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gock221B

映画その他の感想用ブログ(2015年開設) http://gock.flavors.me/

「ブルージャスミン(2013)」ウディ・アレン/ジャスミンが話しかける虚空はどこに繋がっているのか

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原題:Blue Jasmine 監督:ウディ・アレン 製作国:アメリカ 上映時間:98分

実のところウディ・アレンは、旧作あまり観てなくて2000年以降の新作しか観てない
そんな にわか状態で言っても説得力ないが、超多作なのに観てつまらなかった事はないというイーストウッドに似た、打率高い人だな~と思う。
好きなのは「タロットカード殺人事件」「ミッドナイト・イン・パリ」「ローマでアモーレ」かな。。とにかく合気道の達人みたいなイメージがある。
しかし全然旧作観てないから何も自慢することありませんね。。


冒頭
ケイト・ブランシェット演ずる主人公ジャスミンが、旅客機の隣の老婦人に猛烈な勢いで自慢している。
動く歩道や荷物置き場などにカットが変わっても、彼女は延々と喋りまくる。
だから「ああ、隣に乗り合わせた人に自分の事話してるんだな。コメディ映画に必ず一人はいるキャラだよね」と思った。
空港に着き、老婦人は迎えに来ている夫の元に急いで逃げてこう言う
「大変だったわ!隣り合わせた彼女、延々と自分に向かって自分の事を話してるんだから!最初は私に言ってるのかと思った。でも違う、彼女は私に向かって話してないのよ!」
空気を読まずに延々と自分の事ばっか喋る奴の事を「自分に向かって話し続けてる」と評する発想なかったので衝撃的だった。
さすがイヤミの天才だなと思った。おれも早くこの言葉を使いたい。
‥とか思ってたが映画が進むと、ジャスミンが本当に空中に向かってセレブ会話してる場面が何度もあるので、嫌味じゃなく本当にエア会話してたとわかった。
しかし俺が老婦人の嫌味だと誤解した台詞はそのまま使える事には変わりない。
それにしても、この変な女、ジャスミンとは何者か?


虫を見るような視線
ジャスミンとは、学生時代に実業家と結婚して一度も働いた事のないセレブだ。
実業家の夫は何者かのタレこみで詐欺が発覚し逮捕、財産は没収され全てを失う。
ジャスミンは、その夫の詐欺のせいで金を失って離婚した妹ジンジャーの家に転がり込む。
そういう冒頭から、まるで昆虫を観察しているかのような無機質な視線でジャスミンを追う。。見てると最初は「はは、バカな女w」と笑えるが、10分くらいで笑えなくなってくる。っていうか怖い。それが延々と続く。
無一文になったがセレブだったプライドが捨てられないジャスミンは周囲から完全に浮いてる事も自分が奇異に見られてる事も、おそらく本心ではわかっている。
更に過去の回想が頻繁に挿入され、その度に既に惨めなジャスミンのメッキが更にどんどん剥がれていく。
ジャスミンは自立したことがないので、自分の破綻しかかっている惨めな人生に向かい合う事ができない。
何して働くの?と訊かれても「デザイナーになるわ!そのためにはオンラインで資格を取らないと!でもパソコン使えないからパソコン教室に通わないと‥」とか言っている(もちろん彼女はデザインにもパソコンにも興味はない。彼女は自分が何となく良さげな職業だと思っているデザイナーになってデザイナーと呼ばれたいだけなのだ)
周りの人が職を紹介してくれて嫌々働き始めるが、社会に揉まれてないせいかうまくいかない。
彼女は昼間から、精神安定剤や酒を飲みまくり、誰もいない空中に話しかけたり何もない空中を凝視したり、ありとあらゆる現実逃避しながら何とか平気なふりをする。
いまや彼女の人生の目的は「平気なふりをする」事のみ。
ひどい
虚勢を張り続けないと死ぬ状態だが、誰も彼女が大丈夫だとは思っていない。そして、それはジャスミン本人も気づいている。だからジャスミンが思って周囲に発してるメッセージは「私にツッコまないでくれ」という事になる
しかし妹の彼氏や妹の息子たちは、意に介さず容赦なくズバズバと「誰に喋しかけてるの?君ってキチガイ」とどんどんツッコんでいく。
その度にジャスミンは、精神が崩壊していきブッ壊れた顔をする。
これで賞を総なめにしたが、それも頷ける。すげー複雑な表情をする。

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ほぼ全部ジャスミンが間違っている。
嘘ばかりつくし利己的だし思いやりもないし努力もしないし金持ち以外の他人を全て見下しているし(自分が迷惑かけて離婚させたのに優しくしてくれてる妹の事までバカにしている!)全て自業自得なのだが、だからといって「ジャスミン死ね!」とは不思議と思わない。
愛嬌の様なものはあるし能動的に悪事を行うわけではないからか。
だからと言って彼女が改心したり、いい人間になるかというとそんな事は永遠にない。
直視できない悲惨さがあるので、こちらの心も観てたら引き裂かれていく。
ジャスミンが現実逃避するたびに、誰もいない虚空に話しかける頻度が増えていく。
周りの人間はそんなジャスミンに容赦なくツッコんでいき彼女はどんどんどんどん悪化していく負のスパイラルの中にいた(ちなみに中心でその負のスパイラルを作っているのは彼女自身)。
地獄だ


地獄だぞ
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白石晃士映画に出てくるキチガイ
キチガイが戯言を言っているように見えて、実は時間も場所も別次元をも含めた宇宙規模の視点で見たら実は真実を言っている」というネタがよく出てくる。
しかし神ではない常人では、どんなに賢くてもそんな巨大な‥時空をも超えた宇宙的なコズミック的な視点は持てない。
だから彼らは常にキチガイとして扱われる。
また彼ら、白石くん世界のキチガイは、その多くが何かの偶然で異界に飲み込まれ、時間と空間の概念のない異界で、名状しがたい苦痛を永遠にも近い間味わった末に何かの偶然で現世に戻って来れたのだと思うのでキチガイになっても無理はない。
キチガイ‥! どいつもこいつもキチガイ


デッドプール
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キチガイだと他のヒーローに思われているMARVELコミックのヒーローがデッドプールだ。
彼は狂っていて、自分がコミックの中のキャラクターだという事を知覚しているキャラクターだ。
自分の周りにあるコマやフキダシも見えている。そして、たまに読者である我々に話しかけてくる。
他のヒーロー等のキャラクターは常人なので、彼がそんな事を言ってもキチガイの戯言だと思っている。
しかし我々は確かに実在していて、デッドプールのコミックを読む時、確かに彼から我々へのメッセージを読んで、受信している。この事に関してだけはデッドプールの言う事の方が合っている
だからフィクションの中のデッドプールが我々に話しかける時は通信の一方通行はできている。
次元の構造的に、フィクションの中のデップーは自分が言ったことが我々に届いたかどうか確認する事ができない。
我々は彼が我々に対して言う台詞を、現実の友人からのメールを読むのと殆ど同じように読むことができる。
しかし我々の方からデッドプールに対して語りかける事はできない(それが出来るのはライターや編集長やMARVEL社の偉い人だけだ)。

(フィクションの中のデッドプール→三次元にいる我々→?)

 という図になる。

この我々から伸びてる矢印の先にいる?とは誰か

幽霊
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それはずばり幽霊だ。
我々がいる この世で(白石映画のキチガイみたいに)狂った人が訳分かんねーことを喋っているのも「本当は高い次元の存在が彼らキチガイにだけ知覚できていて、それに向かって話してるのかもね~」とか思う事がある。
では高い次元の存在ってなんだ?
神、悪魔、天使、精霊、妖精、妖怪、幽霊‥なんでもいい、、どれでも同じだ。
ここでは幽霊に統一させてもらう。
それは、この三次元世界の我々では干渉する事ができない世界の、干渉できない存在という事になる。そんなものがいたらそれは幽霊と大差ない。
フィクションのキャラクターが、我々の事を知覚できない様に、我々は自分のいる世界より高い次元の存在を感じる事ができない。
今まで目撃された幽霊や妖怪などが、もし本当にいたとして、そしてそれが高次元の存在だったとしても、それが幽霊なのか妖怪なのか‥判別する事は出来ない(判別できるのは、それが誰かのイタズラだった時だけだ)
観測する事の出来ない存在は、宇宙の果てを見ようとしても無駄なのと同じように追っても捉える事は不可能。それゆえに不思議なものを追うのをやめられない人はやがて気が狂う。
僕も女子と話していて幽霊の実在の話になったら「幽霊~?いるわけないじゃんw」と言うようにしている。なぜかというと、そう返事しなくちゃいけない事になっているからだ。
もしくは「今の科学では証明できない超自然現象があっても不思議ではない」と言うしかない(この二通り以外の返事をしたら面倒くさい奴かキチガイのどちらかになる)
しかし我々は幽霊を観測も捕獲もできないのだから、そもそも意見する権利すらないのだ。
狂人が不思議なものを見て何か言っているのはそういう事かもしれない。
一体何が「そういう事かもしれない」なのかよくわからなくなってきた。
俺は何でこんな話をしている?
一体どういう文脈でどういう結論に行こうとしてたのか、書いてるうちに霧散してしまった。
自分がどういう文脈のどの位置にいたか忘れた。


ジャスミン
「ここってどこ?」
ジャスミンは狂いそうになるたびに言う。
ジャスミンは自分から他人を遠ざけ、他人の方もジャスミンから去る。
ベンチで隣に座っただけの知らない人も彼女から去りジャスミンは一人になった。
彼女はいつもの様に虚空に向かって意味のないことを喋り始めた

ジャスミンはもう戻って来れない方が幸せかもしれない。
ずっと喋り続ける彼女にカメラが寄っていく
それを見ながら「ジャスミンが話しかけてる相手って、映画を観てる俺かも」と思ったら

ゾッとした

 

そんな感じでした。

 

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