gock221B

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『アウトレイジ 最終章』(2017)/わかりやすさが加速してとうとう因縁が数値化された中盤が凄く面白い🔫

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監督&脚本&主演:北野武 製作国:日本 上映時間:102分
シリーズ:「アウトレイジ」トリロジー

 

 

アウトレイジ (2010)」「アウトレイジ ビヨンド (2012)」に続くシリーズ完結作。
個人的には老若男女みんなが観るシリーズになったので、寅さんみたいに延々と続ければいいのにという気もするが、あまりに延々と抗争が続くのも不自然だしコレは一旦終わりでいいのかもしれない。
早逝されたので大杉漣北野映画に出るのもこれが最後(ついでに言うとつい先日感想書いた「予兆 散歩する侵略者 劇場版」も、大杉漣黒沢清映画へ出演したのがラストだった)
そこそこネタバレしてます

 

 

Story
関東の山王会 vs.関西花菱会の巨大抗争は花菱会の勝利で終結し、大友ビートたけし)は韓国に渡り、日韓を牛耳る国際的フィクサー張会長(金田時男)の下にいた。
そんな折、韓国出張中の花菱会の幹部・花田ピエール瀧)が大友とトラブルを起こし、張会長の手下を殺して日本へ逃げ帰ってしまう。
これが引き金となり、張グループと花菱会が一触即発の状態になり、更に花菱会は同時に内紛が勃発。
大友は配下の市川大森南朋)を伴い、全ての因縁にケリを付けるべく帰国する――

 

 

三本共通の結論を最初に言うと「めちゃくちゃ良い!」ってところと「何でこんなに雑なの?」というイマイチな部分があることが共通している。
シリーズで共通してる作品内の要素は、2作目以降のたけしは狂言回し。罵倒合戦。セクシーにクルマを撮るのとガバメント、
それに感情ではなく如何に上手く因縁をつけて相手より自分の立場を上にするか如何に自分の手を汚さず敵同士ぶつけて対消滅させるか、という低体温因縁つけバトル。
それがどんどん転がって大事になっていくのが本当に毎回おもしろい。
一作目からし北野映画と思えないくらい明快な映画だったが、老若男女が観るシリーズになったせいか回を増すごとに分かりやすくなっていった。
過去作だったら登場人物が口に出さなかったような思いも喋りまくるし顔に出すし、本作に至っては色んなキャラが(あの大友までもが)状況説明してくれるようになった。
本作はもう、木村を殺した工務店の奴とか韓国人ヒットマン返り討ちシーン以外は、誰が見ても初見で全部わかる親切な映画製作だった。
それに過去作ではキャスティングしなかったようなメジャーだったり演技が大仰だったりする俳優が多く出ている。
それらのわかりやすくした部分は全部良い部分だと思う。昔の北野映画は、当時すごい夢中になってたけど、今あんな感じでナルシスティックにやられたらキツい。コテコテのギャグが気になる時もあるが昔の感じを再度やるより、その方がまだ良い。
一作目は面白い虐殺オンパレードだったがバラエティ番組っぽくてイマイチだった。
二作目以降は早々にブッ殺すわけにいかない対立関係になったせいか「銃撃の代わりに罵倒の連射で泡食った相手が下手打ったらそこを突く‥」というやり方になった。
これは面白い!虐殺のやり合いよりずっと楽しい。
この、罵倒で相手のミスを誘って報復の理由を作り出して一気に叩く‥!という、このやり方は「三国志」とか戦国ものや経済バトルなどにも通じる普遍的で不朽の面白さがあった。
だから個人的にはアウトレイジが完成したのはビヨンドだと思う。一作目も、序盤での抗争拡大の描写が超面白かったのだが中盤以降めちゃくちゃつまらなくなったのでやはりビヨンドが三作品中一番面白いと思う。

大友(たけし)は日本に居れなくなったので、前作で描写があった張会長の下に身を寄せて韓国の済州島で舎弟の大森南朋と釣りして楽しく暮らしていた。
この大森南朋椎名桔平中野英雄に続く「大友のことが好き過ぎる舎弟」の三代目(大友だけじゃなく、たけしキャラって事で考えれば大杉漣とか寺島進の弟という見方もできるし、北野映画内におけるたけし軍団だと言えなくもない)
大友が張会長から預かったシマのデリヘル嬢がSMプレイできないって事で、韓国に来てた花菱会の花田(瀧)に難癖を付けられ、大友は女を傷つけられた落とし前として「2百万払え」と妥協案を出してくれるのだが、花田は大友をただのチンピラだと見落とし、約束を反故にして見張りの張会長の若い衆を殺して日本に逃げ帰る。
この瞬間を起点にして最終章の抗争が始まる。
今回は過去作の下剋上と違って、誰一人としてこの抗争をしたがってないけどヤクザだからやっとくか‥って感じで、坂を転がる糞のように抗争が大きくなってくのが良かった(このシリーズの一番面白い部分)。
最初に花田が(たった)二百万払ってれば話は済んでて本作も10分で終わってたところが、ケチがゆえに払い渋ったがために張会長に15倍の3千万払わなければいけなくなり、だがその三千万というのも兄貴分・塩見三省の判断に過ぎず、人命に対しては額が少なかったようですぐに倍の6千万になり、結果的に数億円‥と、支払わなければいけない金額が僅かな時間で倍々ゲームで増えていく。
「因縁のつけあいに失敗すると倍になる」という「負い目の数値化」というドラゴンボールスカウターみたいな分かりやすさで教えてくれる。
日本昔話の様な、童話のようなわかりやすさ。過去二作では「普通すぎて覚えられないキャラクター名」を始めとして初見でわかりにくい部分も多かったが今回はわかりやすさ全開だった。この因縁の数値化が特に顕著だった。
まぁ、そんな感じで張グループ vs.花菱会という抗争が始まり、同時に実質的に主人公の花菱会の内紛が起こり、大友も過去の因縁の全てに(というかシリーズを続けなくても済むように)ケリを付けようと帰国するって感じの話だった。


たけしはまぁ最初から最後まで「大友はこんな事して、最後にはこうするだろう」と、北野映画全部観てる皆の想像通りの活躍。ビヨンドでは大評判になった、花菱会との怒鳴り合いが良すぎて何度も観たが、期待の罵倒も滑舌に気をつけすぎてか置きにいってる感じで威勢が強くなかったし、髪型や太ったこともありオバチャン化が進んでいてイマイチだった。ビヨンドで獲得した過去の北野映画のたけしキャラが持ってた神性も、たけし&大友が惚れ込んでいる張会長に移ってしまってた。この神性というのは具体的に言うと「めっちゃ強いのだが争いを好まず中空をぼうっと見つめる」という感じ(カメラ目線で見つめるといよいよ神性が更に高まる)
だけどソナチネとかの当時はこのたけしの神性に夢中になってたが、今になるとたけしのシャイさやナルシズムと合わせて何だか気恥ずかしくなる要素なのでこれは別にいい。張会長に分け与えてよかったくらいだ。
ビヨンドではスカッとさせてくれた大友の仁義だが、仁義を重視しすぎて白竜の言うことを全然聞かないので「もういいでしょう‥」と若干イライラするものがあった。だけど本当は一作目ラストの時点で死んだようなもので、以降の大友は幽霊みたいなものなので死に場所探しモードだったんだろうね。
だけどナントカ君の出所祝いパーティ殴り込みは良かった。
本作は割と全編想像通り進んでいって―面白いからそれでいいんだけど―この、ソナチネっぽい出所祝いパーティ殴り込みは全く予想してなかった展開だったので興奮した。西田敏行が唯一ダメージを負ったシーンはここだけだし。
最後の締め方は、何かもうシリーズを終わらせるために「もう‥閉店なんでね‥」と店主がシャッターを閉めるかのような雑さだった。漫才のラストでよく、あまり面白くない事をちょろっと言って「もういいよ。ありがとうございました」と終える感じを思わせた。


🔫前作の無双キャラ、西田敏行は今回はやられる側かな?と思ってたら今回も強キャラのまま実質的主人公にもなってて驚いた。前作もそうだったが、この役に大喜びしてる西田敏行が更に大仰な芝居をしていて、それだけならまだいいが、あまりにもノリノリ過ぎる態度が出すぎてて更にアドリブやダジャレを連発したまま無双を続けるので「早く誰か何とかしてくれよ」と思った。でも、このキャラそんなに嫌じゃない。
ノリノリの態度がやりすぎ感あるが、このキャラはあくまでも「相手をハメる」というクールなやり方を通してるからかもしれない。

🔫相方の塩見三省も、前作では元気いっぱいだったが今回は呂律が回ってないし目も虚ろで頬も痩せこけてるので「塩見さんどうしたん?!」とビビって検索したら、脳梗塞からの病み上がりで立って演技もままならない状態だったと今知った(ついでに西田敏行も怪我かなんかの病み上がりだったらしい)

🔫マル暴の刑事、松重豊はヤクザに対して完全に上から行く正義感あふれる熱血漢なので好き。瀧同様に活躍を期待していたが上から圧力がかかって活躍できない。
辞表を出すので抗争に参加するのかと思ったら本当にただ辞めただけだったので驚いた(だが同時に松重豊が死ななくてよかった‥とも安堵した)
大友を釈放するよう上に言われた時に上司にキレるんだが、「えっそんなにキレる!?」っていうくらい凄い長時間わめき散らしていて凄く面白かった。たけしも花菱会も歳で元気ない分わめき散らしてくれた感じだった。
関係ないけど世渡り上手い上司の刑事さん、声がめちゃくちゃかっこいいな

🔫新キャラで期待してた瀧は物語の起点となるコメディリリーフだった。瀧はいつもクセ者キャラとか凶悪な約ばかりだが、そろそろ瀧本来の面倒見の良い兄貴キャラとして普通に活躍する映画も観てみたい。津田寛治はどうって事ない役でガッカリ‥。

🔫原田泰造は、もう50近いのに「暴走族上がりの鉄砲玉」キャラを演じているのはさすがにミスキャストだった。「一体このキャラはどういう経緯でこんな事してるんだ?暴走族辞めた後、30年間くらい引きこもりだったのか?」と考えると可笑しくなった。


そんな感じで凄い楽しんだ。
特に(毎回そうだが)見れない序盤~中盤の抗争が倍々ゲームで拡大してる時間は、北野映画のこのシリーズでしか観れない面白さで他の事を全部忘れちゃうような‥「何でMCUとか好きなんだろう」と一瞬思ってしまうほどの面白さだった。
だけど、これも毎回そうだが抗争のサイズが頂点に達して、店仕舞を始めると途端にさっき言った「しぼんでいって終わる漫才の終わり方」みたいな感じで面白さが減っていく。毎回この店仕舞モードに入ると処理が途端に投げやりになり、賢そうだった白竜もすぐ花菱の言うこと信じちゃうし。
映画開始から終盤までは時が経つのを忘れるくらい面白いが、終盤からの数十分はそれまでの面白さを忘れちゃうくらい一気につまらなくなる。
次回作は純愛映画らしいが、たけしのインタビューを読むと「戦後の闇市でのし上がる青年時代の張会長と大友少年による前日譚」「本作の続きの、張会長 vs.花菱、本当の闘い」をやりたいって言ってて、面白そうだし是非観たい。
ぶっちゃけ前日譚より本作の続きが観たい。
とりあえず西田敏行が泡食って死ぬところ観ないと収まらんだろう。大友がやってた狂言回しは松重豊がやればいい。というか、たけしが出て無くても面白いのは保証されてるのでアウトレイジ続けて欲しい。アウトレイジじゃなくて新タイトルでも昔やりたがってた戦国ものでも政治劇でも何でもいいけど、とにかくこのアウトレイジで出来上がった北野流の揚げ足取り集団戦がもっと観たい!

※追記:後に最新作『首』(2023)を観て他の作品ともども本作を観返しました。
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そんな感じでした。もういいよ木村さっ帰ろう

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『龍三と七人の子分たち』(2014)/なかなか良かったです/たけしの思い出 👴 - gock221B
『首』(2023)/北野作品史上最もカッコつけてるシーンがなくてエンタメに徹してるとこがカッコよくて面白い作品でした💀 - gock221B

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