gock221B

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『レディ・バード』(2017)/”レディ・バード”という仮面が生まれて消えるまでの一年間。そのレディ・バードが消えた場面が好き👩🏻‍🦰

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原題:Lady Bird 監督&脚本:グレタ・ガーウィグ
制作&配給企業:A24 製作国:アメリカ 上映時間:94分

 

 

 

「フランシス・ハ(2012)」の主演などで知られる女優のグレタ・ガーウィグが、自身の生まれ故郷を舞台に撮った半自伝的な映画(しかし現実のグレタはもっと髪も染めない真面目な少女で、本作の主人公レディ・バードは「自分がこう過ごしてたらどうだったかな」という空想も加えたらしい)。
主人公は監督に顔立ちがよく似てるね(というか映画監督の多くは自分に顔や雰囲気が似た俳優を主演にしがちだよね、デヴィッド・リンチとか黒沢清とか)。
長編映画二作目(というか殆どデビュー作みたいなもの)ながら多くの賞を受賞してアカデミー賞にも5部門ノミネートされた。

 

 

 

🐞2002年、カリフォルニア州サクラメントカトリック系高校に通い〈レディ・バード〉という異名を自称する女子高生クリスティン(シアーシャ・ローナン)。
大学進学にあたって憧れのニューヨークに進学したがっているクリスティン‥いやレディ・バードは、地元に残ってほしい母親(ローリー・メトカーフ)と口喧嘩ばかりしているが、何だかんだ言って親友と楽しくやっている。

🐞レディ・バード/クリスティンは、母親と何時も喧嘩しており、また裕福でない実家や厳しいカトリック系高校や町に閉塞感を感じており、そんな何もかも思い通りにいかない「自分」とは「別の自分」になりたい想いからなのか髪をオレンジ?だかピンクだかに染めて異名「レディ・バード」を自称し、それを家族や学校でも「レディ・バードと呼んで!」とグイッと押し出している。 「自分」自身として生きるのは上手くいかない、だから「レディ・バード」というキャラクター?仮面?を一発かます事によって快適に青春をやり過ごそうという感じ。何も思い通りにいかない10代だから「せめて自分の名前は、いつも喧嘩してるママじゃなくて自分が付けた名前で呼ばれたい」ってことかな。そして気になる男子やカースト上位の女子と仲良くなりたいと思ったらグイグイと行くし、かなり積極的な女の子。映画冒頭は、ママと車中で口論になって癇癪起こして飛び降りて腕を怪我するところから始まる(だから本編の殆どで腕にピンクのギプスをしている、これを付けてる間がレディ・バード期だ)。

🐞病院で働いている彼女のママ。ママが何でここまで口うるさいのかって理由は最後に明らかになるのだがレディ・バードは産まれてこの方この唯一人のママしか知らないので「ママはガミガミ言ってばかりだしきっと私を憎んでるんだ」としょっちゅう口にする。と言っても恐らく本気で言ってるのではなく、若い子供が親にしても許される程度の甘えを口にしているだけだと思う。ママも、いつも口うるさい訳ではなく時には一緒になってキャッキャはしゃいだりレディ・バードが失恋して泣いたら「あらあら」ってハグしたりもするし普通に仲が良い。とりあえずママはクリスティンが可愛いから厳しくしてる、というのは始まってすぐわかる。レディ・バードが初体験した直後ママに「私って、いつ頃になったらSEXしてもいい?」と訊くとママは「何?もうやったの?」とお見通し。ママとレディ・バードの関わりは本作の一番大きな部分。

🐞パパは物静かでレディ・バードに優しい、何歳なのかわからないがママよりも更に年上で初老寸前くらいに見える。だからなのか、レディ・バードはパパと仲良くしつつも同級生にパパを見られたくないと薄っすら思っている(そしてそれをパパもわかっている‥)。パパは家族に優しいがお勤めや精神状態が上手くいっていない。

🐞フリーターの兄は養子らしい(それもラストになると状況がわかってくる)、恋人をを実家に引っ張り込んでいる。

🐞親友の大柄女子ジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)。観てる間「この子ジョナ・ヒルに似てるな~」と思ってたが、実際ジョナ・ヒルの妹だと教わった。顔もそうだが太り方や演技まで似てる。ジュリーとレディ・バードの友情もまた重要な要素。

🐞レディ・バードは同じ演劇クラブにいる気になる優しい男子ダニー(ルーカス・ヘッジズ)と付き合い始めたり、その後アナーキストの尖った美少年カイル(ティモシー・シャラメ)と付き合ったりもする。この恋愛要素も本作のピースの一つだ。‥とは言え、これらの恋愛要素は彼女自身のママや友情や人生に比べたら極ちっぽけなものとして語られている。自分は男なので「女性からしたら終わった男なんてこんなもん」という感覚に触れられたのは貴重だった。

🐞レディ・バードは大柄の親友ジュリーがいるが、クラスメートのカースト最上位っぽいセクシーお嬢様ジェナ(オデイア・ラッシュ)と友達になる事に成功する(そうなると大柄女子とギクシャクする)。このジェナは僕が嫌いな結末の映画「グースバンプス モンスターと秘密の書 (2015)」のヒロインだった子が演じてる。昔よりも顔つきや身体つきが出来上がりすぎていて、そんな彼女が日焼けしてカトリック系スクールガールの制服をミニスカにしてる格好は単純に凄いエロい。全裸や下着よりも服着てるほうがエロいとすら思う。

🐞レディ・バードの周りはそういう感じ。
で、彼女はニューヨークの大学に行きたがっているが彼女の家の思わしくない経済状態と、娘を手元に置いておきたいママの存在がそれを困難にしている。
そんな彼女の家族、友情、進学、学園生活、恋愛‥など高校最後の一年を描いた青春映画。

 

 


🐞膨大な脚本を書いて大幅に削ぎ落としたためか凄いテンポ良くパッパパッパ進むので気持ちがいい。ステレオタイプの青春映画だったら念入りに描きそうなドラマチックな場面はダイジェストみたいに秒速で済ませて、それ以上の日常をじっくり描いてるのがクール。
ボーイフレンドが出来た→彼氏優しい→キスした→家族に紹介→だが彼がゲイって事が発覚→親友の大柄少女の前で泣いてる→「もう別れたわ」→仲直りして男友だちになる‥‥といった流れが10分くらいで済まされて、普通のよくある‥ヒットさせたいだけだったりクライアントに言われたから作ってるだけの青春映画だったら失恋の描写をダラダラダラダラやりそうなところだが、本作では数秒で済ませてしまう。「そんな扇情的なクソじゃなくて私は良い作品が作りたいんだ」という監督の意気込みが伝わってきた、だから気持ちいい。
それと「こういう尖った主人公の青春映画って、主人公がイタい失敗ばかりしそうだし共感性羞恥(恥かいてる他人を見て自分の事のように感じて苦しむ現象)を感じて辛そうだなぁ」と敬遠して観るのが遅かったのだが、実際観ると確かに「レディ・バード」を自称して周囲にも呼ばせたり見栄のために嘘ついたりバレたり等のイタい場面はあるが、僕が観る前に懸念していたような「うわ‥恥ず‥」と死にたくなる程のキツいものではなかったので良かった。イタさがあまりに過剰だと共感性羞恥と同時に自分の過去の恥ずかしい言動や失敗も同時に思い起こされて居たたまれなくなるから苦手だわ。ここもまた「扇情的にイタい主人公を笑おう」というよくあるノリではなく「10代だからこれが普通やろ」って感じで誠実に描いてる感じでむしろ良かった。
つまり、そういった感じでこの映画は面白いだけでなく、全方位的に誠実で丁度いい。
シャラメ君演じるマイペースすぎるカイルと、損得勘定で交友関係を選択するセクシーお嬢様ジェナは、どっちかというとレディ・バードと真の恋愛や友情を育むわけではない、よくあるフィクションなら「最低の同級生」として描かれがちなキャラではあるが、彼ら彼女らも別に悪人というわけではなく、現在のレディ・バードとは志向や波長が合ってないだけの人物として描かれる。数年後や町に帰ってきたレディ・バードと真の親友や恋人となってもおかしくはない。人生とはそういうもので、一人の波が高くなったり低くなったり‥その波長が合えば仲良くもなるし仲違いもする。彼らを「ただの嫌な同級生」として一面的に捉えて描くのではなく生きた人間として描いていて、ここもやはり丁度いい。彼らも今この時がこんな感じなだけで将来素晴らしい人物になる可能性も十分有り得る。というか多分そうなると思う。トニー・スタークもアイアンマンになるまでの長い期間は全く良い人物ではなかっただろ?
そういった誠実な人物描写は、別の青春映画「スウィート17モンスター (2016)」でも見られたし、こういった描写こそが現代の青春映画という感じがする。同時に嫌なやつを只の嫌なやつとして描く映画をグッと「昔の一面的で主観的な映画」に追いやった。
そんな感じで実に色んな事がありつつ、しっとり感動するラストで終わる。
レディ・バードは「こんなクソ田舎!」と何時も不満に思っていたが卒業間際、学長のシスターに「貴女って、このサクラメントという町を愛しているのね」と言われる。そこで「レディ・バードは逃げてばかりいたわけではなく実はつぶさにサクラメントの町や周囲の人物や自分の人生を真正面から受け止めていた」事がわかる。いわばレディ・バード自身がまだ気付いていなかった「本当の自分」が彼女自身に帰ってきた場面とも言える。彼女が自分自身に追いついたのだろう。「自分探し」なんて、しょっぱい無駄な事もせず必死に生きた結果こんな若くしてそれに気づけたんだから偉いよね(俺なんて、それが35歳くらいまでかかった)。
そして町を出た後、彼女は〈レディ・バード〉という仮面が必要なくなったので自然と元の〈クリスティン〉に戻る(個人的にここが一番感動した)。だから、これはクリスティンが作った〈レディ・バード〉という仮面が生まれて消えるまでの一年間を描いたお話と言える。
何時も仕事しながら車の助手席に乗せてくれてたママ、そのママが居た運転席に座りサクラメントを走ってママが見た町の景色を見るクリスティン。クリスティンは何時も口うるさかったママがどんな想いで自分を乗せてたのか感じながらサクラメントを走る。ママも見ていたであろうサクラメントの景色は美しいものだった。
‥この辺の、クリスティンやママの心の内を一切台詞にせず映像一発で見せてくれるあたりも良いですね。
この映画の他人の感想やレビューを見てみたが、ストーリーは素朴だけど情報量が多いせいか性差や個々人の環境が違ったせいか、人によって感じる部分や好きな場面が全然違うなと思った。というかこれほど他人の感想聞いて「え、君そこ?」と違和感を感じる映画も珍しいというか。僕の場合‥クリスティンが全編いろんな事に正面から当たっていってるところが良かった‥けど、そんな大掴みな好きなとこじゃなく、一番ぐっときたシーンで言うと‥大学に入ってレディ・バードじゃなくクリスティンを名乗った瞬間でしたね。そんな僕の感じ方も人によっては「え、一番良かったのそこ?」と思われて共感されないのかもしれない。だがそれが人間それが社会ですから、それでいいんだ。というか、そもそも共感なんてどうでもいい。ただ色んな人が居て色んな考え方をしているって事を全人類が常に強く思っておかないと駄目だと思う。そうでないと世界平和だとかSTOP環境破壊なんて夢のまた夢だ。自分さえたっぷり飯が食えればいい、だなんて、そんな考え方はクソだね。
とりあえず各々、お母さんの気持ちを考えるところから始めよう。

🐞この監督&主演女優コンビは今年のクリスマスに「若草物語」の映画化「Little Women (2019) - IMDb」を公開するらしい。主人公ジョーはレディ・バード。本作で尖った二人目の彼氏を演じたシャラメ君とか、二代目ブラック・ウィドウになりそうな俺が応援してるフローレンス・ピューさんも出る模様。エマ・ワトソンメリル・ストリープローラ・ダーンも出る。まだ未知数だけど予告を観た感じだと本作に似てるし順当に行けばグレタ監督はこの三作目にしてヒットメーカーの仲間入りすると思われる。日本公開は未定だが、まぁ絶対公開する要素しかないからするだろう(邦題は英語のままの予感)。
LITTLE WOMEN - Official Trailer (HD) - YouTube
このグレタ監督は1~3年後に配信されると思われる、キャプテン・マーベルに憧れるイスラム系女子高生がスーパーヒーローになるMCUドラマ「ミス・マーベル」の監督して欲しいなぁ。そうなんないかな。

 

 

 

そんな感じでした

グレタ・ガーウィグ監督作〉
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)/どの映画にも一つある「この良い場面1個あったからまぁ良かった」と思うような良いシーンが全編続く映画👩👱🏻‍♀️👩🏻‍🦰👱🏻‍♀️ - gock221B
『バービー』(2023)/面白かったし良作だったが最後に台詞で映画のテーマを全部まくしたててしまう場面だけ醒めた。ミームを始めとする映画外の話題の方が長くなった👧🏼👱🏼 - gock221B 

👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰

Lady Bird | Official Movie Site
Lady Bird (2017) - IMDb

www.youtube.com

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