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「散歩する侵略者 (2017)」黒沢清/理由はよく分からんが黒沢映画の壊れた夫婦もの観ると物凄く胸に来る👉

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監督&脚本:黒沢清 脚本:田中幸子 原作:前川知大 英題:Before We Vanish
製作国:日本 上映時間:129分 シリーズ:「散歩する侵略者

 

同名の舞台劇を黒沢清が映画化した異色SFサスペンス映画。
90年代~2000年代は黒沢清信者状態だったが「叫」以降、幽霊が出なくなってからの黒沢清映画はあまりハマらず遠巻きに観る感じだったが、本作は久々にハマった。
やっぱり夫婦や愛情を描くにしても、本作みたいにSFやホラーなどのジャンルムービー要素があった方がいい‥と個人的に思う。ジャンルムービー要素がないと黒沢清特有の「不思議な日常描写」が悪目立ちする、と個人的に思います

 

 

Story
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街では、あらゆる概念がわからなくなってしまった人達による事件や事故が頻発していた。
加瀬鳴海長澤まさみ)も、まるで別人のように変ってしまった夫の真治松田龍平)に困惑していた。
ジャーナリストの桜井長谷川博己)は世間で起きている事件の原因を探ろうと、奇妙な青年・天野高杉真宙)と、一家惨殺した女子高生・立花あきら恒松祐里)を調査する。
そんな中、鳴海は真治から、桜井は天野から「自分は地球を侵略に来た、人間から概念を奪う宇宙人だ」と告白されるのだった――

 

 

 

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結論から言うとドラマ版や過去の黒沢映画よりかなり一般層にも受けいれられるようにかストーリーや表現など全てがわかりやすくなっていた。黒沢映画の中でもトップレベルでわかりやすい作品だったので入門用にいいかもしれない。
展開や描写やBGMが80年代B級SF映画っぽくて、黒沢監督作の過去作としては「CURE」とか「岸辺の旅」に似ている。黒沢映画によく出てくる壊れた夫婦と、自由に動ける中年男性によるダブル主人公。
話は、長澤まさみと、宇宙人に融合された松田龍平のストーリー。
長谷川博己が二人の宇宙人に密着取材してるストーリー。この二つが終盤クロスする。

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宇宙人は地球人の概念を奪って、それを自分のものにしていく。
たとえば「『仕事』って何?」と訊くと、訊かれた人間は催眠術にかかったかのようにぼーっとして「仕事」の概念を頭いっぱいに思い浮かべる。思い浮かべるとテレパシー能力も持ってるらしい宇宙人は思い浮かべきった事に気づき、人差し指で人間の額をチョンと突くと、その概念をGETできる。概念を奪われた人間は、その奪われた概念を永遠に失う。
たとえば長澤まさみの妹、前田敦子は姉と仲良かったのに、松田龍平に「家族」という概念を奪われると、もう姉である長澤まさみに触られるのも気にかけられるのも不快になってしまい立ち去ってしまう。
地球に来た彼ら、宇宙人は何もわからないので、地球人を一人「ガイド」にする。
そうして地球の知識を教わったり、世話をしてもらったり、他の人間から概念を奪う手伝いをしてもらったりする。
松田龍平は乗っ取った男の妻である長澤まさみを、少年&少女の宇宙人は自分たちを長谷川博己をガイドにする。
「私は地球を侵略しに来た宇宙人です。行動しやすくするためにガイドになってください」というのも無茶な話だが、そもそも彼らは人間と見分けがつかないので、長澤まさみ長谷川博己も当然、最初は信じない。
だが概念を奪う様子を見たり、暗躍する日本政府や自衛隊を見て徐々に信じるようになる。
それでは何故、彼ら人間は宇宙人だとわかってきても、強制されたわけでもないのに何故まだガイドを続けるのかと言うと、
長澤まさみは、完全に夫婦仲が冷めきった夫の代わりに、自分が世話しないと何も出来ない赤ん坊のような素直な精神の夫が現れたので、完全に夫婦仲が冷めきった夫の代わりに愛を育み直しているように見える。
長谷川博己はなんだろう?最初はジャーナリズム精神で行動を共にしていた。彼は長澤まさみ同様、現世に飽きていたように見える。妻子とも別れているし。やがて長谷川は自分をハメようとした日本政府や、宇宙人の侵略について訴えても信じようとしない市民に愛想を尽かし―まぁ、信じないのが普通だけど―最終的には嘘をつかず孤独に使命を全うしようとする青年宇宙人に自分を重ねたのか感化されていった。

 

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そんな経緯で長澤まさみは夫(の姿をした宇宙人)と共に行動する。
最初は、ただでさえ愛がなくなっていた夫が突然宇宙人になってしまいウンザリしていたのだが、宇宙人は概念を奪ってものにしない限り、情緒というものを持ち合わせていないのだが基本的に素直。
元の人間だった夫は嫌いで食べなかった食べ物もうまいうまいと食ってくれたり、長澤まさみを困らせるセクハラ上司の「仕事」の概念を奪って廃人にしたりと、宇宙人は別に長澤まさみを喜ばせようとしているわけではないのだが、結果的に彼女のためを思って行動しているかのように見える。そして彼は長澤まさみに「君の望みの夫になるよう努力するよ」と言う。
やがて彼女は、日本政府に見つかった夫(宇宙人)を守るため車で逃亡する。
そして世界が終わろうとする最終局面では、彼女は暖かい気持ちになり宇宙人に自分の大事なものを与える。そして夫(宇宙人)は‥。
そんな感じで、黒沢映画にしてはウェルメイドでホットな感じで終わる。
ジョン・カーペンターの「スターマン 愛・宇宙はるかに」にもちょっと似てる。
宇宙人侵略映画と、夫婦仲が壊れて妻には夫の事が宇宙人にしか見えなくなってしまった夫婦の破壊と再生の話にも見える。非常に分かりやすい。
あまりに明快なので、昔の黒沢信者だった時の自分なら気にいらなかったかもしれないが、今は特に思い入れないせいか、こういうわかりやすい方に行ったほうが良い気がした。
だけど「岸辺の旅」とかもそうだったけど「トウキョウソナタ」以降の黒沢清映画のもっさりしたリアリティある壊れかけ夫婦を観てると凄く胸にずーんと来るものがある。別に結婚とかしてないのだが何故か凄く重くて後を引く。
大抵、どちらかが‥もしくは双方の心が壊れていて、その停滞してるのに表面上は体裁を取り繕って家だけはめちゃくちゃ綺麗な、その感じがあまりにリアリティある(ように感じる)。黒沢監督の「恋愛描写」は、ぎこちなくて「無理しちゃって‥」感があるが、夫婦を描くと途端にガチリアルになる。
映画観て滅多にこんな気分にならないのだが黒沢清映画の壊れた夫婦を観た時だけ凄くヤバい気分になる。理由は自分でも良くわからないが深層心理の何かのスイッチや思い出を押されるんだろう。何か否が応でも「どんな人間も、どんな関係性もやがては終りが来る。しかも現実にはドラマチックには終わるのではなく、じめじめと湿っぽく終わる」という、あまり感じたくない事を感じさせられるからかもしれない。
あまりにズーンと来たので、観た直後は「うーん‥本作もイマイチか?」と感じたが、一夜経って感想を書いてるうちに、あまりにズーンと来たから観た直後はノレなかっただけだったんだなと翌日気付いた(「クリーピー」も、気にいらなかったと思い込んでたが本当は感銘を受けすぎたのかもしれん)
この夫婦の愛は、まるで無線での会話のように一方通行が繰り返されていて、その互いから発する愛の矢印が同時に発せられてぶつかり合う時は永遠にない、というのが凄く切ない。だけど、観終わってしばらく経つと「別に双方向でなくても、発信して受信される相手がいるだけで幸せなのかもしれない」と思わせられた。清は結構ロマンチック。
夫婦が凄く胸に来ただけに、長谷川博己が何だか良い意味で子供っぽい人物に感じる。昔の黒沢映画だったら確実にこの男だけがメイン主人公だった気がする(それと同様に、家庭を持った友人知人などから見たら僕の事も子供っぽい男に見えるんだろうなぁとも同時に思った)

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中盤の、長澤まさみ夫婦が病院にいたら厚生省の笹野高史が入ってきて、またカメラが夫婦に戻る長回しが凄くカッコよかった。
あと宇宙人JKがやたらと格闘したり銃撃したりとアクションするのが、「ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト」とか「Seventh Code」の経験が生きてるなぁと思った(小並感)。彼女が車に撥ねられて上から落ちてくるシーンも凄く良かった(最初の彼女が人形?)彼女はバイオレンス担当って感じで良かった。「寄生獣」に出てくる攻撃性の高い寄生されたキャラっぽい。
というか、昔から思ってるけど、黒沢監督独自の少数の人だけが楽しむような映画を極めるよりも、本格的なアクションとかメジャー大作とかを撮ってほしい。まぁ本作の方向か。
アンジャッシュ児島も凄く良かったし‥(「トウキョウソナタ」で、再ブレイク前の児島を起用してたけど、何で児島をいじめると面白いと知ってたんだろう?)
黒沢清の意地悪キャスティングの一つでしょうね。「アカルイミライ」の はなわ とか。「ドッペルゲンガー」のユースケみたいな「こいつをアホ役にしたら映えるぞ~」というよくあるやつ。
書き忘れたが長澤まさみはめちゃくちゃ良かったし(黒沢清映画に出たらどんな女優でも全く同じ雰囲気のもっさりツンデレ女性になるのだが彼女は、かなり良い加減だった)。
松田龍平も元々かわいらしい雰囲気で好きなので良かった(「予兆」の方では、染谷将太演じる夫がムカついて夏帆が気の毒になってくるので本作ほど楽しく観れなかった)
松田龍平が、引きこもりの青年から「家」という概念を奪うと、青年の引きこもりが治って活動的な青年になるのも面白かった。

 

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そんな感じで、僕はこれ結構好きだった。これを言っても仕方ないのはわかってるが、もう少し制作費があってゴージャスだったら良かったんだけど。。
何か、アカデミックな文章が全くないアホみたいな感想になったが、実際こう思ったのだから仕方ない。
「叫 (2006)」以降の長編映画だとこれが一番好きかも。
短編も合わせたら「ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト」が一番好きかな(これが長編だったら良かったのに‥)

 

そんな感じでした

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