gock221B

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「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件(2015)」老ホームズが今まで軽んじてきた”フィクション”と”人の心”に向き合う

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原題:Mr.Holmes 監督:ビル・コンドン 制作国:イギリス 上映時間:104分

俺とホームズ ※ここは映画とは直接関係ないので飛ばしておk
ホームズの事はマニアではないが好き(というか僕は広く浅くで、異常なまでに好きなものはない)
このブログタイトルも”gock”はもう取られてたからホームズの部屋番号をくっつけた(しかしまるで自分はホームズだぞと嘯いてる様にも見えかねないので失敗だった)
まず最初、幼少期に読んでたが幼かったので忘れた。
それからずっと忘れてたがアラサーくらいの時に「そういえばホームズもっかい読んでみよう」と思い立ち「緋色の研究」を読み、面白かったので一気に読んだ。
殺人が起きたら死ぬほどテンションが上がる変人だが、本気で悪を倒し子供達の行く末を守ろうとする姿に感動した。事件がない時はコカインをきめたり壁を銃で撃ち、それをワトソンに責められると「ニヤニヤして」やり過ごす感じに大好きになった。
結局、僕は頭が悪いせいか、好きなヒーローというとホームズとか諸葛亮孔明とか、アメコミでもデアデビルバットマンなどの論理的思考の頭いい系ヒーローを好きになる事が多い。
作者は自分より賢いキャラが賢さ全開にしてるシーンを作る事が出来ない。多くの場合は「デスノート」のLみたいに、作者が知ってる今後起きる事をその天才キャラだけに予測させて雑魚キャラに「す、すげえ‥」と言わせるしかない。その点、ホームズと諸葛亮孔明は、その時代に発展してない科学的捜査したりトンチが効いた矢集めなどで「か、かしこ~」と、賢さの説得力が凄かった(ヒーローの強さ=勇気とトンチ)。
原作で一番面白かったのは「シャーロック・ホームズの冒険」と「帰還」辺りの短編でしょうか。
バリツ!

あとはその頃にホームズ好きの若い青年と友人になったので、酒を飲みまくって酔っ払ってブリタニカのホームズのオーディオドラマを大音量で聴きながら睡眠するのにはまった。
ダウニーJrのホームズは、好きじゃないガイ・リッチーだしイマイチな予感がしつつ観に行ったが、やっぱりあまり好きじゃなった。特に爆風と共にワトソンがスローモーションで舞い踊るように逃げ惑うシーンで爆笑しそうになったが周りにお客さんがいたので手首を噛んで堪えた(僕は爆発でスローになるのとキャラが突然崖に落ちるシーンを観ると爆笑しそうになる)。しかしその爆発で入院してたワトソンが1分後には退院して元気に走り回り始めたので我慢出来なくなりトイレに行って笑った。
カンバーバッチの現代版「SHERLOCK」は、本国で放映されて楽しみに待っていて第一話を観て、おお!と興奮したがシーズン1終了→シーズン2終了‥と進むごとに、面白くはあるが色々と気にいらない点が増え(長くなるので書かない)本国では特番だった忌まわしき花嫁とかいうのが全然好きじゃないものだったので「コレはもういいか‥」と思った。
また、Twitterの発展と共にホームズや色んな映画やアニメのBLが、隠されずそこらじゅうに撒き散らかされる風潮が生まれ、最初は「おっホームズ人気だな」と嬉しかったがあまりにも何度も何度も何年も延々と目に入って来るとウンザリした。元々そういう妄想をされやすいキャラの中でもかなり古典だと思うが、最近の映像化ホームズはそういう部分に自覚的で自分たちでも前面に押し出してきたりセルフパロディしたりするのも正直あまり好きじゃなかった

脱線した話を戻して本作の話
そんな今日この頃だが、ホームズがジジイになって帰って来た。
ネタバレしたら面白くない話なのでボンヤリ書く。
ホームズ役はイアン・マッケラン。sirの称号を持つ英国紳士のゲイ。ハマってる。
ちょっとホームズにしては優しすぎる気がしなくもないが年取って丸くなったという事でひとつ。本作のホームズは93歳。
とある「最後の事件」が原因で、オビ=ワン・ケノービのように僻地で隠遁生活をして30年が経過‥ホームズじいさんはミツバチを育てて過ごしていた。
ちなみにワトソン、マイクロフト、ハドソン夫人などの関係者は全員死んでる。
未亡人の家政婦マンロー夫人(ローラ・リニー)と息子のロジャーが同居して面倒みてくれている。
ロジャーは6~8歳くらいの子で、非常に聡明でホームズのことが大好き。
尊敬するホームズから色んな事を吸収しようとして常にホームズをキラキラした瞳で見つめていて「ミツバチの面倒をみてきます!」とか言って率先してホームズの作業の手助けをして、めちゃくちゃ可愛い。
ロジャーは知能も高いので、ホームズもまんざらでない様子で一緒にいるとにやけている。
2人は、オビワンとルークのような感じで師弟関係または友情を育む。
マンロー夫人はおそらく母親らしい感情でロジャーが変人ホームズに傾倒していく事に危機感を覚えている。
ホームズも「賢い子は時おり平凡な両親から生まれるからね」と言ったりしてマジホームズ
ホームズはロジャーに、隠居の原因となった「とある事件」について語る‥のだがホームズは「とある事件」の結末について記憶がない。ホームズ認知症なのか?それとも何か理由があって記憶が抜け落ちてしまったのか
この30年前の「とある事件」。以前、日本に行って日本人(真田広之)と一緒にヒレ山椒を獲ったり広島原爆ドームを観たりする回想。そして現在のロジャーとの触れ合い、そして育ててるミツバチ‥という四つの事象が絡んだり絡まなかったりして良い感じで物語が進む。

フィクションとノンフィクション
ホームズの事件は「ワトソンが書いた大衆小説」という形で、我々がいる現実世界そしてシャーロック・ホームズ作品世界でも流通している。非常にメタな設定。
ホームズは名乗る度に「あなたニセモノでしょ。鹿撃ち帽子もパイプも持ってないじゃん」と言われる。ホームズは「それらのトレードマークはワトソンの創作だ」と説明する(実際、ホームズの原作を読むと、彼は帽子を被ってなくてオールバックな事が多い)。
ホームズの住所に観光客が殺到していたり(ただしワトソンは嘘の住所を書いていたので関係ない建物に人が殺到していた)、前述したように人々は自分の中で本の中のホームズ像を抱いて本物のホームズに接するため、最初はフィクションに興味がなかったはずのホームズも本の中の、そして人々の中のホームズ像に影響されてきたと語る。
ホームズは「私はフィクションに興味はない、論理的な真実だけに興味がある」とロジャーに語る。
また、他人の死についても「死因や誰に責任があるかにだけ興味がある。嘆いたり悲しんだりするのは意味ないし無駄だ」と語る。原因と結果や論理的な事にだけ興味あって感情とかどうでもいい、というわけだ。こういった思想が後半どうなるかというのも見どころになっている。
まあホームズはこういうところが魅力だし、正直自分はこういう台詞を聞く方が元気が出る。
だが「とある事件」、真田広之とのくだり、ロジャーとマンロー夫人との関係の行き着く先、ミツバチ、それらとの関わりの末にホームズがこれまでの人生で軽んじてきた「フィクション(作り話)」「感情」という要素がホームズに伸し掛かってくる!正直一体どういう映画なのか分からないまま観てたけど、この辺で「そういう話だったのね」と思った

悪役は一人も出ないし地味だが、なかなか感動した。
殺人はホームズの得意分野であるが、本作の場合はホームズが苦手としてきた分野が彼を襲うかたちになるのである意味、かなりの強敵という見方が出来なくもない
いつものミステリー調のつくりで進むのだが、その結果がホームズの感情に強く関わってきてホームズの心を大きく変えてしまうというのが従来のホームズと違うところ。
まあ、それが気に入らない人も出てくるだろうが。
正直、自分も心のどこかではホームズはそんな事に悩んだりしてほしくない気持ちも少しある。だけどこれはこの原作の作者と監督がそう思って作ったんだからこれはこれで一つの話として受け止めました。
また一度も顔も声も出てこないワトソンやマイクロフトも、遺品や行動によってホームズをどう思ってたのかわかる(ハドソン夫人はお茶持ってくるだけだが一瞬出る)
ホームズの物語を勝手に先に進めたこと、ホームズの心変わりを描いたこと、そもそもパスティーシュ、とかに抵抗がなければ結構面白いはず。

‥と、ここまで書いた事を全部台無しにしかねないが、やっぱりこのジジイホームズが周りの連中をバカにしまくり証拠を見つけまくり犯罪者をボコボコにしまくって無双する本来のホームズを観たかった気がしなくもなかった。


そんな感じでした

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ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件 (角川書店単行本)
 

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