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映画の感想ブログ 🤴 おしずかに‥〈Since.2015〉

「ウインド・リバー (2017)」現実にある地獄の土地を舞台にした現代西部劇。今年一番面白かったかも‥⛄

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原題:Wind River 監督&脚本:テイラー・シェリダン
上映時間:107分 製作国:アメリ

 

アメリカでは僅か4館で公開された小品だが口コミで大ヒットした犯罪ドラマ。
第70回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、監督賞を受賞した。
ボーダーライン」などの脚本家によるメジャー長編映画監督デビュー作らしい。
そう聞くだけで、きっと陰惨で渇いたアメリカのダークサイドを見せる映画なんだろうなとボンヤリ思ってた。
ホークアイ&スカーレット・ウィッチというMCU師弟コンビによる映画なのでチェックしていた(エリザベス・オルセン演じるキャラもジェーン・バナーというMCUっぽい名前)。ジェレミー・レナーはメンタルが鬼強い射撃の名手だし、エリザベスは彼に教えを請う勇気ある女性だし「SHIELDに入らなかったホークアイヒドラに実験されなかったワンダの映画」にも見えてくる(ついでにNetflixパニッシャーを演じてるあの俳優も出てくるし)
この映画はウインドリバーという実際にある恐ろしい土地。そして「レイプ犯とか許さん!」という内容でもあるのだが長期間、数々の有名女優をレイプして社会から抹殺されたハーヴェイ・ワインスタインが製作総指揮になっていたためクレジットから削除された。もし、ワインスタイン追放がもう少し遅れて本作が公開されていたら「えっ‥この内容なのに大レイプ犯が製作総指揮‥?」と凄い絶望を世界に撒き散らすところだった。危ないとこやで
内容良さげだし俳優も好きなので観に行った。ここ何ヶ月かエンタメ大作しか観てなかったのでこういうものが観たかった。
結論から言うと最初から最後まで凄く面白かった。今年の映画の中でもかなり上位に入りそう(一番いいかも知れない)。
長編映画を殆ど撮ったことない監督というのが凄いね(調べるとホラーの小品を一本撮ってるみたい)。監督の中では、自身が脚本を手がけた「ボーダーライン」と「最後の追跡」に続くフロンティア三部作の最終作という位置づけらしい。
いくつかネタバレあり
ネタバレしても面白さに影響はないと思うが、何も情報無く観た方が絶対面白いと思うので、白い服のジェレミー・レナーが銃を構えてる画像から下は読まないほうがいいかもしれない。

 

 

Story
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アメリカ中西部ワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー
美しい広大な大自然の閉じ込められ、法も届かず仕事もない。性被害者がめちゃくちゃ多いが一切捜査もされない無法地帯。
ここで野生生物局の白人ハンターコリー・ランバートジェレミー・レナー)は、雪の上で裸足で凍死しているネイティブアメリカンの少女の死体を発見する。彼女はコリーの亡くなった娘エミリーの親友ナタリーだった。
やがてFBIから新米の女性捜査官ジェーン・バナーエリザベス・オルセン)ひとりだけ来た。
検死の結果、ナタリーは生前にレイプされていることが判明する。
犯人からの逃亡中に死亡したのは明らかだが、直接の死因は裸足で雪原を6マイル走りマイナス30度の冷気を吸い込んだことによる肺出血だった。死因が直接の殺人ではないのでFBIの増援は受けられない。
そこでジェーンは、土地に詳しいコリーに協力を要請。2人は事件の真相に迫っていくが―

 

 

 

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この、現実のアメリカに幾つかあるネイティブアメリカン保留地ウインドリバー。雪に閉じ込められた辺境、法も届かず保安官も数人しか居らず仕事もなく男たちはドラッグを売ってるような無法者しかいない。娯楽もないので男たちは終始きまってるか酔っ払ってるかのどちらか。危険な野生動物も多いので住民は全員、重武装している。そんな場所に若い女がいたらレイプしかない。保安官や警官は住民の総数に対して数万分の1しかいない。ここはもはやマッドマックスや北斗の拳の世界と同じだ。若い女がいるのを見つけたら犯して捨てれば野生の肉食獣が死体を食い散らかして証拠も消してくれる。
めちゃくちゃ怖い。女性の身を守りたければ都会に引っ越すしかない。
※ここでアメリカやヨーロッパに旅行行ってリンチに遭ったり強盗に遭った知り合いの具体例を3、4つ書いてたが、彼ら彼女らが偶然ここを読んで思い出して気分が悪くなったらいけないので削除した
‥そんな話を知り合いから色々聞いて海外旅行する気が一気に萎えた。
とにかく本作の舞台となるネイティブアメリカン保留地は現実にある無法地帯という事だ。
それを知ったのは帰り道なので、捜査する保安官や警官をいきなり銃殺しようとするチンピラがやたら多いので「何だ?」と凄くビックリした。
しかもFBIだと名乗るエリザベス・オルセンをもいきなりブッ殺そうとしてくる。FBIなんて殺したら合衆国政府に地の果てまで追われそうだが、仮に彼女を殺せたとしても死体は見つからないだろう。
とにかく尋問されるくらいなら殺した方が早いって事だ(その殺人が見つかる可能性は少ない)。
捕まったとしても、チンピラを捕まえた保安官は「刑務所ではタダで食事出来るし寒さもしのげるし、アイツら喜んでるんじゃないか?」と言っていた。あながちジョークではないかもしれない。

 

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主人公コリー(ジェレミー・レナー)が、娘の親友だった少女の凍死体を見つけて話は始まり、やってきたFBI捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)。
有能で戦闘力も高いが新米捜査官、しかも一人だけ。二人一組で動くのが決まりではないのか?おまけに彼女は休暇中に「行ってこい」と言われらしく寒さをしのぐ衣服を一切持たずに来た。
この地が合衆国から見放された地だということがわかる。
死んだ娘の検死の結果、何度かレイプされた事がわかるが暴行が直接の死因ではなく、極寒の中を走ったことが死因だとわかった。死因が直接の殺人ではないため、この検視結果をFBI本部に報告しても応援は来ないし捜査打ち切りになってしまうだけだ。
ジェーンはこの事件を捜査するために本部に検視結果を報告せず、コリーや保安官を伴い独自に捜査する事にした。彼女がそうした理由ははっきりしない。たぶん最初は義憤に駆られたわけではなく新米だから仕事がしたかったからのように思える。
ジェーンは優秀で精神も強いが、新米捜査官なので無知だったり迂闊さで窮地に陥ることもあるがコリーといいコンビになっていく。
最初は「華奢だしお嬢さん過ぎて全然FBIに見えん‥」と思ったが、しばらく観てると捜査官に見えてくる。
また彼女の戦闘シーンは、敵の顔面や胸、脚などの同じ箇所を何十発も撃つというもので観てて気持ちよかった。また華奢で美しい彼女が銃を構えて震えながら敵のテリトリーに入っていく様子は「羊たちの沈黙」のジョディ・フォスターを思わせて良かった。

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主人公のハンター、コリーの家庭は崩壊し、妻とは別居している。
そして、コリーの娘も数年前に死んだ事がわかる。
その理由はコリーも知らない。ただ自分と妻が留守中に娘がパーティしてたら色んな者が来たことだけがわかっている。次の日になるとコヨーテに喰われた娘の死体が見つかった。
死んだ娘の親友だった娘も今またレイプされて死んだ。その両親のネイティブアメリカン夫婦も自分たちのように心が死んで悲しみにくれている。
死んだ娘達のためか、自分の魂を納得させるためか、友人である夫婦のためか、それともやって来たFBIのジェーンが娘に被ったのか、コリーは積極的に捜査に協力する。
終盤の彼の台詞から考えると「娘の死から目を逸らさない事だけが、真に娘に寄り添う事」なので、そのように行動してるように見える。強い男。そんな彼に妻は着いて行けず(誰もついて行けないと思う)夫婦生活は終わった感じか。
ジェレミー・レナー演じるコリーは、この土地の自然や地形を熟知しており射撃は百発百中。かなり超人的な男だ(特にメンタルが)。この土地で最も強い人物と言ってもいい。彼というキャラクターと「積極的に捜査する戦闘力の高いFBI捜査官」ジェーン、これらのキャラを投入しない限り、この土地の殺人は暴けないという事だ。
コリーがチンピラをボコボコにする時は、彼に蹴られているチンピラ視点になる。
だから観客はジェレミー・レナーに蹴られる視点になる。
イーストウッド映画でよくある構図!
この映画、最後まで凄くイーストウッド映画っぽいし、きっと好きなんだろう。
それとも、本作が殆ど西部劇みたいな内容だからイーストウッドっぽく見えるのかも。
イーストウッドにしろ本作のジェレミー・レナーにしろ観てると「いいぞ!やっつけろ!」という気分になって応援できる。だが実際に彼らが蹴る瞬間には何も悪い事してない我々観客が蹴られている格好になる。あれ?チンピラをボコしているイーストウッドを応援していたはずが‥蹴られているのは俺でしたァァ‥という視点になる。
イーストウッドに異常な畏敬の念を持たざるを得ない理由の一つには、このアンビバレンツなカット割りのせいもあるかもな~とちょっと思った。
ところで、敵が居そうな場所に赴く直前に、コヨーテ?的な肉食獣の巣が映るところなど、なかなか演出がお洒落。

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コリーの娘に何が起きたのかは最後までわからない。
だが恐らくは「知りたくなかった」と思うような事が起きて死んだのだろう、という事だけは察しがつく。
‥とか思ってたら、その娘の親友だった‥雪の中を走って死んだ今回の事件の被害者ナタリーが死ぬまでの回想シーンが後半、差し込まれる。
この回想が入るとは思わなかったので意表を突かれた。
実際のレイプシーンは短くてあっさりしたものだが「この後、レイプされて無残に苦しんで死ぬ」事が決まってる少女が健康で未来に希望を持った恋人と愛し合っていた女性だということが描写されてる日常描写が観ていてめちゃくちゃ辛かった。
その辛さは「被害者」という映画のマクガフィンのようにしか認識してなかったナタリーが「魅力的な女性(だが数分後にろくでもない連中にレイプされて一人で苦しんで死ぬ事が決定されている)」に変わっていく痛みだろう。レイプシーンや死ぬシーンよりも恋人と楽しくしてるシーンが辛かった。
恋人と共同トレーラーハウス?みたいなところで過ごしてると、同僚の?ヤカラ連中が帰ってくる(主犯の男はかなり蟹江敬三に似た顔をしていた)。同僚はめちゃくちゃ酔っ払っていてウザ絡みしてくる‥というめちゃくちゃ嫌な場面。何しろナタリーはレイプされて男はリンチされて殺されて捨てられる事が決まってるだけにウザ絡みのシーンが凄く長く感じた。
大昔に観たので殆ど記憶ないけどジョディ・フォスターの「告発の行方」っていうレイプ裁判の映画があって、そこに出てくるレイプはジョディ・フォスターがバーで踊ってたら酔っ払った男が来て、まぁ流れで一緒に踊ってたらだんだん‥という流れでこれが凄く嫌だった。本作の主犯の男も最初は割と只の酔っ払った奴にしか見えないんだけど、それがだんだん‥というこの「だんだん‥」という部分がめっちゃ嫌。
最初から北斗の拳の雑魚みたいなヒャッハー系だと、まるで生まれた時から死ぬまで悪党‥みたいに人間じゃない様に思えるんだけど、これらの「普通の男が流れで段々レイプ魔に変わっていく」という描写は、彼らも人間であることを思い起こさせ、そして「自分も環境やタイミングが悪ければこういうレイプとかするのかも‥」と思わせられ「今観てるめちゃくちゃ嫌なレイプ犯と自分は地続き」と感じる事の嫌さなのかもしれない。
ちなみにナタリーの恋人の男はパニッシャー役のあの面長の人が演じている。
コリーがナタリーの家に行くシーン、ネイティブアメリカンである彼らの両親は当然嘆き悲しんでいる。
部屋にはコリーの死んだ娘と死んだナタリーが一緒に写った楽しそうな写真がたくさん貼られている。ナタリーの母親はずっと泣いていて自分の腕を切り(誰も止めないので自傷行為ではなくネイティブアメリカンに伝わる何かか?)娘を思い出の品を抱いてずっと寝ている。
コリーの一人暮らしの部屋には、娘が書いた「理想の世界」の文章が貼ってある。
それらを見て悲しくなった。
監督の「彼女たちは『被害者』という映画のマクガフィンじゃなくて生きてた人間だったんだ。見ろ!」という圧を感じた。それが狙いだったとしたら上手くいっていたよ。

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前半、尋問しようとした容疑者が突然銃撃してきたのでジェーンは銃撃で倒した。
救急車を呼ぼうとするのだが保安官は「救急車が来るまで一時間かかる。こいつはもう死んだ」と言う。
そんな事の繰り返しで、ジェーンは自分が来たこのウインドリバーが、アメリカにあるのにアメリカではないかのような異世界に居る事に気づく。
そんな世界だから、犯人が彼女たちに牙を剥くシーンが、こちらが色んな映画を観た結果、想定していた展開よりも戦闘になるまで何テンポも早い。
「えっウソだろ?」と思ってる間に銃撃戦が始まって気づいたら大勢死んでいてポカーンとするのみだ。
ジェーンも、法が通じないこの地では正式な手順では解決できない事に気付き、どんどんウィンドリバー流の捜査‥つまり終盤では殆ど「狩り」になっていく。
「死刑または私刑の是非」そんなものは衣食住足りて選択肢や文化があるまともな場所だけでの話。ウインドリバーのような地獄では、まず危険なが奴いたら先にブッ殺し、ブッ殺した後どうするか考える‥生き残るにはそれしかないのかもしれない(もしくはさっさと別の場所へ引っ越すか)。
ジェーンは最初、ただFBIの私が解決するぞ~というだけだった(まぁそれが普通だし、むしろ彼女は熱心で良い捜査官なんだが)彼女は物語やウインドリバーの中に、観客の我々と寄り添って入っていってくれるキャラクター。
そして映画が終わる頃にはジェーンの中の「ナタリー像」が我々と同じく「只の被害者」から「勇敢だった魅力的な人間」に変わっていき、ジェーンは号泣する。
コリーはジェーンを優しく見つめ、そして都会に送り返す。やはり娘の幻を被らせているところもあったように思える。
コリーは実に西部劇で気持ちのいい復讐を果たしてくれる。
その復讐の内容は、不思議な「公正さ」を持ったものだった。
その「公正さ」を伴った復讐は、復讐者であるコリー自身や死んだ娘たちの魂をダークサイドに落とさないための強さがある。
コリーは違法に復讐を遂げたが、今後の人生でも堂々と妻子を可愛がったりバーベキューを楽しんで欲しい。そのための公正さだ。その公平さには法的な正しさなどない、ただコリーとジェーンと死んだナタリーの父、あとは神のみが本当のことを知っている。それでいいだろう。
それでいて犯人にとっては地獄‥という優れた復讐。
コリーの心身の真の強さを感じて満足できた。
そんな感じで凄く面白かったし、この監督の脚本書いてまだ観てないやつを観ようと思う。
難癖つけるなら、主人公のコリーとジェーンがあまりにも白人すぎる。
ジェレミー・レナーは凄く良かったので変えて欲しいわけではないのだが、コリーというキャラはネイティブ・アメリカンの方が良かったのでは?
別にポリコレ的な事をうるさく言いたいわけはないじゃないけどね。
ネイティブアメリカン感満載のナタリー父もメインキャラの一人にして一緒に捜査に参加させるとかさ。些細なことだけどね。
ストーリーそのものは子供が観てもわかる単純なもの。だけど登場人物たちの心の中は、個々人の想像力や共感性が必要‥という凄く良い映画だった。

 

そんな感じでした

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「ボーダーライン (2015)」巨大な暴力を目の前にした時の無力感と不思議な快感、同時に我にあり💀 - gock221B

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