー&ジョイスのような頼れる大人としての役割か、後は破局か結婚しかない。関係ないけどジョナサンとナンシーを演じる二人は現実世界でも付き合っている。
🍦🍨‥と、いう感じで本作のメインキャラの中でも特に主人公ポジションだった「エルがいる子供チーム」と「ジョナサンとナンシー」は、今回も一応メイン主人公ではあるものの彼らは皆、前回までに色々やりきって成長しきったため「現状維持」って感じで他の躍進するサブキャラ達と比べると果たす役割も存在感も薄い。むしろ、この主人公チームは今回サブキャラに回った印象。
ちなみにエルがシーズン2で世話になった幻影を作り出す超能力少女カリは今回出てこない。シーズン1-2はあまり乗れなかったがエルがカリと過ごしてパンクスタイルになる回だけ凄く好きだった。だがその回だけimdbなど見てみると低評価で人気がない。その回だけ浮いていてメインストーリーから外れているせいかもしれない。俺は好き。

 

 

 

〈アイスクリーム屋チーム〉
🍦仲間たちは自分の恋愛に夢中だし、キャンプで知り合った実在するのかしないのかわからない恋人スージーの存在を信じてもらえないダスティンは前回、仲良くなった歳上の友人スティーブのところに行く。
ティーは、シーズン1ではジョナサンをいじめるナンシーの元彼。いわゆる悪役だったが敗北してからは改心するがナンシーにも振られ、流れでダスティンと仲良くなった。今では完全にナイスガイになった。
そんなスティーブはモールのアイスクリーム屋で働いている。当然、子供達がたかりに来る。高校時代は「学園のキング」と言われるほどモテていた彼が大学に落ちただけで全くモテなくなっているのが何か残酷だ。
同僚はユマ・サーマンイーサン・ホークの娘マヤ・ホークが演じる少女ロビン
彼女はスティーブ、ナンシー、ジョナサンらと同級生だったという新キャラ。
ダスティンはユタ州に住むという天才少女スージーと〈セレブロ〉という「X-MEN」から名前を取った装置(というかただのアマチュア無線)でやり取りしようとしてたらロシア語の暗号通信を傍受してしまう。
それを語学に長けたロビンに問いてもらい調査を進めるうち、何とモールのすぐ近くにソ連の秘密地下研究所がある事を発見する。
アイスの試供品目当てに連日訪れていたルーカスの妹エリカも加わり、彼ら彼女らはソ連の秘密地下研究所に潜入する事になる。
今回、僕はこの「アイスクリーム屋の一行」のパートが一番面白かった。
アメリカの田舎町の地下にソ連の秘密研究所があってソ連の恐ろしい兵士がウロウロしており、異界へのゲートを開ける装置が動いている」という破天荒な設定、そして子供がそこに潜入→捕縛されて拷問に合う→ラリった状態で脱出→「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を観た後でスティーブとロビンが心の内を語り合う、という流れが本当に好き。

🍨そういえば新キャラ、ロビンのキャラは最初つかみにくかった。
彼女は美人で優しく面白いのだが、どうやら80年代ジョックスのスティーブにとっては演劇部にいたサブカル少女などダサいだけなので最初ロビンには目もくれない(後でダスティンに「もう高校生じゃないんだからダサいとかダサくないとか幼稚な理由で判断するのはやめたら?」と言われるのが可笑しい)。知識に長けたロビンはソ連の暗号を解き研究所への入り口を発見する。突然現れた新キャラがいきなり色んな事して活躍しまくるが何考えてるのか、どんな娘なのかよくわからない‥何か便利キャラだなぁと普段なら批判しそうなキャラではあるが、このロビンというキャラは凄く素敵な女の子だし、演じてるマヤ・ホークも初めて見たが演技も上手で魅力的。だから速攻好きになった(将来スカヨハみたいになりそう)。内面がわからないキャラだったが研究所脱出後に自分の心の内をスティーブに色々と話すので彼女がどういう子なのかは終盤やっとわかる。現代的なテーマを持ったマイノリティキャラだった(その問題が今重要なのではなくて最近よく描かれるようになった、という意味。念の為)。スティーブの「‥え?だって君も彼女も女の子だろ?」という返答は80年代っぽいし、それを素直に受け止める態度もスティーブの良い奴っぷりをよく表現できてた。その話をする直前にスティーブに告白された時の複雑な表情の演技がめちゃくちゃ良かった。
ルーカスの妹エリカは過去のチョイ出演での毒舌が好評だったのでレギュラーに昇格した感じ。今回も活躍する。オタクに近親憎悪のような感情を抱いているが政治や資本主義経済がめっちゃ好きなのでエリカもある意味オタクだった‥というキャラで面白い。
そしてダスティンが「いる」と言い張ってる「スージーというガールフレンドは本当に居るのか?」という問題は最終回で明らかになる。ダスティンはセレブロでスージーからソ連研究所の暗号=プランク定数を聞き出すのが最終ミッション。

 

 

 

〈大人チーム〉
🍦🍨いつも大体ョナサン&ウィルを女手一つで育てているシングルマザー、ジョイスウィノナ・ライダー)が超自然現象の片鱗に気づいて調査していくのだが、今回もまたジョイスが「家と職場、双方で冷蔵庫に付けてたマグネットが落ちた」という小さな異変をきっかけに調査を始める。だが「磁石が冷蔵庫から取れた」ってだけで異常に執着し、化学教師クラーク先生の家を訪ねてディスカッションした結果「どうやら私たちの町に巨大な科学実験施設がある!」という結論を導き出すのが凄い。まぁ真実なんだけど、いつものようにマグネットに執着する様、マグネットが取れただけでそんな結論に行き着く様などが、どう見ても狂女。いつもそうだが、この序盤の「ウィノナ・ライダーが狂った!」という感じが可笑しい。
ジョイスに惚れているエルの保護者でもあるホーキンス警察署の署長ホッパー。彼は愛娘エルとマイクがくっついて毎日キスばかりしてる事に我慢ならない。そしてジョイスと共にホーキンスに起きた異変を探っていくうちにソ連が放ったターミネーターのようなスーパーソルジャーと死闘を繰り広げる。
ホッパーとジョイスは、ソ連の科学者アレクセイを捕まえて同行させるが言葉が通じない。そこで大距離を移動しながらロシア語が出来る、陰謀論者の変わり者マレーの元に行く(映画だと外国人も全員イングリッシュ話せて言葉が通じちゃう事が多いので、この「ロシア人を捕まえたが言葉が通じないのでロシア語できる奴のところに行く」という展開は新鮮だった)。このアレクセイが町のお祭りに行き、陰謀論者であるマレーは「アメリカの売店は全部不正がある!」と言うが、景品のウサギをGETして「マレー!不正はなかったよ!( ´^ヮ^`)」という笑顔が名場面だった。
マレーはシーズン2から出てきたキャラで陰謀論者のハゲだ。変人の隠者だが常識もあって空気も読めるコミュニケーション能力にも長けており色んな事に詳しいという理想的な隠者。詳しいことは忘れたが前回は確か「ホーキンス研究所では怪しい実験をしてる」と騒いでいて狂人っぽいのでホッパーにあしらわれていたがジョナサンとナンシーを助けてくれた。「駅前などによくいる少し頭がおかしそうな人がわめいている事が全部本当だった」という可笑しさを表現したキャラとも言える。陰謀論者なので当然、連戦真っ只中のソ連についても詳しい。前回、シャイでくっつきそうでくっつかなかったジョナサンとナンシーにも施したが今回はもちろん「ホッパーとジョイスも実は惹かれ合ってるのにガキみたいに口喧嘩している」と指摘する。このドラマの中の役割でいうと隠者というより賢者って感じの役割を演じる、ハゲのオッサンが演じるには最高級のおいしいキャラ。同じく変人の中年である俺もマレーのことは前回から好きだったが今回ついにメインキャラ入りして嬉しかった(同じくらい人気のあるナイスおじさんであるクラーク先生は今回メインキャラ入りするかと思ったが、しなくて残念。シーズン4に期待)
そんな感じで大人チームは大きく移動しながら、やがてモールで子供達とアッセンブルし、アイスクリーム屋チームが調べ上げた地図とジョナサンがスージーから秘密の暗号を聞き出したメモを持ってソ連の地下巨大超常現象研究所へ潜入して「裏の世界へのゲートをこじ開けている巨大装置」に破壊工作を施すため侵入する。
 

 


〈ビリーとマインド・フレイヤー〉とラストバトル
🍦そうこうしつつモールに結集した3チームは一つになり、そして再び最終回のラストバトルで「ダスティンが山の頂上でセレブロにて暗号を入手」「大人組がソ連の研究所に再侵入して装置を破壊」「モールで留守番してた子らが成長したマインド・フレイヤーを迎え討つハメになる」という3つのミッションが行われる。
ところで俺が聞き逃したのかもしれないがソ連は異界の扉を開けてどうするつもりだったんだっけ?モンスターの軍事利用?自分たちも死ぬんじゃないのか?
前回シーズン2で、いじめっ子スティーブが良い奴になってしまったので代わりに現れた新いじめっ子こと、マックスの不良の兄ビリー
前回、妹のマックスにやられた彼。今回、相変わらずワイルドではあるものの特に悪事はせず真面目に働いてるし目上にも礼儀正しい。スティーブのように「良い奴になった」とまでは言わないが、ただワイルドでセクシーなだけの男になっている。
彼はプールの監視員をしており、町の熟女(マイクのオカンまで)がビリーのマッチョボディ目当てにプールサイドに集まっており、監視員が女子からビリーに交代するとメイクを直した熟女「ショータ~イム‥!」とか言うのがたまらん面白さ(こいつらが永遠にこんなアホな時間を過ごせたらいいのにと思う面白さ)。
ソ連の研究によってこの世に来てしまった、人を操るモンスター〈マインド・フレイヤ〉。ビリーはそいつにボディスナッチされてイーヴィル・ビリーと化せられて操られてしまう。マインド・フレイヤーはビリーを使役して誘拐した町の人々を次々と食って肉の身体を得てパワーを上げ、より盤石に現世に存在して地球を支配しようとする。
このビリー、面構えが良すぎて好きな悪役だったし「スティーブが良いやつになったからビリーまで良いやつになったら陳腐だからそれはない。ではどうするんだろう?」と注目していたらボディ・スナッチャー展開とはね。
終盤ではエルのサイコダイバーによってビリーのトラウマが掘り起こされる(こないだ観た「機動戦士ガンダムNT」のゾルタンと似た流れ)。それを経てのラストバトル、だがエルはパワーを酷使しすぎてパワーが使えない只の子供になっている。そこでエルが先程のビリーのトラウマを思い出したことで可哀想なビリーにも決着がつく。ビリーは最初と最後しか正気じゃなかったけどスティーブとは違う、良い着地じゃないでしょうか?しかも今シーズンのエルはずっと兵器のようにパワーを酷使しまくってて、その結果ラストバトルでパワー使えないけどエルの人柄によって解決した‥というのも「パワーが無くても彼女は、エルという人柄がそもそも凄いんだ」という「スーパーヒーローはパワーの在る無しじゃなくて、その人格によってヒーローになっている」というアメコミヒーロー哲学にも通じる決着だしエルにとっても良かった。
ビリーはいい面構えなのでMCUに欲しい。ダケン役とかどう?(ウルヴァリンの息子)

🍨🍦そんで色々あって終わる。
しかし終わる寸前までずっと明るい感じで進んでたので、まさかこんなウェットな終わり方するとは思わなかった。ホッパーの手紙の「子供の成長は嬉しいけど俺はそれが怖い‥変わってほしくない‥」というのが正直過ぎて胸を打たれるものがあります。「暗い洞窟から出て森にワッフルを置いたら、お前が人生に飛び込んできた」「俺から遠く離れていくようで‥。夜のボードゲームが恋しい‥笑。朝に作った三段重ねのスペシャルワッフルも。並んで西部劇を観て居眠りしたよな‥」とか、やばい!いかついが繊細な精神を持ったオッサンが思ってる事を子供に向けて全部言ったらやばい。まぁこの手紙は恐らく一生誰にも読ませないつもりで書いてるんだけどね。「痛みはいいもんだ」などと人生の苦痛や困難をも肯定しているのとか好き。
とにかく面白かったですね。
特に文句もない‥、文句ってほどじゃないけどラストバトル、全キャラに均等に活躍を振り分けた結果ちょっと、くどかった気もした。少しだけ。
それとメインキャラで何人か戦死者が出るがビリーじゃない方の人の場合「ここで死ななきゃいかんかな?」と少し疑問だった。だが一回で終わりではなく長期ドラマとしては無駄に生き残って「ただ居るだけの町の人」になってキャラとしての死を迎えるくらいなら実際に見せ場を貰って死ぬ方が幸せかもしれない。しかし犠牲者が毎回すごく多いのも悲しいな。今回はネズミの異常を知らせてくれた大柄のおばあさんが死んだのが悲しかった。

個人的に今回の気に入りキャラはアイスクリーム屋チーム(特にロビン)、あとマレー&アレクセイ、ビリー、ジョナサン&ナンシーのブロブ戦などがお気に入りでした。
なんとなく、シーズン4やるならかなり何年も先の、メインの子供達が高校生になった頃を描く気がする。次のメインは‥とりあえずエルのパワー失調がストーリーのメインになるのは間違いない。だけど、さすがに色々やりきった感あるし何かやる事あるかな?
とりあえず、まだ科学のクラーク先生のメインキャラ入りだけ叶えられてなかった。
クラーク先生とマレーのタッグを観るまで成仏できん。それにソ連との闘いもまだ終わっていない。
そういえば今回のクライマックスに「ネバー・エンディング・ストーリー(終わりのない物語)」主題歌がフューチャーされたから、あれは「今後もずーっとエルや子供達の成長を見せ続けるぞ!」って意思表示なのかもしれないね。「ハリーポッター」や「北の国から」みたいな長期シリーズなのかもしれんね。

 

 

 

そんな感じでした

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『ストレンジャー・シングス 未知の世界』 Netflix (ネットフリックス) 公式サイトストレンジャー・シングス 大解剖 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト ※シーズン2についてのみ
Stranger Things (TV Series 2016– ) - IMDb

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『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)/冒頭からラストまで面白くないところがなく全編面白い🕷

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原題:Spider-Man: Far from Home 監督:ジョン・ワッツ 制作:ケヴィン・ファイギ
制作スタジオ:MARVELスタジオ 原作:スタン・リー。スティーヴ・ディッコ

製作国:アメリカ 上映時間:135分
シリーズ:マーベル・シネマティック・ユニバース。「スパイダーマン:ホーム」シリーズ

 

 

 

MCUの23作目。フェイズ3の11作目。ここまでの全23作品からなる「インフィニティ・サーガ」のエピローグとなるのが本作。この、11年間かけて作られた全23作は〈ウェーブ1〉という括りで呼ばれる。そして本作は当然、ウェーブ1最終作でもある。
80%くらいネタバレあり。
それと、今回は、いつもにも増して無駄に長いです。

 

 🕷 🕷 🕷

 

インフィニティサーガのクライマックスだった映画史上最大のクロスオーバー作品だった前作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の後の話。
アベンジャーズたちスーパーヒーロー達は、死闘の末サノスを倒した。
しかしその死闘の末、アベンジャーズはアイアンマンとブラックウィドウとヴィジョンを失い、キャプテンアメリカも引退した。地球は、彼らアベンジャーを失った喪失感からまだ癒えずにいた。
そして本作の主人公スパイダーマンであるピーター・パーカーはアイアンマンを尊敬し師事していたため本作中では「世界にはアイアンマン/トニーがもう居ない」という香りが全編に充満している。ピーターが彼が移動する先々では常にトニーを思い出させる出来事が起こり、背景でもトニー追悼ポスターや追悼アートが世界のあちこちに配置されている(それはピーターは本作でいつも通り明るく振る舞っているが、彼の頭の中は「トニーの不在による寂しさ」でいっぱいであることを表現している)。
また「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」で起きたサノスの〈指パッチン〉によって全世界の半数の人々は消滅したが、アベンジャーズたちの活躍で5年後、現世に帰還した。
本作では都合よく、ピーター・パーカーやメイおばさん、ピーターのクラスメートやハリントン先生、登場人物の殆どが消えていたため彼らは5年後の世界でも歳を取っていない(当然、消えなかった生徒はとっくに卒業している)。そしてピーター達はヨーロッパ旅行へ出かける。
ピーターは最愛の師トニーを失った喪失感からか〈親愛なる隣人スパイダーマン〉としてのスーパーヒーロー活動よりも、MJやネッドたちとのヨーロッパ旅行を優先したがっている。
だがピーター達が行くヨーロッパの国々で、水や火や雷や土など四大元素から成るモンスター、通称〈エレメンタルズ〉に遭遇する。エレメンタルズを率先して次々と倒すのはスーパーパワーを持った見覚えのないヒーロー、ミステリオ/クエンティン・ベック(ジェイク・ギレンホール)だった。
ピーターを探していたニック・フューリーの説明によると、ミステリオは自分の世界に居たエレメンタルズを追ってマルチバース(多次元世界)から、このMCU世界にやって来たらしい。フューリーはピーターに厳しいが、ミステリオはまるでエヴァのカヲル君のように優しく、ピーターはすぐミステリオを信頼する。
ソーやキャプテンマーベルやドクターストレンジなど、強大なパワーを持つスーパーヒーロー達は別件で忙しいため、フューリーは「トニーが見込んだアイアンマンの後継者」としてスパイダーマンに白羽の矢を立てた。
そしてフューリーはトニーからピーターへの最後の贈り物だという眼鏡をピーターに渡す。この眼鏡は只の形見ではなかった。あらゆる人間をひと目見ただけで個人情報を全て抜くことができ、軌道上に待機した人工衛星から射出される何十機もの強力な破壊力を持つドローンを操ることの出来る脅威のシステム端末〈E.D.I.T.H.(イーディス)〉だった。
ピーターはフューリーにビビりながら、新たに現れた頼れる兄貴分ミステリオと協力してエレメンタルズを駆逐する事ができるのか。そしてMJとの恋の行方は‥?
というのが今回のお話。

 

 

 

まず冒頭と、ピーター周辺の一般人キャラの話(「スパイダーマン」に限ってはヒーローやヴィラン以上に一般人キャラによる日常描写の方がずっと面白いので重要)。
コロンビア映画の女神像が映画世界の像に重なって始まるカッコいい幕開け。
そしてピーターの学園の校内放送では生徒が作ったエモMAD追悼動画が再生されホイットニー・ヒューストンの「えんだああああ♫」に乗ってトニーの遺影がバーン!と出るので爆笑。
そして校内放送MCのベティ(アンガーリー・ライス)が、サノスの指パッチンで消えた人々と世界との関わりについてレクチャーしてくれる。
サノスの指パッチンで多くの人が消えた後、「エンドゲーム」ではハルクが指パッチンして消えた人達を現世に呼び戻したが「一体どうやって還ってくるのか」という帰還の描写は描いかれなかったが、この校内放送でそれが観れた。体育館でブラスバンド部が演奏しているとサノスの指パッチンで半数が消滅、そして5年後、同じ体育館でバスケの試合をしていると消えたブラスバンド部員が5年前と同じ感じで突如出現した。なんと!消えた場所に消えた瞬間のまま戻ってくるとはね。「元からいる人と帰ってくる人、お互いの体が重なってたらどうなる?」と考えると怖いが、このシリーズそういった細かいことを考え始めるとキリがないので、そういう細かいことは積極的に思考停止しよう。
ちなみに前作では「せっかくアンガーリー・ライスをキャスティングしたのにモブ生徒かよ!」と不満だったが、本作ではピーターの親友ネッドのガールフレンドになるので彼女の可愛い活躍(ネッドとイチャイチャしたりキャーキャー言って逃げ回る)が多く観れる。またベティだけではなく前作で出番の少なかったが評判良かった学力クラブ顧問のハリントン先生が旅の引率を務めて出番が激増。前作ではピーターやトニーやバルチャーなどのヒーローやヴィランのキャラが魅力的だったが、ピーター周辺の一般人も魅力がありすぎた、それなのにキャラや描くべき要素が多すぎて一般人キャラの出演時間がメイおばさんとネッド以外は少なくてストレスも溜まった。今回は皆で旅行してるためMJ、フラッシュ、ハリントン先生、ブラッド、あと引率の新キャラ先生などもずーっと画面に出てられるし彼らの台詞も多く観れて満足した(その代わり今回はバルチャーやドナルド・グローヴァー演じるマイルズの叔父さんなどは出てこない。あとクイーンズに殆ど居ないのでピーター行きつけのコンビニのおじさんと猫も出てこない)。そういえばフラッシュって古い原作ではいじめっ子だったのだが、このシリーズだとピーターをやたらといじってくる‥だが強キャラではなく勉強も人望など他の面でも全て(財力以外)ピーターより劣っているのが面白い。まぁ漫画のキャラで言うとスネ夫かな。嫌がらせというよりピーターのことを気に入っていじってきているかのような雰囲気、ピーターもフラッシュに何か言われてもやり返すわけでもなくdisられるたびにいつもの困惑顔するだけなのが何とも可笑しい。身体がデカくなったのも含めて、フラッシュはひと目見ただけで「めっちゃ面白い奴」の雰囲気を醸し出している。あと出番ほぼないが中東系の少女も可愛い。
大人の5年は大差ないが子供の5年は大きい。ピーター周辺の生徒や教師は殆ど全員消えたのだが「消えなかった者の代表」としてブラッドという男子生徒が出てくる。小学生くらいのチビの男子生徒だった彼は僅か5年で死ぬほどデカいマッチョ生徒となっていた(彼が前作にいたかどうかは覚えてない)。彼女はMJを巡るピーターの恋のライバルとなる。ピーターが「ブラッドに撮られた写真をなんとか処分しなくちゃ‥」と呟いただけで宇宙から殺人ドローンが射出されてブラッドを殺害しようとする場面の「もう死んでるのにトニーのやばさが伝わる」過保護殺人未遂シーンの面白さもすごかった。
話を元に戻そう、セクシーなメイおばさん(マリサ・トメイ)はハッピーと恋人一歩手前の関係になっている。そして彼女は原作同様ボランティア活動をしているのがわかった。
本作のヒロインはM.J.(ゼンデイヤ)。前作でピーターはバルチャーの娘リズに惚れていて、どっちかというとMJがストーカーのようにピーターの後を追っていたがピーターはそれに気づいてない感じだった。本作ではいつの間にかピーターの方がMJを追いかける感じへと逆転していた。ピーター・パーカーには「特に気にしてなかった少女に好かれる」というラノベのヤレヤレ系主人公ポジションは似合わない。だから今回こういうMJを追うキャラに変更したのだろう。それは別にいいのだがMJは好かれる立場になったことで「白人じゃない上に陰キャでもあるヒロイン」という今までにない面白いキャラが控えめになり、割と普通のヒロインになってた気がする。恋のライバルとしての新キャラのブラッドもMJを好きになりそうな奴には見えないのだが‥まぁいいか。

 

 

 

ミステリオの話。
最初に言ったようにここからネタバレしてくので注意。
異世界からエレメンタルズを追ってきたという彼をフューリーがスカウトし、ミステリオとピーターを組ませてエレメンタルズを殲滅させようとする。
MJや学園の皆と旅行を楽しみたいピーターをフューリーが邪魔して、ピーターの夏休みを支配する‥というのが本作の基本的なパターンだ。
予告編でミステリオが出た時、世界中の人は一瞬で「あぁ味方のふりしてるけど本当は敵だな。エレメンタルズも彼の自作自演だろう」と気がついた。原作のミステリオは元特撮技師で幻覚を見せる小悪党だ。そして誠実な男の役も狂人役も得意なジェイク・ギレンホールが演じているのも決定的で、原作知らない人もひと目でミステリオをヴィランだと認識できてたのが可笑しかった。
そして実際その通りだった。中盤でミステリオは我々観客にその正体を丁寧に説明してくれる。ミステリオは、バルチャーみたいに奥深いキャラだったり「実は善の心もあって最後に良い事して死ぬ」などのサプライズがたとえあったとしても敵である事は間違いないと思ってた。ここで「原作では敵の彼、だが敵と思わせて実はヒーロー」というサプライズでミステリオを本当にヒーローにしても別に面白くはならん。何でもかんでも予想を裏切ればいいというものでもない。
まぁだけど「ひょっとしてミステリオとして出てきたけど正体は、X-MENの世界から来たミュータントだったりして?」という予想もしてた、外れたけど。
そしてミステリオがヒーローではないのは勿論「マルチバースから来た」というMCU的にも大きなトピックも狂言だったのは少し残念だった。
というのも、予告編で明かされた本作の「マルチバース設定」を生かして他所のアースから、異世界スパイダーマン、あるいはミュータント、あるいはファンタスティック・フォーのキャラとか出るか?と多くのファンを期待させてたからだ。
僕がミステリオとマルチバースについて予想してたのは「ミステリオとエレメンタルズとマルチバースがベックの狂言」というのは予想してた。だけど「ミステリオの自作自演が明らかになってラストバトルでミステリオが『平行世界なんて嘘を信じたのか?w』などと嘲笑うとポータルが開いて異世界スパイダーマン‥ひょっとしてトビー・マグワイヤのサム・ライミスパイダーマンとかアメスパ版ガーフィールドスパイダーマン、ついでにヴェノムとかも現れてミステリオを殴ってトムホ版ピーターに「大変なことが起こる」とか言って三作目繋げるラストに少し期待してた。彼らスパイダーマン三人の俳優、そしてMARVELスタジオとSONY両陣営、誰もがスパイダーバース企画に前向きだからだ。だが今回それはなかった。
しかし冷静に考えると、本シリーズはピーターの成長と青春を描くシリーズだし、二作目でいきなりそんな大事件が起きてしまうと三作目はもう実写版スパイダーバースになってしまい、ここまで積み上げてきたトムホ版ピーターの人間ドラマやらMJやネッドやメイおばさん等の魅力が全部かき消されてしまう。だから今思うとMCUスパイダーバース展開は今はないはずだと今ならわかる。やるとしたら三作目でピーターの物語を終え、ラストでやっとその片鱗を見せて以降の作品でだろう。
だけどアメコミにマルチバースはつきものだし本作では否定されたがマルチバースはある(ストレンジでも語られてただろ)、だから何の作品かわからんが、そのうち出てくると思うので気長に待ちましょう。
話をミステリオに戻そう。
ベックの正体は「シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ」の冒頭で出てきた超リアルなホログラム投射装置の開発者だった。だがトニーにクビにされ、前作のバルチャー同様「トニーに逆恨みしてヴィラン化した男」だった。ヘイヘイいつものやつ。トニーの「死んでも僕はヴィラン製造機さ」という声が聞こえてきそうだ。”死せるトニー、生けるミステリオを走らす”。
ベックだけではなく、「アイアンマン」一作目でスターク・インダストリーにクビにされた男がドローン作ってたり、他にもスターク・インダストリーをクビになったトニーを恨む者たちが大勢いる。ミステリオのもっともらしい台詞台本をリアルタイムで書いてベックに指示する作家などもいる。その集まり。
「ミステリオ」とは高性能なドローンに超リアルな立体映像を被せ、効果的な台本を読む。そしてミステリオによって都合の良い状況さえも幻影で見せる、その幻によって自分をスーパーヒーローであるかのように演出して世に出ようとするトニーを恨む者たちの集まり、それがスーパーヒーロー「ミステリオ」の正体。ミステリオは実在しなかった。
彼はフューリーやマリア・ヒルに「ミステリオ」を信じさせ、次にピーターを引き込み、トニーを失って傷心のピーターの心に入り込み、まるで死んだトニーの代わりのように「頼りになる優しく強い兄貴分ヒーロー」を演じて信頼を勝ち取る。そして旅行や恋に気を取られてやりたくもないミッションに気が入らないピーターは失敗ばかりしてフューリーに叱られ、ますます萎縮していく。自信を失ったピーターは「トニーの遺産イーディスは自分にはふさわしくない」と言い、なんと「突然現れたトニーみたいに頼れる兄貴」ベックに譲ってしまう。
「幾らベックを信頼したと言ってもトニーの形見である眼鏡を2、3回会っただけのオッサンにあげたりするかぁ?」と、ここは一番無理があったが「トニーを失ったりフューリーに怒られたりしてメンタルがボロボロだったからちょっとおかしかったんだな?」と本作に寄り添うかたちで解釈した。何でかと言うと本作は始まってからラストまで、めちゃくちゃ面白いからだ。冒頭からラストまでずっと面白い。面白い時間の長さで言うとMCU作品で一番かもしれない。面白さは全てに優先される。ジョジョとかと同じでめちゃくちゃ面白ければ多少の変なところは我々観客が作品に合わせて解釈して補完してしまう。「エンドゲーム」とかも変なところだらけだがそんなところをわざわざ気にする気にはならん。もし作品が面白くなければその矛盾をボコボコに突きたくなるが本作のように面白ければ逆に補完して補おうとする。そんな感じ。
イーディスというトニーの脅威の遺産システムを手に入れたミステリオは、もはやガチでスーパーヒーローレベルの力を手に入れた。だが彼の自作自演がMJの活躍でピーターにバレる。イーディスを取り返しに来たピーターはミステリオと対決。
ミステリオは、身体は普通の人間。ただ無数のドローンを操り、その上に立体映像を投射してるだけの幻影ドローンおじさんだ。単純なパワーだけならばミステリオは本当のスーパーパワーを持ったスパイダーマンの敵ではない。だがミステリオも武器は幻影だ。
しかし、超お人好しな上にメンタルがグラグラ状態のピーターは、ミステリオのパワーや幻影が全てホログラムだとわかっている状態であっても見破ることができない。
ここでミステリオが見せる幻覚の映像が実に見事だった。拡大縮小、上下左右に自在に幻覚を見せる、建物も人物も状況も全てがホログラムだが見分けがつかない、こうなってはホログラムだとわかっていても何が本当で何が嘘かわからず無意味だ。
こういったディズニー的トリップ映像の幻を見せてくる敵と戦う場面はよくあるが、今回は今まで観たことないくらい幻影の映像が見事。「ドクター・ストレンジ」のサイケデリックマルチバース映像より好きかもしれん。
もちろん幻影の映像表現だけではなく、ミステリオはフィクション作家を雇って書かせた台本で、ピーターのメンタルも同時に攻撃する。たとえばアイアンマンのゾンビをトニーの墓から出して「お前が弱いから僕は死んだ!」などとピーターが一番傷つく台詞でピーターの精神ゲージを削っていく。そしてフューリーに化けて、聞きたい情報をピーターに吐かせトドメを刺す。
トドメといってもメタヒューマンであるスパイダーマンにトドメをさせる攻撃などミステリオには出来ない。だから幻影で線路に立たせ必殺国電パンチで葬り去る。
この中盤で行われるスパイダーマン vs.ミステリオ(というかスパイダーマンが一方的にやられてるだけだが)は、アメコミ映画の中でもトップレベルの見事なバトルだったと思う。昔からこういう「凄い幻」を使うヴィランが観たかったというのもある。

 

 

 

ミステリオの必殺国電パンチで国外までふっ飛ばされたピーター。
心身ともに痛い敗戦で、どん底まで落ちたピーターはハッピーに助けを求める。
迎えに来てくれたハッピーに泣きつくピーター。彼はまだ15歳なのだ。
子供がケビン・ベーコンにくそビビらされまくる映画「コップ・カー」の監督だけあって可愛い子供いじめがうまいね。
本作でピーターが初めてトニーを失った心の内をハッピーにだけ吐露する。ハッピー以外の者に言ってもわからなかっただろう。
元気になったピーターはAC/DCをBGMに、まるでトニーみたいにスーツを作る。そんな彼をを見て今は亡き上司兼親友を思い出し微笑むハッピー。
迷いを吹っ切ったアベンジャーとなったピーターは、もうミステリオの幻影に動揺しなかった。
今までもその片鱗をたまに見せていた、メイおばさん命名の感覚ピータームズムズ(原作で言う「スパイダーセンス」)と、ベックにしてやられた猜疑心によってミステリオの幻影を見破りミステリオを追いこむ。
騙されないのはいいが、このラストバトル。衆人環視だからミステリオはエレメンタルズの幻影映像を停止するわけにはいかないので中盤バトルでの凄い幻影とかは出せない。それが残念だった。ラストバトルでも凄い幻影観たかったな。こうなると幻影の怪人ミステリオというより只のドローンおじさんだ。このラストバトルでは多彩な幻影は楽しめないがスパイダーマンのアクションや頑張りが「あぁスパイダーマンだなぁ」とめっちゃ感じた。ここまでの本編は、面白かったけどピーターが弱りまくってたせいか「スパイダーマンっていうよりピーター少年」って印象で、親戚の子が困ってるのを応援してるおじさんみたいな気分で観てたが、終盤は「頑張れスパイダーマン!」と自分が子供だった時のように応援させられるものがあった。
スパイダーマンがガラクタを改造して盾とハンマーを作って武器にした時は「やばい‥こいつたった一人でBIG3受け継ぐ気か!?」と胸が熱くなった。
ミステリオは、バルチャーやサノスやキルモンガーのような自立した奥深い人間ドラマを持ったヴィランではなく只々悪いだけの単純悪。だがトニーの装備を使ってトニーの抜けたピーターの心の傷をひたすら突いてくるという‥言わば「トニーを失ったピーターの心の傷」そのものが今回のヴィランで、ミステリオは単純にそれの器と言える。MCUヴィランの基本である「主人公の影としてのヴィラン」パターンだね。そしてミステリオの嘘に散々やられながらトニーの死を乗り越えざるを得なかったピーターにとって、ミステリオは一種のヒーロー修行の教官の役目でもあったのかもしれん。
そしてミステリオの人間ドラマは薄いと言ったが彼の凄さはもっとメタ的な部分にある。全編ピーターが幻惑されてるのと同じ様に観客もミステリオと本作に幻惑され続けるところ。映画が終わった後も「ミステリオは本当に死んだのか?」などの疑問が次々と湧いて、映画を観終わった後もまだ観終わってない気分にさせられるところ‥などなど。
とにかく色々あってミステリオをKO。MJとの恋も成就(ピーター、キスしたことない奴のキスの仕方で微笑ましかった)。
ずっと旅行してたので最後はサービスって感じで摩天楼を飛びまくるデート、だが次の瞬間、いきなりスパイダーマン最大の敵J・ジェナ・ジェイムソン(以下JJJ)がまさかのキャスティングで登場!これは予想できんかった。予想してる奴も聞いたことない。違うシネマティック・ユニバースの俳優がここまで有名な同一のキャラを演じるのは今までになかった。彼が出てきた瞬間スパイダーバースが始まったのかと思った。だが、まだわからない。彼は本当にサム・ライミ版のあの世界から来たJJJかもしれない。何故かと言うとすげーハゲたキャラになってたから。JJJはドフサなので演じてるシモンズにヅラ被せればいい。なのに禿げてるって事は「サム・ライミスパイダーマン3から長い年月経ってるからJJJもハゲましたよ」という事を知らせるためにわざわざハゲにしたのかも。説明下手だけど言ってることわかる?まぁこの話はいいや。
ところでこのJJJというキャラ、スパイダーマンにおいてもMCUに取っても超重要キャラなのでロス将軍みたいに他の作品でも出てくれるに違いない。そしてネッド→メイおばさん→MJとサクサクと進んできた正体バレ場面、究極のバレが行われて三作目に続いてしまうヒキ。まぁ当然、全世界にバレてしまうわけだが、こうなると三作目にもJJJ出てきてくれるのかな?僕はJJJ大好きなので出て欲しい。そして正体バレって事で一作目で出たスコーピオンとかバルチャーとかショッカーとか生きてたミステリオがシニスター・シックス結成して襲ってきて身バレによる弊害でメイおばさんやMJが危険に晒されるのだろう。そしてこのシリーズは学園生活と絡めてストーリーを展開してるので次はきっと卒業式と絡めて来るだろう。ところでトニー、ハッピー、フューリー、ベック‥と、ピーターが歳上のメンターと絡んできたシリーズだが、三作目はもう要らんと思う。全編独り立ちしたピーター一人で活躍して欲しい。
満足しつつもエンドロール中「めっちゃ面白かったけどフューリーともあろう者がミステリオを一切見抜けなかったばかりかピーターへの指導も下手すぎて全編未熟すぎたな?」と、フューリー好きでもある僕は不満だったが、そう思った次の瞬間、エンドロール後のポストクレジットシーンで、そのフューリーへの不満も意外な形で解消してくれるという‥しかもタロス大好きだし、ウルトロン以降フリーターみたいでフワフワしてたフューリーの状況もやっとわかったし、もう大満足でしたね。
次にスクラル出るのはいつだろうと思ってたけどここで来るとはね。しかも次こそ悪いスクラルと思ってたら良い奴のタロスとは。ちょっと「スクラル=良い奴」という刷り込みを観客に与えきった後でひっくり返す気なんだろうな。
とにかくミステリオ同様、最後の最後まで幻影を見せ続ける映画だった。というか、ここでミステリオを殺す必然性があまりないし何と言っても嘘つきミステリオだから生きてて、三作目で普通に出てくる気もする。
前作登場したバルチャー、スコーピオン、発明家ティンカラー、二代目ショッカー、に加えて今回のミステリオ、カメレオン(運転手ディミトリ?)‥これでシニスター・シックスいけるやん。まぁ新キャラなしじゃショボいからティンカラーはあくまで裏方でドクオクが出てくるとか‥三作目への夢は広がる。
本作、ピーターのメンタルがグラグラすぎる気はしたが、まぁトニーを失った15歳だから仕方ないのか。
とにかく、感動したり涙が出たりという感じではなかったが「ずっと延々と最後まで面白い」という、面白さの持続においてはMCUで一番かもしれない。
MCUベスト的なことを考えた時にもベスト5には入る。
個人的には、自分が中年なせいか子供じゃなくて大人のスパイダーマンの方が好きだし、ピーターとメンター年長男性との絡みも正直あまり興味ない。だけどそんな僕でも「面白さはMCUで一番かも」と言わせる本作の凄さ。ピタトニ好きのお姉さんならもっと感動できただろう。
というかスパイダーマンやミステリオやフューリーが一切出てこなくてピーター達が旅行してるだけの青春映画だったとしてもかなり面白かった気がする。

 

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短いスパンで三作くらい連続で公開されたMCUだが次回作は、結構一年くらい間が空いて、ウェーブ2の第一弾「ブラック・ウィドウ (2020)」単独作が公開される。伏せるがあんなキャラやあんなキャラも出るらしい。僕的には既に死んで絶対生き返りもしなさそうなナターシャで新規タイトルを作る意図や、フローレンス・ピューが二代目継承するのかなどが気になり過ぎて早く観たい。来月観たい。
それより来月あたりにMCU今後の‥フェイズ4の公開予定作品のタイトルと日程がババンと発表されるはず。このタイトルを大量に発表するイベントはウルトロンの頃にもやってたけどめっちゃ盛り上がるし予定表観ながら一晩飲めるくらい面白いので楽しみだ。

 

 

そんな感じでした

gock221b.hatenablog.com

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『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)/この世に白と黒はなく灰色だけが在る事を描いたヒーローの内戦👱 - gock221B
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)/予想を裏切り期待に応えるMCUの到達点🎨 - gock221B
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)/なんで真田広之すぐ死んでしまうん?🎨 - gock221B

「アイアンマン (2008)」「アイアンマン2 (2010)」「アイアンマン3 (2013)」MCUの中で一番偉い1、珍作の2、映画としてなら良い3🔨 - gock221B

 

 

ジョン・ワッツ監督作、その他関連作
「COP CAR/コップ・カー (2015)」ケビン・ベーコンは思いのほか出番短かったが素晴らしい内容🚓 - gock221B
「アメコミ・ヒーロー大全 (2017)」全2話/小学生みたいな邦題から繰り出された神番組。アメリカ近代史とヒーロー80年📚 - gock221B
「スパイダーマン:スパイダーバース (2018)」情報量多くて疲れたが傑作でしょう。キャラはプラウラーとグウェンが特に良かったです🕷 - gock221B

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Spider-Man: Far from Home (2019) - IMDb

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