gock221B

映画その他の感想用ブログ

「グラン・トリノ(2008)」クリント・イーストウッド/久々に観たが面白すぎて15分間くらいに感じた。深い感動と牧歌的な間抜けさ

f:id:gock221B:20171013173418p:plain
監督/制作/主演:クリント・イーストウッド 音楽:カイル・イーストウッド
原題:Gran Torino 製作国 アメリカ 上映時間 117分

Huluで「グラン・トリノの配信は明日まで!」と表示されていたので久々に観た。
思いのほか面白方のでつい2回観た。といってもDVD持ってるのだが、配信の方が画面が綺麗な気だし、ソフトは井戸、配信は川みたいに流れてる印象があるのか瑞々しい感じがするせいかソフト持ってるのについつい配信で観てしまう。
これは当然、公開日に観た。
イーストウッド過去作のセルフパロディとか、あの地域とかモン族とか車のグラントリノについてとかは色んなサイトに書いてるだろうし、漠然とした間抜けな感想だけ書くことにした。

 

f:id:gock221B:20171014043908p:plain
愛する妻に先立たれた元フォードの修理工だった老人ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。
彼に残されたものは宝物の愛車グラン・トリノ、あとは家と庭と老犬デイジーしかない孤独なジジイ。
友人はみな死んで、知り合いと言えばバーで語らう数名の顔見知り、あと仲良しの床屋のオッサンくらいしかいない。‥とここまで書いて「ジジイでこんだけいたら充分じゃない?」という気もしたが、ここで言う彼の「孤独」とは「友達がいないよ~」というものじゃなくて息子たちとの心の溝、そして彼が朝鮮戦争で(少年兵を含む)敵兵を殺した心の穴、を埋める相手がいないという意味での孤独だ。
息子2人はとうに町を出て家族を養っているが、ウォルトとの間に溝があり信頼関係を得られていない。孫達も只のムカつくガキだ。‥だけどミリオンダラー・ベイビーの家族みたいな邪悪なわけではなく普通の人たちだと思う。イーストウッドがイメージが崇高すぎるので嫌な奴らに見えてるだけだろうしウォルトとうまくいってない関係性を描写に反映させただけだろう(もし息子家族を主人公に映画を作ったらウォルトが凄く嫌なジジイに見えるのだろう)
そんな感じの孤独な魂を持つ老人ウォルトは病持ちで老い先も短いし、犬とカウチに座ってビールを飲みながらお迎えが来るのを待つ毎日。
近所の白人たちは皆、引っ越してしまい近所にはアジア人や黒人ばかり住んでいて、めっちゃ治安が悪く白人はみな引っ越したがウォルトは住み続けている。
ウォルトは後からやってきた移民の外国人たちをのきなみ嫌っている。

 

 

f:id:gock221B:20171014042515p:plain
隣に住むモン族の姉弟スーとタオ。
不登校で無職のコミュ障気味のタオは、従兄がいるチンピラ軍団にそそのかされ、ウォルトのグラン・トリノを盗もうとしてウォルトに見つかる。
ウォルトは、タオに絡むモン族チンピラ軍団や、スーに絡む黒人チンピラ軍団を成り行きで何度も撃退する。
スーとタオの親戚たちはウォルトに感謝して、彼の玄関に墓参りみたいに食い物を置いていく。
明るい人柄のスーはウォルトに頻繁に話しかけたり、自宅で行うモン族での食事会にウォルトを呼んだりする。
最初は彼らを疎ましがってたウォルトだがスーの人柄やモン族メシのうまさ、モン族のばあさん達にモテたりして彼らに溶け込んでいく(映画を喋れるのは若者たちだけなので、イーストウッドが会話するのは若者たちだけというのも象徴的で面白い)
モン族のシャーマンはウォルトを視て
「(お前は)過去の過ちが原因で生きることに意味が見い出せず他人との繋がりもなく、人生に幸せも安らぎもない」と言われる。ボロクソである。
彼は黙って二階の洗面所に行く。怒ったのか?ウォルトは鏡に向かってこう言う
どうにもならん身内より ここの連中の方が身近に感じる‥
なぜ鏡を見てデカい独り言を言ってるのかと言うと、それは「自分自身に向かって話しかける」‥という本来なら比喩表現でやるような事をそのままやってるからであって、ウォルトが思ってることと画面に映ってる描写が全く一緒なのだから観てるこちらの心にめちゃくちゃ入ってきて何だか可笑しかった。
そんな分かりやすい表現はイーストウッド映画には多いが本作は更に多い(十字架の形で斃れるとか勲章に寄るとか、タオの存在とか白人が皆越した地でイーストウッドだけが住み続けている設定とか‥全部)
ストーリーは物凄いシンプルなのに、一つ一つのキャラや設定や描写に色んな意味が込められている。シンプルなので誰が観てもわかるし、込めた意味がわかる人にはもっと面白いという造りが凄く好き。
そしてさっきの鏡に話しかけてるのと同じカットのまま横のドアをガチャっと開けてスーが「大丈夫?」と言ったりと、一事が万事この調子でテンポいいし観ていて非常に気持ちがいい。
治安悪い町中でタオやスーが不良に絡まれる度に「早くイーストウッド来てぇ!男の人きてぇ」と思わされるため、どんどん前のめりになっていく。前のめりになって転ばないように出した足‥の連続がダッシュになるのと同じで、前のめりにさせられ続けるせいか全編が15分くらいで終わったように感じた。
まあそれは大げさにしても全編80分くらいじゃないか?修行編とかもっと長くても良かったのに」と思ったが、調べてみると実際は二時間近くあったので驚いた。

 

 

f:id:gock221B:20171014034118p:plain
イーストウッドが悪者をボコボコにする時、いつもカメラがイーストウッドにボコられる悪者の視線になるという往年の演出。VRイーストウッドとでも呼ぶか。
今回もたっぷり殴られ蹴られて銃を向けられる。
よく考えたら応援しながら観てるのに、いつも「悪者を叩きのめすイーストウッドの視界」じゃなくて「イーストウッドに殴られるカスの視界」に入れられる事がだんだんおかしくなってきた。

 

f:id:gock221B:20171014044930p:plain
本作はイーストウッドの俳優引退作でもあり(4年後に「人生の特等席 (2012)」に出たけど)内容的にもイーストウッド監督作&主演作の集大成だった。
ストーリー的にも、色んなイーストウッドキャラの埋葬という側面もあるので出来ることなら「荒野の用心棒 (1964)」あたりから本作までの監督主演作、出演作などをあらかた観た上で観るとより感動する。
だが別に過去作を観なくても、そこそこはいい話らしく、いきなり観たんだろうアンジュルム中西香菜ハロプロのアイドル)が生涯ベスト映画!とか言うくらい感動できるみたいなので、いきなり観ても感動はできるらしい。
だけど過去作を観といた方が絶対に未知の感動‥、頭で理性的に考える部分の奥の心‥の更に奥のよくわからないゾーンからじんわりした未知の感動物質が湧き出るのは間違いない。
駆け巡る脳内物質‥β‐エンドルフィン、チロシン、エンケファリン、バリン、リジン ロイシン、イソロイシン‥。
他にもウォルトはアメリカとかアメリカ映画や西部劇とかを象徴してるのかなぁとかタオはどんどん増えていく白人以外のアメリカ人だったりアジア人を象徴してるのかなとか色んなものが、このシンプル過ぎる映画の各キャラにかかっていき本作を観てる時の脳内でそれらの感動物質が分裂、屈折、乱反射を繰り返し、あまり他の感動作では感じたことのない様な感動状態になるんだろう。
こんだけ色んなものが乗っかった映画もあまりないわけだし。
そもそもイーストウッドみたいな経歴の老人が未だに最前線で映画を撮ってるというのが前例がないので感じたことのない感じ方をするのも当然か。
この色々かかってる部分を取っ払って、違う俳優に演じさせたり監督が別の人だったりしたら「北の国」の話の一つでありそうな素朴なちょっと良い話にしか過ぎなくなりそうだ。‥というかイーストウッド成分を全て剥ぎ取ってストーリーだけにしてしまうと別にさほどいいストーリーでもないな。
更に、イーストウッドキャラは今まであまりにも強すぎたせいで‥、特に90年代イーストウッドキャラは神性を帯びてただけじゃなく「かなりのジジイなのに普通にテレポートするし異常な強さ」を備えていたりしたせいで、本作の感動的なラストバトルも変な見方をすれば「イーストウッドが準備万端に必死こいてお膳立てして、全力で全弾喰らいにいって何とかギリで死ねた。いや本当は死んでないが死体袋に入れてもらったので死んだことにしてくれ」という風にも見えてきて、そう思うと少し可笑しい。
これはさっき言ってた感じで今までイーストウッド映画観すぎてたら逆にメタ視してしまい、こう思ってしまうのかもしれない。
本作同様に、暴力の虚しさを本気で訴えるつもりで作ったはずだが、
伝説の賞金稼ぎを余裕でボコれるほど強いジーン・ハックマンが部下を大勢連れてるのに、風邪ひいて高熱出した状態のイーストウッドが2秒で皆殺しにしてしまうせいで暴力の虚しさどころかイーストウッドの異常な強さだけが印象に残った「許されざる者」を思い出した。とはいえ許されざる者はそれでも傑作なのだが、同じ失敗をしないように本作ではオチをああしたんだろう。
他人の感想を検索してたら「ウォルトはタオを育てて深い信頼で結ばれて幸福感を得れていたのと同時に、朝鮮戦争でタオと同じ年頃の少年兵を自分から進んでブッ殺してた忘れ得ない記憶もより強く浮かび上がる事になって辛かったはずだ」という意見を聞いて、それに今まで気づかなかったわ‥むしろたまに「この際だからモン族ギャングを普通に皆殺しにしても別にいいんじゃない?」などと思っていたことを恥じた。
それとも回想シーンがないせいか、「許されざる者」の主人公マニーや本作のウォルトが「女子供をバンバン喜んで殺してた」という過去が実感として沸かないというのもある。イーストウッドの崇高なイメージも強いしね。
そういえばあの神父は後半、いつもの顔の半分が影で真っ黒になる撮り方のせいで、まるでこの世界の外部に位置する神性を帯び始めて「あれ?ひょっとしてこいつ凄い奴なのか」と思い出した矢先に警官に両脇を抱えられて強制退場させられてて笑った。
まあ長いからもうやめよう。自分に話しかけるのは
www.youtube.com


そんな感じでした

「アメリカン・スナイパー(2014)」クリント・イーストウッド/時と共に増していく影が酸みたいに彼を侵す - gock221B

「ハドソン川の奇跡(2016)」クリント・イーストウッド/本作もさらっと凄い映画だった。久々にイーストウッド的ヒーローキャラが出た - gock221B

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

www.imdb.com

www.youtube.com

f:id:gock221B:20171014003433g:plain

広告を非表示にする
#sidebar { font-size: 14px; }