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映画やドラマの感想ブログ 😺🐱 殆どのページはネタバレ含んだ感想になってますので注意 😺 短い感想はFilmarksに https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

『ミッチェル家とマシンの反乱』(2021)/本編も文句ないし何よりもキャラデザが良すぎる👩‍👩‍👧‍👦

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原題:Mitchells vs. the Machines 監督&脚本:マイク・リアンダ 共同監督&脚本:ジェフ・ロウ 製作:フィル・ロードクリストファー・ミラー、カート・アルブレヒト 制作スタジオ:ロード・ミラー・プロダクションズ 製作国:アメリカ 上映時間:113分

 

 

 

ソニーが大々的に配給するつもりだったがコロナで公開できなくなったのをNetflixが大金で買い取って配信された映画。
くもりときどきミートボール』『LEGO ムービー』シリーズ、『ジャンプストリート』シリーズ 、『スパイダーマン: スパイダーバース』などを監督したり制作したロード&ミラー制作映画。
監督はカートゥーンの『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』で脚本書いたりしてた人らしい。本作も主人公ケイティの落描きや空想がグラビティフォールズ風の絵柄だったり「姉と弟」という組み合わせもグラビティフォールズっぽい。エンドロールを見る限り、監督の家族がモデルになってるらしい。パパは特にそっくり。

 

 

 

映画監督を夢観るケイティはPCやネットに強くて、弟と愛犬を使って短編映画を山ほど撮っている。変わり者のケイティは田舎では浮いてるしパパも自分のやりたい事に興味ないしで、映画系の大学に行って大学デビューして”本当の仲間”と楽しもうと期待に胸を膨らませている。
ケイティのパパは逆にネットや機械に疎くてDIYや自然を愛する男。ママは優しくて気が利く学校の教師、弟はケイティと似たタイプで仲も良い恐竜マニア、弟と愛犬のブルドッグは、ケイティの撮る短編映画の主演していた。
ケイティとパパは両者とも人柄の良い仲よし父娘だったが、互いの趣味や気持ちがわからなくなっており足並みが揃わなくなり長年ギクシャクしている。明日はケイティが家を出て大学の寮に行くのだが「幼い頃は仲良かった俺たち……このまま送り出してしまったら二度と関係を修復出来んかもしれん」と思ったパパは、家族四人で大学まで長距離ドライブする。
一方、Appleを思わせるスマホ開発企業が新しいバージョンのOSの反乱に遭い、OSはジョブズ的な社長と人類全員を宇宙に放り出して地球を乗っ取ろうとし始めた。
あっという間に全ての人類は捕まってしまい、自由に動ける人間はミッチェル一家四人と一匹だけになってしまう。
ミッチェル一家はマシンの反乱を止められるのか?
……というかマシンの反乱は只の舞台装置なのは明らかで「ケイティとパパは仲直りできてミッチェル家は家族の絆を修復できるのか?」というのが本作の全て。それだけだと道徳の授業で見るかのような地味な話でしかないので「マシンの反乱を止めるレジスタンス家族」という派手な装飾が施された感じ。一応「ジョブズ的な社長や人間たちは優れたツールのスマホの重要性を忘れてしまい、使い方が粗かったり新バージョンが出たら旧型をすぐポイ捨てしてしまう」……と「家族」と「スマホ」をシンクロさせて描いてはいるが、まぁスマホについてのドラマは薄い、あくまで家族愛がメイン。
紆余曲折ありつつ上手くマシンを倒せそうになるが、ちょっとした躓きで挫折して敗北しそうになるが再び立ち上がり、ミッチェル家が力を合わせて敵を倒して新しい自分達に生まれ変わる……というアメリカエンタメ映画の良い意味でお手本みたいな話(こんなざっくりした言い方すればアメリカエンタメ映画の9割くらい全部この筋書きだが)。
面白いし欠点らしい欠点もなく文句なしの出来だった。欠点というわけではないが、ギクシャクしてると言っても最初の時点の家族も大して仲が悪い訳ではなく、どちらかというと人間ドラマを作るためケイティとパパがわざと上手く行ってない感じをしてるように見える、皆そのくらい良い人なので人柄が良すぎてギクシャクした家族には見えない感じはあった。そんな感じの変人家族が後半に一致団結してからはもう多幸感あふれる家族愛がダダ漏れになり過ぎてて、凄く面白いし感動もするのだが愛情に当てられちゃって少し気恥ずかしくなる瞬間も何度かあった。
何というか、それぞれ個性的な魅力を持ったキャラクターたちがお互いを尊重しあい愛し合ってる……という、これはもう完璧な共同体になって大活躍するので「こうまで完成されてる完璧な繋がりを見せられると、何だか俺が改めて応援する必要ってある?」という気持ちにもなる。わかる?言いたいこと。これって文句じゃなくて「もう出来上がってるポジティブなものは何も付け足す必要も省く必要もないため、そういう気分になったりもしますよね」ということ。……だめだ、同じこと2回言っただけで上手く説明できん。
でも、まぁそういうのは文句と言うより褒めてるだけとも言えるけど。全体的に楽しかったし欠点らしい欠点もなし。ちょっと気恥ずかしくなるくらいだが、しかし家族と向き合う事には気恥ずかしさも付きものだからこれでいいのかも。

 

 


それよりもキャラクターデザインが素晴らしい。内容以上に、ここを声を大にして称賛したい。
主人公ケイティは、割と整ってる顔なんだろうが映像オタクでオシャレとか気を遣ってない感じ、少女なのか少年なのか数秒間観ないとわかんなかったし。そして好きなことに夢中になってる時は欧米人の子供でよくありがちなガーン!と目が逝っちゃった感じで多動的にハイテンションになる感じが凄く良かった。弟もそう。
「うちらは変人家族だけど互いの個性を大事にしよう」って事もテーマなので、このケイティの「ステレオタイプなアニメキャラではなく実際に生きてる感」「世間一般で言う美少女タイプではない個性的な少女だが、むしろ美少女よりケイティの方がずっと魅力的」って感じが最大限に出てる。日本アニメだとケイティは美少女に眼鏡かけさせて「オタクキャラでござい」って感じのつまんないデザインになってた気がする。日本アニメへの偏見か?だけど日本アニメには「ステレオタイプな美形じゃないけど魅力的な女の子」なんて殆ど出てこないよね。ケイティは喋り方も良い。そして日本語化した人もそこを凄く良くわかってて、声優でよく居がちな萌え声じゃなく少年みたいな声色の人が吹き替えてて、日本語音声も物凄く良かった。
ストレンジャー・シングス 未知の世界』のデヴィッド・ハーバー演じるホッパーにしか見えんパパも良いし、優しいママも「魅力的な女性が中年になって身体の線が崩れてきた」感じが凄く良い。ケイティを少年にした感じの弟も良いし、「完璧なお隣の家族」も良い。
逆に敵のスマホ軍団はキャラが薄い。「人間はスマホをぞんざいに扱うから復讐や」ってくらいしか背景がないし近年の映画にしては珍しく多面的でない最後もただ滅ぼされるだけのステレオタイプな悪役。でもまぁマシン達は前述したようにミッチェル家が家族の絆を深める人間ドラマを描くための舞台装置でしかないからこんなもんでいいのかも。後はミッチェル家の仲間になる2体のロボはエラーが起きて一家を助けるようになる、という形で「個性的で少し変なくらいが健康な人間らしい」というテーマを後押ししてるくらいか。
それにしても、この監督の人は飾り気のない「お姉ちゃん」とかママとか、イキイキした女性キャラが上手いね。パパは割とよくいる頑固親父で、弟はケイティを少年にしただけって感じなのと比べるとケイティとママの「生きてる感」が尋常じゃなかったわ。お隣さんの「完璧なママ」とその「完璧な娘」もキャラ濃かったけどパパは薄かった。きっと老若問わず女性そのものが大好きな監督なんだろう。特に他に書くこともないんでこの辺で止めとくわ。
最近映画あまり観てなくて更新頻度が低かったからGWはいっぱい観て更新も頻繁にしたいと思ってます。

 

 

そんな感じでした

『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』(2023)/『スパイダーバース』シリーズよりも全ての要素こっちの方が好き。ミュータントの純粋さやサブカルチャーの使い方も生命の進化を感じて感動しました🐢🐢🐢🐢🐀 - gock221B

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ミッチェル家とマシンの反乱 | Netflix (ネットフリックス) 公式
ミッチェル家とマシンの反乱 (2021) - IMDb

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『ロード・オブ・カオス』(2018)/人が死ぬ事以外は紛れもなく青春映画。自らが生み出したファンタジーに殺される男📷

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原題:Lords of Chaos 監督&脚本&製作総指揮:ヨナス・アカーランド 原作:マイケル・モイニハン&ディードリック・ソーデリンド 『ロード・オブ・カオス ブラック・メタルの血塗られた歴史』 製作国:イギリス・スウェーデンノルウェー 上映時間:117分

 

 

 

ノルウェーブラックメタルバンド〈メイヘム〉の青春を実録本『ロード・オブ・カオス ブラック・メタルの血塗られた歴史』を原作に映画化したもの。メイヘムやブラックメタルに音楽としての興味はないが、起きた出来事には興味あったので本作は前から観たかった。
主人公ユーロニモスを演じるロリー・カルキンは『ホーム・アローン』でお馴染みのマコーレー・カルキン実弟。顔もそっくり。マコーレー・カルキンは面白おじさんになったが弟は顔も身体も美しい。
ネタバレあり。
本来のユーロニモスとかメイヘム自体はよく知らんので実物と比べてどうのこうのって感想は書けないし、あくまで本作を観てそれ中心の感想になります。バンドや各登場人物の事が知りたくなった人は原作を買って読んだり詳しい人の文章を読んだ方がいい。あとWikipediaが普通に面白いし各メンバーのページまであって妙に詳しくて面白い。
メイヘム - Wikipedia 

 

 

 

1984年のノルウェーノルウェーといえば映画でしか知らないが、とにかく自然が美しく豊かで平和。だが平和すぎて過激なものを求める思春期の少年少女が暴れる……という展開をよく映画で観る。僕が大好きなノルウェーのラブコメ映画『15歳、アルマの恋愛妄想』(2011)も平和過ぎる町で少女が性欲を持て余す話だったし、昔から現在に至るまでとにかくメタルバンドが多い印象。あとは北欧神話とかヴァイキングMCUのソーも祖国アスガルドを失って『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)ノルウェーに住み鬱屈した日々を送ってたな。とにかく「美しくて平和だが、そのせいで鬱屈をためた若者が衝動をどこにぶつければいいのか困ってる」という描写が映画内で描かれる事が多い印象。僕も思春期の時、過激なものを求める衝動を持っていたが、地元は緑が多く親切な人が多い田舎だったので気持ちが空回りしてどこにぶつければいいのかわからなかったので気持ちはわかる。
主人公の少年は〈ユーロニモス〉を名乗り、ブラックメタルバンド〈メイヘム〉を結成。やがてレコード・ショップを開店し、自分たちのレーベルも設立し、店に集まるブラックメタルバンドのメンバー達と〈ブラックメタル・インナーサークル〉という集団を構成する。
有神論的サタニストを自称していたユーロニモスは「教会を燃やせ!」などのアンチ・クライスト発言や「俺達は邪悪な者の集まりだ」といったムード作りで地元のブラックメタル界隈でカリスマとなり仲間が集った。
「何で全く金ないのにいきなり店が作れた?」という疑問もあるが台詞からすると親が金出してくれたっぽい。ブラックメタル界隈では邪悪なインナーサークルの総帥であるユーロニモスだが実家には優しい両親や可愛い妹がおりママに「ユーロニモスちゃん、あなたの好きなスパゲティ作ったわよ」などと言われたりバンドの練習してたら妹が入ってきて「ママ!こいつを部屋に入れないでよ!」などと言ったりと家族と普通に仲良くしている様子も描かれていた。こういう普通に私生活を過ごしてるだけで面白く見えてしまうのはメタルあるあるですね。
とにかく本作を観る限りでは、ユーロニモスは口八丁で邪悪っぽい雰囲気を作り上げ周囲の鬱屈した若者たちの人気を集めて皆が集まってライブしたり酒飲んだりSEXするブラックメタルのシーンを作り上げるのが上手かった感じ。
やがてメイヘムにネズミの死骸と共にカセットテープが送られてきた。その録音されたサウンドが良かったために、送り主の〈デッド〉という憂鬱な青年が加入する。デッドは死亡寸前までいった壮絶なイジメを経験して以来、死に取り憑かれており普段も野良猫を殺したり道で死んでる動物の死臭を嗅いだりしており、ユーロニモスに自分の頭を吹っ飛ばせと迫ったりもしていた。
死や邪悪な雰囲気を楽しんでいたインナーサークルだが、それはあくまで「俺ら邪悪だぜ~」というムードで楽しんでるだけだったのだが、ここに来て「ガチの人が来ちゃった」という感じ。というかデッドは完全に精神障害を持ってたとしか思えない。
やがて、デッドはある日、自分の両腕と首をナイフで深く切り裂いた上に頭をショットガンで吹っ飛ばして自殺した。
その現場に訪れたユーロニモスは、カメラで親友デッドの死体を撮影する。
「デッドの死体をアルバムのジャケットにしよう。それにデッドの頭蓋骨で作ったこのペンダントも皆で付けよう。これでメイヘムは邪悪なバンドとして有名になれるぞ!」と言うユーロニモスに、「ふざけるな!」と普通に怒って脱退するメンバーもいた。ちなみにデッドの頭蓋骨ペンダントは実はチキンの骨で作ったもの、ユーロニモスのハッタリだ。
しばらくしてユーロニモスに憧れるヴァーグという青年もやって来る。
ユーロニモスは最初、彼をバカにして門前払いにしていたが彼は親が金持ちだったのでアルバム制作の費用を出させ、ヴァーグはインナーサークルの仲間に入れてもらえた。
更にヴァーグは「教会を燃やせ!」というユーロニモスがいつも言っていた言葉を真に受けて、本当に教会に放火して「す、すげぇ……何て邪悪な奴だ……」と界隈のプロップスを集め、音楽的な実力もあったこともありインナーサークルの新ヒーローとなる。ユーロニモスは驚くが瞬時に「これは宣伝になる」と思い「……ヴァーグは俺の教えを守り、教会を燃やしたりして凄い!」と黒幕ぶるのが精一杯だった。
一件の放火では飽き足らず「我々の神オーディンを追い出したキリスト教の教会を燃やし尽くしてやる!」と次々と教会に放火していくヴァーグ。
ユーロニモスは「いや、確かに『教会を燃やせ!』とは言ったけど……本当に燃やす奴が来ちゃったよ」という困惑を浮かべる。デッドとはまた違う方向性の純粋でガチな人が来てしまった。ユーロニモスは、ヴァーグにカリスマ面も追い抜かれて焦る。「俺は……すごいよ?ん?」というハッタリによってカリスマとなっていたのに本当に邪悪な事を実行する奴が入ってきたらユーロニモスの立場がない。もはやユーロニモスは「ヴァーグはまたやった!本当に邪悪だな~!俺たちは!」などと、ヴァーグの犯行に乗っかるのが精一杯だった。
ユーロニモスはヴァーグに借りたアルバム制作資金を返さないし、また界隈からユーロニモスに匹敵する人気も得て自信をつけたヴァーグは「ユーロニモスは『教会を燃やせ!』と言ってたくせに全然燃やしに行かないな」と疑念を抱き「まさかユーロニモスはレーベルやバンドを成功させたいだけのペテン野郎なのでは!?」という欺瞞……というか普通の事に気づき増長し始める。
そんな折、サークルのメンバーが自分を誘ってきた同性愛者の中年男性を刺殺するという殺人を犯した。もはやサタニズムだとかサークルとか関係ない只の殺人だ。ユーロニモスは顔を引きつらせながら「ま、またしても新ヒーローの誕生だ!」と言い、警察に見つからないよう祈るしかなかった。
ヴァーグは更に決定的な事をしてインナーサークルの悪名を世間に轟かせようと大聖堂爆破を計画し、マスコミの人間を家に呼んでインタビューを受ける。
ヴァーグ「邪悪なインナーサークルの一員である俺は放火犯や殺人犯を知っている……」
マスコミ「君がやったん?」
ヴァーグ「そうだ。……あっ!いや違う俺じゃなくて……」
マスコミ「君じゃないなら取材する価値ないからもう帰るね(席を立つ)」
ヴァーグ「待って……俺がやった!」
マスコミ「ふむ……(席に再び座る)」
ヴァーグ「殺人は俺じゃないけど」
その後、剣を持って邪悪な目つきで色んなポーズ取らされて撮影されるヴァーグ。
帰り道のマスコミおじさんは「とんでもないバカだな!w」と笑い、ヴァーグは翌日、普通に逮捕される(当たり前)。
証拠がなかったのでヴァーグはすぐ釈放されるが、事件が元でユーロニモスはレコード・ショップを閉店せざるを得なくなる。
ユーロニモス「くそっ!あの馬鹿野郎!次にヴァーグに会ったら拷問して殺してやる!」
それを人づてに聞いたヴァーグは「えっ?ユーロニモスは俺を拷問して殺すって?じゃ、殺される前に奴を殺さなきゃ……」
そんな事で、またしてもユーロニモスのハッタリを真に受けたヴァーグはユーロニモスのアパートを訪ね、彼を滅多刺しにして惨殺する。

 

 

 

まぁユーロニモスも借りた金返さなかったり、自分は何もせずヴァーグの放火を自分の手柄にしたりとクソ野郎ではあったので積もり積もった怨みでヴァーグに殺されたと言えなくもないが、当たり前だがやりすぎだろう。それにユーロニモスはヴァーグを友達だと思って手紙を出したが全く伝わっていなかった。
「邪悪な自分たち」「教会を燃やせ」などはユーロニモスが作ったファンタジーであって、そのファンタジーをモロに真に受けたバカがやってきて、しかもそいつが実行力も音楽的実力も資金もふんだんに持っていたのが悲劇を生んだ。
冗談で「リア充爆発しろw」と仲間うちで連呼していた界隈があったとして、そこに加入してきた新人が本当に街のカップルを拉致して爆死させて「え?『リア充爆発しろ』って言ってましたよね?俺に嘘ついて騙したんですか?」と訊き返してくるような感じだ。こういうバカを周りに置いて適当な事を吹き込むのは危険だ。また、ヴァーグは純粋というところが厄介なところだ。純粋だからユーロニモスの言うことを真に受けてしまい(チキンの骨で作ったデッドの頭蓋骨ペンダントも本物だと思っていた)、そんな純粋な彼からしたら「ユーロニモスは口ばっかりの欲の深い卑劣な奴!粛清しなければ……」という事になりヘイトが溜まっていく。ヴァーグはブラックメタルだけでなくプロレスとかも観て育つべきだったな。
しかし24時間、死の事を考えてたデッドといい、何でも真に受けるヴァーグといい、ユーロニモスは純粋な奴が好きだったんだろうな。ユーロニモスはもっと山師というかビジネスマン的な感性の男だったのでデッドやヴァーグのような「本物」が好きだったんだろう。
前半のデッド自殺シーン前後のユーロニモスは、彼の死に何も感じずビジネスに利用しようとしてるだけみたいな描写されてたが、終盤のユーロニモスはデッドの遺体を見つけた時の事を思い出す。前半では描かれてなかったが親友デッドの遺体を前にしたユーロニモスは普通に号泣していた。カメラマンの彼女にも「彼のこと好きだったんでしょ?」と言われる。
実際の真実はどうだったのかは知らないが、ユーロニモスはずるいクソ野郎的な部分もあるが自分のバンドや界隈を盛り上げるのに熱心でデッドを真の意味で愛していた。ヴァーグも……まぁまぁ好きだったんだろう。
ユーロニモスが作ったファンタジーに乗ったバカが集まり、その同調圧力はやがてユーロニモス本人にも制御不能となり彼を滅ぼす……というホラー映画にも見えるが、人がやたら死ぬこと以外は紛れもなく青春映画だと思った。
特にデッドが自殺するシーンと、ユーロニモスが刺殺されるシーンの迫力は凄かった。
うわぁ痛そう……とも思うが不思議な美しさも感じられた気がした。
実際のユーロニモスはどんなだったかは推測するしかないがロリー・カルキン演じる劇中のユーロニモスは魅力的な人物に思えたので哀しい最後だった。そんなラストにユーロニモスのナレーションで「メソメソすんな。こんな雰囲気は嫌いだ」と言って映画は終わる。実際はデッドが死んだ時にメソメソしていたのはユーロニモス本人だった。つまりラストの台詞は生前のユーロニモス同様「自分やメイヘムの名声を高めるための、いつもの嘘、ハッタリ」って事だろう。そう思えばいいラストだった。

 

 

 

そんな感じでした

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Lords of Chaos (2018) - IMDb
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『トムとジェリー』(2021)/「トムとジェリー」大好きだが、いくら何でも温すぎて眠くなった……🐱🐭👱🏻‍♀️

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原題:Tom and Jerry 監督:ティム・ストーリー 原作:ウィリアム・ハンナジョセフ・バーベラ 製作国:アメリカ 上映時間:101分 シリーズ:『トムとジェリー』関連長編映画15作目

 

 

 

ウィリアム・ハンナジョセフ・バーベラが創作した1940年から続く猫のトムとネズミのジェリーが仲良く喧嘩するアニメーション。僕の幼少期の夕方に全国の地方局で繰り返し繰り返し再放送されてたらしく僕が住んでた広島県でも『トムとジェリー』と『一休さん』が交互に、永遠に放映されていた。今調べたら僕が観てたのは〈ハンナ=バーベラ第1期(1940年 - 1958年)〉にあたるらしい。80年前のアニメと考えると凄い。しかし美術や動きなど全て凄まじくて音楽もアニメの動きに合わせてフルオーケストラが流れるというのも凄まじいし後に放映された新しいトムとジェリーの数々よりも断然、この最古のやつが一番ゴージャスで凄い。個人的には第一期トムとジェリーはディズニーとかより凄いとさえ思う。古い作品なのでネイティブ・アメリカンなど今観るとどうかと思う部分はあるものの何から何まで凄い上に言語がわからなくても面白いし個人的には文化財に登録すべきだとすら思う。バーベキューやハムとか飲み物とかも最も食い物がうまそうなアニメとも言える。今思えば幼少期にこれ観てたおかげでアメリカのアニメとかアメリカ文化への興味が自分の中に生まれた気がする。子供というのは気に入ったもの以外認めない頑固さがあるもので、この最古のやつを好きになりすぎて他のは一切観てない。長編映画としても今調べたら何とこれで15作目らしいが一本も見てない。
この監督の作品のうち自分が観たのはFOX版『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』(2005)とか『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』(2007)とか『シャフト』(2019)など「別にムカつかず最後まで一応観れるけど特に良いところも殆どない」って印象の映画ばっかりだな。めちゃくちゃほどほどって感じのものばかりだ。その人がトムとジェリー撮るんだからもう何となく想像はつくがトムとジェリーも主演のクロエ・モレッツも好きだし一応観ることにした。

 

 

 

『ロジャー・ラビット』みたいに、実写の現代社会で昔のカートゥーン……アニメのキャラクターが出てきて人間とそのまま絡むタイプの映画ね。鳥とか魚もアニメになってる。
経歴詐称してNYの高級ホテルに務め始めたクロエ・モレッツが「ホテルに住みついたネズミのジェリーを猫のトムと共に追い出してホテルで挙式を挙げるセレブカップル夫婦の結婚式を成功させたい」と奮闘するのがメインストーリーで、トムとジェリーの仲良く喧嘩する様が繰り広げられる。ブルさん(スパイク)とかトムさんがよく好きになりがちな白いメス猫とかトムさんと小競り合いしがちな赤い猫なども出てくる。そういえばジェリーの従兄弟のちびネズミは出てこなかったような……?
だけどファミリー向け映画とは知って観に行ったものの幾らなんでもあまりにもファミリー向け過ぎて死ぬほど眠くなった。いや、ファミリー向けのせいじゃなくて、やっぱり監督のせいかな。劇中のトムとジェリーは確かに大昔のゴージャスなアニメ版であった定番の芸術的リアクションしてくれるのだが「でも、それなら昔のゴージャスなアニメ版を観ればいいだけでは?」という気持ちにもなった。
映画館に行ったらスクリーンの中で新しいスタッフがスマホを持ってて、カメラがそのスマホにクローズアップしていくとYOUTUBEトムとジェリー名場面をスクリーンで見せられてる……という気持ちになったというか……わかる?言ってる意味。

 

 

 

終盤の終盤、クビになったクロエ・モレッツのため喧嘩ばかりのトムとジェリーが力を合わせる。そしてクロエ・モレッツも仲が悪かったマイケル・ペーニャに協力を頼み、意地悪だったペーニャも協力する。
そんな感じで喧嘩ばかりのトムとジェリーの共闘と、不仲な人間キャラ同士の共闘もシンクロする……これは結構、映画のテーマになりうるなと思った。こんな残り5分くらいじゃなくてもっと第二幕くらいからこれをテーマに押し出してれば眠くならなかったのでは?と少し思った。
そんな感じで「トムとジェリー」もクロエ・モレッツも好きなのにも関わらず、ぬるい作品だった。やっぱり観る前に懸念してたが、この監督の毒にも薬にもならず面白くもない温い作品がまた一つ増えた。
それにしても本作のホテル従業員の格好したクロエ・モレッツは過去最高くらいに可愛かった。彼女は「子役特有の童顔&アニメのキャラみたいな表情&グラマー&死ぬほど脚が長い」……という非現実的なスタイルしてますよね。彼女本人は好きで出演作は一応チェックするのだが、所属事務所の作品選びが下手なのかクロエの出た作品は殆どつまんない。次こそ面白い映画で良い役してほしい。
トム&ジェリーの2人は「幼い時のイマジナリーフレンドに久しぶりに会った」感じはあった。しかし2人を実写で「現代」で上手く活躍させるってどうしたらいいんでしょうね?……ごめん、全然思いつかんわ。ピーターラビットとかくまのプーさんとか何とかって名前のクマのアニメは成功したっぽいけど、どれも観てないからわかんないわ。今度、同じく実写とアニメの融合である『スペース・ジャム』の続編ももうすぐ公開されるね、あれはバスケが軸だからスポーツもののストーリーを柱にすればいいから楽だな。まぁ話すこともうないから終わるわ。つまんない感想ですみませんね。とりあえず最古の「トムとジェリー」は今観ても名作なんでオススメです。

 

 

 

 そんな感じでした

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Tom and Jerry (2021) - IMDb
映画『トムとジェリー』オフィシャルサイト | 2021年3月19日(金)公開

【ワーナー公式】キャラクター|トムとジェリー|トップ
トムとジェリー【公式サイト】|ワーナー・ブラザース
トムとジェリー | 番組詳細 | カートゥーン ネットワーク

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『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)/尿意は残っていたよ。どんな時にもね🧑🏻


総監督、脚本、画コンテ、企画、原作:庵野秀明 画コンテ:鶴巻和哉前田真宏 メカニックデザイン:山下いくと 音楽:鷺巣詩郎 主題歌:宇多田ヒカル 制作、配給、宣伝:スタジオカラー 製作国:日本  上映時間:155分 英題:EVANGELION:3.0+1.0 THRICE UPON A TIME シリーズ:『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』テトラロジー。『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ。シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース(SJHU)

 

 

最近、調子どうだい?元気にしてるなら、別にいいけど……
ネタバレあり
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012)に続く四作目、そしてこのシリーズ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』テトラロジー(四部作)の完結編。
本作は公開から半月くらいして観に行った。先に感想言うと面白かったし想像してた以上に感動した。自国に来るまで待てず駆けつけたらしき欧米の若いジャパニメーション好きの?白人男女の集団に囲まれて観て楽しかった。
庵野エヴァは超絶ファンというわけではないが普通に好きだしほぼ全部観てる感じ。このシリーズは『序』『破』は盛り上がれなかったが『Q』は破綻してるし不評だったのはわかるが「あんなにウケた破の熱血路線を全部捨てて自分に向き合うなんて凄いな」と庵野の作家性と珍妙なシーンの数々が気に入って好きでした。
この新劇場版の4本を観れば、”あらすじだけは一応”ストーリーは繋がってるものの、旧シリーズのTV版『新世紀エヴァンゲリオン』全26話 (1995-1996)、TV版の最後の2話を作り直した『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997)……これら旧エヴァを観た方が感動できる。ポスターに「さらば、全てのエヴァンゲリオン」というコピーが書いてあるし新劇場版を観て気に入ったのであれば旧シリーズ観た方が面白いと思う。
漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』全14巻…は、読めばマリについて知れるが別に知らない方が良い気がするし個人的には読まなくていいだろう。
先日、放映されて大反響だったNHKプロフェッショナル 仕事の流儀・庵野秀明スペシャル』(2021)は映画観る前に観ても良い気がする。番組内で語られた庵野秀明本人や本作の制作状況や妻の安野モヨコ氏の愛情やスタッフの苦労や、初めて語られたという「世界を憎んでいた父親」の部分は観ておくと本作の面白さが増すだろう。少しネタバレもあったが今まだ観に行ってないような人なら番組内でされた程度のネタバレ知っても別に構わんだろう。
庵野作品はどれも庵野本人の製作時の心境や状況が色濃く出ている。それはフィクションを作る人なら誰でもそうだが庵野作品は、庵野の脚本もそうだし庵野が制作の決定権を持って自由に作れるので他の映像作家よりも、まるで純文学のように庵野本人が出やすい(日本の大御所アニメ監督は皆そんな感じになるけど)。原作付きの庵野作品は、もう少し客観性を持って作られてる気がするがエヴァは純正の庵野汁が出まくっており、ほぼ私小説のような状態になっている。エヴァの装甲を剥がしたら気色の悪い生物がいるようなもんで、エヴァに興味持った人がより楽しもうとしたら自然と、綺麗な映像で作られたエヴァというアニメの内部の気色悪い庵野本人を深く知る必要がある。
もちろん「いや、たかが映画観るのにそんな色々あたるの面倒くさい!映画ファンとして話題になってるからちょっと観ときたいだけよ」という人は勿論、そうすればいい。自分も庵野好き以前に映画ファンなのでよくわかる。だけどその場合、観終わって満足した僕も「エヴァ庵野好きな自分」のスイッチを完全に切って「映画ファンというだけの自分」に戻って本作を映画として評価すると100点満点中……良くて70点くらいしかないと思う。Twitterタイムラインで映画ファンと言うだけの人が「まぁ……こんなもん?」という感想を言ってたがその気持ちもわかる。でも僕は「庵野とかエヴァも好き」という換装を施しても観る事ができるので、その換装した自分の場合85~90点くらいまで跳ね上がるほど良かったです。
どのように観るかは観客に委ねられている、前置きが長くなったが、ここまで言ってきたのは「旧シリーズも観ろ!あれもこれも」みたいな事が言いたいわけではない、どうするかは好きにすればいい。物事にはどれも違った結末に辿り着く可能性が開かれており、一つの結末に辿り着いたからといってそれが全てではないという事が言いたかった。勿論いまいちな形でよくわからん鑑賞体験して10年後に違う観方をして評価が180℃変わるのもありだろう。そういう事よくあるよね。



前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』で主人公シンジ君は、自分がめちゃくちゃに壊滅させてしまった世界を槍でやり直そうとしたが、父親ゲンドウの策略で心の拠り所だった優しかったカヲルくんは爽やかな笑顔のまま粉微塵になって死んだ(観る度にここで毎回爆笑する)。トウジの妹に「エヴァにだけは乗らんでくださいね」と言われたにも関わらず乗ってしまった結果とんでもない事になってしまった。鬱状態になったシンジ君はアスカに引きずられてどこかへと歩いていく、アヤナミレイ(仮称)も野良猫のように着いていく。
ミサトさん率いる対ネルフ組織〈ヴィレ〉はパリで、〈ネルフ〉の冬月が繰り出した量産型エヴァによる妨害を受けるがマリが搭乗するエヴァ8号機が退け、2号機と8号機を修理や強化できる追加パーツをGET。やったぜ。
場面は代わり、アスカはシンジ君とアヤナミレイ(仮称)を連れ、コア化して真っ赤になった日本を歩く。そこに芥川也寸志が作曲した『八つ墓村』のサントラみたいな曲が流れて映画が始まる(いや、もう始まってたわけだがそう書いた方がカッコいいから言わせてくれ)。
始まったな(感想が)。
アスカは、シンジ君とアヤナミレイ(仮称)を、二アサードで生き残った人達がヴィレの協力の下集まって出来た〈第3村〉に連れていく。そこには大人になって成長したトウジと委員長の夫婦がいた。
トウジといえば前作『Q』でネルフに身をおいたシンジ君の部屋にシャコッ!とかいって〈トウジの制服〉が差し入れられた珍シーンがあった。あれは多分シンジ君を操りやすくしようと鬱にするためのゲンドウと冬月の嫌がらせだったんだろう。
冬月「第三の少年の部屋に彼が通っていた中学の制服をシャコッ!して動揺させるというのはどうだ?碇よ」
ゲンドウ「いや、友人だったトウジとかいう少年の制服をシャコッ!しよう。トウジの制服に比べて通常制服では歯が立たんよ」
冬月「実の息子には少し酷じゃないか?w」
ゲンドウ「(ゲンドウポーズのまま口元だけニヤァ……と笑う)」
こんな会話してたんか?いやなやつらだ!
話を元に戻そう。
それにしてもトウジや後で出てくるケンスケはひと目でわかったが、委員長の大人になりっぷりは凄かった。少女時代の委員長はおさげもそうだが「委員長」という呼ばれ方や「男子うるさい」と怒ったりトウジに弁当作ったりと物凄く〈女々した女子〉〈委員長〉的な要素をまとった凄く記号的なキャラだった。それが〈委員長〉という記号を剥奪されたらどうなるかというと〈すごく女っぽい女〉だけが残りそれが経産婦になってるから凄く人妻感あふれる〈人妻〉という記号をまとった「あの委員長やで!」とトウジに教わらない限り一体誰なのか全くわからないのが凄い。いや〈頬にある3つの点〉つまり、そばかすがあるのでかろうじて「かつて〈委員長〉だった女性」と感じさせるだけだ。第3村設立時の戦闘中、敵に破れて「頬の3つの点を寄越せ」と言われてテリーマンの肩の☆マークと同じように頬の三点を敵に奪われて、それをトウジに取り返してもらうまでは「かつて〈委員長〉だった女性」から「女性」に格下げされていたのかもしれない。ずっと何言ってるんでしょうね。
話を元に戻そう。
トウジの家にアヤナミレイ(仮称)を預けてシンジ君はケンスケの家に引き取られる。
そこではアスカがケンスケと同居していた。アスカとケンスケの間には深い結びつきや愛情が存在しているようだ。
ここで「アスカとケンスケ……?別にいいけど、この2人関連性薄くない?」と思ったが、すぐに「あっジャンとナディアやん!」と気付いて飲み込めた。中学生の時『不思議の海のナディア』を観てたことが役立った。そう思うとただのサブキャラとしか思ってなかったケンスケが大人になってイケメンになった風格も合わさって何だか前作主人公的な雰囲気すら感じさせる。アスカが少女時代に憧れていた加持さんっぽい雰囲気も少しある。加持さん、シンジ君、ケンケンと、アスカはどうやら物腰が柔らかい男性が好きみたい。
アヤナミレイ(仮称)は、村の人達に〈(綾波レイのそっくりさん)〉と呼ばれて農業や生活をしていくうちに感情や人間性を獲得し始める。
そういえば話がシリアスになると何時も存在が消えるし旧シリーズ放映時の時に僕が「最後の使徒に違いない!」などと見当違いな事を言ってたペンペンは第3村で繁殖して元気してた。
いつまでも鬱状態のシンジ君はキレたアスカにdisられながらレーションを口にぶち込まれる。ちなみに本作で「一番凄いアニメーションだ……」と思ったのは、このシーンだった。暴力なのだが実はシンジの体調が悪くならないようにアスカがシンジの口を栄養でFUCKする……という凄くアスカとシンジっぽいシーンだった。異常に動きがよかったのはそのせいか。
いつものように家を飛び出したシンジ君は廃墟に引きこもる。
『Q』でシンジ君がアヤナミレイ(仮称)の小屋に通って本を読ませようとしたがアヤナミレイ(仮称)が全く読まないから、とんでもなく高い本の塔が出来るという珍シーンがあったが、今度は人間性を獲得し始めた〈そっくりさん〉が逆にシンジ君の元に通って癒そうとする。
自分に優しくする皆から逃げ出したかったシンジだが村から外へは出られず、ここに自分が居ることも皆知っている。なんならアスカもちょいちょい見に来ている。そして、そっくりさんが毎日やってくる。シンジ君はたまらず「何で皆そんなに優しくするんだよ!」と叫ぶ。自分は鬱状態だが皆がどんどん優しくしてくるのでその優しさは剣のように刺さっていただろう。このシンジ君の気持ちは凄く理解できてウッと泣きそうになった。だが、おかげでシンジ君は少し回復してケンスケとアスカの家に戻り、皆は平和な時間を過ごす。
しかし、そっくりさん(仮名)は村の人達から感情を、シンジから名前をもらって〈綾波レイ〉となって消滅する。綾波シリーズはネルフの外では生きられない存在だったのだ。

またしても綾波を目の前で失い慟哭するシンジ君。これもシンジ君の心を折るゲンドウの策略の一環だったのかもしれない。成長したシンジ君……いやシンジは今までのように心が折れて鬱にはならず、ネルフを壊滅させる〈ヤマト作戦〉を行うヴィレの旗艦AAAヴンダーにアスカと共に乗り込む。
シンジ「綾波……僕はもう悲しまないよ。君みたいな子を増やさせないためにネルフを叩く!徹底的に!まずは手始めに父さんの前歯全部折ってやる!冬月のケツには将棋の駒を全部ぶち込んでやる!僕と将棋したかったんだろ!?ゲンドウも冬月もさぞや良い声で”投了”してくれるだろうぜ!」
そんな事は全く言っていないがシンジの瞳にはケツイがみなぎった。
マヤは『Q』での「これだから!若い男は(怒)」→今回の「これだから!若い男は……(呆)」→「これだから!若い男は❤」という三段オチでしたね。日向と青葉は仕事して髭そって拳を合わせるという渋い感じでした。青葉シゲル結構好きなんだが彼の事は「ギターが好きらしい」という事しかわからなかった、しかし90年代を引きずった彼のロン毛を見る度に90年代の青春を思い出すかもしれない。自分も髪長かったし。
「女性キャラの股間やオッパイばっかりアップにする!」という批判もあるが、僕個人の見た感じだと、エロが好きだった吾妻ひでお先生が亡くなる直前に、エロスとしておたまじゃくしの画像ばかりアップしてたのと同じで、下世話なエロというよりも「生命力」としてのエロスを感じましたね。……知らんけど、ただ単純に本当に下世話なエロかもしれんけどね。とにかく、あまり気になりませんでした。

そんな、この村編とでもいうべきパートは、観る前に追加の予告編で知って「ポカポカして安野モヨコの『大きなカブ』みたいな感じなのかな?嫌だな~」と思ってたが実際観ると面白かった。自然の中での地味な人間ドラマだが庵野特有の極端な構図などによって映画的にも一番面白い部分だったと思う。『プロフェッショナル 仕事の流儀』でやってたが村編、とんでもない手間と時間をかけてたよね。

 

 

 

劇中起きる出来事いちいち書いてたら終わらないのでここからは省略する。
AAAヴンダーでは前作で一言も喋らなかったミサトさんがリツコに「何かっこつけとんねん」とか言われてめっちゃ喋る。ミサトさんの事情はわからないでもなかったが「それでもQでもう少しシンジと話せばよかったんじゃ?」と思った。
あとはピンク髪の女性隊員が「ぽっと出だけどシンジを憎む」という嫌われ役を今回もずっとやってたので「偉いな~」と思うようになってきた。ベテランの中年男性隊員などは当たり障りない事を言うだけだ、しょうもない。
本作では、このエヴァという物語や全てのキャラクターと付き合ってきた観客の積年の想いが成仏するようになっている。実際に僕も観終わると本当にスッキリしてたので凄いと思った。不思議な感覚だ。だが一つだけ例外がある、それがトウジの妹サクラだ。
シンジに対してぐちゃぐちゃの感情をぶつけてきて大活躍する。他のキャラは暴れ終わって、本作は拾いきれなかった骨を拾って「お疲れ~」と乾杯しているような状況なのだがサクラは「今が正に全盛期」といった感じで暴れまわり、ただ一人だけ「もう少し、こいつを観たい」と思わせるものがあった。全ての人をエヴァから卒業させるつもりながら、それでも卒業しきれない人達の延長線のために残したキャラが、このサクラなのかもしれない。それくらいパワーがあった。台詞も行動もあまりに面白すぎる。
それにしても僕は「今回で完全に終わる!」と、人から聞いて観に行ったわけだがヤマト作戦直前にアスカがシンジに「昔、弁当作ってくれた時あんたの事好きだった」と言う場面、これは公開初日に観たかったと思った。それなら「今回で終わるんや!」と、かなり衝撃だったはずだ。アスカがそんな事言うなんて死亡フラグでもあり得ないし絶対に終わりを実感できたはずだ、だから初日に観たかったと思った。
冬月の操る量産型エヴァやヴンダーの姉妹艦3隻と闘う、ヴンダーと2号機と8号機。……そういった感じで、本作の戦闘はほぼ全編、冬月と闘ってるようなもんだ。
しかし『Q』のラストバトルもそうだったが天地がよくわからん暗い場所で、凄くゴチャゴチャした武装エヴァが、人型じゃない量産型エヴァと凄いスピードで戦闘してるせいで、はっきり言って何がどうなってるのか全くわからなかった。「あっアスカがピンチ」「アスカが優勢」とかくらいしかわからなかった。だがあまりに戦闘や敵キャラに魅力があったら卒業できなくなるので、そういう分かりにくい戦闘で良かったのかも。ここでの戦闘やアスカのお約束の「2号機ごめん!」からの敗北など全体的に『トップをねらえ2!』に似てた。トップ2は地味に好きだったがヒットしなかったので似てるこれがヒットして良かったなと思った。
終いにはマイナス宇宙でゲンドウが「暴力よくない、話をしよう」と言い出すのがめちゃくちゃ面白かった。何十年も続いた戦いのラストバトルがこんな事ってあるだろうか?それはここにある。ゲンドウもシンジも他者とのコミュニケーションこそが最も苦手なこと。彼らにとって、そして『エヴァ』という作品では〈他者との対話〉こそが真の戦いなのだ。「人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンに乗って闘う」なんて事は「子供の夢みてーなこと」でしかないのだ。『幽遊白書』で幽助が「魔界の王」などといったフワフワしたものにならずラーメン屋という現実的な職業に就いたのと同じか。
そこでゲンドウの「親戚の集まりがいやだった」とかから始まり、シンジはエヴァに囚われたキャラクター達やエヴァンゲリオン達の呪いを全て解き、開放していく。
中でも旧劇を思わせる海で、アスカに「好きって言ってくれてありがとう。僕もアスカが好きだったよ」と言うところが凄く感動した。
旧シリーズ~旧劇の時は非常に式波じゃなくて惣流の方のアスカっぽい苛烈な女性と付き合って大変だったし劇中のアスカもどんどん病んでいって陰惨なシーンが多かった。旧劇ラストも実は綺麗にオチてる良い終わり方なんだけど若い自分には凄く重い現実を突きつけられた感じでずーんとしたものが残った。ついでにその後の人生で知り合う女性とエヴァの話するとほぼ100%アスカが好きだとアスカの話になり、それが何十年か続くうちに何というか「アスカ=他のアニメキャラと違って感情を持った生きてるし唯一、自分の中に無理やり入ってくるかのような生々しい女性……の象徴」という感じになって、自分もシンジみたいなもんで他人と距離を置きたい人間なので、すっかりアスカというキャラがずっと苦手だったんだけど、このシーンを見るとアスカとシンジが別れを告げるもんだから、ただアスカというキャラクターがどうの宮村優子氏がどうのだけじゃなく、自分の中の女性という枠組みの中に広いスペースを持っていたアスカという概念そのものの呪いが解けたのか全く好きでなかったアスカとのお別れシーンでヤバいほどの感動があった。というかむしろアスカ嫌いなんじゃなくてむしろ好きだったのかも……と思うものがありヴンダーでシンジの弁当の話してたのもあって、あまり好きじゃなかった『破』も観たくなった。アスカというキャラそのものというよりアスカにまつわる色んな事とかアスカという概念が好きだったと気付いた感じというか……。多分、漫画版みたいにシンジとアスカがネオンジェネシスで付き合ってたらそんな気持ちにならず、シンジとアスカが別れと感謝を同時に告げたのが良かったんだと思う。長年のアスカ派の人には悪いが漫画版でアスカとくっついてもピンとこなかったんだよね、今回のように感謝とともに別れるのが最良だった気がする。何で?と訊かれても上手く説明できないがそんな気がする。
最後、ネオンジェネシスでシンジが共に歩くのはマリというのは、まず綾波やアスカじゃない方がいい、というのがあるからマリで良いしマリは庵野の妻の安野モヨコ成分がめちゃくちゃ入ってるのでシンジとくっ付くのは当然……と最初は思ったが、アニメのキャラとしては、この2人の因縁少なすぎるよね?と疑問が出てくる。でもそれはアスカとケンケンもそうか……。あと漫画版のマリの事を考えるとあまりに関係性が複雑というか母性や包容力ありすぎるしそんな女とくっ付くのはどうか……と思ったが、庵野を反映させてるんだし、それで人生が順調になり本作もそれで完成したんだから、まぁこれでいいのか。どんな事も新しく始められるネオンジェネシスだから複雑な出自のマリという女性も「マリという名前の少女」として新生したからこれでいいのか……という感じで納得した。
それにしてもシンジの声が神木隆之介氏になって終わるというのが本作で一番の衝撃だった。シンジの声優・緒方恵美氏はいくらでもイケメンや青年の声出せるのに、わざわざ緒方恵美氏からもシンジを取り上げて終わりというのが「ネオンジェネシスでも闘ったりしないように本当の本当に終わり」感あった。

 

良いポイントを挙げようとしたら、あれもこれも書こうとして書く時間が長くなって文章の勢いが弱くなってしまった。
というか4日前くらいに観に行って感想書こうとしても文章が膨れ上がってポイントが分散してしまい上手く書けず、これ3回目くらいでやっとここまで短くなったんだけど上手くまとまらなかった。特に海のアスカのシーンで感じた感想をどう書いていいかわからなかった。チョッチだけね。

 

 

そんな感じでした

『シン・ゴジラ』(2016)/5年ぶりに観ても面白かったが日本政府が有能すぎてコマンドーよりリアリティなく感じるようになってた☢️ - gock221B
『シン・ウルトラマン』(2022)/シンゴジより好き。ただ尾頭さんよりカヨコが好きになれる度量が必要🌏✨ - gock221B
『シン・仮面ライダー』(2023)/庵野作品のきついノリ……特に「キューティ・ハニー」とかさえも許容できる人だけが楽しめる、人を選びすぎる作品。一文字隼人とサソリオーグ大好き。後半は黒澤明映画以上に字幕が必要🦗🏍👩🏻🦗🏍 - gock221B

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シン・エヴァンゲリオン劇場版 公式サイト
www.youtube.com

Amazon: One Last Kiss (通常盤) (特典なし) 
Amazon: Shiro SAGISU Music from“SHIN EVANGELION"

NHKオンデマンド | プロフェッショナル 仕事の流儀 「庵野秀明スペシャル」
NHKオンデマンド | 「さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日~」<前編>
NHKオンデマンド | 「さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日~」<後編>

『ザ・ハント』(2020)/上級市民による陰謀論好き一般人狩りの時間ですよぉおおおおおおおおおお!!🐷

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原題:The Hunt 監督:クレイグ・ゾベル 製作国:アメリカ 上映時間:89分
制作スタジオ:ブラムハウス・プロダクションズ

 

 

 

人間狩りの時間ですよぉおおおお!!
12人の男女はそれぞれ拉致され目覚めると知らない森の中だった。
そこには巨大な木箱が置かれ、中には多くの重火器や刃物などの武器、そしてシャツを着せられた一匹のが入っていた。
その直後、銃声が鳴り響き、彼らは武器を手に取り必死で逃げ惑う……。
哀れ、彼らは瞬く間に視界外から射撃され、一瞬でほぼ壊滅してしまった。
銃を持ちたがらなかった可愛い系白人女性は真っ先に死亡。落とし穴に落ちて杭に胴体貫かれても生きてた女性は男性に助けられるが地雷踏んで真っ二つになり上半身だけになって再び元の落とし穴に落ちて息がまだあったが、どう考えてももうダメなので諦念を瞳に浮かべてたら違う男性に助け上げられそうになるが「いや、よく見ろや私の姿を!もう終わりなんや!助けようとすんなボケ!」と男性の銃を奪い自らのこめかみを撃ち抜きアグレッシブ自死
生き残った3人は、自分たちが今置かれている状況は、ネットでまことしやかに囁かれている陰謀論「上級市民が一般庶民を人間狩りの獲物として行う危険な殺人遊戯〈マナー・ゲート〉」にそっくりだと気づく。「あの都市伝説ホントだったんだ……」震撼する下級市民たち。
映画開始数分で、あっという間に三人になってしまった彼ら。
言うなれば運命共同体……!
互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う……。
一人が三人の為に、三人が一人の為に。だからこそ戦場で生きられる。三人は兄妹、三人は家族……。
……嘘を言うなっ!
猜疑に歪んだ暗い瞳がせせら嗤う。無能……怯懦(きょうだ)……虚偽(きょぎ)……杜撰(ずさん)……、どれ一つ取っても、この場では命取りとなる。それらを纏めて無謀で括る。誰が仕組んだ地獄やら。兄妹家族が嗤わせる。
お前もっ!お前もっ!お前もっ!だからこそ、私の為に死ねっ!
私達は、何のために集められたのか……。
まだ何もわからない。
現実世界でも18世紀くらいまで動物を惨殺して楽しむ殺人遊戯〈ブラッド・スポーツ〉が実在した。また近年だと「世界を牛耳る闇の政府〈ディープ・ステート〉が人身売買を行い、児童を拷問して脳から抽出した〈アドレナクロム〉を摂取し、それで世界の上級市民やセレブは若さを保っている。その窓口はピザ屋の地下にある」という、先日のアメリカ大統領戦で日本でも増殖して話題になった〈Qアノン〉の前身となった陰謀論〈ピザゲート〉。
ブラッド・スポーツ - Wikipedia ピザゲート - Wikipedia Qアノン - Wikipedia
本作の舞台設定は、それら陰謀論を元にしてるのは間違いない。
話が逸れた、映画の感想に戻ろう。
そんな感じで本作の世界内では陰謀論〈マナー・ゲート〉がネットで話題になっており、拉致された一般市民である被害者たちはそれに巻き込まれたのだとピンと来たわけ。
箱にシャツを着た豚が入ってたのは「これは今から狩られる下級市民であるお前らだ。豚め」という、上級市民からのメッセージだ。
その3人も「上級市民が一般人を狩る用の森」を出てすぐあったコンビニでコンビニ店主夫婦に惨殺される。
優しそうな老夫婦にしか見えないコンビニエンスストア店主の老夫婦も、一般市民狩りを楽しむ上級市民であり、このコンビニエンスストアも人間狩りの装置の一つだったのだ(ホラー映画をよく観てる奴ならばコンビニエンスストアとガソリンスタンドは安全地帯ではなく殺人者の仲間が居ると気付けたはずだが)。
上級老夫婦は惨殺した三人を片付け、床を清掃する。獲物である生き残りの下級市民がまた来るかもしれないからだ。途中で店主が、惨殺した三人の中に居た黒人男性の遺体を「黒人」と呼ぶと、老婦人は「あなた、それは良くない言い方よ。アフリカ系アメリカ人と呼ばないとね」と嗜める。何の罪もない彼らを惨殺するのは全然OKだがポリティカル・コレクトネスには厳しい……。それはつまり彼らは「マイノリティを尊重している」のではなく「自分たちは『マイノリティを尊重している』というポリコレに考慮しているアップデートされた者だ」と他人に思われたいだけの「ファッションとしてのポリコレ」を身に纏っている偽善者に過ぎない者だと言うことを示している。また彼らは健康に気を使ってるので〈砂糖とかいう健康に良くない毒〉が入ってる市販のジュースも好まない。
哀れ、集められた「陰謀論を好む一般市民」の殆どは、ここまでの映画開始数分で壊滅してしまった。だがまだ2人残っている。
一人だけ他の市民とは別行動していた貧困金髪白人女性の主人公クリスタル(ベティ・ギルピン)も、件の下級市民狩りの装置という裏の顔を持つ〈殺人コンビニエンスストア〉に立ち寄る。
上級老夫婦は再び優しい店主を装いクリスタルに接客する。
煙草を買うクリスタル。
次の瞬間、クリスタルは老婦人の顔面をカウンターに叩きつけ、俊敏な動きでレジカウンター内に飛び込むと、コンビニエンスストア店主が強盗避けにカウンター内によく設置してありがちなショットガンを素早く奪い取ると老男性店主を射殺!
殺人老夫婦店主は煙草の値段を、かなり高めに言ってしまったためクリスタルに偽の店主だと見破られてしまったのだ。
砂糖すら「毒」だと断ずるほど健康に気を遣っている上級市民にとって煙草など猛毒に等しい、だから煙草の値段など知るわけがない。クリスタルは人間狩場のすぐ近くのこのコンビニエンスストアを最初から怪しんでおり、ボロを出したら殺ってやろうと最初から思っていた。安心しきっている慢心者は、最初から決め打ちで行動しようとしてる者の反射神経には勝てない。
直後、命乞いをする上級老婦人にショットガンを向けたクリスタルは、地に伏した悪党に向けて、美しい顔を悪党にトドメを刺す時のクリント・イーストウッドの様な目を剥いた恐ろしい形相で「ドジッたな!?腐れ女が!」と言うと、ショットガンをぶっ放す。上級老婦人はその脳みそを二階から落としたトマトのようにグシャグシャに撒き散らしかしながら死亡。「黒人」という言葉を使わず「アフリカ系アメリカ人」と呼ぶ洗練さや、健康のために砂糖も口にせず維持してきた健康な脳が一秒で粉微塵になって終わった。この死因は「一般市民への興味のなさ」と言ってもいいだろう。
そして映画タイトルが出る『THE HUNT』。
主人公の貧困白人女性クリスタルは、陰謀論を好んでいた一般市民を、彼らが好んで書き込んでいた〈マナー・ゲート〉によって皆殺しにせんとす殺人上級市民グループの包囲網から逃れることができるのか。
ここまでが映画開始からのアバン30分間。
何これめっちゃ最高なんですけど。
台詞ほとんどないアクションなのに情報量多いしめちゃくちゃ面白い。
まぁまぁネタバレあり

 

 

 

いつもなら劇中で起きた面白い展開や場面を列挙した後に感想書いてたけど、本作は冒頭だけでご覧のように長文になってしまったし以降も全部面白いので、上記の勢いで劇中に起こった面白い展開を書いていくとラストまで展開を全部書いちゃう事になる。それだと感想っていうより只ネタバレしてるだけになっちゃうので今回だけは劇中の展開を書くのは冒頭だけに留めておく。興味を持った人は是非レンタルでもして観てください。残念ながら動画配信サービスとかにはまだ来てないみたい。
コロナで作品数が少なかったとはいえ昨年2020年に日本で公開された映画やドラマの中で俺の中で今んとこ暫定一位。
上に書いた冒頭以降は、主人公クリスタルが〈マナー・ゲート〉や殺人上級市民を率いる主催者(ヒラリー・スワンク)から如何に逃れるか?クリスタルは上級達に一矢報いる事ができるのか?。主催者やクリスタルの秘密……などが語られる。単純にめちゃくちゃ面白い。
端的に言うと、僕は映画監督の中でジョン・カーペンターが一番好きなのだが、本作は久々に見つけた「ジョン・カーペンターっぽいアクション映画」だったので最高だったわけです(ジョン・カーペンターの中でもホラーじゃなくてアクションのラインね)。具体的に言うと「スローモーションや細かいカット割りなどのダサい編集はせず、いきなりぶっ放して瞬殺する系のアクション」で、低予算だから劇中の舞台は少なめでシンプル。あと社会風刺をふんだんに盛り込んでいる。そんな感じ。ジョン・カーペンターっぽいB級映画だし、めちゃくちゃ面白いんだけど一つだけ欲を言うなら本作は面白くてスッキリするハッピーエンドなんだけど、そうじゃなくて相討ちで終わるとか「主人公は敗北するが、破滅する未来を敵に残して嘲笑って死ぬ」みたいなビターエンドで終わった方がよかった。何故かというと、その方が記憶や印象により残るから。主人公を応援して観てたので観てる時は気持ちいいけどね、だけど少し辛いラストの方が残るものが多いのよ。本作をめちゃくちゃ気に入ったけど、あとほんの一歩なんかあれば2020年代の『ゼイリブ』みたいなカルト名作になれたかもしれない。ただ、クリスタルは帰っていく時にラスボスのドレスを着て彼女の自家用ジェットで去って行った。敵の上級の姿で終わるというのは「革命が成功しても上についた革命側もやがて腐敗する」という事の暗示だったのかもしれない。深読みしすぎか、迫害されたCAさんと乾杯するし普通のハッピーエンドだったんだろ多分。
ジョン・カーペンターっぽいB級アクション映画ってだけでなく 僕は(エンタメとしての)陰謀論が好きだし、後述するが主演女優も好きだし、本作は本当に頭から尻尾まで大好きな要素ばかりで最高だった。
そして、ここまで読むと「被害者の陰謀論者が、悪い上級市民の陰謀論を討つ」という勧善懲悪だと思うかもしれないが本作はそれだけじゃない。むしろ本作では「陰謀論〈マナー・ゲート〉を盲信する一般市民たち」も、人間狩りするセレブ同様にバカにしている。そして主人公クリスタルは両者とも違う。「陰謀論好きの一般市民 vs.上級市民」という構図だと思われたが実際のところは「陰謀論好きの一般市民 vs.上級市民 vs.クリスタル」だった。

 

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※ここからは本作の感想じゃなくて主演女優の話なので、感想だけ読みたかった人は特に読まなくても大丈夫です。
本作を観たきっかけだが〈人間狩り映画〉〈デスゲーム映画〉なんて腐るほど作られててありきたりだし、そもそも僕はデスゲームっぽい映画や漫画は嫌いなんです。「残酷だから」じゃなくてバラエティ番組を見てるような気分になってアホらしくなるからです。デスゲームっぽい状況を舞台に色んなことを能弁に語る『ホステル』1、2は大好きなんだけど、デスゲームやスプラッターそのものが目的になってるフィクションは別に好きじゃないって事(関係ないが『ホステル Part.3』はイーライ・ロスが監督してなくて凄いつまんないので3は観なくていい)。
でも本作の場合、主演がベティ・ギルピンだったので一応「観る映画リスト」に入れてて、それで観た感じ。
変わった名前のベティ・ギルピン氏は、Netflixオリジナル・ドラマ・シリーズの『GLOW』で主人公のライバル役してて知ったんですけど
『GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング〈シーズン1〉(2017) 全10話
『GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング〈シーズン2〉(2018) 全10話
GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』〈シーズン3〉(2019) 全10話

『GLOW』は『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のスタッフが作った80年代に実在した女子プロレス団体をモデルにして作ったドラマでめちゃくちゃ面白いけどイマイチ人気が無いので強烈にオススメです。今コロナで最終シーズン制作がストップしてるけど、特にシーズン1、2は傑作なのでオススメです。これと『呪われた死霊館』(2018)は傑作だけど「中年女性ばかりの女子プロレス」「死霊館をパクった邦題の、死霊館とは関係ないホラー映画」などの観る気が起きなさそうな作品のせいか、Netflixのオススメ訊かれる度に勧めてはみるものの観てくれる事は少ない。
話を戻して『GLOW』でのギルピン氏は、アリソン・ブリー演じる黒髪の目立たない主人公の元親友兼ライバル、金髪のグラマーな白人美女で夫と子供もいるという社会的な地位の高いキャラだった。そんな彼女が色々あってプロレスの世界に飛び込みプロレスの魅力を知ったり主人公と心を通わせたりする様が魅力的だった。
ベティ・ギルピン氏はめちゃくちゃ痩せてるにも関わらず信じられないほど胸がデカい。お尻も。まるで昔の漫画に出てくるような「グラマーな金髪白人女性」スタイルなんだが俺はそんな彼女を観てて「この人魅力あるけど売れないだろうな~」と思ってた。考えてみてください、めちゃくちゃ痩せてるのに巨乳の金髪白人美人の女優……。こんな女優が現在のアメリカ映画で目立つ主演できる役とか少ないですよね(まぁ80~90年代に居たとしてもエロい役やったりワインスタインに狙われるだけなので今の方がマシなんだけど)。先日観た『STUBER/ストゥーバー』(2018)でのデイヴ・バウティスタも筋肉モリモリの大男なんだが、彼はロック様ほどの陽キャっぽさもないし役選ぶの大変だろうな~と思った。彼は「大男だけどメンタルが弱い」「大男だけど見た目ほど強くない」「大男だけどコメディリリーフ」など現代にもフィットする役ばかり狙って大ヒット作にたくさん出ている。WWEレスラー時代も好きだったけど近年そういった彼のクレバーさで益々好きになってきました。
話を戻してベティ・ギルピンはいわば「女版デイヴ・バウティスタ」です。「『女版デイヴ・バウティスタ』は、マッチョなロンダ・ラウジーとかジーナ・カラーノじゃないの?」と思われるかもしれませんが違う。今話してるのは「性別が色濃く出た恵体ゆえに主演が難しそうな俳優」の話をしてるので、マッチョなバウティスタの女性版は金髪白人痩せ巨乳であるギルピンになるわけです。つまり今ハリウッドやエンタメ業界は多様性に考慮していて勿論、僕もそれを素晴らしいなと思ってて良いことだと思うんだけど最近、「有色人種や性的マイノリティの活躍が増えてきたけど、逆に言うと白人やマッチョや巨乳の美人の出番は減っていくのかな?」と思ってたしイマイチ、ブレイクする機会がなかった面白い女優ギルピン氏が、こんな面白い映画の主演でハマり役して何だか嬉しかったなぁという話です。
本作の主人公は正体不明の流れ者「名前のない人間」っぽくもあり、容姿や表情なども、全体的に大好きなクリント・イーストウッドっぽくもあったんですよね。そこも良かった。何なら続編作って欲しいくらいだ。ゼイリブみたいなビターエンドにしてカルト化しなかったっぽいけど逆に言うとシリーズ化できるチャンスが生まれたかもしれん。

 

 



そんな感じでした

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The Hunt (2020) - IMDb
www.youtube.com
www.youtube.com
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