gock221B

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「ハクソー・リッジ(2016)」メル・ギブソンは映画が上手すぎるし面白すぎる。コンビーフみたいな脚になりたくない

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原題:Hacksaw Ridge 監督:メル・ギブソン
製作国:オーストラリア/アメリカ 上映時間:139分

タイトルを耳にするたびにどうしても歯クソが頭に浮かんでしまう本作を観た。
メル・ギブソンの映画といえば「メルギブ本人の人格は最低だが作る映画は誰よりも死ぬほど面白い」と評判だが彼の映画全然観てない。と言ってもメルギブはレイシストだから‥という理由ではなく、単純に「キリストが拷問されるだけの映画か‥」「土人が主人公か‥」と設定に食指が動かなかっただけだ。観た人の話を聞く限り観れば面白いのは間違いない。そのうち観る
PIXER映画も観る前に「魚が主人公か‥」「よりによって自動車が主人公‥」と食指が動かない事がよくある。観れば数分で面白いわけですけどね
勿論、フィクションのキャラクターは、キャラクター性を詰め込んだ只の入れ物なので何が主人公だろうが面白さには何の影響もないのはわかってる。
ただ映画観る前に観る気があまり沸かないというだけの事だ(似たように、実は面白さには影響しないが観る気が沸かない要素が「前日譚」)
本作も日本公開前から既に大評判だったが「銃を持たない衛生兵の映画かぁ‥」とあまり観る気が沸かなかったが実際に観れば始まってすぐ最後までずっと面白かった。


第2次大戦末期、良心的兵役拒否者としては史上初めてアメリカ軍人最高位の名誉勲章メダル・オブ・オナー)を受章した、銃を持たない衛生兵デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)を描いた映画。
デズモンド・T・ドス - Wikipedia
彼の生い立ちと青春→ブートキャンプと軍法会議沖縄戦の前田高地「ハクソーリッジ」での日本軍との死闘‥を描いた実話を元にした戦争映画。

前半の前半(ドスの生い立ちと青春)
幼い頃のドスとその兄弟、父親ヒューゴ・ウィーヴィング)は第一次世界大戦に出兵した生き残りだが戦場で仲間たちが全員無残な肉塊になって死んだことでPTSDになって酒浸りになっており、たまに酔っ払って妻や子供たちに暴力を振るっていた。
だがめちゃくちゃ深刻なヤベえDV父親とまではいかず心が壊れただけの善良な父親、妻も「お父さんは戦争で壊れてしまったので仕方ないのよ‥」と慮ってる描き方。
たまに酔った父が暴れはするものの家族の形態は崩れておらず、それなりに幸せに暮らしてた感じ。
ドスは幼い頃、兄弟喧嘩をしている時にキレてレンガでブン殴ってしまい兄弟が死にかけた事で呆然と、神の啓示を受けたような状態になる。
更に思春期くらい?の時、いつものように母にDVしている父が遂に銃を持ち出したので銃を奪って父を撃ちそうになる。
と、そのような事を経たせいか、ドスは他人の怪我や命を過剰に救いたい男に育った。
2つの前例を見てると「ドスは(人間は)反射的本能的に人を殺すようなところがある」と言いたげ、それがあるからフリになってて後半ドスが人を救いまくる場面が良い感じになった気がする。
やがて看護師ドロシーと恋愛し婚約したドス。彼は医者になりたいが学がない。
激化する第二次世界大戦で衛生兵になるべく陸軍に志願。
息子達が戦場に行ってしまう事を知った父は泣き崩れる
という序盤は凄く興味が持てそうもない展開だが、めちゃくちゃ面白い。
フィクションの、こういう生い立ちシーンや回想シーンは大抵つまらないが、これは本当に面白かった(ジョジョスティーブン・キング小説の回想シーンなども、本編より面白かったりするが、他のつまらない回想との違いは何なんだろう?いつかまとめて考えてみたい)
メルギブ映画初めて観たが噂通り「映画が上手い」としか言いようがない。


前半の後半(ブートキャンプと軍法会議
衛生兵になるため、陸軍での訓練が始まった。
ブートキャンプシーンは「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹でお馴染みのアレ。鉄板で面白すぎる光景だ。このシーンだけ三時間くらい続いてもいい
暴力でシゴいてはいけないので、ありとあらゆる毒舌や無理難題にYESと言わせたり、あとは訓練追加によって軍に適応させるあのやり方。
つまらない生い立ちがあんだけ面白かったので、鉄板で面白いブートキャンプは数倍面白い。
ドスは自身の信念から、他人を殺傷する武器での訓練を拒否。
そんな奴いたら士気が下がるので陸軍はドスに辞めていただきたい。
だがドスの意見は筋が通っておりクビにする事ができない。
仕方ないので教官はドスに辛く当たるが無理。ドスが居るという理由で部隊に連帯責任を取らせて休日を奪い不必要な訓練をさせて、恨みを買った部隊員にドスをリンチさせたりするが結局ドスは折れなかった。
だが教官や、部隊の仲間も元から意地悪な奴らというよりも、やりたくないが仕方なく意地悪してる奴らとして描かれている。
米軍の酷い話を色々聞いてるせいか現在でも、こんな攻撃力ゼロの痩せた青年がいたら虐められそうなのに第二次世界大戦の頃だからね、もっと連日ドスが輪姦されまくるんじゃないかとヒヤヒヤして観てたが一回軽くリンチされたくらいで済んでよかった。
むしろ責め立てる教官の方が逆に傷ついた顔をしている。「戦争だけで大変なのに、こんな事させないでくれよ‥」といった感じだ。
軍法会議は感動的な展開。
それにしても父親役のヒューゴ・ウィーヴィングは、頑張ってだらしないスタイルでダメ親父を演じているが顔が端正すぎ眼が鋭すぎだと序盤では思っていたが、この辺になってくると「昔、立派なイケメン青年だったが壊れてしまった。だが完全に壊れたわけではない老兵」という感じが絶妙に出てるなと思った。
別に、映画の展開を伸ばしてここがクライマックスの良心的兵役拒否者の軍法会議をテーマにした映画であっても充分面白いと思った。ここでまだ映画の半分くらい


後半(オキナワ・ハクソーリッジ)
後半は丸ごと全部、1945年、沖縄戦の激戦地、前田断崖aka弓鋸尾根(ハクソーリッジ)での死闘が描かれる。
ハクソーリッジには網状の縄がかけられており、そこを登ったところで抵抗している日本軍を殲滅して占領しようとしている。
本作の宣伝では沖縄戦の映画だとは一切触れられていない。
一説では「それを宣伝で触れると、アンジェリーナ・ジョリーの戦争映画の時みたいに観てないしそもそも観る気もない右翼の方に反対運動されるからではないか?」という理由からではないかと言われている。が、真偽の程はわからない。とりあえず、その通りだという前提で考えると、公開されてよかったとしか言いようがない。
戦闘の描写は「プライベート・ライアンランボー最後の戦場より激しい!」と評判であった。確かに顔面や腸がブチ撒かれたり、両脚が吹っ飛んで肉がコンビーフみたいになってたり、ウジが湧いてサンゲリアのゾンビみたいになった死体をドブネズミが喰ってたり、上半身だけの死体を盾にして突撃したりするところが頻繁に映るが、想像していたほど陰惨さは感じなかった。
どちらかというと画面にはあまりグロが映らなかった「野火」とかの方が陰惨だった。
というのも本作の場合、激戦区だから死ぬ時は、ほぼ死に物狂いで頑張った末にグチャグチャとはいえ即死だし、後半で一人残ったドスが英雄的な活躍してるので神聖な雰囲気が流れ出すせいかもしれない。
あまりに過酷な戦闘描写で「戦争絶対ダメだし死んでも行きたくない。死んだり身体欠損した兵士は可哀想!」と思うがそれと同時に「戦争映画は面白すぎて最高だな。家に帰ったらFPSで敵を殺しまくりたいぞ絶対に」とも、相反する気持ちが同時に浮かんできて困った。
恐らくどちらも本当に人間の中にあるものなんだろう。
本作で英雄的な活躍(地獄のハクソーリッジに、仲間が引き上げた後も武器無しで残って75人もの負傷兵を一人で救った)するドスも、序盤の幼年期と少年期で自分の中の攻撃的な面を自覚した。それと闘うために救助したのだろう(多分)。
たにかく、どの民族どの考え方の人間も、良心だけではなく等しく残虐性があるのだという事を自覚する必要があるだろう。
‥と、いうような事は人間の殺戮の歴史(殆ど全ての期間、今でも他者を殺し続けている)を見れば小学生でもわかる事なのに「自分は‥もしくは自分が所属している枠組みの人たちだけはそんな酷いことは絶対にしない」と本気で思い込んでいる人がいるのが恐ろしい。
昔はそんな人はマンガの中だけに出てくるアホ(北斗の拳の雑魚敵とか)だけだと思ってたのに、社会に出たりSNSが盛んになるとリアルにいっぱいいる事を知って驚いた(しかも賢いはずの年長者や立場が上の方にこそいっぱいいるんだからな)。
まあ、とにかくドスの英雄的行為は、彼の自分との闘いなんだろう。
ドスの立派な信念を前半でたっぷり描いた後で「そんな信念‥持ってられないというか、どうでも良くなるわ」というくらいの暴力の豪雨をたっぷり描き、その雨が一時止んだ後でドスの英雄的救出劇が描かれる。
「武器無しで戦場でそんな英雄的行為‥できるわけないだろ!」という感じだが全てが事実なのでもう文句のつけようがない。
途中、洞穴で重傷を負った日本兵と目が合い、
「ん~、ジャップか。。。まぁいっかジャップも助けちゃえ♫」って感じでついでに治療するシーンは何か可笑しかった。
あとドスが編み出して上官に叱られた「ブラジャーもやい結び」で上官を救ったり、父親に使われて殴られまくったベルトでの人助けなどもどれも痛快でした。
それよりドスの兄弟の顔忘れたので誰が兄弟かわからなかった。
感動したという感じよりも、ただひたすら面白い映画という感じで観ました。
文句という程の事ではないが、頭からケツまでアメリカ人は(主人公を責めたり意地悪する者ですら)善人だが、日本軍は怖すぎましたね。
というかイーストウッドみたいに日本軍の側も描く映画じゃなくて米軍しかも主人公ドスを描くための映画だから仕方ないが、完全にただの「強いゾンビ」みたいなバケモノ扱いだったね。
「戦艦が爆撃しても何故か当たらず、決して諦めずに死ぬために突撃してくる悪臭を放つケダモノ」とか呼ばれてたしね。
それで「ジャップは衛生兵を最初に殺すから赤十字隠せ!」とか白旗上げて降伏しようと見せかけて奇襲をかけてきたりしたり、そのくせ日本軍の上官は一人だけカッコよく切腹してたりして本作の日本軍の姑息さには、映画の面白さも相まってムカついてくる。ドスが英雄的救出を行ってるのを日本軍が殺そうとしてばかりの最後の方になると「死ねジャップ共!」とか思って「あれ‥俺は何を‥」とか思ってしまう映画でしたね。
見えないけど画面の外で沖縄の一般人もいっぱい死んでいるし日本軍も切迫した状況なので姑息だなんだと言ってられない状況なんですけどね。
でも本作は米軍の側だけから一方的に見る「奴らを倒せ映画」だし、映画自体があまりに面白いしドスの偉さでそう思ってしまう勢いがありました。
もし何かの間違いでメル・ギブソンが戦意高揚映画とか撮ったら危険でしょうね。
きっとめちゃくちゃ面白くて戦争したくなるだろうから‥

 

そんな感じでした

『ハクソー・リッジ』〜作品の舞台をご案内します〜 | 浦添市

hacksawridge.jp

www.imdb.com

www.youtube.com

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