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映画の感想ブログ 😺 おしずかに‥〈Since.2015〉

「大菩薩峠 (1966)」本編や殺陣よりも姿なき幽霊や全ての瘴気が交差するラストだけ盛り上がった🌄

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監督:岡本喜八 脚本:橋本忍 原作:中里介山大菩薩峠」第一巻~第三巻
製作国:日本 上映時間:120分 英題:The Sword of Doom

 

 

 

🌄政治的な面で「なんかもう日本ってここ数年、封建時代に後退したかのような‥ディストピアSF映画を観て『こんな国あるかよw』と笑ってたような国に現実になってるな」と危機感を感じてたが、ここ数日の再改造内閣のニュースで更に危機感を感じた。なんというか、どうせ傀儡なので有能じゃなくていいとしても有能で賢そうな奴とかを対面上据えればいいのにと思うのにそうしない。他の先進国のようにクールで有能な奴を据えたら日本国民が「よし私たちも頑張って世の中を良くしよう」などとイキイキし始めたら良くないので、わざと無能を据えて「お前らが知ってるようにコイツは無能だ。だがお前らはその無能に逆らえない」と知らしめることで偉い人が嫌うもの‥クールな人気者が体制の矛盾を突く言動や若者の夢や希望といったパワーを萎えさせて無気力にするためにそうしてるのではないか、と思ったりもした。文化やリテラシーが発展した国ほどデモや社会活動が盛んで手強い、これはあながち冗談ではないような気もする。とにかく普段、政治的な話とか面倒くさそうなのでしない俺がしてるという時点で、自分で自分お言動を見てヤバみを感じた。そういった「漠然とした不安」を感じて頭が曖昧になってきたので山口貴由先生の「衛府の七忍」を読み返していた(俺の推しキャラは沖田総司)。ファンタジーではあるが、こういった侍と肩がぶつかっただけで斬り殺される封建時代をデフォルメして描いた漫画を読むと「即死させられるわけじゃないから現世の方がまだマシか‥」と精神を安定させることができた。当然、現実逃避に過ぎないのだが現実逃避望むところ。このままマッチ売りの少女のように幻だけ見て死んでいくのも悪くない(一度だけで終わるなら‥)。衛府を7巻まで読み終えると「そういえば時代劇ながいこと観てないな」と思って積んでた本作を観てみた。覚えてないけど8年くらい観てないかも。別に邦画が嫌とかモノクロは嫌、とかそんな事ないのだが基本、アメリカ映画ドラマばかり観てるので、気分や雰囲気がガラッと変わり過ぎちゃうので何か切っ掛けがないと観る気分にならないっていうか。面白い少女漫画もあると知ってても女の子の家に行かない限りよく知らないから読まない感じというか「朝は絶対、パン!」という人が納豆とご飯と味噌汁は何か切っ掛けがないと喰わないだろう、それと似た感じか?喩えが下手。

🌄これは芥川竜之介を始めとする文豪が絶賛したという長編時代小説「大菩薩峠」‥の全41巻のうち最初の3巻までだけを映画化したものらしい。検索してみると何と11作も映画化されている。
時代劇や新選組についても全然詳しくないし原作も読んでない。岡本喜八の映画が好きで観ただけ。原作は今後も読まなさそうだし「原作の一部だけ映画化したので、この映画の後もまだまだ続く」という事も無視して「この話はこれで終わりなんだ」という気持ちで、純粋に一本の映画として観た。今、何でもいいから長文を書きたい気分だったので長いです。ついでに最初に言うとラスト以外あまり面白くなかった。
完全にネタバレあり

 

 

主人公は残忍で身勝手な狂気の天才剣士・机竜之介仲代達矢)。
こんな狂犬には可憐すぎる名前の技「音無しの剣」を使う。どういう技かと言うと構えてじっと相手が打ってくるのを待ち、しびれを切らした相手が切りかかってきたところを、相手の剣と自分の剣を打ち合わせず音もなく斬殺するというカウンター技らしい。待ち竜之介だ。コマンドで言うと「(竜之介が右向き時に)レバー後ろ溜め・→←→+PP」といったところか。剣の腕が立つくせに待ち竜之介とは‥恥も外聞もない血に飢えた狂い犬よ。この音無しの剣を武器に暴れまわる。
この全く感情移入できない狂った男を主人公とした話。
冒頭、大菩薩峠の頂上、常日頃から辻斬りをしていたらしい竜之介は、山登りして休憩していた年老いた行商人をいきなり斬り殺す。サイコ・バーサーカーだ。
哀れな老人の孫娘・お松(内藤洋子)は、大菩薩峠の頭頂で祖父に飲ませようと水を汲みに行っていたので祖父を殺した竜之助の顔は見ていない。たった一人の身寄りを失って泣き崩れるお松。そこに、たまたま通りかかったのが盗賊・裏宿の七兵衛西村晃)。悪党の七兵衛だが、気の毒なお松を見て人並みの人情が鎌首をもたげたらしく、お松を拾って自分の娘のように育てて天本英世の屋敷へ奉公に出す。ちなみに僕は西村晃がかっこよくて好き。自分が幼い頃に死んだ祖父に似ている。ついでに東野英治郎も好きだ。幼い頃に祖母が水戸黄門をめっちゃ観てたのだが二人共、黄門役だ。幼かったので祖父とダブル黄門が頭の中で混ざりあって「ダブル黄門=祖父に似てる」という認識が産まれたのかも知れない。
一方、大菩薩峠の麓に住む机竜之介は(近所にぶらり散歩して辻斬りしてたのか‥)宇津木文之丞という剣士との武芸試合「御嶽山奉納試合」があったのだが、竜之介に主人は勝てんと踏んだ宇津木の妻・お浜(新珠三千代)は、竜之介に負けてくれるよう頼みに来る。「それには条件がある‥」と言った竜之介はお浜をファックする。そして武芸試合での約束を守らず宇津木文之丞を撲殺!(殺さなくても‥)「村に居てはヤバい」と思ったのか竜之介は江戸に出奔する事にする。夜道で待ち受ける宇津木の関係者達、だが竜之介は超必殺技・音無しの剣で皆殺しにする。無茶苦茶である。なんか最近「悪さばかりして人生の殆どを刑務所で過ごす犯罪者をテストしたら軽度の知的障害の疑いがあった」という話を小耳にしたばかりだが、竜之介も「とりあえず何も考えずやりたい事やる。それで困った事があったら相手を斬り殺すして逃げる」という考えなし人間に見えてくる。何か「どんな手段を使ってでも天下無双の剣士になる」とか、そういった思想も特にない。観る前は「悪のカリスマ」キャラかと思ってたが、そんなカッコいいキャラでは全く無く、単純に物事を深く考えず人の気持ちもわからないサイコパスという感じ。原作ではどうなのかは知らん。たとえ原作ではカリスマキャラだったとしても岡本喜八はどうしようもない男として描きそう。とにかく、そんなサイコパスはやっていけなさそうだが、良くないことに竜之介には必殺の音無しの剣があるんだな。また凄いイケメンだしモテる。だからやっていける。剣の天才、超イケメン、という二刀流を手にしたサイコパスのサディスト。これは恐ろしい‥「DV夫が、上級国民の息子しかもサディストの空手家」みたいな絶望感だ。
また夫や夫の仲間を全て失ったお浜は「行く宛がない」と言って竜之介の妻となる。くんくん。破滅の匂いがするな‥。

 

 


江戸に出奔した竜之介とお浜のクソ夫婦。江戸に来てからの竜之介は偽名として「吉田竜太郎」を名乗っている。家を捨てて来たもんだから金が無い。子供も産まれたし、お浜には「あんたに着いてきたばかりに金が無く惨めな暮らしだ」とネチネチ言う。竜之介は何をしてるのかというと仲代達矢のカッコいい顔で虚空を見つめるばかり。虚空を見つめても金にはならぬ(もし現代ならずっとTwitterしてるんだろうな)。
そして竜之介は、島田虎之助(三船敏郎)の道場で宇津木兵馬加山雄三)という爽やかイケメン青年に出会う。彼は竜之介が撲殺した文之丞の実の弟、お浜の義弟だった。
取り柄が剣しかない竜之助は新選組(の前身組織)に出入りするようになる。バイトかな。
竜之介は新選組と共に寅之介を闇討ちするが、虎之助は範馬勇次郎の如く鬼神の強さで新選組を皆殺しにする。ちなみに見た目は椿三十郎そのまんまのミフネ。しかもミフネのクソ強キャラに思慮と人望といった要素を合わせた完璧剣士(ちなみに、この虎之助は実在の剣客、勝海舟の師匠)。竜之介は一歩も動けず斬りかかることが出来ないまま虎之助に「お前の剣には心がない、それじゃアカン」みたいな説教まで喰らって見逃されるという屈辱の敗北。スランプに陥った竜之介は宇津木兵馬との決闘をすっぽかし妻お浜を斬り殺して幼子を置き去りに再び京都に逃げる。
どうしようもない奴だな。虎之助先生もさっきついでにコイツを斬り殺せばよかったのに‥。前半、竜之介は「強くてイケメンだが、それだけのカス」といった感じのキャラだったが、それでも仲代達矢の美貌と演技力で「血に飢えた狂剣士‥」みたいな迫力はあった。だけど、この中盤でニートしてたらカミさんにグチグチ言われたりするので残ったカッコいい要素も全て削げ落ちて「強くてイケメンだが、本当にどうしようもないカス」という感じになってきた。しかし我が子を可愛がる様子も一切なく捨てたしマジでサイコパスなんだろうな。
舞台の後半は京都。
大菩薩峠からの因縁=お松と育ての親・七兵衛。
御嶽山奉納試合からの因縁=「兄の仇」と竜之介を追ってきた宇津木兵馬。
江戸からの因縁=新選組
これらが一つの屋敷で交差して終わる。‥いや、よく考えたら「二人で竜之介をぶっ殺しましょう!」と竜之介の元に向かった七兵衛と兵馬は、竜之介の元に辿り着く前に映画が終わってしまったので「えっ?」と言った。
とある店で竜之介は、お浜と出会い、部屋で二人。辻斬りで自分の祖父を殺した竜之介は目の前にいるのだが、実行現場を見てないお浜はそれを知らない。竜之介もお浜のことを知らない。
お浜は竜之介の背後を見て「きゃっ!」と叫ぶ。なんでも女の人の幽霊を見たという。
乾いた笑いを浮かべる竜之介だったが、どうやらこの娘は「大菩薩峠で斬り殺した老人の孫」らしいと気付いた竜之介は様子がおかしくなる。今度は竜之介がお松の背後を見て盃をポロリ‥と落としてしまう。彼もまた幽霊を見たのか?お浜は再び竜之介の背後に幽霊を見る!この一連の流れ、幽霊を見る二人の顔はアップになるのだが幽霊は別に映らない。だけど彼ら彼女が見る幽霊を映さない事がかえって恐ろしい。‥ちょっと上手く説明できないな。とにかく竜之介はお浜や捨てた赤ん坊の影を見、声を聞いて半狂乱になり周囲の物を斬りまくる。死んだ者だけでなく生きている虎之助の影や彼の説教なども聞こえて完全に気が狂った竜之介はサイコバーサーカーとなり一人で暴れまくる。お松はどっか行った!たぶん逃げたんだろう(ちなみに以降、二度と出てこない)。
まぁ「サイコパスの心の下の無意識下に知らず知らずのうちに溜め込んでいた罪悪感、負い目、自己卑下、敗北感‥そういったネガティブな感情が澱(おり)となってたまってて、それが幻覚幻聴を伴って反射屈折を繰り返しやがてスパーク‥発狂してしまった」そういった感じだろう、と思った。ネガティブな感情を元に幽霊の姿で現出した幻覚が見えた‥映画でよくある場面だ。だけどちょっと待て、お松は竜之介がどういう男なのかとか祖父を斬殺したことも知らないのは勿論、幽霊で見たお浜に至っては会ったことも聞いたこともない。だから竜之介が見聞きしたものは幻覚かも知れないが、お松が見た幽霊は本物という事になる。怖い。「負の感情が幽霊となって見えた幻覚」というシーンってだけなら、お松がお浜の霊を見る描写は必要はない。これはドでかいネガティブな要素を重ねて因果が重なりすぎた竜之介の周囲の瘴気が幽霊となったものかもしれない。もしくは敏感そうなお松が見た幽霊もまた、竜之介の負のオーラにアテられた結果、それに自分の悲しい思い出もミックスされて幻視した名状しがたい忌まわしい幻覚だったのかも。どちらにしてもネガティブすぎてやばい。「復讐者に憐れみを」で姉が死んだと思ったら誘拐した幼女が知らない間に無意味に溺死したシーンに似た感触を感じた。
そこへ、仲間と竜之介の裏切りを察知した新選組が殴り込んできて、バーサーカーとなった竜之介は音無しの剣を振りかざして新選組を斬りまくる。
見事な殺陣だが斬っても斬っても終わらない。両者は特に因縁が深いわけでもないし「美しいが長いな‥」と思って眠くなってたら突然画面がストップして「」と出て映画は終わった。

 

 

 

‥えっ!竜之介の命運は?七兵衛と兵馬は?お松は?と思ったが、わざわざここで終わるという事は、これはヤケクソではなく「ここっで終わりでええ」と思って終わらせたんだと受け取った。
いま暇だったので長文書きたくなって書いてただけで、正直あんまり面白くなかった。竜之介は悪人だし、かと言ってピカレスクロマンって感じの悪の華キャラでもない、どうしようもないカスなので結構どうでもいい。序盤とラストの仲代達矢の長い殺陣、中盤の峰敏郎の長い殺陣はさすがに見事だが、どれも文脈や因縁がなく行きがかり上、斬りまくってるだけなので特に響くものがなかった。大物すぎる役者陣、主役級のキャラが蠢きあって収束する終盤などは重厚な雰囲気を一瞬感じ取りはしたが、どうもすれ違いが多かったり因縁が薄かったせいで盛り上がりきれず‥。今まで観た岡本喜八の映画の中でも一番盛り上がれなかったかもしれん。
だがそんな中、(映画本編の殆どが乗れなかったというのもあるかもしれないが)、さっき書いた幽霊のくだり、そこから繋がる竜之介大暴れからの大胆なブツ斬りエンド。永遠に宙にプカプカ棚上げされた、お松と七兵衛と兵馬‥。などが何だか大胆で良いなと思ってしまった。一言でいうと最後だけ良いっていうか。本編全部がラストの飛躍のためだけにある感じが何だか俺の好きな「ツイン・ピークス (2017)」のラストっぽいなぁと思い、最後だけ良い映画として記憶に残った。あぁ、あと幽霊シーンと西村晃のカッコよさね。画面のかっこよさと殺陣の美しさもあったけどね。要はストーリーやキャラに乗れなかった感じですかね。
ついに竜之介の居る場所に辿り着けなかった七兵衛と兵馬だが、西村晃加山雄三に「二人いれば勝てる!鉄砲も持ってるし」としつこいくらい言ってたから、きっと映画終わった後勝つだろうと思った。
ちなみに原作はこの後も竜之介は生き残って延々と続くらしいが関係ない。俺の中の映画終了後の竜之介は「重症を負いながら新選組を皆殺しにして店の外に出たら、ばったり会った兵馬に斬られ、ついでに七兵衛の銃撃を眉間に喰らって即死。お松と兵馬は夫婦になり七兵衛も加えて末永く幸せに暮らしました‥」こんな感じでいいだろう。
一体どの辺だったか忘れたがニートの竜之介が自宅で虚空を見つめて薄ら笑いを浮かべる顔が完全にガイキチで、怖かったのでこの記事のTOP画像にしてみた。いかがかな
長くなったが思うさま長文書いて満足したのでこれで
「終」

 

 

 

そんな感じでした

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The Sword of Doom (1966) - IMDb

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大菩薩峠

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