gock221B

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「スノーデン(2016)」魔術のような盗聴盗撮システム。恋人を描いたところは却ってリアリティを上げている

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原題:Snowden 監督:オリバー・ストーン 製作国:アメリカ 上映時間:135分

シチズンフォー スノーデンの暴露 (2014)」を先に観てしまったし、オリバー・ストーン監督作品はあまり好きでないので本作は観なくていいかな‥と思ってたが、スノーデンは興味あるのでやっぱ観た。
観てみると 、国民への盗聴盗撮の脅威とはどういうものか、というのを映像で可視化して具体的に見せてくれたのが良かった。また「シチズンフォー スノーデンの暴露」では語られてないスノーデンの私的な部分も良くて、やっぱり観てよかった。
何よりも単純に面白い。
オリバー・ストーンは反米的な人物だし映像によって煽る才能に非常に長けているので実際、盛ってる部分もかなり多いだろう‥という事を念頭に置きつつ、楽しむために全部信じて観るスタイルで感想を書こう。
あと専門用語とか細部など細かい記述は間違ってるかもしれんと予め書いとこう。
何故それらを今、前もって言ったのかというと単純にアホがバレたくないからだ


冒頭
2013年、香港のホテルにやってきた元NSA(米国国家安全保障局)職員、エドワード・スノーデンジョセフ・ゴードン=レヴィット)。
スノーデンを待っていたのはドキュメンタリー監督のローラ・ポイトラスと、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルド(ザカリー・クイント)。
部屋に入るとスノーデンは2人の携帯電話を取り上げ電子レンジに入れた(これで携帯の電波を傍受する事ができないそうだ)
スノーデン「このために、わざわざ電子レンジ買ったんだ」
(この場面や、パスワード打ち込む時に厚い布をスッポリ被って行うシーンはインパクトある。家に友人が来た時に真似してスノーデンごっこしたいくらいだ)
ジョセフ・ゴードン=レヴィットは英語できない僕でもわかるくらいスノーデンのヲタ臭い喋り方をコピーしていた。そしてそれ以上にグレン役のザカリー・クイントの似てっぷりが凄かった。
話がそれた。ガーディアン紙の記者も合流してインタビューが始まった。
スノーデンは、アメリカ政府とNSAアメリカ全国民の膨大な個人的なデータを傍受している事実を暴露し始める。
撮影しているローラ・ポイトラスは「シチズンフォー スノーデンの暴露」の監督だ。
だから今スノーデンが語ってることが聴きたければ「シチズンフォー スノーデンの暴露」を観ればいい。

www.youtube.comスノーデンが語る事は、あまりに厨ニ病の僕が喜びそうな内容すぎて「ひょっとして、我々が居るこの地球は冨樫義博が描いたものなのか」と思えるほどだった。
ここから、スノーデンがアメリカ軍に入隊するところから、さっきホテルに入ってきたところまでの回想シーンに入る。


スノーデン、ただベッドから降りただけで脚の骨がブチ折れて悶絶しながら絶叫!
911で揺れるブッシュ政権下のアメリカ。
愛国者の青年エドワード・スノーデンは米軍のブートキャンプに参加するが、連日の過酷な訓練で足を骨折してしまい除隊する。
‥「痩せ型のスノーデンの脚の骨に慢性的な負担がかかっていて、ついに折れた」と直後に医師からの説明が入るのだが、その前のスノーデンがベッドから降りると同時に「ボキッ」とコントのような効果音とともにスノーデンの脚がチョコレートの「小枝」を折るかのように折れて、
スノーデン「がああああああ!!!!」「くそがああああああ!!!
と悶絶しながら絶叫するシーンが面白すぎて爆笑した。
だって完全にコントみたいな間で、ジョセフ・ゴードンがベッドから颯爽と降りただけで突然脚がブチ折れて絶叫してのたうち回るところを想像してみて欲しい。
こんな脚じゃ、とても青い珊瑚礁に辿り着けそうもないスノーデンが「くああああああ‥」と痛みに堪える姿に、遠くからの「スノーデンがいない!スノーデンはどこだ?」などと「ストリートファイターII」のリュウのエンディングみたいな教官の声が遠くから聴こえてくるのもまた笑いを増幅させた。
めちゃくちゃ面白いじゃないの。。というか、この面白い場面いる?
「ー僕は軍に入隊したが骨折して除隊したー」とかナレーションで言えばいいのに。
いや、スノーデンが憧れていた軍の訓練で疲労がたまって脚が折れてしまうというこのシーンは、後でスノーデンの愛国心が折れる事を暗示しているんだろう。
それにしても面白すぎだ。


スノーデンの恋人リンゼイとの恋愛描写の必要性
お互いに「攻殻機動隊」が好きな事で知り合ったダンサー&フォトグラファーのリンゼイと付き合い始めるスノーデン。
話がそれるが、このリンゼイは本作で彼女を演じるハリウッド女優よりも本人の方が美人、という珍しいケース。

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めちゃくちゃカッコいい筋肉が出来上がるポールダンスやってるから身体つきもカッコいいしアートもしてるし優しいしスノーデンと趣味合うしスノーデンを支えつつ自立もしてるし命の危険に晒されても八つ当たりされてもスノーデンと別れないし、まあ映画だから良い部分だけ描いてると差し引いたとしてもリンゼイさんのパーフェクトな女性っぷりは凄い。
スノーデンとリンゼイが、仲良くしたり険悪になったりする浮き沈みも本作の軸の一つで、最初は「おいおい、恋愛はスノーデンの暴露とは関係ないだろ」とか思ったが観ているうちに、彼女との恋愛描写は本作の大事な軸の一つだと思った。
何しろスノーデンの暴露が行われた2013年当時のスノーデンとリンゼイは、あの住みたすぎる憧れのハワイに住んでいて政府の重要な仕事で勤務してて高給取り、そして前述の素晴らしい女性リンゼイと暮らしている。
スノーデンには恵まれた暮らしが死ぬまで保証されている。
そして暴露するという事は正義感や使命感と引き換えに、それらを全て捨てなければならないという事になる。目的通り暴露できたからよかったが、暴露の前に捕らわれていたとしたら自分や彼女が殺されていてもおかしくない。
想像するだけなら簡単だが、果たして正義感だけで全てを捨てて暴露なんて事ができるだろうか?
僕がもしスノーデンだったら出来ない。
他にもスノーデンと彼女がSEXしてる時にスノーデンはこっちを向いてるノートパソコンのカメラが気になって仕方がない(ガチで誰か観てる可能性がある)場面など、セクシーなリンゼイの裸を通して盗聴盗撮の恐ろしさを描写するシーンは面白いものが多い。
彼女や、スノーデンと彼女の恋愛を通して盗聴盗撮の恐ろしさ、そしてスノーデンの暴露の凄さを浮かび上がらせるという意味で、彼女の描写は必要。


全国民盗聴盗撮の恐怖
CIAのコンピューターの方の道に進んだスノーデン。
順調にその道の仕事に就くと、アメリカ国民が全ての情報を傍受されていた事実を知って驚くスノーデン。
ターゲットの銀行家の娘の部屋の、電源入ってないオフラインのノートパソコンのカメラに侵入して娘が着替え始るのが丸見え‥という「こういうことですよ」という事が一発でわかる映像はあまりにもインパクトありすぎた。
その娘がまた中東系で黒い布で顔を隠してるのにも関わらず、電源切ってるパソコンから丸見えになってるという‥オリバー・ストーンはこういうのうまいね。
ちなみにこれは、ある中東系の銀行家のウィークポイントを握るために探ってた場面。
事前にスノーデン達はパーティに出かけて銀行家と知り合う。
次に何か彼の弱みを握りたいので、彼の15歳の娘のFacebookに侵入して、更に彼女が好きな男のFBに侵入。
その男が他に何人の女とやってるのかも、男が不法滞在している事も一瞬で丸わかり。
そして、その男を国外退去させる→愛しの彼が居なくなったので娘は失恋で睡眠薬を飲む→娘が心配な銀行家の話を聞いてあげつつ酒を飲ませる→配置してあった警察に飲酒運転で捕まる‥
‥という流れるような一連の作業を、ダーティな同僚達が遂行する様が圧巻。
中東銀行家の弱みを握ることに成功。これで彼の担当する銀行の金はアメリカの思うがまま。また一体、操り人形ができあがった。
ヤクザがやってるような事を大国アメリカがやってるというインパクトはデカすぎる。
またこの一連のシークエンスはいちいちスピーディで面白いし裸も混ぜてるし上手いわ

悪魔のシステム
疑念を抱いたCIAを辞めるが何だかんだあって2年間、日本の横田基地に務めたスノーデン。
日本のシステムへもう取り返しがつかないほど食い込んでいるアメリカを見せる。
NSAアメリカがやってる全国民の盗聴盗撮を日本でもやろうとする‥が、それは日本政府に「さすがにそれはNO」と断られる。
‥だけど、やっチッたァァァァーーーーーーーッ!!
NSAはこっそりと日本のシステムを掌握したことが、さらっと語られる。
もし日本がアメリカの同盟国から外れるような事があればアメリカは、まるでトイレの電気を消すかのように日本全土の電気を一瞬でカチッ‥と消すことが出来る。
その気になったらスケベ電話をかけるのと同じくらいの手間ヒマで頭に来た日本の命を暗闇の中にひきずり込めるのだ。
日本は完全にアメリカに生殺与奪を握られている。‥と言ってもまあ、このシステム以前の僕が生まれる前からずっと握られてるので今更どっちでもいいと言えばどっちでもいいが。
「優れた科学技術は魔法と見分けつかない」という皆が大好きな言葉があるが、本作を観てると、この盗聴盗撮システムは正に悪魔の剣(つるぎ)。
この凄いシステムを地上に解き放ったのは誰だ!地獄の覇者魔王サタン、お前なのか!?まさか‥天と地の支配者、聖なる神よ、あなたでは‥?!byロードウォーリアーズbyホークさん
スノーデンや同僚たちも、まるでファンタジー世界の魔術師に見えてくる。
‥いや、どんな魔術師よりもアメリカ軍の方が強いので、こんな喩え意味ないわ。
更に後半、ハワイで国防の仕事に就いたスノーデン。
軍の要請があれば、携帯電話のGPS目掛けてドローンでピンポイント空爆できる。
しかし「誰が持ってるか」まではわからないので遊びで携帯を手にしてた何の罪もない子供を空爆してしまい、その死んだ子供の葬式に集まった失意の親族もうっかり空爆してしまう、あの出来事はちょっとショックだったな‥もう慣れたよ、という同僚の言葉を聞いてショックを受ける。
中東の指先一つで皆殺しにされてしまった親族は何も悪いことはしていない。落ち度があったとすればアメリカより少ない武力でアメリカに歯向かったという事だけだ。
しかも、その空爆システムは以前スノーデンが作ったものを改良しただった。
自分が作ったものが意図してなかった無差別殺戮に使われている‥。
同僚たちは「殺しじゃない‥国のためだから殺戮もレジ打ち同様ただの仕事さ‥」と自分に言い聞かせている。
もともと国への疑念が高まっていたスノーデンの疑念が更に高まっていく。


オリバー・ストーンの盛りはいかほどのものか
アメリカ政府の国民傍受システムは確実に悪いものだが本作を観てるとオリバー・ストーンは盛ってるなと感じた。
まあ実際にプライバシー侵害はアカンのでまあいいわ。
それにしてもエンターテイメント映画として、かなり面白く観れるように工夫していた。
スノーデンの師が「君の恋人リンゼイを盗聴盗撮してるぞ?」と静かに脅しをかけてくる場面があるのだが、壁全体ほどある巨大な魚眼レンズのTV電話で言ってくる。絶対にこんなTV電話じゃなかっただろwと思った。モニターがデカかったのは恐らく「1984」のビッグブラザーとか未来世紀ブラジルっぽく見せるためだろう。ラストシーン、ロシアの講演会でロボットの顔がモニターになっていて別の場所に居るスノーデンが顔を映してトークショーをするラストシーンも、さっきの悪堕ちした師のビッグブラザー映像の意趣返しのようで気が効いてるなと思った。
あと「全データ盗んだチップをギリギリDLしたが落として同僚が踏んづけちまった!」とかルービックキューブによるミッション・インポッシブルめいたチップ持ち出しも完全に創作らしい。
だけど、その辺は映画的な面白さを求めたケレン味優先なので構わん。
よく事実を元にしたフィクションで少しでも創作があったら「事実と違う!」とか言うアホがいる。思想的なものを180℃変えたりするのはさすがに酷いと思うが、ちょっとした面白さ優先の盛りは構わないだろうと思う。「ソーシャル・ネットワーク」でのマーク・ザッカーバーグの人格も本人とかけ離れた人物描写だった(本人はもちろん嫌だろうが、映画は傑作になった)
むしろ本作のそういう部分を、そのままガチで信じる人はそこそこヤバイと思う(そんな人がいるのかどうかは知らないが‥)。

結局どったのセンセー
前述したようにオリバー・ストーンは反米要素とスノーデン正義の味方描写を盛ってるとは思う。
しかし傍受システムの存在は事実だし「スノーデンは正義感から行った」という事も、僕は信じている(スノーデンはリスクに対してリターンがなさすぎる。それにスノーデンはあまりに純粋な目をしているし。あいつ‥あの目‥)
オリバー・ストーンが盛ってるとしても、個人の人間が撮ってるのだから大小の差はあれ思想が反映されるのは仕方ない。「ドキュメンタリーには一切の作為はないしフィクションは作り話なので俺はドキュメンタリーしか観ない!エニスィン!」とか言い出すオッサンがたまにいるが、たとえドキュメンタリーだろうと編集するのは人間なので盛りからは逃れられない。むしろ全ての物事は水で割って水割りを飲むべきだ。
盛りが嫌なら自分を変えろ、それが嫌ならこの世を変えろ。
オリバー・ストーンの盛りについて冒頭から繰り返してるのは何故かというと読んでる人への喚起‥ではなく、単純に物事を話半分に聞かないアホだと思われたくない、という俺の弱くて真のアホの部分からだという事も一応白状しておこう。
何か全体的にオリバー・ストーンを擁護してるように見えてきたが、僕はオリバー・ストーン本人も彼の映画も一部のものを除いて好きではない。どれも観客をアホだとでも思ってるかのように噛んで含めるように語るし大袈裟だし。
だけど、それを差し引いても本作は面白かった。
最後に観たオリバー・ストーン映画は「ウォール・ストリート(2010)」だから随分前。
そして前述した通り一見、暴露と関係なさそうなスノーデンと恋人リンゼイの描写を増やしたところが逆に本編の価値を上げている(ここが一番のファインプレー)
それと「xx万人の人に繋がっている‥」という部分は恐ろしさを表現した場面だが、地球という球の上を這いずりまわる微生物のような(もちろん僕や貴方も含めた)人間たちを思うと、オリバー・ストーンは意図してはなかったであろう人類への不思議な愛情が俺の中に湧いてきたのも事実。
そういう感じで想像してたよりずっと面白かったが、どっちかというと「シチズンフォー スノーデンの暴露」の方が良かったのは確か。
スノーデンの邦訳された動画はYOUTUBEにいっぱいあってどれも「HUNTERxHUNTER」でも読んでるかのように面白いのでオススメ。
クローズアップ現代+「プライバシーか?セキュリティーか? ~スノーデン“日本ファイル”の衝撃~」2017.04.27 - YouTube
↑この、つい先日の春、13枚の日本ファイルが公表された時に「日本にもこういったシステムは侵入してるのですか?」という日本TV局の問に対して、
スノーデン「私は、それを暴露する立場にはいません。ただ『それは素晴らしい質問です』とだけ答えておきます」
という上品でスマートな肯定意見を述べる様を見て「どこまで真実かはわからないが、やっぱスノーデンの人柄好きだわ」と思った。
次は、グレンが書いたスノーデン本も読んでみようかな。。

そんな感じでした

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暴露:スノーデンが私に託したファイル

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シチズンフォー スノーデンの暴露 [DVD]

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