gock221B

映画やドラマの感想ブログ 😺🐱 殆どのページはネタバレ含んだ感想になってますので注意 😺 短い感想はFilmarksに https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

『サマリタン』(2022)/ただでさえ強いスタローンが怪力&不死身の元スーパーヒーロー役なのでデバフかけるのが大変そうだった🔨


原題:Samaritan 配信サービス:Amazon Prime Video 主演&製作:シルヴェスター・スタローン 監督:ジュリアス・エイヴァリー 脚本:ブラギ・F・シャット 製作:ブレイデン・アフターグッド 製作国:アメリカ 上映時間:106分

 

 

 

 

25年前、この町には超人双子、ヒーローの”サマリタン”と、ハンマーを持ったヴィランの”ネメシス”が居た。
サマリタンに憧れている母子家庭の13歳の少年サム(ジャボン・“ワナ”・ウォルトン)は隣に住む独居老人ジョー(シルベスター・スタローン)が、実は「死んだとされている伝説のヒーロー”サマリタン”」ではないかと疑っている――

みたいな話。
凄く犯罪が横行している荒れた町。主人公の少年サムはかつてこの町の平和を守っていたスーパーヒーロー、サマリタンに憧れ過去の記事を集めたり、サマリタンを25年間追いかけているサマオタの先輩であるジャーナリストに会いに行ったりしている。
しかし看護師のママの稼ぎだけでは生活が苦しくオタ活だけに勤しんではいられない。近所の悪ガキと空き家から銅線盗んだりしてカネを稼いでいた。
そんなある日、サムは不良の先輩軍団に絡まれた時に隣人のジョーに助けられる。老人なのにチンピラ軍団を瞬殺したジョーを見たサムは「ジョーがサマリタンやん!」と顔を輝かせる。サムはジョーを追いかけ回す。慕われてまんざらでもないジョーはサムとの仲を深めていく。サムの父もワルで既に死んでしまっているらしいし父性愛的なものを求めてヒーローに憧れてる部分もあるんだろうね?
ジョーはゴミ回収業者だが、趣味で壊れた機械を拾い、修理して古道具屋に売りに行っている。
ある日ボコられた報復でチンピラ軍団はジョーを車でハネる。だが死んだと思われたジョーは起き上がり水を浴びてアイスを食べたら全快した。やはりジョーはサマリタンだった。憧れのヒーローを見つけて喜びを爆発させるサム。
小遣い稼ぎをしてるうちに、町を牛耳るチンピラ軍団とも関わっていく。
サムはヒーローのサマリタンに憧れているが、チンピラのリーダーはヴィランのネメシスに憧れている。彼は「ネメシスは悪い金持ちとかをやっつけていた我々、貧乏人のヒーローだった。サマリタンは上級市民を守ってたから良く言われてただけだ」と言う。昔の回想はサマリタンとネメシス最後の対決しか出て来ないのだが、どうやらネメシスは義賊とかダークヒーローだったようだ。真相はいかに。
チンピラのリーダーは度胸のあるサムを気に入る。サムも最初は割と喜ぶ。やはり小柄で父がいなくて貧しいサムはパワーに憧れている。
やがてチンピラのリーダーは、サマリタン&ネメシス兄弟にダメージを通すことの出来る不思議なハンマーを入手。二代目ネメシスとして町に暴動を起こしカオスをもたらそうとしている。
次からネタバレあり、なので観る予定の人はここで……

🔨

 

やがてチンピラ軍団は「ウチに出入りしているサムの隣人ジジイ、車で轢いたのにピンピンしてる。サマリタンが生きてた」と気付く。
そして軍団はサムを人質に取りサマリタンを倒そうとする。
ジョーakaサマリタン vs.チンピラ軍団。
サマリタン……「善きサマリア人」という、その名の通り困っている人を助けるヒーロー。ネメシス……義憤にかられた悪しき者を滅するヴィラン、いやヴィランというよりダークヒーローか。
ジョーは『ストリートファイターII MOVIE』(1994)ラストのシャドルー総帥ベガみたいにゴミ清掃者でチンピラのアジトに突っ込むジョー!
チンピラに囲まれて銃乱射されるがジョーの肌は防弾の身体なので効かない。
ジョーは自動車を枕みたいにひょいっとひっくり返したりチンピラをドッジボールみたいに水平に投げ飛ばしたりできる「そこそこの怪力」、そして防弾の身体。……という事で能力はMARVELヒーローで例えるとルーク・ケイジが一番近いね。
総合スペックは、不死身だが車に轢かれた時は気絶した。という事でパワーと防御力まとめるとスパイダーマンを少し弱くした感じだろう。
弱点はというと、どうやら歳取って全盛期よりも疲れやすくなった事と、パワーを酷使しすぎたら身体が熱を発してジョー自身がそれに苦しんでしまうことみたい。
そうそう、歳取ったとはいえスタローンだから、ただでさえ強い。それなのに怪力だとか銃撃が効かないなどのスーパーパワーも付与されてるんだからもうジョーがやられる可能性は皆無なわけ。
唯一、勝てそうな手段はこの展開通り、弱き者を人質に取る。あとは超人兄弟を唯一倒せるアイテムとしてネメシスのハンマーが出てくる。
これが剣だったらグサッと貫いて即死または致命傷を演出できるのだが、ハンマーというのは「ちょっと痛かった」から「深刻なダメージ」まで、やられた方のリアクション見ないとわからない。そんな事で剣が胸を貫いたら「これはヤバい!ジョー死んだ!?」となるわけだがハンマーですからね。正直、ハンマーなんかで何十発殴られようとジョー……いやスタローンにダメージが通るとは思えません。
このハンマーですが最後までよくわかんない代物でしたね。もう持った者にスーパーパワーを付与する魔法のハンマーくらいにした方が良かったのではないか?
その点「パワーを酷使すると熱を発してしんどくなる」というジョーの特性は上手い具合にデバフかけてた気がしました。
「元スーパーヒーローだった年寄り」って感じも出てるしね。「ジョー……いやスタローンにダメージ通すには『スタローン自身が暴れた事による疲労』のみ!」って感じが楽しかった。
ネタバレですが、実はジョーは善のサマリタンではなく悪のネメシスだった。これ。
で、チンピラは生前のネメシスの町混乱計画を引き継いでやってるんですが、実は真実は「町のエネルギーを奪って混乱させるのは、ネメシスじゃなくサマリタンがネメシスをブッ殺すために行った計画、それをチンピラのリーダーが曲解してた」らしいという事が明らかになる。
と言われても正直、サマリタンとネメシスが25年前どんな奴らだったのか、どんな関係でどんな思想だったのか回想もないし殆ど語られないのでピンと来ないものがありました。大体の流れや何がどうなってるのかはわかるんですけどね?
また「ジョーはサマリタンじゃなくネメシス」というネタが明らかになり、破壊活動を反省したジョーが隠者となって壊れた物を治して自らを癒やしてた事とか、良い子のサムと出会って引きこもりじゃなくなっていく流れも良いとは思ったが、チンピラのリーダの方から「ネメシスは悪い金持ちを攻撃してた貧乏人のヒーローだ」とか言ってたから「そんなにネメシスだった事を反省しなくても良くない?」と感じました。
やはりネメシスがどれくらい悪いこと……たとえば罪のない人が巻き添えで死んだのかとかそういうことがわからないので「気にしなくてよくない?」と思ってしまいました。
ジョーは最後にサムに「誰の心にも善と悪がある」と語ります。
悪名が轟いていた自分(ネメシス)にも悪を断罪したり反省する気持ちもあるし、善と思われてたサマリタンも最後に自分を罠にはめて殺そうとしてきた……勧善懲悪じゃないぞと、これには完全に同意です。
世の中には白と黒という色はなく濃淡の違う灰色だけがある……それが我々が居るこの世界ですからね。
ですが世の中の人の多くは心が弱く、すぐに「勉強はしたくないが俺が信じたい事を決めてくれ」と思ってる人ばかりです、だから陰謀論やマルチや宗教や変な政治家の甘言に言いくるめられる人がこんなに多いんでしょうしね。
スタローンは普段からエンタメ作品とか逐一観てるらしいから「自分がヒーローになって言いたいのはこれだ」というのが、この話なのは良いと思いました。
サマリタンとネメシス、多分どっちもスタローンなんでしょうね。メタ的な意味で。
チンピラのリーダーも途中までは、ワルだけどサムの良い兄貴分になりかけてたのも良い部分でした。彼はサマリタン(ジョーの良い部分)を信じたので良い子でいられたが、チンピラのリーダーはネメシス(ジョーの過激だった部分)を曲解したあげく凶行に及んでしまった。それが良かったです。チンピラのリーダーも白が多い灰色が黒に近い灰色になってしまっただけ。ワルとはいえ彼女や仲間を大事にする部分もあったわけだしね。そしてジョーはキャプテン・アメリカやスーパーマンみたいな品行方正なヒーロー”サマリタン”ではなく、悪を遠慮なく滅する……パニッシャーとかデッドプールみたいな”ネメシス”だったので道を違えただけのチンピラたちを遠慮なく皆殺しにする。命乞いする不良少年をもわざわざブッ殺す。「何故なら俺(ネメシス)はヒーローじゃないから……」という、この辺も面白かったです。

言いたい事とか、ジョーとサムの疑似父子感、サム役の子役のはじける笑顔など色々良いところもありました。あともう少しジョーのデバフ(能力を下げて不利にさせること)が上手くいってたら緊迫感あったのではないでしょうか。

 

 

 

 

そんな感じでした

『ヴァチカンのエクソシスト』(2023)/誠実な印象だが怖さも人間ドラマも気迫で退屈だし真面目な祓魔は『エクソシスト』(1973)で全て事足りてるので、もっと原作にないオリジナル展開で悪魔との闘いを派手にするかキャラを深掘りして欲しかった👿 - gock221B

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Amazon.co.jp: サマリタンを観る | Prime Video
Samaritan (2022) - IMDb

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『フランシス・ハ』(2012)/グレタ・ガーウィグ演じる主人公の魅力的だがリアルな学生ノリのまま歳取ってしまった感じが良い。時代を感じさせないよう撮られた青春映画👱🏻‍♀️


原題:Frances Ha 監督&脚本&制作:ノア・バームバック 主演&脚本:グレタ・ガーウィグ 製作総指揮:フェルナンド・ロウレイロ、ロウレンソ・サンターナ 製作:スコット・ルーディン、リラ・ヤコブ、ホドリゴ・テイシェイラ 撮影:サム・レヴィ 製作国:アメリカ 上映時間:86分

 

 

若い猫はいるが一人暮らしなので気がついたら普段観る映画やドラマがアクション、SF、ホラー、アメコミ映画……など男が好きそうなジャンル映画に偏っていた。という事にふと気付いた。勿論基本的に好きなのはそっちなのだが、女性と同棲とかしてる時は自分だけじゃ絶対観ないものを観たり読んだりして意外な発見があったりするものだが、それが無いなと思いとりあえず普通の人間ドラマを観ようとこれ観た。映画やドラマもTV時代と違って配信やレンタルなどで自分でセレクトするわけで何かと偏りがちだ。

ノア・バームバック監督の映画は全部じゃないけどたまに観てて割と好き、しかしそれよりも近年はバームバック監督と事実婚状態かつ本作の主演してるグレタ・ガーウィグ。女優だが『レディ・バード』(2017)『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)などの監督もして、2作だけだがはっきり言ってバームバックの10倍くらい凄い良いので、もう現役の好きな映画監督ベスト5に入るわ、自分の中の……。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)とか「俺の2020年の日本公開映画」の中のNo.1だったし。
今まで観たノア・バームバック映画は『イカとクジラ』(2005)、『マーゴット・ウェディング』(2007)、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2014)、『マリッジ・ストーリー』(2019)……かな。あまりブログに書いてない。この中だと『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2014)が良かったかな。
そんなグレタ主演のノア・バームバック映画。モノクロの。
ネタバレあり(まぁネタバレどうこうという内容でもないが……)

 

👱🏻‍♀️

 

ニューヨークでプロのダンサーを目指す27歳の女性フランシスグレタ・ガーウィグ)。彼女は大好きな親友ソフィー(ミッキー・サムナー)と女二人暮らしで、大学生のような楽しい日々を過ごしていた。
しかしソフィーは恋人との婚約を機にフランシスを置いて引っ越してしまい、挙句の果てに恋人と日本の東京に移住してしまった。
突然、親友と家を失ったフランシスは気の良い金持ちのボンボン芸術家レヴ(アダム・ドライバー)たち男達とのシェアハウス、故郷サクラメントで家族と過ごすクリスマス、数日間のパリ旅行を経て、出身大学での下働きなどしていくうちに、自分の人生と向き合ったフランシスは……――

みたいな話。
身も蓋もない言い方すると、学生気分の抜けてない女性が親友に依存してたら周囲に置いていかれて焦り、色々やってるうちに一歩成長するという人間ドラマ。……まぁ、こう書くと年間何百本も撮られてるような内容だが思ってたより良かったです。
モノクロでニーノ・ロータっぽいBGMが流れてるので少しフェリーニっぽいクラシックな雰囲気。近代のNYが舞台なのに数十年前の話のようにも見えて不思議な気持ちになる。ゴダールの『アルファヴィル』(1965)って映画が大好きなんですが、この映画はフランスが舞台のモノクロ映画なんだが「個人的な感情が禁止されたAIが支配する近未来SF」って設定、だけど別にSFXや特撮などは一切ない、普通の60年代のフランスを舞台にモノクロと台詞と演技だけで「これは近未来SF映画です」ってやってて、その逆だなと思った。現代劇なのに昔の映画っぽく撮ってるという。時事ネタが出てこないのも、時代がよくわからなくなってる理由の一つだね?多分わざとそうしてるんだろうね。時代に左右されない普遍的な作品にしたかったんじゃない?だって、これ50年前が舞台の映画だって言われても、あまり違和感ないもんね。
あとデヴィッド・ボウイの『モダン・ラブ』が頻繁に流れる。

もう、ここ5年……くらい?アメリカの大作、小作問わずアメリカ映画に故デヴィッド・ボウイの曲が流れる頻度が異常!(たぶんクイーンやビートルズストーンズより頻度が多い)。デヴィッド・ボウイ知らない人でも聴いたら絶対に「知ってる」と言うはず。特に『スペース・オデティ』『スターマン』が流れる頻度が異常。宇宙を思わせるせいかSF映画に多い。『ジギー・スターダスト』『ヒーローズ』『レッツ・ダンス』。とかも多いね。ジェームズ・ガンMCU映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)が「人間ドラマだけじゃなくSFなどのエンタメ大作にも懐メロは合う」と提示したせいもあるかもしれん。「デヴィッド・ボウイ聴いたことない……」って人も、Spotifyのリンク張ったから上の太字になってる曲名クリックして欲しい、絶対にどれも聴いたことあると思う。

話を本編に戻そう。
ストーリー的に、似たようないっぱいある青春映像作品より抜きん出てるのは主演のグレタ・ガーウィグの魅力と、彼女が演じるフランシスの絶妙なキャラだろう。
フランシスは骨格の太い美人だが、同居した若い男子に「顔が老けてる。その割に中身は俺たちより若く感じる」と評される。自分は40代のおじ(中年男性)だから推測でしかないが「もし自分が20代後半の女性だったら言われたら最悪な評価かもしれん……」と思った。
実際に劇中のフランシスは絶妙に子供っぽい。と言ってもフランシスは、嫌な奴とかアホすぎるわけではなく、むしろ優しくて面白くて魅力的な美人なのだが、性格が絶妙に幼い。その塩梅が物凄く絶妙!
アダム・ドライバーの同居人の男子はフランシスと仲いいが「ちょっと付き合うとかないわー」って態度で接される。それも少しわかる。
その子供っぽさというのは、のん(旧・能年玲奈)氏とかアニメキャラみたいな「少女のような天真爛漫さ!」って感じの、少しファンタジー入った幼さではなく「え……自分それで良いと思ってんの?」と言われそうな若干痛い幼さ。コメディ映画のおバカな女性主人公みたいなファンタジーな痛さではなく本当にリアルな痛さ。そしてそれもほんの少しだけ。それがリアル。フランシスは良い子なので別に「もうフランシスと遊ぶのやめよ……」とは誰も思わない。糾弾もされない、糾弾したら空気悪くなるから親友か家族しか言えない(だからこそ運が悪ければそのまま中年になってしまう危険性)。
フランシスの周りの友人知人はパーティとかでフランシスに「あはは……」という乾いた笑いを向ける。「フランシスって楽しいけどちょっと……アレだよね笑。今後も遊ぶし言わへんけどね」という感じの笑い。というのも自分もフランシス同様、アラサーの時に似たような曖昧な笑顔を向けられたから。皆、優しいので指摘はしない。その時の自分は違和感だけ感じる、しかしアホだから何の違和感なのかはわからない。俺はアホなりに記憶力は良いので覚えてて3~10年経ったら成長して「あっ!あぁ……10年前のあの違和感ある表情は俺の痛さを見てのものだったんだ!」と何十個も思い出して苦しんだ。でもその度に学んでいく。俺のようなアホはそのようにして前に進むしかない。京都の恋人・友人・知人が多かったので、そういった表情は特に多かったかもしれん。

 

 

また話を戻そう。
とにかくリアルな幼さ、痛さを持ったフランシスだったが、大好きな賢い親友ソフィーに去られたり男子たちとのシェアハウスで薄っすら笑われたり、挙句の果てに自分が一生懸命やってたダンスチームからも外されてしまう。
順番忘れたけど、実家に帰省したりフランスに三日間行ったり出身大学で泊まり込みでバイトしたり何でも出来るし順風満帆な才女だと思ってた親友ソフィーの醜態を見たのも、冷静になって自分を見つめ直す事になったのだろう(多分この辺でフランシスは初めて自分自身を見つめ始めた)。
そして遂に自分を見つけた。自分探しは「自分を探しても自分は見つからない。だって自分の目で自分は見れないからね」って感じだがフランシスは色々あがいて見つけた。
そして、自分を見つけた最後の10分くらいのフランシスは急に魅力的になる。
もう最後の10分だから特に印象的な出来事は台詞はないのだが、顔つきや仕草だけで「もう数分前のフランシスじゃない」とわからす。実写映画出てるグレタ・ガーウィグって初めて観たけど演技も凄かったんだね。
そんな感じで「絶対に必見!」「驚きの展開!」等という内容ではないが、しみじみ爽やかな青春映画でした。ノア・バームバック映画の中だと本作と『マリッジ・ストーリー』(2019)が特に好きかな。結婚出産してない分だけ本作の方が好きかな。

そしてそんなグレタ・ガーウィグの次回監督作は、マーゴット・ロビー主演の『Barbie』(2023)。楽しみだわ。

 

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そんな感じでした
ノア・バームバック監督作〉
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2014)/”中年と若者”じゃなく”純粋かそうじゃないか”という話?👨👦 - gock221B
『ホワイト・ノイズ』(2022)/コロナ禍の揶揄&陰謀論コメディかと思ったら死生観の映画?思いのほか面白かった👨‍👩‍👧‍👦 - gock221B
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Frances Ha (2012) - IMDb
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『ガンパウダー・ミルクシェイク』(2021)/「ジョン・ウィック」+「グロリア」みたいな感じ。数秒だけ闘うミシェール・ヨーのキレが良すぎた🔫🍨


原題:Gunpowder Milkshake 監督&脚本:ナヴォット・パプシャド 脚本:エフード・ラフスキ 製作:アレックス・ハイネマン 製作国:フランス、ドイツ、アメリカ 上映時間:114分

 

 

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのネビュラ役とか『ドクター・フー』とか最近の『ジュマンジ』シリーズに出てたカレン・ギラン主演アクション映画。
ネタバレあり

 

 

 

 

幼い頃、殺し屋のママ(演:レナ・ヘディ)が失踪して残された少女は、母と同じ組織”ファーム”でママの知り合いである代表者(演:ポール・ジアマッティ)育てられ女暗殺者(演:カレン・ギラン)に成長した。
ある日、いつものように暗殺任務をこなしカネを取り戻すが、カネを盗んだ男はチンピラに誘拐された娘エミリーを取り返す身代金として盗んだものだとわかり、この父子に幼い頃の自分を見て同情し娘を取り戻す。カネは爆発で消えてしまい、冒頭で殺した犯罪者の中に裏社会の大物の息子がいた事でサムは一転、ファームに命を狙われる。
サムは姿を消していたママと再会しエミリーを護るため、ママの暗殺者仲間だった女性たちの図書館に逃げ込む――

みたいな話で主人公&守る対象&仲間……と、三世代すべて女で敵は全員男、というガールズ連帯アクション映画。
BGMやスローモーションで顔面ドアップになったりとウエスタンっぽい、いやウエスタンが好きというより「ウエスタンっぽいの好きなタランティーノ好きそう」な感じ。
殺し屋専用クリニックや、中立地帯である殺し屋専用ダイナーやママの仲間たちの殺し屋専用図書館?など全体的に設定がマンガっぽい。
中立地帯の殺し屋専用ダイナーは『ジョン・ウィック』のコンチネンタルホテル(中立地帯)を思い起こさせるし、マンガっぽい不思議な世界観も『ジョン・ウィック』に雰囲気似てる。『ジョン・ウィック』+『グロリア』なガールズ連帯アクションという感じ。主人公たちが強すぎるので『ジョン・ウィック』より更にファンタジー度が高い。

一番良かったのは、殺し屋専用クリニックで「両腕が麻痺して動かなくなる」薬を打たれた主人公が、事前にボコボコにした車椅子や松葉杖でしか動けない男の殺し屋三人と戦う……というデフレバトル。
というのは、この映画、主人公やママたち女性たちが全員、男の殺し屋の10倍くらい強いのでこれくらいハンデがないと緊張感が出ないというところがあるからか(何なら男達も五体満足で良かった気もする)。
それと図書館でママや仲間たちも加勢してくれるところで、ミシェール・ヨーも戦う場面が数秒だけあるが、当たり前だが他の人よりもキレが良すぎる!
もう動きのキレや姿勢が良すぎてシルエットが美しすぎる。もう御年60歳くらいだがアクションしてる間はミシェール・ヨーが誰よりも一番美しく感じる。そういえば『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)でもミシェール・ヨーが数秒くらい陰陽の構えするだけでめちゃくちゃカッコよかったし。ミシェール・ヨー観て「骨格や筋肉は裏切らない」的な事を改めて凄く感じて自分も運動して姿勢良くしようと思った。
カレン・ギランも好きなのだが観てると「ミシェール・ヨーが少女を護る『グロリア』みたいな映画にした方が観たい」と思ったのでミシェール・ヨー主演の評判良いマルチバース映画『Everything Everywhere All at Once』 (2022)が早く観たくなった。
後は、仲間が一人だけ戦死してしまうのも緊張感あって良かったかも。というのも、主人公たち女性達があまりにも強すぎて最後まで全くハラハラしなかった。だから仲間が死んで「あ、負けて死んだりする事もあるのね」と少し締まった。
女性たちの連帯、悪い男達への逆襲を描くならもう少し「女性たちが組織を相手にして勝てるのか!?」という感じで描いた方がよかったかも。
というか味方はママ一人で良くね?で、戦死するのもママの役割にして、ママの魂を受け継いだ主人公が敵を倒せばよかったんじゃない?敵を全滅させるのママたちだから「なんかママたちが全部やってくれたな」感が強い。多分、監督がミシェール・ヨーとかレナ・ヘディとかアンジェラ・バセットとかカーラ・グギノを暴れさせたかったんだろうなと思った。
活躍は、主人公一人か、中年女性チームかどっちかにした方が良かったかも。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Gunpowder Milkshake (2021) - IMDb

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『シャドウ・イン・クラウド』(2021)/有能な女性主人公アゲ&有害な男性サゲは良いのだが終盤では極端すぎて若干醒めた。でも久々のクロエ主演の良作✈


原題:Shadow in the Cloud 監督&脚本:ロザンヌ・リャン
製作国:アメリカ&ニュージーランド 上映時間:83分

 

 

第2次世界大戦中の米軍爆撃機の狭い銃座内に押し込められたクロエ・グレース・モレッツが、女を馬鹿にする男性兵士や爆撃機を破壊するグレムリンや撃ってくる日本軍を同時に相手にする映画。
キック・アス』(2010)のヒットガール役でお馴染みのクロエ・グレース・モレッツ。クロエ本人のことは好きなんだが事務所の脚本選びが下手なのか出る映画どれもつまらない……という状態が10年くらい続いてるクロエ・グレース・モレッツ主演で「今度こそ面白くあれ」という気持ちでチェックしててレンタル始まったから観た。
ネタバレあり。

 

 

 

 

第二次世界大戦中の1943年。空軍の女性大尉モード・ギャレットクロエ・グレース・モレッツ)がB-17爆撃機に乗り込んだ。
上官からの密命を帯びた彼女の任務は鞄に入った”最高機密”をニュージーランドからサモアへ運ぶこと。
女性兵士であるモードは、他の男性乗組員たちから卑猥な言葉や中傷を浴びせられ、意地悪で爆撃機銃座に押し込められる。
モードは銃座の窓から、爆撃機の翼に取り付いた怪物”グレムリン”を目撃。
爆撃機グレムリンの破壊行動、日本軍の零戦の奇襲を同時に受けパニックに陥っていく――

そんな話。
グレムリンって第一次世界大戦でイギリス空軍が報告したと言われる妖精ね。「爆撃機の翼に小鬼が取り付いて破壊行動したりガソリン飲んだりする」と言われていた。
グレムリンは、リチャード・マシスンの短編小説『二万フィートの戦慄』(1961)とその映像化『ミステリー・ゾーン』(1963)とか『トワイライトゾーン/超次元の体験』(1983)、あと『グレムリン』(1984)、『グレムリン2 新・種・誕・生』(1990)……などの映像作品で観た。……というか、これら以外で観たことない。ゲーム『女神転生』シリーズには出てたかも。基本的に「飛行中の航空機を壊してくる」っていう特殊な状況でのみ驚異になるので平場では大して強くないからあまり出てこないのかも。
その特性からして「狭い爆撃機内で錯乱したパイロットが見た幻」というのが発祥なんだろう。本作でも最初、銃座内の女性主人公モードしか観てないので「男に侮辱され狭い銃座に押し込められて情緒不安定になったモードが見た幻か?」という雰囲気はある。
モードはグレムリン強襲には多少はビックリした顔は見せるものの割と気を取り直して銃撃したり、グレムリンより機内の最高機密の方を気にかけている感じがある。だから「錯乱して見た幻」じゃなく「本作のグレムリンは本物なんだな」と早い段階でわかる。
そして爆撃機内の男達から「何だ!?今の銃声!?」と無線が入ってもモードは「何でもないわ、鳥がぶつかっただけ」と言う。ここで彼女が「グレムリン出たから銃撃した!」と言ったら「どっ!」と爆笑する男達に再び侮辱されるだけなので「怪物グレムリンの目撃報告」という無駄な時間がなくてホッとした(映画で「怪物見た!」と言って笑われるシーンのストレスは凄いので本作のように出来るだけしないでほしい)。

 

 

モードが持ち込んだ鞄に入った”最高機密”……モードが「絶対に開けないで!」と言ったり、モードが割と冷静にグレムリンに対処したりするので”鞄の中身”というミステリーへの期待度は高まっている。
「軍でグレムリンの研究してて、その標本とかグレムリンの赤ちゃん、もしくはグレムリンが全員死ぬ何かのアイテムが入ってて、開けたら奪おうとするグレムリン成体が襲ってくる。モードは上層部からそれを聞かされてるからグレムリン見ても大してビビらなかった?それとも、もっと凄い秘密があるのか?」とか思ってた。
鞄の中身は『エイリアン2』(1986)的な事で「そっちか~」と思い少しガッカリした。「女性が男より活躍できる!」という説得力は確かにあるけど、この展開何回も見たからね。だから個人的にはこの中身じゃなく、ただ「モードが自分の仕事したかっただけ」という理由で男達を圧倒した方が良かったかな?
モードは、日本軍の零戦を銃座で撃ち落としたりグレムリンを銃撃したりと活躍してたが、いよいよ爆撃機本体がグレムリンに襲撃されて犠牲者が出てくる。
そしてグレムリンは大事な”最高機密”を抱えて機外から飛び立とうとしている!
モードは”最高機密”を持ち去られたくない。なんと、彼女は銃座をブチ破り外に出る!
爆撃機は小鬼グレムリンと日本軍、双方の襲撃を受けている。
爆撃機は旋回して天地が逆になったりしてるのだがモードは爆撃機外の装甲をつたって”最高機密”をグレムリンの手から奪い返そうとする。
自分は高所恐怖症なので泡吹きそうなほど怖い。……いや高所すぎて逆に怖くないかもしれないほど怖い。
この中盤ラストの空中戦が、本作で一番好きな部分だったかな?ここは面白い。
モードは”最高機密”を取り戻し、何とかして爆撃機内に帰還、驚く男達。
グレムリンと日本軍、両方と闘い死んでいく男達。
序盤でモードにセクハラしたり侮辱していた男達は、”最高機密”の中身を知った辺りからモードを侮辱しなくなったが、彼女を最も侮辱してたオッサンは”最高機密”を庇って戦死。更に日本軍の機銃で死ぬ機長はモードに序盤での侮辱を謝罪して死ぬ。
確かに序盤、観てて男達にムカついてたから「さっさとグレムリンに殺されろ」と思ってたが、こんな改心して死なれたら複雑な気持ちになってくる。だが嫌な男達のまま死なれたら「ざまぁ」と思って気持ちにケリがついてしまう。だから男達の嫌な面と良い面、両方見せた事は現代の映画っぽくて良いと思った。
そしてモードはその後も自ら闘い、指示も出して大活躍。男達は最初から最後まで何も出来ない(いや、モードの次に侮辱されてた黒人男性の兵士は少し活躍する)。
それは良い、それは良いのだが女性モードの無双っぷり、男達のダメっぷり、この差がありすぎるのは良いので途中までは良かったのだが、ラストに行くに連れ、その差がどんどん開いていきすぎて終わり間際はモードの妄想みたいに思えてしまった。こうなってくると序盤で男性兵士がモードを侮辱したり卑猥な言葉を浴びせるシーンのムカつき具合、そこから男全員の反省っぷりとか極端すぎる気がしてくる。この展開でいいんだけどもう少し自然とそうしてほしかった。
確かに序盤はモードを侮辱する男がムカつくので、この展開を望んでたのだが、その差があまりにありすぎると「これはこうあって欲しい製作者が考えたフィクションだな」というのが浮かび上がってきてしまう。監督は女性だし、エンドクレジットでは大戦に兵士として参加した実在した女性兵士の映像が流れる。女性讃歌の気持ちには同調したい気持ちなんだが、ちょっとわざとらしかったかな?という気持ちになった。
終いにはモード最後には素手グレムリン撲殺するしね。男達はそれをアワアワして見てるだけ。最後まで男はカスのままならこれでもいいが反省した後の男なんだからもう少し普通に動いて欲しかった。
エイリアン2』(1986)観てもそんな気分にはならないので何事もバランスや描写が大事なんだなと思った。
とはいえイマイチだと思うことが多いクロエ主演作にしては最後まで面白かった。
特に銃座から出ての空中戦はかなり良かった。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Shadow in the Cloud (2020) - IMDb

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『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)/最後までハラハラしたがラストが良かったのでオールOK。実は他の人よりサバイブ能力が高い主人公👩🏻👱🏻‍♀️


原題:Last Night In Soho 監督&脚本&原案&制作:エドガー・ライト 脚本:クリスティ・ウィルソン=ケアンズ 製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ナイラ・パーク 製作国:イギリス 上映時間:116分

 

 

これは去年「エドガー・ライトによるデヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』的な映画かな?」と期待して前売りまで買ってたのだが色々あって行けなかった映画、レンタル開始してかなり経ったが今頃観た。Twitterで観た人が「女性が性被害に遭って辛い」とやたら言ってて観るのが嫌になって後回しにしてた(加齢のせいか歳と共に女子供が虐められるシーンがキツくなってきている)。
前売りでは暗闇で光るステッカーが付いてきたのだが全く以て全く光らないステッカーだった。こんな事なら光らないステッカーだった方がマシだった。
「女性が虐げられる」っぽい内容だと聞いて観たくなかったが主演トーマシン・マッケンジーは今一番好きな女性の俳優なので「これは観とかなければ」という気持ちだったので観れてよかった。ダブル主演のアニャ・テイラー=ジョイも凄い好きだった……いや今も好きだが既に大メジャーになってしまったので安心してしまい新人の方を応援しなければ!という気持ちでになりがち、フローレンス・ピューもそう。
トーマシン・マッケンジー『ジョジョ・ラビット』(2019)『オールド』(2021)『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)など出演作は少ないが注目度が高い作品を狙い撃ちで出ててブレイク前夜といった感じ。「アカデミー賞ノミネート作品の『ジョジョ・ラビット』(2019)『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)二つに出ててブレイクしてないだと!?」と思う人もいるだろうが「(映画ファン外にも)ブレイク」という意味だ。映画好き以外はトーマシン・マッケンジーとか知らん。とりあえず今世界で一番かわいい。
やたらと劇中での不幸が似合うアーニャ氏。その瞳が大きく個性的な顔立ちはホラー映えするアーニャ氏は劇中で酷い目に遭いがち。実際よく似合うと思うが、そんな観方は割と前時代的で遠回りに女性を不幸にする気がしなくもない。そう思ってたら不幸なままで終わらない『クイーンズ・ギャンビット』(2020)で(映画ファン外にも)ブレイクしたのは良い事だと思った。当初はアーニャが主人公エロイーズの予定だったらしい、確かに『ウィッチ』(2015)の時の儚げなアーニャならエロイーズだろうがアーニャは数年でオーラがスターのそれに増大してたからサンディにしたんだろう。そんでデビューしたばかりのトーマシンをエロイーズにしたと。
ぼんやりネタバレしてます

 

 

 

 

ファッション・デザインを学ぶため憧れのロンドン古い下宿に棲み始めた若い女エロイーズ(トーマシン・マッケンジー)。彼女はスウィンギング・ロンドンと呼ばれた1960年代ロンドンに惹かれており、また人並み外れた第六感を持っておりロンドンで自殺したという母親の幻影も度々見ていて祖母を心配させていた。
エロイーズは下宿で眠りに落ちるたび憧れの歌手サンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)となって1966年のロンドンを毎晩、追体験する。
ナイトクラブでエロイーズをプロデュースしてくれるハンサムな男性ジャック(マット・スミス)と恋に落ちて過去のサンディの体験、現実世界でのデザイン学校を謳歌するエロイーズ。
だがやがてスウィンギング・ロンドンは見た目通りの華やかさだけではなく裏の顔がある事も知ったエロイーズは、現実と夢との境界線が曖昧になっていく――

そんな話。
真面目な女の子が性加害者の幻に怯える展開なので「デヴィッド・リンチが撮った『ブラック・スワン』」という雰囲気がある。
主人公エロイーズはスウィンギング・ロンドンに憧れているが、学校の遊び好きで意地悪な同級生は田舎出身で真面目なエロイーズを馬鹿にしており彼女が聴いてる曲も「お祖母ちゃんが聴く音楽じゃない?」などと馬鹿にする。エロイーズに好意的な同級生ジョン(マイケル・アジャオ)は最後までエロイーズをフォローする。
この一から十までエロイーズに意地悪なだけの同級生や、一から十までエロイーズを助けて気持ちをわかってくれる彼くんジョンのキャラはステレオタイプで古臭いなと思った。……そう思ったが本作は情緒不安定なエロイーズの視点で描かれてるから「エロイーズから見て、彼ら彼女らはそう見える」っていう、わざとそう描いてるのかも。
エロイーズは街の人の視線や語りかけにビクッとしている。まだ他人が怖い。最初に乗ったタクシー運転手がお茶に誘ったり「待ち伏せしている?」というストーカー疑惑があったりする、この運転手は「都会で初めて会った年上の異性が冗談言ってるのかヤバい奴か判断できない」という不安を上手く表現している。あの運転手は実際ヤバげな感じだったが、それは置いといて「エロイーズの主観で余計に都会の人がヤバそうに見えてる」って描写なのだろう。
こういったエロイーズの混乱ぶりは割とわかる、特に何か悪い事があったわけでもないが思春期の時から20代後半まで幻覚こそ見ないものの、ずっと自分もエロイーズみたいに常に情緒が混乱していた(30代半ばからは一切動じなくなったので今の精神で18歳に戻れたら最強だろうな……とおっさんが思いそうなことをエロイーズ観てて思った)。
エロイーズは意地悪なルームメイトのいる寮を飛び出し、老婦人コリンズ(ダイアナ・リグ)が営む古い下宿に棲み始める。エロイーズは感受性に優れてるだけあって「ここアカン!」と思ったらすぐに飛び出る決断が出来るだけ優れてるね。多くの若者は「もうちょっとだけ我慢しよう……」とねばってる間に飛び出す元気もなくなるほど侵されてしまうものだ……それと困ったら田舎の祖母にすぐ弱音を吐けるのも正解だ、多くの子は自分が辛いという事を家族に言うのが嫌で溜め込んでるうちに状況がどんどん悪化してしまう。……こう見ていくと劇中のエロイーズは情緒不安定な時が多いから「大丈夫か?」と思いがちだが、そこら辺の人より生き抜く能力が強い。
つまりエロイーズは大都会ロンドンに慣れていないのだが、夢の中で憧れのサンディになり、現実世界でもサンディの髪型や口癖を真似するという一種の逃避を現実世界にポジティブにシンクロさせる事によってロンドンに馴染んでいく。ジョンやスクール講師からのウケも良い。

 

 

毎晩楽しみに追体験していたサンディの夢だが雲行きが怪しくなっていく。
サンディはナイトクラブでセクシーなダンスを踊らされ、客の初老男性客の夜の相手をさせられていた。ジャックは素敵なマネージャー兼恋人ではなく女衒(ぜげん、女性を売春労働に斡旋する仲介業者)だったのだ。クラブの女性ダンサーは皆ジャックの暴力や金によって売られていた。レコードも出てたから歌手活動も少しはできたのだろうがサンディの実態は娼婦だった。
うまくいっていたエロイーズの日常だったが、哀しそうなサンディや女を喰い物にしていたジャックや顔がない客の男達を日常生活の至る所で幻視するようになる。
劇中の描写としてエロイーズは霊感があるからそれが視えているわけだが、超自然的な要素を抜いて現実に当てはめるとエロイーズは「サンディがいるスウィンギング・ロンドン」という自分だけの信仰を見つけ、その憧れを真似たり沿う事で現実を生きれていた。その信仰である「サンディがいるスウィンギング・ロンドン」の裏の顔の悲惨さを知ってしまったエロイーズの現実は、もう歪んでいくしかなかった。
幻覚は酷くなり、遂にはサンディとジャックの殺傷事件を自部屋で幻視するエロイーズ。
家賃のためバイトしていたバーにいる常連の老人も、エロイーズが金髪にした途端、話しかけるようになってきた。エロイーズは彼を「サンディを殺したポン引きジャックの現在の姿」だと思い警察に飛び込む。常連の老人の正体である若い時の人物が印象深く夢に出てるのでミスリードになってないが、ここも「エロイーズの目からは全て怪しく見えてる」って表現なんだろう。自分の推理が間違っていた事でエロイーズの情緒は更に不安定になる。
そういえば下宿の管理人さんを演じてた年配の女性俳優ダイアナ・リグは、今Wikipedia見たら60年代にセクシーなボンドガールをやってた人なんだね。それを知ってたらより面白くなってたね。このダイアナ・リグ氏は公開直前に癌で亡くなったらしい。
悪夢が現実に侵食してきて生活がままならないエロイーズ。
そんな感じで、割と冒頭から生きづらかったが毎日幻覚観てしんどそうなエロイーズや売春を強要されてたサンディなど全編つらい。
こうなると問題は終わり方になる。
こういう内容の映画だとエロイーズみたいな主人公は大抵、幻覚に追いつかれて死亡してエロイーズの死体撮ってるカメラが上昇していき(魂が天に昇る表現)「少女を飲み込む都会……恐ろしす……」といったラストが来るのが定番。そうなったら嫌だから観るのを避けてたところがある。そんでエロイーズのボーイフレンドや意地悪同級生などの描写がステレオタイプ過ぎたため「これはエロイーズも死ぬかも」と心配だった、もうエロイーズの可愛さと無事かどうかしか観てなかったと言っても過言ではない。
でも、何とかハッピーエンドに辿り着いたので良かった。しかも「被害者だった加害者」の魂も救って己に取り込んで生きていくしベストなラストだった。
逆に言うと前述の「エロイーズが死んでカメラが上昇してロンドン全体を映して終わり」だったら嫌いな映画になってただろう。真犯人を断罪したままでなくエロイーズだけが密かに暖かい気持ちを送るというラストのラストも良かった。
最後に死んだ方が映画締まる事が多いので主人公に生きる死ぬにこだわってるわけじゃないが、本作の場合はエロイーズが死んだらダメなパターン。華やかなスウィンギング・ロンドンの闇と現在の生き辛い女性を描いて、最後に「都会に飲み込まれて死んでしまった……」というラストは無い。90年代くらいまでの映画だったら多分エロイーズも死んでただろうな。そうならなくて良かったと心の底から思った。
そういえばエロイーズの自殺した母は、都会に殺されてしまったバージョンのエロイーズだったのかな。自殺した母は「一昔前に作られたらラストで死んでいたであろうエロイーズ」なのかも。
そんな感じで、エロイーズとサンディ可哀相だからもう観ないと思うが、映像や音楽も美しく最後までハラハラして楽しめたしラストも良かったので良かったです。
感想書いてて新たに気付くこと多いのだが本作の場合「エロイーズは全ての局面においてのサバイブ能力が他の人よりむしろ強い!」ってとこですね。
そこから得た教訓は「ヤバいと思ったら即、走り去る!」「困ったら身近な家族に速攻で話せ!」って事だよね。簡単そうでなかなか出来ない事だと思う。本作を観たりこの部分を読んだ人は若い子にそう伝えてほしい。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Last Night in Soho (2021) - IMDb

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