gock221B

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『ザ・ハント』(2020)/上級市民による陰謀論好き一般人狩りの時間ですよぉおおおおおおおおおお!!🐷

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原題:The Hunt 監督:クレイグ・ゾベル 製作国:アメリカ 上映時間:89分
制作スタジオ:ブラムハウス・プロダクションズ

 

 

 

人間狩りの時間ですよぉおおおお!!
12人の男女はそれぞれ拉致され目覚めると知らない森の中だった。
そこには巨大な木箱が置かれ、中には多くの重火器や刃物などの武器、そしてシャツを着せられた一匹のが入っていた。
その直後、銃声が鳴り響き、彼らは武器を手に取り必死で逃げ惑う……。
哀れ、彼らは瞬く間に視界外から射撃され、一瞬でほぼ壊滅してしまった。
銃を持ちたがらなかった可愛い系白人女性は真っ先に死亡。落とし穴に落ちて杭に胴体貫かれても生きてた女性は男性に助けられるが地雷踏んで真っ二つになり上半身だけになって再び元の落とし穴に落ちて息がまだあったが、どう考えてももうダメなので諦念を瞳に浮かべてたら違う男性に助け上げられそうになるが「いや、よく見ろや私の姿を!もう終わりなんや!助けようとすんなボケ!」と男性の銃を奪い自らのこめかみを撃ち抜きアグレッシブ自死
生き残った3人は、自分たちが今置かれている状況は、ネットでまことしやかに囁かれている陰謀論「上級市民が一般庶民を人間狩りの獲物として行う危険な殺人遊戯〈マナー・ゲート〉」にそっくりだと気づく。「あの都市伝説ホントだったんだ……」震撼する下級市民たち。
映画開始数分で、あっという間に三人になってしまった彼ら。
言うなれば運命共同体……!
互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う……。
一人が三人の為に、三人が一人の為に。だからこそ戦場で生きられる。三人は兄妹、三人は家族……。
……嘘を言うなっ!
猜疑に歪んだ暗い瞳がせせら嗤う。無能……怯懦(きょうだ)……虚偽(きょぎ)……杜撰(ずさん)……、どれ一つ取っても、この場では命取りとなる。それらを纏めて無謀で括る。誰が仕組んだ地獄やら。兄妹家族が嗤わせる。
お前もっ!お前もっ!お前もっ!だからこそ、私の為に死ねっ!
私達は、何のために集められたのか……。
まだ何もわからない。
現実世界でも18世紀くらいまで動物を惨殺して楽しむ殺人遊戯〈ブラッド・スポーツ〉が実在した。また近年だと「世界を牛耳る闇の政府〈ディープ・ステート〉が人身売買を行い、児童を拷問して脳から抽出した〈アドレナクロム〉を摂取し、それで世界の上級市民やセレブは若さを保っている。その窓口はピザ屋の地下にある」という、先日のアメリカ大統領戦で日本でも増殖して話題になった〈Qアノン〉の前身となった陰謀論〈ピザゲート〉。
ブラッド・スポーツ - Wikipedia ピザゲート - Wikipedia Qアノン - Wikipedia
本作の舞台設定は、それら陰謀論を元にしてるのは間違いない。
話が逸れた、映画の感想に戻ろう。
そんな感じで本作の世界内では陰謀論〈マナー・ゲート〉がネットで話題になっており、拉致された一般市民である被害者たちはそれに巻き込まれたのだとピンと来たわけ。
箱にシャツを着た豚が入ってたのは「これは今から狩られる下級市民であるお前らだ。豚め」という、上級市民からのメッセージだ。
その3人も「上級市民が一般人を狩る用の森」を出てすぐあったコンビニでコンビニ店主夫婦に惨殺される。
優しそうな老夫婦にしか見えないコンビニエンスストア店主の老夫婦も、一般市民狩りを楽しむ上級市民であり、このコンビニエンスストアも人間狩りの装置の一つだったのだ(ホラー映画をよく観てる奴ならばコンビニエンスストアとガソリンスタンドは安全地帯ではなく殺人者の仲間が居ると気付けたはずだが)。
上級老夫婦は惨殺した三人を片付け、床を清掃する。獲物である生き残りの下級市民がまた来るかもしれないからだ。途中で店主が、惨殺した三人の中に居た黒人男性の遺体を「黒人」と呼ぶと、老婦人は「あなた、それは良くない言い方よ。アフリカ系アメリカ人と呼ばないとね」と嗜める。何の罪もない彼らを惨殺するのは全然OKだがポリティカル・コレクトネスには厳しい……。それはつまり彼らは「マイノリティを尊重している」のではなく「自分たちは『マイノリティを尊重している』というポリコレに考慮しているアップデートされた者だ」と他人に思われたいだけの「ファッションとしてのポリコレ」を身に纏っている偽善者に過ぎない者だと言うことを示している。また彼らは健康に気を使ってるので〈砂糖とかいう健康に良くない毒〉が入ってる市販のジュースも好まない。
哀れ、集められた「陰謀論を好む一般市民」の殆どは、ここまでの映画開始数分で壊滅してしまった。だがまだ2人残っている。
一人だけ他の市民とは別行動していた貧困金髪白人女性の主人公クリスタル(ベティ・ギルピン)も、件の下級市民狩りの装置という裏の顔を持つ〈殺人コンビニエンスストア〉に立ち寄る。
上級老夫婦は再び優しい店主を装いクリスタルに接客する。
煙草を買うクリスタル。
次の瞬間、クリスタルは老婦人の顔面をカウンターに叩きつけ、俊敏な動きでレジカウンター内に飛び込むと、コンビニエンスストア店主が強盗避けにカウンター内によく設置してありがちなショットガンを素早く奪い取ると老男性店主を射殺!
殺人老夫婦店主は煙草の値段を、かなり高めに言ってしまったためクリスタルに偽の店主だと見破られてしまったのだ。
砂糖すら「毒」だと断ずるほど健康に気を遣っている上級市民にとって煙草など猛毒に等しい、だから煙草の値段など知るわけがない。クリスタルは人間狩場のすぐ近くのこのコンビニエンスストアを最初から怪しんでおり、ボロを出したら殺ってやろうと最初から思っていた。安心しきっている慢心者は、最初から決め打ちで行動しようとしてる者の反射神経には勝てない。
直後、命乞いをする上級老婦人にショットガンを向けたクリスタルは、地に伏した悪党に向けて、美しい顔を悪党にトドメを刺す時のクリント・イーストウッドの様な目を剥いた恐ろしい形相で「ドジッたな!?腐れ女が!」と言うと、ショットガンをぶっ放す。上級老婦人はその脳みそを二階から落としたトマトのようにグシャグシャに撒き散らしかしながら死亡。「黒人」という言葉を使わず「アフリカ系アメリカ人」と呼ぶ洗練さや、健康のために砂糖も口にせず維持してきた健康な脳が一秒で粉微塵になって終わった。この死因は「一般市民への興味のなさ」と言ってもいいだろう。
そして映画タイトルが出る『THE HUNT』。
主人公の貧困白人女性クリスタルは、陰謀論を好んでいた一般市民を、彼らが好んで書き込んでいた〈マナー・ゲート〉によって皆殺しにせんとす殺人上級市民グループの包囲網から逃れることができるのか。
ここまでが映画開始からのアバン30分間。
何これめっちゃ最高なんですけど。
台詞ほとんどないアクションなのに情報量多いしめちゃくちゃ面白い。
まぁまぁネタバレあり

 

 

 

いつもなら劇中で起きた面白い展開や場面を列挙した後に感想書いてたけど、本作は冒頭だけでご覧のように長文になってしまったし以降も全部面白いので、上記の勢いで劇中に起こった面白い展開を書いていくとラストまで展開を全部書いちゃう事になる。それだと感想っていうより只ネタバレしてるだけになっちゃうので今回だけは劇中の展開を書くのは冒頭だけに留めておく。興味を持った人は是非レンタルでもして観てください。残念ながら動画配信サービスとかにはまだ来てないみたい。
コロナで作品数が少なかったとはいえ昨年2020年に日本で公開された映画やドラマの中で俺の中で今んとこ暫定一位。
上に書いた冒頭以降は、主人公クリスタルが〈マナー・ゲート〉や殺人上級市民を率いる主催者(ヒラリー・スワンク)から如何に逃れるか?クリスタルは上級達に一矢報いる事ができるのか?。主催者やクリスタルの秘密……などが語られる。単純にめちゃくちゃ面白い。
端的に言うと、僕は映画監督の中でジョン・カーペンターが一番好きなのだが、本作は久々に見つけた「ジョン・カーペンターっぽいアクション映画」だったので最高だったわけです(ジョン・カーペンターの中でもホラーじゃなくてアクションのラインね)。具体的に言うと「スローモーションや細かいカット割りなどのダサい編集はせず、いきなりぶっ放して瞬殺する系のアクション」で、低予算だから劇中の舞台は少なめでシンプル。あと社会風刺をふんだんに盛り込んでいる。そんな感じ。ジョン・カーペンターっぽいB級映画だし、めちゃくちゃ面白いんだけど一つだけ欲を言うなら本作は面白くてスッキリするハッピーエンドなんだけど、そうじゃなくて相討ちで終わるとか「主人公は敗北するが、破滅する未来を敵に残して嘲笑って死ぬ」みたいなビターエンドで終わった方がよかった。何故かというと、その方が記憶や印象により残るから。主人公を応援して観てたので観てる時は気持ちいいけどね、だけど少し辛いラストの方が残るものが多いのよ。本作をめちゃくちゃ気に入ったけど、あとほんの一歩なんかあれば2020年代の『ゼイリブ』みたいなカルト名作になれたかもしれない。ただ、クリスタルは帰っていく時にラスボスのドレスを着て彼女の自家用ジェットで去って行った。敵の上級の姿で終わるというのは「革命が成功しても上についた革命側もやがて腐敗する」という事の暗示だったのかもしれない。深読みしすぎか、迫害されたCAさんと乾杯するし普通のハッピーエンドだったんだろ多分。
ジョン・カーペンターっぽいB級アクション映画ってだけでなく 僕は(エンタメとしての)陰謀論が好きだし、後述するが主演女優も好きだし、本作は本当に頭から尻尾まで大好きな要素ばかりで最高だった。
そして、ここまで読むと「被害者の陰謀論者が、悪い上級市民の陰謀論を討つ」という勧善懲悪だと思うかもしれないが本作はそれだけじゃない。むしろ本作では「陰謀論〈マナー・ゲート〉を盲信する一般市民たち」も、人間狩りするセレブ同様にバカにしている。そして主人公クリスタルは両者とも違う。「陰謀論好きの一般市民 vs.上級市民」という構図だと思われたが実際のところは「陰謀論好きの一般市民 vs.上級市民 vs.クリスタル」だった。

 

🐷

 

※ここからは本作の感想じゃなくて主演女優の話なので、感想だけ読みたかった人は特に読まなくても大丈夫です。
本作を観たきっかけだが〈人間狩り映画〉〈デスゲーム映画〉なんて腐るほど作られててありきたりだし、そもそも僕はデスゲームっぽい映画や漫画は嫌いなんです。「残酷だから」じゃなくてバラエティ番組を見てるような気分になってアホらしくなるからです。デスゲームっぽい状況を舞台に色んなことを能弁に語る『ホステル』1、2は大好きなんだけど、デスゲームやスプラッターそのものが目的になってるフィクションは別に好きじゃないって事(関係ないが『ホステル Part.3』はイーライ・ロスが監督してなくて凄いつまんないので3は観なくていい)。
でも本作の場合、主演がベティ・ギルピンだったので一応「観る映画リスト」に入れてて、それで観た感じ。
変わった名前のベティ・ギルピン氏は、Netflixオリジナル・ドラマ・シリーズの『GLOW』で主人公のライバル役してて知ったんですけど
『GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング〈シーズン1〉(2017) 全10話
『GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング〈シーズン2〉(2018) 全10話
GLOW: ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』〈シーズン3〉(2019) 全10話

『GLOW』は『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のスタッフが作った80年代に実在した女子プロレス団体をモデルにして作ったドラマでめちゃくちゃ面白いけどイマイチ人気が無いので強烈にオススメです。今コロナで最終シーズン制作がストップしてるけど、特にシーズン1、2は傑作なのでオススメです。これと『呪われた死霊館』(2018)は傑作だけど「中年女性ばかりの女子プロレス」「死霊館をパクった邦題の、死霊館とは関係ないホラー映画」などの観る気が起きなさそうな作品のせいか、Netflixのオススメ訊かれる度に勧めてはみるものの観てくれる事は少ない。
話を戻して『GLOW』でのギルピン氏は、アリソン・ブリー演じる黒髪の目立たない主人公の元親友兼ライバル、金髪のグラマーな白人美女で夫と子供もいるという社会的な地位の高いキャラだった。そんな彼女が色々あってプロレスの世界に飛び込みプロレスの魅力を知ったり主人公と心を通わせたりする様が魅力的だった。
ベティ・ギルピン氏はめちゃくちゃ痩せてるにも関わらず信じられないほど胸がデカい。お尻も。まるで昔の漫画に出てくるような「グラマーな金髪白人女性」スタイルなんだが俺はそんな彼女を観てて「この人魅力あるけど売れないだろうな~」と思ってた。考えてみてください、めちゃくちゃ痩せてるのに巨乳の金髪白人美人の女優……。こんな女優が現在のアメリカ映画で目立つ主演できる役とか少ないですよね(まぁ80~90年代に居たとしてもエロい役やったりワインスタインに狙われるだけなので今の方がマシなんだけど)。先日観た『STUBER/ストゥーバー』(2018)でのデイヴ・バウティスタも筋肉モリモリの大男なんだが、彼はロック様ほどの陽キャっぽさもないし役選ぶの大変だろうな~と思った。彼は「大男だけどメンタルが弱い」「大男だけど見た目ほど強くない」「大男だけどコメディリリーフ」など現代にもフィットする役ばかり狙って大ヒット作にたくさん出ている。WWEレスラー時代も好きだったけど近年そういった彼のクレバーさで益々好きになってきました。
話を戻してベティ・ギルピンはいわば「女版デイヴ・バウティスタ」です。「『女版デイヴ・バウティスタ』は、マッチョなロンダ・ラウジーとかジーナ・カラーノじゃないの?」と思われるかもしれませんが違う。今話してるのは「性別が色濃く出た恵体ゆえに主演が難しそうな俳優」の話をしてるので、マッチョなバウティスタの女性版は金髪白人痩せ巨乳であるギルピンになるわけです。つまり今ハリウッドやエンタメ業界は多様性に考慮していて勿論、僕もそれを素晴らしいなと思ってて良いことだと思うんだけど最近、「有色人種や性的マイノリティの活躍が増えてきたけど、逆に言うと白人やマッチョや巨乳の美人の出番は減っていくのかな?」と思ってたしイマイチ、ブレイクする機会がなかった面白い女優ギルピン氏が、こんな面白い映画の主演でハマり役して何だか嬉しかったなぁという話です。
本作の主人公は正体不明の流れ者「名前のない人間」っぽくもあり、容姿や表情なども、全体的に大好きなクリント・イーストウッドっぽくもあったんですよね。そこも良かった。何なら続編作って欲しいくらいだ。ゼイリブみたいなビターエンドにしてカルト化しなかったっぽいけど逆に言うとシリーズ化できるチャンスが生まれたかもしれん。

 

 



そんな感じでした

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The Hunt (2020) - IMDb
www.youtube.com
www.youtube.com
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