gock221B

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「ディザスター・アーティスト (2017)」どこまでも謎で可笑しい男を笑ってたつもりが、やがて男に寄り添わされる天国への階段👓

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原題:The Disaster Artist 監督&主演:ジェームズ・フランコ
脚本:スコット・ノイスタッター。マイケル・H・ウェバー
原作:グレッグ・セステロ&トム・ビゼル「The Disaster Artist (2003)」
制作スタジオ:A24 製作国:アメリカ 上映時間:104分

 

 

トム・ビゼルとグレッグ・セステロが2013年に上梓したノンフィクション本が原作。
謎の男トミーと俳優の卵グレッグの二人組が撮った恋愛映画「The Room (2003)」はあまりに支離滅裂で無茶苦茶で最低な映画として大コケ&酷評されたが、あまりに無茶苦茶すぎて逆に皆で毎週末観に行って楽しむ愛好家が増えてカルト作となったらしい。
これ観てないけど、YOUTUBEで検索したら本編フル動画の上に観客がウケてる音声が被せてあるリアクション動画とかもあった。
また誰が書いたのか、日本で公開やソフト化もされてないのにも関わらずWikipediaに異常に詳細な記述があった。
ザ・ルーム - Wikipedia
主演のジェームズ・フランコ自ら監督を務め、脚本は「(500)日のサマー (2009)」「きっと、星のせいじゃない。 (2014)」など名作青春映画の脚本を書いたコンビらしい。
ジェームズ・フランコは映画出まくってるが、映画よく知らない人にも一発でわかる役としてはサム・ライミスパイダーマンでハリー・オズボーン役をやってたイケメンと言えばわかりやすい。彼は本作でゴールデングローブ賞・主演男優賞を受賞した。

 

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1998年のサンフランシスコ。俳優になるのが夢だが人前に出ると緊張してしまう19歳のイケメン青年グレッグ・セステロ(デイヴ・フランコ)は、演劇学校でロックスター然としたロン毛エキセントリック男性トミー・ウィソー(ジェームズ・フランコ)と出会う。
「長年の夢だったので演技を始めた」と言うトミーは年齢不詳(だが絶対に30は越えてる)だが過去の経歴を一切語らない、だが各地に物件を持ってたり高級車を乗り回していたりと妙に金を持っている非常にミステリアスな人物。顔の造りは、基本イケメンだが時代に合わないハードロック風のロン毛と開ききらない片目なども相まって人相が悪い。だが悪気があるようには見えず妙に純粋で、二人は意気投合する。
トミーはロサンゼルスにも高級アパートを借りているので、グレッグは誘われるがまま彼のアパートに居候して芸能事務所と契約する。
クラブでアンバー(アリソン・ブリー)という美人の彼女も即ゲット。
だが二人とも演技が下手すぎて、ハリウッドで全く役がゲットできない。
特にトミーはオーディションのたびに嘲笑される。恐ろしげな人相も相まって「モンスターとか悪役を狙った方がいいんじゃないかw」とバカにされる日々。
トミー「俺はヒーローだ。お前らこそ全員が悪役。悪いやつは笑うからな
この台詞は、トミーの純粋さにハッとなった。
「うまくいかないなぁ‥仕方ない自分で映画を制作すっかぁ‥」という結論に達したトミーは「The Room」という自分とグレッグが主演の恋愛映画の脚本を書き上げる。
撮影のためのカメラをレンタルしに行って「何日レンタルしますか?」と訊かれても「半端なことはしたくない。買うよ」と言って超高価なフィルムのカメラとデジカメを両方お買い上げするトミー。更には映画撮影に必要な、シナリオスクリプター、カメラマン、美術、メイク‥などのスタッフ、オーディションで選んだ出演者、果ては撮影現場にわざわざ作った自分専用のトイレなど全ての制作費をポケットマネーでポンと出すトミー。
あからさまに胡散臭いし金持ってるようにも見えないトミーを怪しむスタッフ(セス・ローゲン)は小切手を換金しに行くとちゃんと現金化出来た。窓口の男はセス・ローゲンにこっそり教えてくれる。
「このトミーとかいう人の口座‥お金が無尽蔵にありますよ‥」

 

 

 

演技の素人トミーは当然、映画製作の素人でもあって無駄が多い。
道路でのシーンを撮るのに、スタジオのすぐ前にある道路とそっくり同じ道路のセットを作ったりする。セス・ローゲンは「すぐ外の道路で撮ればいいのでは?」と言うがトミーは「手抜きは良くない」と聞く耳を持たない。屋外で撮ればいいのにわざわざスタジオで撮って背景はフルCG。
数々の無駄とも思える金の使い方をするし金払いもいいが、スタジオに空調や水道は引かないので年寄りが暑さで倒れたりする。どうやら自分とグレッグ以外のために金を使うのは嫌みたい。
当然、演技も下手で酷い東欧訛りがあって何を言ってるのかわからない上に棒読み。台詞も覚えられないし悲しいシーンで笑いだしたりする(彼の中では筋が通った演技プランらしい)。そもそも、それ以前に彼が脚本書いてるので台詞なども全て訳がわからない。文句つけてきたり自分の陰口言ってるスタッフは当然クビ!(隠しカメラで撮っている)
トミーは、グレッグが自分じゃなく恋人やドラマ出演する事が気に入らないらしく現場は荒れていく‥。というか、そもそもトミーは映画が好きそうにはとても思えない(スタッフも「彼は映画を観たことあるのか‥?」などと陰で言われている)。
劇中はっきりとは描かれないが、ひょっとして莫大な制作費出して映画撮ってるのも、それ以前に二人で急にハリウッド目指しだしたのも全てグレッグの気を惹きたいからにしか思えなくなってくる。「トミーは女性とのファックの仕方を知らない‥?」という場面もあるし「トミーはゲイ説」が浮かび上がってくる。
とにかく、このトミーという男、「なぜか金を死ぬほど持ってる」「今まで何をしていたのかわからない」「どこから来たのかわからない」「そもそも、カネの出所や出自を秘密にしている理由がわからない」「何故、片目が悪いのかわからない」「なぜXのTOSHIみたいな格好してるのかわからない」などのミステリアスっぷりが凄く面白い。これで邪悪な奴だったら「何か知りたくもない事で儲けたのか?」と思えてくるが、トミーは何の才覚もないように見えるし、ただ単純に幼児みたいな性格なので迷惑する人がいるが、それを除けば邪悪な雰囲気が一切感じられない。無垢で純粋な男に見える。まるで「オッサンの年齢のトミーが数年前、空気からこの世にフッと湧いて出た」かのように思える。
‥と、そんな人物は大抵ニートという事が多い。ニートなら出自や過去も言いたがらないだろう(無いから)、だから「ヨーロッパの大富豪のニートがある日突然、社会デビューしようとアメリカにやってきたのか?」と考えたりもした。もしくは「麻薬カルテルのボスの家のニートアメリカに流れてきた」とかかもしれない?(これなら出自を言えない理由も通る)。だが結局、最後まで彼の正体はわからない。だんだん彼のことが妖精のように思えてくる。
とりあえず、わかっている事は「グレッグのことが大好き」「グレッグが好きな、自分と関係ないものは嫌い」「大金持ち」「アホだが純粋」という事だけだ。
彼の正体への憶測や、さっきの「トミーはゲイ説」も、彼の色んな謎がかなり埋められるのだが知らない方が面白いので今後も彼の秘密は知らないでおこう。


 

 

そんな感じで、めちゃくちゃな撮影の果てに映画は完成。
金にものを言わせてビルボードの立て看板で宣伝し、プレミア上映を行う。
大喧嘩して飛び出ていったグレッグも、夢だったスクリーンデビューをトミーに叶えてもらった格好だし渋々と観に来る。
スタッフ出演者全員の予想通り、映画は酷いものだった。徐々に笑いに包まれる場内。
ここは実際の「The Room」内の、トミーの迷演技をジェームズ・フランコが完コピしている。エンドクレジットで実際の「The Room」本編と、ジェームズ・フランコがトミーを完コピした映像が並べて流されるのだが、ジェームズ・フランコの演技はトミーの演技と1秒の狂いもなくシンクロしてハモっている!そもそも本作のジェームズ・フランコは、全編トミーのおかしな東欧訛りで喋り続けておりメイクで顔変わってるせいもあって本編中「これジェームズ・フランコか?」とわからなくなる瞬間が何度もあり主演男優賞獲ったのもうなづける。
まぁとにかく嘲笑われたと感じたトミーは屈辱感で劇場内を飛び出す。追いかけるグレッグ。「The Room」が酷いので僕も可笑しいなと思ってたがトミーがガチで泣いてるのでハッとする。
トミーは「俺は一生懸命がんばったのに、いつも自分をさらけ出したらバカにされる、嫌われる‥」とグレッグに訴える。
そうだなぁ、、俺らはトミーじゃないから、トミーのやることなすこと可笑しいので笑うわけだが、トミーからしてみればトミーは自分自身なので普通にしてたら自分自身を嘲笑われる‥って感じで「当たる箇所全てが弱点」っていう空手を常に喰らってるようなもんで辛いよね、と思った。しかしまぁトミーは子供じゃない‥というかオッサンだし、それを克服するのが大人の人生なのでこれ以上は同情する気はないが、トミーが泣いて立ち直るまでの間はトミーの気持ちに寄り添ってあげようと思った。そう、この場面でグレッグが正にトミーに対してそうするのだ。「みんな嘲笑ってるんじゃないよ。トミーの狙いとは違うかもしれないけど皆、この映画が好きでウケてるんだよ。ヒッチコックの映画だってこんなにウケないぜ」。そのグレッグの一言でトミーに笑顔が戻る(子供か)。このささやかな優しさが世界に必要な気がする。もちろん各人、忙しくてやる事多いのでトミーなんかに関わってられん。だが数秒でいい、数秒くらいトミーの気持ちを慮る余裕が欲しい。案外それが天国への階段かもしれん。実際、幼児並の頭脳とセンスしか持ってないと思われたアホのオッサン‥もう中年になったら脳が固まって考え方が代わりにくいと言われる生き物オッサンであるトミーも最後に一歩成長する。それが俺を感動させた。
オーディションでバカにされたトミーは嘲笑う者を悪として語っていた。だったら彼がこの世で最も好きなグレッグは嘲笑わず「みんな嘲笑ってるんじゃなくて笑ってるんだ。君と、君の作品を楽しんでるんだよ」と認識を変えてくれたのは、トミーの世界の見え方が変わった一瞬ではないだろうか(実際その直後からトミーには客観視が備わる)。
ティム・バートンの「エド・ウッド」が好きで、本作も殆ど同じ内容だったがラストの展開は本作の感動が上回ったかも。
さっきも言ったがエンドクレジット、そしてポストクレジットも必見。

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そんな感じでした

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The Disaster Artist – Official Movie Site

The Disaster Artist (2017) - IMDb

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The Disaster Artist: My Life Inside The Room, the Greatest Bad Movie Ever Made (English Edition)

The Disaster Artist: My Life Inside The Room, the Greatest Bad Movie Ever Made (English Edition)

 
The Disaster Artist

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  • 社会科学
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The Disaster Artist

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