gock221B

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『パッセンジャー』(2016)/あまり大っぴらに擁護したら嫌われそうだが共感できる主人公

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原題:Passengers 監督:モルテン・ティルドゥム
製作国:アメリカ 上映時間:116分

面白かったのか面白くなかったのかよくわからなかった映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 (2014)」の監督による最新作。先週観た
藤子F不二雄のSF(すこし・ふしぎ)短編のような設定一発、そのワンアイデアスター二人で突っ走るB級SF映画で期待が高まった

Story
近未来。冷凍睡眠された5000人の乗客を乗せた宇宙船アヴァロンは地球から遠く離れた移住地に向かっていた。
小惑星がアヴァロンにぶつかった小さな機械トラブルで、エンジニアのジム(クリス・プラット)の冷凍睡眠装置の冷凍が解除されてしまった。
しかし、ジムが目覚めた地点は地球を離れてまだ30年しか経っていなかった!
他の乗客が目覚めたり移住地に到着するのは90年後!
再び、冷凍睡眠で寝ようとするが睡眠装置は完全にぶっ壊れており不可能!
乗務員を起こそうとするが、彼らは超厳重で開けられないブロックで眠っておりコンタクト不可能!
どうしようもないので宇宙船の会社に苦情のメールを出したが
「メールを送信しました。届くのは19年後、返信が返ってくるのは最短で55年後デス」
と言われる。
つまりジムは残りの一生をアヴァロンの中で過ごさなければならなくなった。。
仕方なく一年間ダラダラと金持ちニートのような暮らしをするジム。
そんな彼は睡眠装置で寝ているジャーナリストのオーロラ(ジェニファー・ローレンス)に惹かれ、彼女を目覚めさせたくなる。。

という話。
この映画「ドクター・ストレンジ」の時に予告編で観たときから気になっていたぜ?
これはもう設定やストーリーが、もうアホにでもわかるハイ・コンセプト。
予告編で、誰が見ても好感度しかないクリス・プラットが「一生ひとりぼっち‥泣」と言ってる数秒だけで同情感が高まりまくって今すぐにスクリーンの中に飛び込んでいって「僕もいるよ!」と言ってあげたい感じだ。
そしてそんな彼の前に健康なジェニファー・ローレンスが現れて‥というこの予告編には否が応でも期待が高まりました。日本はまだまだ豊かになりますぞ~
「自分以外が目覚めるのが90年後」「宇宙船会社へ出した苦情への返信が帰ってくるだけで74年かかる」という設定の意地悪さが絶妙すぎて笑ってしまう。

動き出したら止められない巨大な機械のように世界そのものがSEXさせるよう迫ってくる世界
パツパツの肉体の30代半ばという一番SEXしまくりたいエロい年齢の男女が、Apple製っぽいツルンとした白い宇宙船内で二人きり。。
これはもうSEXでしょう。
田舎のお父ちゃんお母ちゃん。
クリス・プラットジェニファー・ローレンスは今から
セックルをする
短い予告編の中で凄く「孤独」と「SEX」を感じました。
ここで言うSEXというのはエロス全開の娯楽としてのSEXではなく、
純粋なコミュニケーションとしてのSEXの事です。つまりセックス
関係ないけど僕は最近こういう「世界そのものが自分を特定の誰かとSEXするしかない状況に追い込む設定」が凄く好きで、映画の設定で一番興奮したのはデヴィッド・クローネンバーグの「イグジステンヅ」で、VRゲームの中でヒロインが突然主人公とSEXしようとしてきて主人公が「ど、どうしたんですか?!」と言ったらヒロインが「ここでSEXするようプログラムで決められてるから仕方ない」と言った時でした。
「エロスとしてのSEX」ではなく「他にする事ないし、他に女性が居ないので彼女を見るしかない」という「決められ」による快感だと思った。
自分の目の焦点が完全にジムに同化してしまい、オーロラにしか目がいかない事から来るSEX感だ。
それは自分がいい歳をして非常にモラトリアムな性格だからかもしれない。
「この世界はある程度自由だから好きな事をせよ」という現代社会に生きていると、広大な自由を感じる反面「自分は今してる事以外に、本当は向いてるものがあったのでは?」という不安にも絶えずつきまとわれる。
一方「これだけやってろ」と言われるとそれをやるしかない(父親に言われれば反発したくもなるが世界=神そのものに命じられると従わざるを得ない)。
その場合、窮屈ではあるが自由からの恐怖からは逃れられる。
そう思うと俺のこの世界に方向性を決められることに覚える快感は、後ろ向きな感情でしかないのかもしれない。まあいい。
この話だけで延々と書けそうだが映画と関係なさすぎてきたし、この話はここまでにしましょうかね?こいつにスパゲティを食わせてやりたいんですが構いませんね!

ジムはひとりぼっち
孤独な主人公ジムは身分が高くない労働者なので、朝食などはパッサパサな粗末なものしか食べられない(オーロラはVIPなので最高級のものが食える)
ジムの話し相手はバーテンアンドロイドだけ(人間そっくりだがジムをガッカリさせるために下半身だけ異常にわざとらしいロボ下半身なのが可笑しい)。
静謐な宇宙船のルックも相まって前半は若干「シャイニング」めいた雰囲気を感じる。
僕はApple製品そのものはともかく、SF映画に出てくる宇宙船がApple製品っぽく白くてツルンとしてるデザインは凄く嫌いなのだが(スターウォーズみたいにカクカクして汚れてるものが好き)本作に限ってはapple製品っぽい宇宙船が内容にマッチしていたね。
主人公ジムは、オーロラの寝顔を見たり彼女の文章を読んでる間に好きになってしまう。
一生の孤独。
しかし彼女の冷凍装置を解除すれば「究極の孤独→好きな女性と一生2人きり」という、正反対のものに変わる。
だが、それは彼女から残りの人生を奪ってしまうことになる。ある意味殺人に近い。
という事でしばらく「いや‥そんな事しちゃだめだ‥俺はしないぞ」とバーテンロボに語りつつも、ぼうぼうに伸びた髭を剃ったりして、日に日に彼女を起こす気満々な様子が伺える。
そして遂に彼はオーロラを起こしてしまう。。
これはジムのエゴのみの行動で100%彼が悪い事なのだが誰が彼を責められようか。
死刑囚だって看守とか他の受刑者と喋れるわけですからね。
毎日、寝顔や著作やSNSを見てて、遂には自分のために目覚めさせて黙ってる‥というこの役は世界で今一番好感度の高いクリス・プラットじゃないと不可能だっただろう。
他の人がやったら絶対にキモい。
いや後の行動込みのクリス・プラットであってもキモいという人は多そうだ。
ただ‥ジムは‥寂しかったんや‥
「寂しかった」という理屈も通じない世界なんだが、そもそもジムの人生これで終わりだからね。自分勝手な賭けに出ても仕方なかろう
‥と妙に擁護したくなる。
ジムは、自分がオーロラを目覚めさせた事は黙って偶然を装って知り合う。
ここまでが第一幕‥前半。

中盤以降
何か設定だけでいっぱい語ってしまったが映画はまだ始まったばかりだ。
第二幕、ジムとオーロラの人となりが語られる。
二人はゲームでバスケやダンスしたり、食堂で食事したりバーで飲んだりお喋りしたり宇宙遊泳したりしてどんどん仲良くなり、やがて結ばれる。
かなり段階を踏んでいる。初エッチの時もオーロラが「やっと?w」と言うくらいだ。
というか、そもそも僕に言わせれば会話やバスケやダンスや食事や飲み会とか‥全部SEXみたいなもんですけどね。。むしろ会話とかダンスに至ってはSEX以上にSEXな気もしますがね。。
SEXって一体何なんでしょうね!?ぼくのあの帽子どうしたでしょうね?
このSEX、一時預かりして(預かり?)「人間のSEX」と言い換えてもいいですかね!?(もし、それはダメでもナランチャにスパゲティを喰わせる事だけは許してほしいものです( ´・ヮ・`))
FUCKしてたらそれはもう畜生‥動物なら誰でも出来るそのままのSEXじゃないですか
それならば人間のSEXとは疑似SEXの事ではないでしょうかね。
伝わる人には伝わりましたね?ですから今日は説明は省きます
オーロラはジムの想像通り良い女性だったし、ジムの態度も爽やかな紳士そのもの。
ただ、ジムが自分のエゴでオーロラを目覚めさせ彼女の人生を自分のものにしてしまった事以外は‥。
勿論、しばらくしたら全部バレてオーロラはジムを殺そうとするほどキレまくる。
バレたら嫌われる事はジムが一番わかりきってるので彼女の怒りを甘んじて受け、二人は険悪になる。
大して広くない宇宙船内ですれ違い生活をするのはキツい。
いや世の上手くいってない夫婦もそうか、と一瞬思ったが世の夫婦と違って本作の二人は、お互い以外に愛し合う者が一生いないのだ。
つまりオーロラがジムを嫌うという事は、我々が(異性愛者だとして)世界の総人口の半分‥つまり36億9473万8450人を拒絶するも同然だ。大袈裟に言うなら
そして二人の仲に亀裂が入ると同時に宇宙船の設備が不調になっていく展開。
お洒落だね。
まあ映画好きなら、ここまでの展開はわかりきった事だ。

それからどったの
公開間もないから第三幕以降の事は書かないでおく。
ジムとオーロラは一旦仲良くなりました。しかしジムがオーロラにした事はかなり許されない事で、それをどうするか。
どうすればジムはオーロラに許されるのか?という事と宇宙船の不調がシンクロする。
見方によっては問題の棚上げ、問題のウヤムヤ化と言えなくもない。
違う映画だったら「アンチクライスト」的な悲劇になっててもおかしくない。
観る人によっては「そんな事してもジムがした事の動機とは直接関係ないから許されないでしょ!」という意見が多い気がする。
特に正論大好きな日本のネット民はジム否定派が圧倒的に多い気がする。
だけど、ジムがした事は完全に孤独、そして片思いから来たエゴなわけだが、そもそも恋愛の始まりや恋愛の行程自体が(よほどの人格者以外は)エゴから始まるものだったりしますしね。。恋愛自体がお互いのエゴをすり合わせて合致していく作業という言い方が出来なくもない。
どうもジムに感情移入してしまったために、何とかジムを擁護したい気持ちが抑えられない俺だった。死ぬしかない
そんな本作だが、こういう、あらすじを聞いたり予告を観て超観たくなるハイコンセプトな映画にありがちなんだが「前半最高!→中盤以降→ま、まあまあ‥いいんじゃない?」とテンションが下がっていく映画の枠からは出なかったのが残念だった。
最後まで観ると「何だったんだろうこの話‥」という気がしなくもない。
これはSF映画というよりも「孤独な都会人の恋愛」という側面をクローズアップさせるための舞台装置としてのSF設定だからだろう(しかも男側だけの)
好感度高いスター二人じゃないと成立しなかっただろうな。
結論だけ言うと大した映画じゃないが、観に行っても最後までは楽しめる。
何か相手をビンタしたら偶然相手の頬に蜂が止まっていて結果感謝されたみたいな力技なラストを感じたが‥。ジムに妙に感情移入してしまい嫌いになれない。だがジムを擁護するのはおそらく無理なので本作の感想からはもう撤退する事にする。

そんな感じでした

www.passenger-movie.jp

www.imdb.com

www.youtube.com

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