gock221B

映画その他の感想用ブログ(2015年開設) http://gock.flavors.me/

「破獄(2017)」看守と囚人どちらが本当に囚われているのか。中こそ外、外こそ中

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監督:深川栄洋 放映日 2017/04/12 放映時間:138分

録画してたこれを観たら思いのほか面白かった。
原作小説とか昔作られたドラマは全然観てない。
一言でいうとアメリカとの大戦中、歴史のうねりの中の日本。
各地の刑務所で、看守部長・浦田進(ビートたけし)と脱獄の達人、無期懲役囚・佐久間清太郎(山田孝之)の対決が描かれる。
ドラマなので思ってる事を全部口にした喋ったり説明台詞も多く、それは深みを奪ってるので不満だったが、それ以外は硬派な感じだった。
邦画や日本ドラマでありがちな、ジメジメとウジウジした場面は少なくて、ドライなシーンが多いのも良かった。
だがCM行く度に「遂に脱出した佐久間!二人の対決の行方は!?」みたいなアホみたいなテロップが一々出てくるのは、その度に萎えるので止めてほしかった。

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脱獄王・山田孝之は以前の刑務所で優しくしてもらった看守たけしに好感を持っていて彼の言う事は比較的よく聞く。
しかし、たけしに裏切られたと感じるとすぐさま、たけしが当直の夜に脱獄して社会的ダメージを与える。
ドラマの冒頭、二度目の脱獄した山田孝之がわざわざ、たけしの家を訪ねて来て「秋田の刑務所の看守がひどいので何とか言ってやってください」という事をわざわざ訴えに来て捕まる。
かなり素直な人物だ。
前半、二人の背景が描かれる。
山田孝之は、貧困で遊郭に売られてしまっていた妻(満島ひかり)を借金して身請けするが、借金で首が回らなくなりそれが犯罪を犯す切っ掛けになった。
たけしは真面目で立派な看守だが、関東大震災の時に受刑者達を守ってる間に、妻と息子が死んでしまった。娘(吉田羊)は生き残って成長してるが、父の事は「家庭を顧みず仕事を取った父親」と思われて距離を取られている。
山田孝之の妻と子は彼が帰って来るのを待ってるが、山田孝之は受刑者なので帰れない。そんな青年。
たけしはカタギで自由なのだが、唯一の家族(娘)からは帰って欲しいとは思われていない(‥と、たけしは思っている)。そんな老人。
2人は相反する合わせ鏡の様な人物として描かれている。
そして山田孝之は、たけしの死んだ息子と同じ歳だというので、疑似的な父と子の対立の話って感じで観ることもできる。
本編の殆どの時間は、この2人の対峙と収監中の辛い責めの描写や、当時の戦時中の日本の空気などが描かれる渋いドラマだった。
中盤、非常に厳しい網走刑務所でめちゃくちゃシゴかれた山田孝之が遂に脱出する場面はアメリカ映画の様なカタルシスがあった。
f:id:gock221B:20170414193858j:plainバーン
ちなみにこのキャラクターのモデルとなった実在の人物にも同じエピソードがあるようだ。  白鳥由栄 - Wikipedia

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ちなみに漫画「ゴールデンカムイ」の人気キャラ、脱獄王シライシのモデルもこの同じ白鳥らしい。
ゴールデンカムイで、シライシが鳥を使って脱獄するエピソードがあって、このドラマでもたけしが「お前、鳥好きなんなら許可取ってやるから鳥を飼うか?」と言う場面あったので同じエピソードが来るのか?と思ったが鳥の飼育は辞退したので、なぁんだと思った。


繋がれてるのはどっちだ
時代は戦時中なので、看守は受刑者に対してめちゃくちゃ厳しい。
腹が立ったらボコボコにするし冬は寒さで凍死する受刑者もいる。
だがその一方で食事は看守より多いし、看守は夜ずっと起きて見回りしていないといけないし看守なら赤紙が来たら戦争に行って死んでしまうが、受刑者は夜は布団でスヤスヤ寝ているし戦争に行けないので罪のない看守が戦場で死んでも受刑者はずーっと生きていられる。
山田孝之はずっと牢に繋がれていて看守は彼を自由に殴ったり責めたりできるのだが、山田孝之は常に後ろ手に手錠された状態から若い看守を無視したり侮辱したり色々してノイローゼに追い込んでしまう。
山田孝之は脱獄しやすくなる様に看守を睡眠不足の豆腐メンタル男に仕上げようとしてこんな事をやってるわけ
看守には自由がある代わりに社会的プレッシャーに晒されているのだ。
たけしが前半「あまり彼に対して厳しくしない方がいい。彼が怒ったら逃げてしまうから」と言うのが印象的だった。
観てると山田孝之はスンナリと脱獄してしまう(もう殆ど、彼が「そろそろ出るか」と思いさえすれば、その日の夜にはもう塀の外に出てるって感じ)
こうなってくると「一体、繋がれてるのはどっちだ」と、どちらが支配してるのかわからなくなってくる。
その感覚が面白かった。
このドラマは色んな興味深いポイントやテーマがあるが俺はこの「看守と囚人」というポイントのみに興味を抱いた。山田孝之の犯罪(突発性の殺人事故)などは彼を塀の中に入れる舞台装置にしか過ぎない、二人の家族環境もあまり注目するポイントとは思えなかった。俺はやっぱ「看守と囚人」だな
だから前半はながら観してたが、後半は集中して観ていた。

中こそ外。外こそ中
4回の脱獄を経て、彼は脱獄王と呼ばれ世間から称賛される。
脱獄するとたけしは残念そうな顔をして
「愚か者。逃げてもお前に自由はない。この日本自体が巨大な檻だ」と言う。
それは日本の社会そのものや、はたまた金のない指名手配犯が脱獄しても自由なんてない、など複数の意味を同時に言ってた感じだった。
実際に、山田孝之は散歩に行くかのような軽さで脱獄するが、妻子の待つ家に帰るわけにもいかず山奥で木の実やウサギを喰って過ごす。
当然、友達など出来るはずもなく山ん中で一人ぼっち。獣の生活と大差ない。
その一方、刑務所の方が食事や寝床や話し相手や医務室があって何十倍も快適だ。
こうなるといくら脱獄王と呼ばれて称賛されようと、外に出て自由があるより刑務所で刑期を終えた方がいいんじゃないか?という感じになり終盤はその「名誉では食えない」って感じとのせめぎ合いが面白かった。
中盤までは「看守と囚人、どっちが囚われてる者だ?」って感じだったが終盤はそのように「塀の外と中、ほんとうに自由なのはどっちなんだ?」という事がどうしても頭に浮かんだ。
昔、松本人志のコントであった台詞だが
「中こそ外!外こそ中!」
って感じの中なだった、正に。

それにしても役のせいかもしれんが先週観た「ゴースト・イン・ザ・シェル」の時も思ったが、たけしの喋り方や眼差しが優しすぎて「ひょっとして、たけしもうすぐ死ぬだろうか」とか思えてしまって怖い。
この両作での優しさはそれぞれ役のせいだと思いたい。何となく。
だが指示を無視したせいで脱獄されてしまう原因を作った勝村を見る(つまりドアップ無表情でカメラ=こちらを見てる)カットは怖かった。。殺されるかと思ったが、やっぱまだ元気だなと思って安心した。
囚人や人生について色々考えさせられて面白かった。
どっちかというなら映画で観たかったもんだけど。
あと満島ひかり、モンペ履いて畑汚れできったない顔してるんだが顔が小さすぎるし可愛かった


そんな感じでした

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