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「逃げるは恥だが役に立つ (2012-2017)」全9巻/SEXそのものよりエロいハグの日。女性にとって結婚とはブラック企業?

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著者:海野つなみ

 

今ドラマで大ヒットしてるやつ。
ドラマは苦手なので観る気ないがストーリーか気になったので原作の方を読んだ。
1巻読んだら面白かったのでそのまま一気に読みました。
※これを書いたドラマ放映中には8巻までしか出てこなかったが、少しして最終巻が出たので後で書き加えた

 

 

あらすじ
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大学院を出たが就職難派遣社員になるが派遣切りで無職になった女性・森山みくり25歳。
父の紹介で、家事代行サービスを利用していた父の元部下・津崎平匡36歳の家事を週一で請け負う。
両親が田舎暮らしを始めると言い出したが現状を維持したい、みくりと津崎氏は利害が一致して契約結婚することになるが。。
という話。
ドラマの評判を聞くと楽しい恋愛ドラマ!って印象だったが、恋愛だけでなく仕事や社会、人生観などについて考えさせられる印象だった。
そして絵柄や描写は異常なまでに現実的かつドライな感じ。
女性漫画家による大人向け漫画って絵柄や描写が異常にドライだよね。
良い意味でケレン味のない絵柄が、まるで目的の標的まで突き進む矢のような機能美を感じさせてかっこいい。
ページから、どことなく横山光輝三国志みたいなドライさを感じた。
あと「のだめカンタービレ」とかもそうだが、物凄く奥行きを感じない平面的な絵柄もカッコいい。そんな女性作家の絵柄は「西洋絵画じゃなくて浮世絵から発展したのか?」と思ったりする。
背景も全部直線で余計な物は落ちてない感じ。
恋愛描写は凄くドキドキするウェットな感じだが、恋愛要素以外は凄く乾いているので読みやすい。
また作中のキャラの口を借りて作者による、社会や恋愛に対する持論が語られる。
普通だったらそういう作者の持論が連打されると「うるせえ!お前の意見は聞きたくない。自分の思ったこと言うな!」と、うるさく感じがちだが本作の場合「なるほどねぇ‥」とか「そういう考え方もあるかもしれませんね‥」と素直に受け止める事ができて嫌味を感じなかった。たぶん俺より作者の方が賢いからだろう

 


1~2巻。契約結婚
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津崎氏とみくりは契約結婚し、仮面夫婦としての生活がしばらく続く。
親族や同僚には契約結婚を悟られないように隠して生活している。
漫画自体がドライなので「へ~」と流れるように読み進められるが、しばらく読んだ後で「よく考えるとみくり氏のこの提案はぶっ飛んでるな!」と思い始める。
津崎氏が母親に「僕って子供を作りにくい体質らしい」と嘘をついて心配させるシーンも「その場しのぎで無茶苦茶言うやん」と思った。
読みながら、ちょくちょく我に返って「え‥ええっ!?こんな事ってある?普通」と何度もビックリをさせられた。
だが理屈としては合理的だし互いの利害が一致してるので文句の付けようがない。
「真面目な津崎氏が、こんなぶっ飛んだ契約に同意するか?」と思わなくもないが、津崎氏はみくり氏に風邪の看病してもらった時にかなりドキドキしてたので、この時から潜在的にもう好きだったんでしょうね。。
ちなみに津崎氏は高齢童貞。
↑2巻表紙で、津崎氏がタートルネックを鼻まで上げてるのは仮性包茎のメタファー。仮性包茎→剥けきってない→童貞という表現だろうか。即物的だな。
ついでに、みくりの美しい伯母さん百合ちゃん52歳は高齢処女だ。
こんな身近にバージンが二人も‥。
津崎氏は童貞っぽさ丸出しだからすぐに承服できるが、バブル期から外交的なキャリアウーマンでモテモテだった美人の百合ちゃんがずっと処女って、こんな事ある‥?
勿論こういう人がいてもおかしくはない。
しかし、これはフィクションなんだから高齢処女ならそれには作劇上の理由があるはずだ。
未婚ネタはよく出てくるが高齢処女ネタは8巻まで読んでも「私は処女だ」とたまに言うだけで、あまり必要性が感じられない。
個人的な想像だが、最初は処女ネタを色々と披露しようとして、そういうキャラに設定したが、高齢処女ネタは高齢童貞ネタほど面白可笑しく笑える感じにならないという判断から、高齢処女ネタを披露するのをやめたのでは?と思った
要所要所でぶっ飛んだ設定やら無茶な展開が頻出するが、キャラの持論に説得力あるので「わ、わかった」と押し切られて力強く進んでいく感じ。
外部の人と会う二人の態度は、あまりにもビジネスライクすぎて不自然な気もするが、津崎氏が変わり者なせいかバレずに仮面夫婦生活が進む。
契約結婚という珍しい展開で否応なく読み進められて「なかなか面白いな。続きはまた読もう‥」と本を置こうとしたら、津崎氏の後輩のイケメン風見君に仮面夫婦生活がバレて
「みくりさんをシェアしたい」と衝撃的な事を言うので読むのがやめられなくなった
一体どうなってしまうん!?なんで蛍すぐ死んでしまうん?

 


3~5巻。SEXの数倍エロい「ハグの日」。沼田さんがサウナに行く訳の分からんヒキが衝撃
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結局、みくりは風見の所でも家事代行のバイトを始める。
しかし、その事が百合ちゃんにバレてしまい、百合ちゃんは夫の津崎氏に「若妻を他の独身男性の家に行かせるなんて」と説教しに来ると言う。
二人は、百合ちゃんに契約結婚がバレたら超やべーって事で、新婚のような特別な雰囲気を出すために月2回「ハグの日」を設けてハグする。
これによって「夫婦っぽい特別な雰囲気」が出るだろうという計算だ。
みくりは友達では埋められない穴をスキンシップで埋めれば親密になれるかも」と言い、津崎氏はその言葉が頭から離れなくなる。
津崎氏の気持ちはよくわかる。
だって一見遠回しで上品に聞こえるが、ハッキシ言って「SEXしよ?」よりエロい台詞だからね。

津崎氏は初めて触れる女体に対して「こ、これが‥女体?」「女体‥暖かい!」「女体‥柔らかい!」「女体‥いい香り!」などと、そんな事を繰り返し繰り返し思う。
これまでの共同生活では只の他人という情報に過ぎなかった、みくり氏という個体‥女体が物理的に自分の童貞ボディに擦り付けられ続けて、どんどん無視できない存在になっていく。それは誰でもそうなるわ。。
みくり氏は、この「ハグの日」で津崎氏のATフィールドを取り払おうとする。
津崎氏はみくりちゃんをだんだん好きになってきたみたいだが、みくり氏は最初、津崎氏を「相手としては結構いい物件ね」程度に、現実的に考えてたが知らない間に好きになっていたのかな。
いや、割と最初から好感を持っていたのだろう。
というか、そもそも好感持ってないと初めから一緒に住んだり契約夫婦になったりしないよな。
後から考えると、みくり氏は津崎氏と付き合おうとかなり早くから思っていたが、童貞で何もできない津崎氏に合わせていたのだろう。
自分から告白して全てがご破算になったらヤバいから、ジワジワ距離を詰める方法を選択したようにも思える。
そんな感じで凄くもどかしいハグ地獄が繰り返される。勃起
というか5巻は月に2回だけのはずの「ハグの日」が延々と連発され続けるので笑った。
毎日ハグの日やん!
ところで5巻のラストページは津崎氏の会社の先輩であるガチムチ系ゲイの沼田さんがサウナに入ると、二人のイケメンと目が合い「きゅん☆」と、ときめいて終わるんだが
いや‥何なん!このページ?!
続き読んでも何もないし!8巻まで読んでも何の伏線でもないし!
一回だけサウナの二人組っぽいイケメン二人が歩いて沼田さんが「相変わらず仲良い♡」と言ったような気がするが‥だから何なん!あいつらとお前のその感じ!説明してくれよ
異次元空間に通いこんだ気分になった。伝説のページになりうる訳わからんヒキだ
たぶん沼田さんによるゲイのドラマも予定してたが途中で「沼田の話はいいわ」と脇に避けられたのかもしれん。

 


6~7巻。シンメトリカルドッキング。女性にとって結婚はブラック企業
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「ハグの日」や津崎氏がふいにキスしたりが繰り返され二人は徐々に接近し、やがて結ばれる。
奥手な学生カップルの初めての一夜を引き伸ばしたようなもどかしさだ。
この辺はさすがに一番の盛り上がりだ。
津崎氏は消極的男子なので要所要所でみくり氏が挑発して、その度に津崎氏は燃え上がったり(勃起)逆に引いて心を閉ざさせたりしてしまう(ノー勃起)。
みくり氏は津崎氏の様子を見ながら押したり引いたりしている。ご苦労様です。
津崎氏は男なので勿論エロい事に興味はある。
しかし童貞なので、あまりに女性の方から積極的に来られると
「この女、性欲あるやん!こっわ!」とビビってしまう。
みくりはその匙加減を見極めて、津崎氏の性欲を刺激しなければならず、大変だ。
男とは何と面倒くさい生き物だろうか。。
近づいたり離れたりを繰り返した二人は、ある夜同じベッドで抱き合って寝る。
2人の身体はくっついた。ぴったりとな!
これ以上、接近するにはみくり氏の「友達では埋められない穴」を津崎氏が物理的に埋めるしか方法がない(我ながら下品な文章だ)
抱き合って寝てるうちに津崎氏の怒張した津崎氏自身が、みくり氏の下腹部に押し当てられた。。
だが、それ以上何も出来ない津崎氏に対してみくり氏は
お前が今フル勃起しとるように私も今濡れとるわけだが?」という意味の事を言う。かなり大胆。インサート不可避。
この中盤の、ハグの日が延々と繰り返されたり、心が接近したり離れたり、同衾しての攻防などは、さっきも言ったが実際にSEXよりもエロい。
何ヶ月も前戯を続けてるも同然だからな。いやらしい‥
みくり氏の「女性の性欲」や心情も生々しく描かれてる気がする。
と言っても俺は男だからわからないが。。(本当の女性の性欲は、きっと知ったら勃起が萎えてしまうようなエゲツないものだと想像している)
みくりのやり方だが、遠回しで上品なエロい言動で津崎氏を縛り、スキンシップで物理的に距離を縮めていき、いよいよという局面でえげつない直球をズバーン!と投げ込むやり方。これでは津崎氏はひとたまりもない。
親を人質に取られてない限り、SEXしないという選択はないぞ!
ドラマでは日本中がそう思って盛り上がったらしい。
だが津崎氏は高齢童貞なのでそうはいかん。
女性のみくり氏からグイグイ迫られても怖いだけだ。
みくり氏は、かなり遠回りかつ上品に迫ってるのだが、童貞にとってはその上品さの程度はわからないし、そもそも迫られてる事自体が怖いわけだ。
とにかく、もどかしい押し引きの後に2人は結ばれる。
津崎氏の童貞さや、みくり氏のFUCKよりもエロい手口ばかりに触れてしまったが、津崎氏は困難な状況に陥る度に、みくり氏に繰り返し「話し合って、お互いの妥協点を探しましょう」と言う。
ここが凄く共感できたし、やはり津崎氏は只の童貞ではないクレバーな奴だなと好感持った。
感情に支配されてるだけの人っていうのは狂人と変わらないからね。
それに日本人って、この話し合いが出来ない人が多い気がする。
「自分は黙ってるが言わなくてもわかるだろ?お前が忖度して読み取れ!」そんな奴ばっかだろ。
別に思ったこと何でもかんでも言えとは思わないが(そんなのつまんないし)、だからと言って心の中を見抜いて欲しがるだけの態度は相手に対する甘えでしかない。
結ばれた二人。二人は晴れて両思いの恋人同士となりラブラブ期が続く。
みくりに気があった風見くんもさすがに諦める。
「こうなったら契約結婚の意味はないな。結婚したい」と津崎氏が思い、その意志をみくり氏に伝えるのも自然なことだ。
みくり氏も津崎氏の事が好きなので結婚その自体は嬉しいのだが、
結婚、同棲という形はこれまで通り。しかし今まで貰えてた家事代行の給与は結婚したら貰えなくなる?給料貰えなくて残業代ゼロでモチベーション下がった状態で今まで通りの家事を死ぬまで永遠にやらなければいけないの?結婚ってひょっとしてブラック企業?!」というジレンマに陥り、結婚を素直に喜べなくなる。
津崎氏の事は無論好きだが、結婚という制度は好きになれないという流れ。
ここで「あ、契約結婚っていう設定は面白おかしいラブコメのためだけじゃなくて、この問題提起のためにあったのか」とわかる。
勿論面白い漫画を描くという目的で描いてるんだろうが、この漫画の芯はこの議題だと思った。
作者あとがきを読むと、この展開については読者から賛否両論あったという。
仕事漫画として読んでた人は「そうよねえ、有償だったものが無償に‥」と思い、恋愛漫画として読んでた人は「結婚しても金欲しいとか!この女どこまで欲張りなの!」と怒る読者がいたらしい。
読んでた僕は男なので津崎氏に感情移入して「好きあって結婚できるんだからそれはいいじゃん‥」と思いかけたが「いや、この漫画はそもそも、みくり氏が『働きたい!社会で自分の能力を振るいたい!』という漫画だった。決して『恋がしたい!結婚したい!』というのが先に来る漫画ではなかった」という事を思い出した。あくまでも東京でサバイブしたがってるうちに流れで津崎氏と恋に落ちただけだ。
だから、みくり氏のその発言について考えるのが筋だろう。
この部分を読んで、自分が結婚という常識に対して思考停止して何も考えていなかった事を思い知らされた。
それはそれで素晴らしい事だが、だからといって当初の目的が消えるわけではない。
では、この問題を二人で解決しなければいけない。今までやってきたように。
おれは男だし、そもそも結婚すらしていないくせに、自分が、みくり氏の立場だったら‥と想像してみたが、やはり自分も同じように思うのかもしれない。逆に「好きな人に尽くすのが当たり前でしょう」と思うかもしれない。しかしまあ、こればっかりは女じゃないからわからない。
世の中の奥さん方も、みくり氏と同じように思いながら仕方なく家庭に入った人も多いのかもしれませんね。。
今までそんな事考えた事は一度もなかった。
今まで考えた事ない事柄を提示されて脳の使ってない部分が活性化された。
この部分が一番面白かった。
何だかんだ言ってフィクションの一番いいところは、こういった部分だろう。
津崎氏も「僕は今まで家事してもらって当たり前だと思っていた‥」と自分を恥じる。
のんきに勃起ばかりしてもいられないということか。。
一生、勃起だけして過ごせたらいいのにね。。
しかし前述した通り、みくり氏は津崎氏との結婚自体が嫌なわけではない。結婚という制度が疑問なだけなのだ。
みくり氏は一旦間を置いて考えるため一ヶ月の別居を申し出る(だが家事やデートは続ける)

 


8~9巻。みくり修行編~ラスト
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別居中のみくり氏は出戻りの元ヤンの友達やっさんの八百屋を現物支給で手伝う。
そして、この寂れた商店街の青空市を企画して実行する。
やってくれと言われた、みくり氏は今までのように「友達だからって責任ある事をタダ働きしたくない!お断りします!」と強く言う。
彼女のこの姿勢、好きだね。これが言えないがあまりタダ働きするハメになる日本人が多い。特にデザイナーなどのクリエイティブ職の人は「好きなこと仕事にしてるんだからタダでやれや!友達だろうが」とタダでやらされがち。
しかし色々あって、みくり氏は日給三千円で請け負い、頑張る。
見てると、みくり氏は色んな面で有能に見えるのだが何故、就職難民&派遣切りにあってしまったのだろうか?
考えたけど、みくり氏は自分の有能さを一切隠さず丸出しにしてるし自分の持論や主張をバンバンしてしまうから生意気だと思われたのだろう。日本の大多数の忖度社会では好かれにくい女性かもしれない。
別につまらないわけではないが、このみくり氏修行編は結構長く感じた。
津崎氏も殆ど出てこなくなるし。やはり本作はみくり氏の話なんだろう。
同時に百合ちゃんと風見との触れ合いも描かれる。
輝いているみくり氏を見た津崎氏も、もっとやりがいのある会社へと転職する。
みくり氏も青空市へ協力した仕事を通じて、コンサルタントに興味を持つ。
9巻は色々なキャラ同士が付き合い始め、お互いの気持ちや都合をすり合わせて契約を交わすという「キャラ同士の相談」が多かった。相談に次ぐ相談。
そういった「お互いの思いは相談して決めよう」というのがこの漫画で、良いところでもあると思うが、正直言ってそういった相談はコマとコマの間で行われるような事のような気がしてならなかった。
最終的には色々な事にケリがついたのでスッキリしたが、正直フィクションとしての盛り上がりは7巻くらいで終わってる気がした。
主役の2人が折り合いをつけて元鞘に戻る様や、サブキャラの話、色々あってつまらないわけではないがあまり盛り上がらなかった印象、ささっとまとめて終わった印象だった。
百合ちゃんと風間の恋愛は面白いので、別の漫画にした方がよかった気もした。
まあ人生とは答えが出ないし苦難が延々と続くものなので、こういう終わり方もリアルといえばリアルだと言えなくもない。


まとめると、みくり氏と津崎氏のもどかしい恋愛と「結婚とはブラック企業?」という問題提起、この2つが特に面白かった。
著者の説教も共感できたし。
それと全巻読んでのざっくりした印象は「みんな楽しそうでいいな」って事だった
だから自分も頑張って面白くしようと思えたし、総合すると良い漫画だと思いました。

 


そんな感じでした

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