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『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』(2022)/全編活躍するピッコロと、ポッと出の新キャラのガンマ2号が良かったです🐌🤖


脚本:鳥山明 原作:鳥山明ドラゴンボール』(1984-1995) 監督:児玉徹郎 制作:東映アニメーション 配給:東映ソニー・ピクチャーズ 製作国:日本 上映時間:99分 シリーズ:『ドラゴンボール超』映画2作目、『ドラゴンボール』劇場版の第21作目 英題:Dragon Ball Super: SUPER HERO

 

 

長期連載を無理矢理続けさせられたせいで?長年燃え尽きていた鳥山明が『ドラゴンボールZ 神と神』(2013)くらいから元気を取り戻したのかアニメでドラゴンボールを再開させた『ドラゴンボール超(スーパー)』シリーズ。
僕は『ドラゴンボールZ 神と神』(2013)と『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018)だけ観てて他の本編であるTVアニメシリーズとか漫画は読んでません。
元々は幼少期に『Dr.スランプ』(1980-1984)や読み切りとかも読んで楽しそうな鳥山明から入ったので、ドラゴンボールのファンというよりも鳥山明本人のファンだったという感じがある。だから『ドラゴンボール』(1984-1995)は、ピッコロ大魔王編くらいから「死」が増えてきて更に殺伐としてくるサイヤ人編くらいから人気爆発すると当時に、かつて描き込みが凄かった鳥山漫画なのに背景とかどんどん描かなくなり悟空の目がどんどん空虚になっていく様が圧巻でした。無理矢理、連載を続けさせられていたが行き当たりばったりや後付け設定が全部ハマってたり編集マシリトとの相互作用のせいか『ドラゴンボール』(1984-1995)は結末まで傑作で終わった。世界的な人気の明るい作品ながら、原作の悟空は性格がヒーローとは程遠い個人主義の異常にドライな性格というところが魅力だった(アニメの悟空は野沢雅子の吹き替えに引っ張られてか原作のドライな性格とはかけ離れた異常に訛った男になっており、あんまり好きじゃない)。あと国外でも人気が出たので『ドラゴンボール超』映画は海外でも公開して大ヒットしている。前作『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018)も、劇中の半分くらいの時間は悟空たちとブロリーが凄いアニメーションで殴り合ってるだけという、パチスロの確定演出がずっと続いてるかのような射幸心あふれる内容なのにも関わらず国内外で大ヒットしてるし凄く歪で不思議な作品。

ネタバレあり……ではあるが、別にネタバレしようがしまいが面白さには大して影響しない内容な気がする

 

 

 

 

Story

かつて幼い時の孫悟空が壊滅させた悪の組織レッドリボン軍
そして一人生き延びて研究を続けていたレッドリボン軍の天才科学者・Dr.ゲロによって作られた人造人間たちも大人になった孫悟空が倒した

時は流れ、レッドリボン軍総帥レッドの息子マゼンタは、Dr.ゲロの孫Dr.ヘドに強力な人造人間・ガンマ1号&2号セルマックスを開発させ世界征服に乗り出した
孫悟空ベジータなどの最強の味方達は不在、ピッコロは彼らの力なしで新生レッドリボン軍を倒せるのだろうか――

そんな話。
早い話、ピッコロと悟飯だけを中心に人造人間編をもう一度やったのが本作。
悟空に及ばなかった旧キャラ達も大幅にパワーアップされていた『ドラゴンボール超』でも、人気キャラなのに今ひとつ活躍できなかったピッコロ&悟飯に光を当てた感じ。
ドラゴンボールは「強さインフレが激しい少年ジャンプ漫画」の走りであり、今までも作中で活躍するのは悟空や章ボスなどの『最強キャラ』が中心で、それにベジータや悟飯など下のランクのキャラがかろうじて食い下がる……という感じだった。何かの切っ掛けでパワーアップしたキャラに、それまでの最強キャラは傷一つつけられない……というインフレの連続でカタルシスを演出していた感じ。
そんなドラゴンボールがインフレ系ジャンプ漫画だとすると、ジョジョや冨樫はジャンケンのように能力の相性によって勝敗が決まる能力系漫画(能力系漫画にもインフレはあるのだがドラゴンボールほど極端ではない)
そんな「最強」優遇作品なのに劇中で「いま強い」とされている悟空、ベジータブロリービルスウイス魔人ブウ……など、助けてくれそうな奴らが不在で、地球の危機だというのに「悟空や強い奴に協力を得られない」というのが本作の特徴(ちなみに人造人間17号は「構造の弱点を知られてるだろうから呼ぶのはやめておこう」という形で出て来ない)。かなり丁寧に「ピッコロ&悟飯」師弟コンビだけが最強戦力として対抗するしかないという舞台が丁寧に整えられている。
だが国内外では『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018)ほどヒットしなかったらしいので多分、こういう特別な回は今回限りだろうという気もする。
僕はというとピッコロも人造人間編も好きなので楽しみにしていた。
あまり関係ないけど一体それぞれの時の悟空は何歳なのかと思って検索してみたら

エイジ750:レッドリボン軍を壊滅させた時が孫悟空13歳
エイジ767:人造人間達と戦った時が孫悟空30歳
エイジ783:本作の孫悟空が46歳

という感じらしい。
こうして見ると連載開始から割と悟空の年齢が自分より少し上だったり少し下だったりと幼馴染みたいに思えてきて親近感出てきた。で、本作の悟飯は26歳。初登場時は16歳だったブルマも本作では50歳(ブルマは連載開始から常に自分より年上のままなので従姉妹のお姉ちゃんみたいな気分になる)。
そういえば鳥山明って登場人物をガンガン老けさせるよね。普通、人気ある若者キャラを最終回以外で老けさそうとは思わないだろうが鳥山はガンガン時を進める。
これについて僕は、連載当時「無理やり延命させられている連載を早く終わらせたいから、せめて皆を老けさせるという無言の抗議をしてるんだろう」と思っていた。真相はわからないが今もそう思ってる。
ちなみに本作の翌年……劇中でエイジ784が原作最終回の「天下一武闘会でウーブを弟子にする」という最終回らしい。というか何だよ「エイジ」って。始めて聞いたわ。始めて聞いた単位を当たり前のように使ってる自分が恥ずかしなってきた

 

 

まず映画開始冒頭の1~2分くらい、レッドリボン軍編と人造人間編のあらすじが手早く語られる。このアニメーションがそれぞれの連載当時の鳥山明の絵柄のままで動くので単純に感動せざるを得ない。連載してたのを小学生の時にワクワクして読んでたからね、それがアニメ化されたが当時はそこまで原作と似た作画でもなかったし感動するだろ。どうせなら初の人造人間、はっちゃん(8号)も動かしてほしかったが……。
人造人間編は今とさほど変わらないしゲームなどでもよく見かけるため感動はさほどなかったが、やはり原作そのまますぎるアニメーションで感動。手の神経みたいなコードの上に手が出てくる当時のTVアニメOPみたいなとこもぐっと来た。
それよりやはり80年代の鳥山の可愛い絵柄のままグリグリと動くレッドリボン軍編の振り返り映像が凄かった……というかこのアニメ技術でドラゴンボールを最初から最終回まで展開早めで、やり直して欲しいと思った。
本作からアニメ作りは手書き風じゃなく3DCGになった。
デジタル作画になった現在の鳥山明の、ペンの強弱が薄い等幅の画風と合ってるせいか別にCGでOKだと思った。だが冒頭のレッドリボン軍編ふりかえりアニメは鳥山の絵が強弱あって一番良すぎた時期なせいか手書き風アニメが合っていた、というか本編でここの冒頭アニメが一番良かったよね。
このCGアニメーション、戦闘とかは勿論だが、Dr.ヘドがオレオ的なお菓子を食べる時にぱかっと分離させて片方のクッキ-部分でクリームをこそげ取って食べるなどの異常に細かい動作が印象に残った。よくわからんけど鳥山がこうして食べてるのかな?そういえば幼い時に『Dr.スランプ』のおまけページで鳥山が映画館でせんべい食ってたりアラレちゃんが文鳥飼う話で「鳥山、文鳥飼い始めたのかな?」と思ったり、鳥山の結婚と同時に千兵衛さんとみどりさんが結婚して感慨深かったりして、大御所の映画や漫画や小説……等のフィクションってゴリゴリに設定やストーリーがあっても、どこか作者のエッセイになってしまうように鳥山作品は割と昔からそういうところがあったな。

 

 

前述したようにレッド総帥の息子マゼンタが、Dr.ゲロの孫Dr.ヘドを言いくるめて強力な人造人間ガンマ1号&2号、セルマックスを作る。
マゼンタはDr.ヘドの頭脳を利用してシンプルに世界征服しようとしている。
Dr.ヘドは祖父Dr.ゲロとは違い悪人ではない、かといって利他的な善を成そうとする善人でもない。ただ「発明がしたい」「開発資金がほしい」という発明家的な欲求を持っている。その二の次の欲求として「どうせ作るなら『スーパーヒーロー』を作りたい」とライトな感じで思っている。そのためガンマ1号&2号にはスーパーヒーロー的な思考を持っている。悪の総帥マゼンタはヘドの思想に則って「悟空たちは地球侵略しようとしている悪の宇宙人なのでスーパーヒーローを作ってやっつけよう」と騙している。
ヘドは心の何処かでマゼンタに言いくるめられてる事に気付いてるのだが好きなように開発できるので流されている感じ。
ちなみにガンマ1号&2号の強さは、本作を観た限り悟飯と互角だった。あと、検索してみたところガンマ1号&2号の強さは「現在の、ノーマル状態の悟空とベジータと同じくらい」らしい。
これまた前述したように本作の主人公であるピッコロそして悟飯を活躍させるためには悟空&ベジータが居てもらったら困る(悟空&ベジータが変身したらガンマ1号&2号より強いので)。
だから悟空&ベジータウイス様とビルス様の惑星で修行。ブロリー一派もすっかり仲良くなってキレずに戦う訓練を悟空に受けている。ブルマからウイスへの通信を受信する機械にもビルス様が放り投げたアイスの箱が被さってしまった。これで彼らは本作から上手く除外された。
その他、魔人ブウは休眠中、フリーザは敵だから助けに来る義理はない、人造人間17号は「Dr.ゲロが作ったから構造や弱点を把握されてて不利かもしれない」という苦しい理由がピッコロによって丁寧に語られていた。
これで「ピッコロ&悟飯だけが新レッドリボン軍に立ち向かう舞台」が準備できた。

何度も言っているように本作は「ピッコロだけが活躍する作品」というのが徹底されている。
ピッコロは、悟飯の娘パンの修行をしたりパンの送り迎えをさせられている(甥の家庭に居候している独身の叔父さんみたいな雰囲気がある)。そしてピッコロはガンマ2号の強襲を受けたが当然敵わないので一旦逃亡、カリン様の元で仙豆を2個Get、続いて地球の神となっているデンデのところに行き「かつてクリリンとかがナメック星で最長老様にやってもらってた潜在能力の引き出し」あれ、実はドラゴンボールで出来るって事がわかり潜在能力を引き出しパワーアップ(このピッコロの強さはガンマ1号&2号より少し弱いくらい)。そしてピッコロは新レッドリボン軍に潜入し敵の全てを把握する。
レッドリボン軍は悟飯をおびき出すため娘パンの誘拐計画を立てる。自分だけではキツいなと思っていたピッコロは「戦闘に興味ない悟飯を引っ張り出すにはパンを使うのはアリだな」と思い、敵の兵に変装しパンを誘拐。
怒った悟飯はピッコロの目論見通り怒ってガンマ1号と対決。
ピッコロは因縁の2号と戦う、神龍に潜在能力を引き出してもらったピッコロだがガンマ2号にはまだ及ばない、しかしピッコロは闘いながらもガンマ2号に「本当の悪はマゼンタで、ヘドは利用されている」と説き、苦悩するガンマ2号はピッコロをボコボコにする。瀕死のピッコロは真の潜在能力を目覚めさせ一段上のパワーへと変身する。
その変身は全身オレンジのマッチョのオレンジピッコロというもの。
オレンジピッコロは苦戦していたガンマ2号を剛腕一発で倒す。
「オレンジピッコロの強さ」はよくわからないが変身前の悟空&ベジータより強いが、ブルーとかに変身した悟空&ベジータには及ばないくらいらしい?
更に、マゼンタが幼女パンを銃殺しようとしたのを見たガンマ2号はヘドや自分たちがマゼンタに騙されている事を悟りマゼンタに反旗を翻す。

 

形勢不利を悟ったマゼンタ総帥は絶命しながらセルマックスを起動させる。
「スーパーヒーロー」を生み出したいDr.ヘドは、ヒーローとして生み出したガンマ1号&2号に夢中で、破壊のための怪物でしかないセルマックス開発には乗り気ではなかった。
それでも天才ヘドが生み出したセルマックスは、どうやら現在の悟空&ベジータより強いパワーを持っているらしい。
そこにブルマは現在稼働可能な戦士……悟天&トランクス、クリリン人造人間18号夫婦も連れてきた。本当の敵はマゼンタだと悟ったガンマ1号&2号も共闘する。
只のアホの怪物となったセルマックスにガッカリしたセルのファンもいたようだが、セルマックスはベジータにボコられて「ちくしょおおー!」とか言ってた唇の厚いアホのセル第二形態そっくりのルックスなので「今回はアホのセルでいかせてもらいます。その証拠に第2形態だけにしときました」という鳥山のメッセージを感じた。セルマックスはアホのセル第二形態のリバイバルで、パーフェクト・セルの進化系はまたそのうち出てくるだろう多分。
しかしオレンジピッコロもアルティメット悟飯もセルマックスには敵わない(悟飯が最後に言うには悟空やベジータより強いらしい)。
……と酔ってたせいか僕が嫌いなあらすじそのまま書く系の感想になっていた。いや、あらすじ書いてるだけだから別に感想ですらない。もうやめとこう。
ここで「いつもダサいタイトルだが『スーパーヒーロー』ってなんだよ?」というサブタイトルが明らかになる。悪く言えば取ってつけたような展開と言えなくもないが、鳥山明のシンプルすぎるスーパーヒーロー感が高い酒のようにスッと入ってきて不思議な感動がある。その突撃映像もカッコよすぎたし。
というか、ここで映画終わりと言っても過言ではない。その後の「皆で力を合わせてセルマックスを倒そう!」という流れはもう消化試合感ある。というか東映まんが祭りっぽくて醒めた。
悟飯は新たな形態に覚醒してファンサービス技で事件は幕を閉じる。

 

 

昔の人造人間編同様に

凄く強い人造人間に苦戦
人造人間そんなに悪い奴らじゃなかったので説得
人造人間の英雄的行為で勝機を見出し皆で悟飯に繋げてセルを倒す

と、流れは似た感じだった。
そんなことより本作は「最初から最後までピッコロが主人公」というのが最大の特徴だろう。「ピッコロと悟飯が主人公!」という触れ込みだったし確かに悟飯が最後決めてくれるのだが、悟飯はパンが人質に取られたから怒っただけで基本的に相変わらず全くやる気がないまま。レッドリボン軍が何なのか敵の狙いが何なのかも殆どわからないまま暴れている。挙句の果てにはピッコロにもらった2個しかない仙豆をキャッチしそこねて亀裂に落としてしまうという意味のないドジを結構な尺取って見せられたのはイラッとした(昔、亀仙人がしていた楽しくないギャグパート、亀仙人が出てこないので皆が少しづつ受け持っている)。もうピッコロに指示されたりピッコロに騙されたりしながらピッコロが敷いたレールに乗ったトロッコに乗ってるだけだった。最後もいつものようにピッコロがボコられて覚醒しただけなので、もはや意思のある大人というより「ピッコロの延長線上の四肢が悟飯」という印象だった。
鳥山は最初ピッコロだけの話にしようとしてたらしいから、その影響だろうか。僕は悟空より悟飯が強くあるべきだと思うくらい悟飯も好きなので、悟飯はもう少し自主的に考えて行動して欲しかった(闘いには全く興味ないままなので次回作では再び悟空&ベジータに抜かれてそう)。
あとは「ベンチで応援するだけ」というポジションに成り下がってたクリリンだったが、セルマックスに気円斬をぶつけて妻の18号を救ったりセルマックスに太陽拳を照射して時間を稼ぐなど「一芸に秀でて一矢報いるクリリン」を一瞬見せてくれて嬉しかった。
そういう感じで「ピッコロ好きなのでピッコロの活躍嬉しい」「昔を彷彿させてくれる場面が多い」など懐古要素が多いように思えるが、一番カッコよかったのは何の興味もなかったポッと出のガンマ2号だったりと、かろうじて「鳥山明ドラゴンボールは現役」感も感じました。
もう劇中では一年後がウーブ出てくる天下一武闘会なんだが、どうするんだろう?
ウーブを育てつつ、普通に続くのか?

 

 

 

 

そんな感じでした

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『キャシアン・アンドー』〈シーズン1〉 (2022) 全12話/地味だしスローペースすぎるが最後まで観たらボバやオビワンよりずっと面白かったので観て良かった🧔🏻👵🏻


原題:Andor 企画&製作総指揮&脚本:トニー・ギルロイ 監督:トビー・ヘインズ、スザンナ・ホワイト 脚本:ダン・ギルロイ 原作:ジョージ・ルーカス 作曲:ニコラス・ブリテル 製作:ルーカスフィルム 配給:Disney+ 配信時間:各話38~57分、全12回 シリーズ:『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)の前日譚、『スターウォーズ』のDisney+ドラマ、『スターウォーズ』シリーズ

 

 

2022年の秋頃?から配信された本作だが、スター・ウォーズへの興味がこれで何度目かの減退していたのでスルーしていた。
多くの人もそうだと思うが、エピソード7~9のシークエルやキャスリーン・ケネディ率いるディズニーによるSW作品が、映画作りをやめてしまうほどの失敗で大規模な落胆したが『マンダロリアン』〈シーズン1〉(2019)『マンダロリアン』〈シーズン2〉(2020) で傷が癒えた。「とりあえず、このルーカス直系のデイブ・フィローニとジョン・ファブローが作るSW作品は観よう。そして彼ら反乱軍がキャスリーン・ケネディという帝国を倒すその日まで……」という気持ちだった。
だが、そんな「デイブ・フィローニ&ジョン・ファブロー一派作品だから間違いない」と思ってた丁度、一年前の『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』 (2021-2022)が、つまらない……とまでは言わないが随分、歪な作品だった。こっちは蘇ったボバの活躍が観たかったのだが仮面を殆ど脱ぎっぱなしのボバが砂漠を歩いたり敵にやられてはポッドで寝たり、またやられては寝ての繰り返し、そしてタトゥイーンの大名となり椅子に座ってチンピラをまとめあげた。「仮面被りっぱなし」「凄腕のバウンティハンター」「一匹狼」などの、ボバを構成する(と我々が思わされていた)要素は全て覆され「これはこれで魅力のあるおじさんキャラとも言えるが、我々が知ってるボバとは全く違う新キャラだよね!?」という戸惑いがあった。ボバの回想に時間使いすぎてボバの子分たちを描く時間も無かったし、後半の数話は『マンダロリアン』シーズン2.5状態だった。勿論その数話は面白かったが、ネットの評価はこの『マンダロリアン』シーズン2.5だけが高いものとなっており、ボバ単独作としては期待を下回った失敗作と言える。しかも『マンダロリアン』〈シーズン2〉(2020) ラストで涙のお別れをしたグローグーがジェダイの修行をやめてしまい送り出したはずのマンドーも大喜びで連れ帰ってしまう。二人が幸せならそれでもいいか……という気持ちもあるが「大騒ぎしてジェダイに預けたのは一体何だったんだよ……」という肩透かし感もあり今年シーズン3があるし絶対の信頼を置いていた『マンダロリアン』への興味も若干揺らいでしまった。まぁどうせ観たら好きに戻るだろうが。
で、その後思いきりキャスリーン・ケネディ一派が主導してると思われる『オビ=ワン・ケノービ』(2022) があった。「デイブ・フィローニ&ジョン・ファブロー一派以外の作品には期待しないぞ」と思って入るものの「ユアン・マクレガーによるオビワン、ヘイデン・クリステンセン演じるダース・ベイダーが出る」と言われたら観ざるを得なかったが、やはり想像通り物凄くつまらなかった。「幼いレイア姫」だけは良かったが、それもまた別にあってもなくてもどっちでもいい程度の要素に過ぎず。
そういう感じで2022年はSWへの興味がじわじわと一歩一歩確実に下がっていった歳だった。古くは『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)で物凄くガッカリしたが後に時間をかけて回復していって今ではプリクエルの時代も好きになったが、とにかくSWは落胆と回復の連続だが僕ももう中年男性なので、そんな上がったり下がったりを繰り返すのがしんどい。「SWに落胆……」「SW再び好き!」という繰り返しは「自分の中でのSWへの信頼度」そのものにダメージを与える(コップの水が減るのではなくコップ自体が割れて元には戻らなくなるイメージ)。
そんな昨年末に始まった本作が発表されたのは……2年くらい前だっけ?『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)の登場人物の一人キャシアン・アンドーが主人公だという本作『アンドー』は発表されたものの中でもかなり興味ないタイトルだった。そもそも『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)自体も、外伝映画が珍しかった公開当時は楽しんで観たが、時間が経つと「前半丸々いらんな」とか「そもそもスカリフ空中戦とベイダー無双以外全部いらんな」という感じで印象が薄い。一部で熱狂的なファンも居るが僕は、酷い言い方すると正直いまでは観ても観なくてもどっちでもいい映画だと思っている。このローグワン、ギャレス・エドワーズ監督が撮り散らかしてたところキャスリーンにクビにされ(キャスリーンは今まで何度も有名監督をクビにしまくってる)、本作の製作者でもあるトニー・ギルロイ監督が、SWに興味ゼロにも関わらず「反抗の話だろ?」と職人的に一ヶ月位でまとめたのが『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)だった。ボーンシリーズなどで御馴染みのトニー・ギルロイ監督作は『フィクサー』(2007)がめちゃくちゃ好きだが、個人的には『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)は「まぁまぁ」な作品だった。キャスリーンの締め付けの中で素材を何とか繋ぎ合わせた印象。
で、本作の主人公〈キャシアン・アンドー〉もまた『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)の中でも、かなり居ても居なくてもどっちでもいい印象の薄いキャラだった。
だから「印象の薄いSW前日譚『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)に出てきた印象の薄い登場人物キャシアン・アンドーを主人公にした更に前日譚。前日譚の前日譚。彼が覚醒して反乱軍になるまで」という本作が如何に興味なかったか想像できるだろうか。
しかもデイブ・フィローニ&ジョン・ファブロー作品じゃないし。
「キャシアン・アンドーが立ち上がって反乱軍に入るまで」と言われても「うるせえな!知らねえよ!こっちは色々と忙しいんですけど!?そもそも最初から立ち上がっとけよ!」という気持ちにしかなかった。
で、最初の……三話まで一挙配信だったけど凄くスローペースで「3話合わせて第一話」って感じだったので三話一挙配信の理由がわかった。しかしそれでも「興味ない人たちが繰り広げる興味ない話」としか思えなかったので切ることにした。
他にも観たいものいっぱいあったし。
「サブスク戦国時代が俺を……とうとうDisney+にカネさえ払って電源さえ入れれば観れるSWドラマを切らせるとは……」と感慨深かった。
だけど残って本作を観続けた人たち(安藤一派)が本作を「これ結構おもろいぞ!?」「SW全体の中でさえ最高傑作ちゃうか!?」などと毎週毎週Twitter激褒めするので何か「そうまで言われてる、電源さえ入れれば観れるSWをスルーするのも何だな……」と思い観ることにした。なんだか「今までSWに興味なかった人ばかりが『アンドー』を誉めてるなぁ」というのは気になったが、もう最後まで観て確認しないと気がすまない〈流れ〉になってしまったので仕方ない……この〈流れ〉に乗るか、敢えて無視するか、または10年後に乗ることにして一旦忘れるか……それが映画好きの性だろう。「〈流れ〉なんて一切気にせず自分の好きなものだけ観ればいいじゃん!」という人もいるだろうが、それはそれで「映画好き」間の社会性を無視した隠居的な行動なので僕は好きではない。サブスクや自分の選択でしか映画を観なくなってしまった現在……昔のようにTVで映画をちょくちょく放映していて偶然いい作品に出会う……という事がなくなってしまった。だから時にはこだわりを捨て、恋人や友人知人、親族、知らん人……など他人のオススメは割とすぐ観た方がいいと思う今日この頃です。「自分」とか「自分の趣味」なんて一過性の不安定なものですからね……。
そんで一ヶ月ちょい前……2022年11月末くらいに第7話くらいまで観て、結構面白いし目立った悪いところもないので『オビ=ワン・ケノービ』(2022)みたいなどうしようもないドラマではないと思った。だがさっきも言ったがスローペースすぎる!本作が大好きな人は「SWっぽくない渋いドラマ」だと思うようだが、僕にはちょっと……地味でしたねぇ。
で、他にも観たいものあるので本作は一ヶ月くらい観るのやめて、『スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジェダイ』(2022)『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』最終シーズン全18話(2022)『ウェンズデー』(2022)全8話『霊媒探偵・城塚翡翠』(2022) 全5話&『invert 城塚翡翠 倒叙集』(2022) 全5話……などを速いペースで観ました。あと、あまり面白くなかったからブログに感想書かずFilmarks送りになった『ペリフェラル~接続(コネクト)された未来~』全8話、と『チェンソーマン』全10話も観た。
なんで忙しい12月にいっぱい連続ものの配信ドラマやアニメ観てたのかというと「映画は間に合わないけど配信ドラマやアニメなら年内に全部観て年内に『2022年のドラマ&アニメBEST』を書けるのでは?」と思ってわんこそばの様に観てたのだが、最後に残った本作は、一話観て「すぐ次の話観たい!」と思うようなドラマではなく箸が進まず、一日で全話観たいところ一話づつしか進まず、更に年末に『裏切りの影』(2022)全5話の配信も始まって「年内に全部観て全部感想書くの無理だわ」と諦めた。
なんか感想書くまでのストーリーが長くなってしまったが、これも感想の一部なので許してもらいたい。まぁ許したくない奴は感想TikTokとか感想Youtubeとかツイッターの感想とか見てるだろうから別に良いか。

ネタバレあり

 

 

 

 

Story
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)『スター・ウォーズ ep4/新たなる希望』(1977)の5年前、銀河帝国に対抗する反乱軍が創設される前の物語。
後に反乱軍のスパイとなり「帝国の惑星破壊兵器デス・スターの弱点」をレイア姫に教える秘密任務を成功させたチーム〈ローグ・ワン〉の中心人物となるキャシアン・アンドー(演:ディエゴ・ルナ)を中心とした銀河帝国に反乱する人達の群像劇――

映画のようにドラマ全12話で三幕構成のようになっていて、キャシアン中心に

1:殺人を犯し活動家にスカウトされて帝国の金を狙う〈アルダーニの強奪編〉
2:帝国に捕まり特殊な刑務所で強制労働させられる〈ナーキーナ5の牢獄編〉
3:故郷フェリックスの町に他のキャラも集結しての〈フェリックスの火花編〉

と、大きく3つに分けたストーリーが展開される。
あ、この「○○編」というのは分かりやすいように僕が勝手につけた名前ですが個人的には中盤の「牢獄編」が一番面白かった。

惑星フェリックスに住む主人公キャシアン・アンドーは、幼い頃に生き別れた妹を探していたところ絡んできた街のチンピラを弾みで殺してしまう。キャシアンは、そのせいで〈プリ=モー〉という保安監査組織に追われる。この組織は帝国軍……ではなくその下請けの警察みたいな組織みたい。
キャシアンは元々、帝国に両親を殺された孤児で反乱グループのリーダー格だった女性マーヴァ・アンドー(演:フィオナ・ショウ)に拾われて育てられた……という事が序盤で描かれたのだが、本作への興味が薄い序盤だったので「前日譚の興味薄いキャラによる前日譚の、更に前日譚……」と乗り切れないものがあった(だが最終話を思い出すと、これは必要な回想だったんだな、と最後まで観てわかった)。
プリ=モーに追われるキャシアンは「富裕層相手の古物商」という世を忍ぶ仮の姿を持つ反体制活動家ルーセン・レイエルステラン・スカルスガルド)にスカウトされ帝国軍の大金を強奪する。この人はMCU『ソー』のシリーズで僕が好きなサブキャラ、セルウィグ博士を演じてる人。『ニンフォマニアック Vol.1』(2013)」『ニンフォマニアック Vol.2』(2013)でのムッツリスケベおじの役も良かった。本作でも異常にカッコいい表情のまま暗躍したり非情な言動したり果ては空中戦まで行い、終始カッコいい。
ルーセンは、身を投げ売って帝国打倒に命を掛けてるおじ。「自分は帝国打倒までには死んでそれを見れないだろうし私がやった事は誰にも知られないだろう」という事を承知で反対制活動をしている覚悟がきまった男だ。「帝国打倒」のためには容赦なく味方を見殺しにしたり目撃者を殺害する事も厭わない過激派でもある。このルーセンがキャシアンの運命を決定づける。
なおルーセンの協力者として、後に反乱軍リーダーにまでなるモン・モスマ議員(演:ジュネヴィーヴ・オライリー)もずっと出てくる。彼女は最初から最後まで、ノンポリの夫や保守的な娘に隠れて嫌われ者の女性議員を演じており「反乱軍……を作るまでの土台作り」を孤独に進める。

 

 

最初のキャシアンによるチンピラ二人の殺害に目をつけるのが帝国直属の保安監査組織プリ=モーの士官シリル・カーン(演:カイル・ソーラー)。
このシリルというキャラクター、『ツイン・ピークス』シリーズのクーパー捜査官役のカイル・マクラクランに似た端正すぎるルックスの白人男性。イケメンなのだが、あまり人望はない、しかし大柄の部下が異常にシリルを慕って忠誠を誓い助力し続けてくれる。だがシリルにあるのは、キャシアンにいち早く目をつける観察眼と大柄の部下一人だけ……だから数話であっさりキャシアンに敗北、プリ=モーをクビになる。
その後は実家に帰り、母親に嫌味を言われたり叔父に職を紹介してもらったりという屈辱の日々を送る。
そんなシリルは、出世しようとギラギラしている帝国軍の女性デドラ・ミーロ(演:デニース・ゴフ)にキャシアンの情報提供する。しかしデドラはシリルを見下し続けている……という展開が最後まで続くのがシリルのストーリー。別に最後にキャシアンと再戦したりもしない、デドラをストーキングしてるだけ。
何度も言ったように本作の最初の7話くらい悪くもないが全く乗り切れない状態だったが、このシリルだけは第一話の時点から目が離せなかった。めちゃくちゃ端正な顔の若い白人男性なのに惨めすぎるキャラクター……今までSWに居なかったキャラだ。デドラは頑張ったり冷酷に振る舞ってみたり怯えたりして、どこか可愛い帝国軍士官。

 

 

話はキャシアンに戻り、ルーセンにスカウトされた彼が参加した作戦。それは帝国が輸送の拠点として使われている惑星アルダーニにある帝国の要塞に潜入し反政府活動の資金として金庫の大金をごっそりいただこうという強盗だった。
チームメンバーの殆どを失うが〈アルダーニの目〉という天文現象も起きる中、作戦は成功。キャシアンは一生遊んで暮らせる大金を手にして離脱する。
反体制活動家ルーセンは、正体を知られて逃げられたキャシアンを安全のため殺すことにする。ちなみに強奪を計画したルーセンは「帝国の金を分捕ること」以上に「帝国を怒らせて一般人の締め付けを強くさせ反乱の火力を上げる」という事が真の目的だった。
キャシアンは孤児だった自分を今まで育ててくれた義母マーヴァを他所の惑星に連れ出して幸せに暮らそうとする。しかしマーヴァは夫でありキャシアンの義父でもあるクレムが帝国に殺されたこの町に残って、昔のように反抗すると言う。そしてマーヴァのその気持ちが蘇ったのは皮肉なことにキャシアンが夫の名を使って〈アルダーニの強奪〉をやり遂げたことだと言う。
「安全な場所に逃げよう」と説得するキャシアンに義母マーヴァは「安全な場所なら知ってる。……私の頭の中さ」と言う。これは僕が今まで困難な出来事に遭った時に自分に言い聞かせてた言葉と同じだったのでマーヴァがそう言った時にハッとした。
だが別に帝国に歯向かいたい訳ではないキャシアンは、ここで一旦、義母マーヴァと道を違えることにする……(対象的にシリルはひたすら母親に軽んじられ罵倒され続ける)。地獄のような世界で命をかけて一生遊んで暮らせる金をGetしたのだからキャシアンを責める気はない。

 

 

しかし、キャシアンは「怪しい雰囲気でフラフラしていた」というだけで6年間の無実の罪で帝国に捕まり、水の衛星ナーキーナ5の刑務所にブチ込まれる(もちろん「キャシアン・アンドー」ではなく偽名の男として)。
刑務所では強制労働により「謎の機械の大きな部品」を作り続けさせられる。
帝国は通電によって囚人たちを管理している。
囚人たちのリーダー、キノ・ロイ(演:アンディ・サーキス)の元、謎の大きな機械の部品を作らされるキャシアン。だが脱獄する気満々でこっそりと水道管をヤスリで削る日々……。あとは警備している帝国軍の人数が知りたい、キノに訊いても脱獄を諦めている彼は教えてくれない。キノを演じてるのはアンディ・サーキスなので無駄にカッコいい。
そんな中、別の階層の囚人たちが皆殺しにされたこと、そして「刑期を終えても別の施設に送られて死ぬまで強制労働させられるだけ」という絶望的な事実を知ったキャシアンとキノ。
二人は脱獄計画を実行に移す。
本人にその気はないのに毎回、大きな炎を燃やすための火花を起こすキャシアン……というところが面白い。
脱獄の手順は、劇中で事細かく語らずアクションの過程で「どういう打ち合わせを囚人同士でしていたのか」を想像させる形なのが良かったです。
本作は全話観て「面白かったけど要らんとこ削れば7話くらいに収まったのでは?」と今でも思うが、この脱獄や最終話での作戦をクドクド語らないところは凄く良いと思いました。行動の結果を観ればわかるからね。
この獄中編は文句なく最初から最後まで面白かった。ここまで来ると幾ら興味なくても各人のキャラを理解してるからね。
脱獄したキャシアンは、各地で無意識に「火花を起こしている」ものの、まだ帝国に反抗する気はない。しかし故郷フェリックスで義母マーヴァが志半ばにして病死した事を知る。そして反政府活動していた元恋人ビックス・キャリーン(演:アドリア・アルホナ)が帝国に捕まった事を知る。キャシアンはフェリックスに二度舞い戻る。
(それにしてもキノの一旦退場の描写はおとなしすぎてわかりにくかった。最終話あたりでまた出てくるかと思ってた)

 

 

義母マーヴァは病死、元恋人ビックスは帝国のデドラに拷問されている。
マーヴァの葬式が行われる日。
ビックスを救いたいキャシアンは義父に教わった古い爆弾の蘇らせ方で爆弾を量産、デドラたち帝国軍、無職のシリルと大柄、秘密を知るキャシアンを殺したいルーセン一派も……モン・モスマ以外の登場人物たちがフェリックスに集まる。
葬式の最中、マーヴァとキャシアンが愛した老犬の様なドロイド〈ビー〉がマーヴァの遺言立体映像を再生する。言うまでもなく遺言の内容は勿論「帝国の圧政が酸のように私達を侵し、我々は眠っているように生きていた。既に死んだ私が生きてるあんた達にこう言うのもなんだが……我が物顔で居座って立ち退こうとしない帝国をブッ殺そう!」みたいな演説。信管に続く着火だ。
激昂した帝国軍は立体映像を投射するビーに布をかけて消そうとするが、却ってホログラムのマーヴァの顔が半分消えて迫力ある顔面になってしまう。同時に「死んだ後の言葉すら覆い隠そうとする帝国」を印象付けてしまい完全に魂に着火されて暴動を起こすフェリックス市民!騒ぎの陰でビックスを救出するキャシアン、暴動で殺されかけたデドラを助けるシリル。キャシアンを見逃して踵を返すルーセン……勿論この暴動は帝国打倒において何の物理的な影響もないのだが先でキャシアンが起こした〈アルダーニの強奪〉〈強制収容施設の脱獄事件〉同様に、反乱の炎を起こすための火花の一つとなった。
物理的には後に帝国を本当に倒してしまう切っ掛けとなるルーク・スカイウォーカーレイア姫ハン・ソロや反乱軍がデス・スターを破壊する〈ヤヴィンの戦い〉……を成功に導いた〈ローグ・ワンのデス・スター設計図奪取〉……を可能にする一人のキャシアン・アンドーが反政府活動に(やっと)目覚める流れ、そして反乱同盟軍設立に向かう流れ……それを生む火花がこのフェリックス暴動か。
それにしても「キャシアンたちが強制労働施設で作ってたのが何だったのか?」がわかる最終話のポストクレジットシーンは良かったですね。
シーズン2は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)までの五年間を描くらしいので楽しみだ。……その一方「このシーズン1の全12話でシーズン2最後まで描けただろ!」とも思ったが、これがトニー・ギルロイのペースみたいなので、それは忘れよう。

 

 

そんな感じで中盤のマーヴァ、最終話のマーヴァでグッと来ました。シーズン1ではまだキャシアンは「また俺なんかやっちゃいました?」的なモラトリアム主人公だったしルーセンはカッコいいけど非情すぎるのでね。
そう思うと本作の原題が『キャシアン・アンドー』ではなく『Andor(アンドー)』だけだったのはマーヴァやその夫の事でもあったんだろうね。邦題も『アンドー』で良かったのにね。ボバやオビワンとかと違って「キャシアン・アンドーのドラマ!?観よう!」なんて人ほぼ居ないだろうし。
最後まで観ると確かにグッとくるシーン多いし渋いし、心底ひどかった『オビ=ワン・ケノービ』(2022) の数倍よかったし、とっ散らかってる『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』 (2021-2022)『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)よりも良かった。だから観て良かったです。でもアンドー絶賛派が言う「SW最高傑作!」とまでは思わなかった。旧三部作やプリクエルや『マンダロリアン』には及びませんでした(というかSWは好きな人も嫌いな人も言うことが極端すぎるので自分で観て判断しないとわからない)。
でも、それでも2022年のドラマにしてはスローペースすぎるし「要らんとこ削れば全7話に収まったし、その方が良かっただろ」という気はしなくもない。だが本作のスチーリーテリングはトニー・ギルロイがこうしたかったみたいから、こうなる以外に道はなかったのだろう。SWにしては地味だが逆に「良くないところ」も少なかった。
良くないとこはやっぱ、スローペースすぎるしアクションが少ないところ、あと一番良くなかったところは「ヒューマノイド以外の異星人が殆ど出て来ない」とこですかね。それと「SWっぽくない現実の地球の延長みたいな機械や建物」が妙に多かったのもマイナスでした。これらはキャスリーン・ケネディが権力を握ってるディズニー製SW作品に共通してるのでキャスリーンのせいだろう多分。キャスリーンは意地になって社長業を延長してSWファンを絶望させたが、そろそろ辞めるっぽい噂を聞いたのが吉報でした。
次のSWは3月1日から『マンダロリアン』〈シーズン3〉(2023)か。何か「毎話スゴすぎるよ!」と自信満々みたいなので期待しとこう。

 

 

 

 

そんな感じでした

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『スター・ウォーズ ep4/新たなる希望』(1977)/無邪気な明るさと残酷さが同居してるのが最高⭐ - gock221B

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スター・ウォーズドラマ『キャシアン・アンドー』公式サイト|ディズニープラス
Andor | StarWars.com
Andor (TV Series 2022– ) - IMDb
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『霊媒探偵・城塚翡翠』『invert 城塚翡翠 倒叙集』(2022) 全10話/「倒叙集」から観始めたので「霊媒探偵」の方は茶番に感じてしまったがトータル全部面白かった!👩🏻👩🏻‍🦰

霊媒探偵・城塚翡翠』全5話と『invert 城塚翡翠 倒叙集』全5話は、それぞれ違う原作小説を元にした違うドラマではあるが、『霊媒探偵・城塚翡翠』から『invert 城塚翡翠 倒叙集』へと直接つながる続編として連続ドラマ史上初となる「タイトルとビジュアルを一新した同一主人公による新ドラマ」として制作された。「前編5話と後編5話による全10話のドラマ」とも言える。
Twitterのフォロワーさんが楽しんでたので気になってきて、何だかミステリーだし主演が見慣れない美しい俳優だし何か邦画や日本のドラマにある臭みがなさそうなので観ました。
霊媒探偵・城塚翡翠』の方はネタバレなし

 

 

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霊媒探偵・城塚翡翠全5話

演出:菅原伸太郎、南雲聖一 脚本:佐藤友治 原作&脚本:相沢沙呼 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』 監修:大橋菊夫(警察) 放映時間:各話55分、全5話

 

Story
4年前から黒髪の清楚系美女ばかり「刃物で失血死させる」というシリアルキラー透明な悪魔〉による連続死体遺棄事件が起きていた。
碧色の瞳の霊媒城塚翡翠(演:清原果耶)は、死者や殺人犯が視えるのだが〈霊視〉には証拠能力がない。
推理で警察の捜査も手伝っている推理作家香月史郎瀬戸康史)は翡翠に抜けた論理を補い、コンビは共に様々な殺人事件を解決していくが――

そんな話。
シャーロック・ホームズは「推理が得意な知のホームズ、それを支える力のワトソン」だが本作は「霊感の翡翠、それを論理でまとめる知の香月」といった感じで進む。
全5話の背後で〈連続死体遺棄事件〉が起きている東京で、翡翠と香月コンビは〈泣き女の殺人〉〈水鏡荘の殺人〉〈女子高生連続絞殺事件〉などを、翡翠の霊感と香月の論理で次々と解決していく、香月と翡翠は互いに惹かれていく。
そして二人はいよいよ今までの水面下で被害者の遺体が発見されていた〈連続死体遺棄事件〉に取り掛かり連続殺人鬼〈透明の悪魔〉と4&5話の前後編で対決する。最初から出ていて翡翠の霊能力を信じていない鐘場警部及川光博)も怪しい動きを見せる……。
という最終話の第5話で本作の仕掛けが発動する。
……のだが僕が観始めたのは『invert 城塚翡翠 倒叙集』からなので正直『霊媒探偵・城塚翡翠』の仕掛けは観なくても全部知ってた状態で観ていた。本来ドラマのサプライズで驚いたりして楽しむものだった気がするが、既知の状態で観ていたため正直「皆が茶番を演じながら殺人事件を解決してるなぁ」という観方しか出来なかった。
時間を巻き戻して『invert 城塚翡翠 倒叙集』を知らん状態で観ないとわからんので定かではないのだが本作は絶対、知らずに観た方が面白かったはず。だから少し勿体ない感じはあった。
事件そのものは〈泣き女の殺人〉〈水鏡荘の殺人〉が好み。〈女子高生連続絞殺事件〉と〈透明の悪魔による連続死体遺棄事件〉は、犯人が幾らなんでもサイコパス過ぎて「連続殺人事件の犯人だからサイコであろうが、しかしそれにしてもサイコすぎない?」と若干、思ってしまった。それに明るく若く美しい女子高生や黒髪の清楚美人が次々と殺されていくのは単純に悲しかった。……いや美しい女性の死でなくても等しく悲しいはずだがフィクション内の若い女性や子供や動物の死は悲しくなるのは仕方ない。
次の『invert 城塚翡翠 倒叙集』(2022) 全5話の感想を読んだら自動的に本作『霊媒探偵・城塚翡翠』(2022) 全5話もネタバレしてしまうので今からHulu等の配信とかで観ようと思ってる人は御注意。
次からネタバレあり感想

 

 

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『invert 城塚翡翠 倒叙集』全5話
演出:菅原伸太郎、南雲聖一、伊藤彰記 脚本:佐藤友治相沢沙呼 原作:相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』『invert II 覗き窓の死角』 放映時間:各話55分、全5話

 

Story
様々な殺人犯の前に現れたのは、霊媒探偵城塚翡翠(演:清原果耶)とその相棒・千和崎真(演:小芝風花)。
翡翠と真がアリバイを崩す様を、犯人の視点から見せていく――

 

この『invert 城塚翡翠 倒叙集』(2022) 全5話からはタイトルにもあるように倒叙ミステリードラマになる。倒叙ミステリーとは殺人犯が事件を起こすところを最初に見せて後から登場した探偵とか刑事がアリバイを崩していくところを犯人の視点で見ていくから「やめろ!その証拠に気ずくな!」と、つい犯人に感情移入させられてしまうあのミステリーだ。刑事コロンボ』(1968-1978)や『古畑任三郎』(1994-2008)と同じ内容だと思ってくれていい。

霊媒探偵・城塚翡翠』(2022) 全5話のネタバレになるが翡翠に霊能力などなく、全て卓越した推理で犯人たちのアリバイを崩していただけだった(つまり前作で香月の論理など必要なかった)。そして翡翠は以前から霊媒師のフリをして警察に協力していた、「霊感など信じない」と鐘場警部及川光博)が翡翠に辛く当たっていたのも透明の悪魔逮捕のための芝居だったのだ。本作でも翡翠霊媒師設定は続けていたが彼女の霊媒師設定は、翡翠が普段やっている男性を誘惑したり女性容疑者を苛立たせるゆるふわ言動やドジっ子さんっぷり同様に、容疑者を苛立たせて動揺を誘うためのものなんだろう。コロンボ古畑任三郎が「あと一つだけいいですか」と食い下がってボロを出させるアレと同じだろう。
前作では出番の少なかった翡翠の同居人・真は、家事全般や聞き込みや変装などで翡翠をサポートする、早い話ワトソン。
鐘場警部は、前作同様、に翡翠が働きやすいように舞台を用意したりアリバイが崩れた犯人を連れて行くための舞台装置のようなキャラ。色付き眼鏡をかけていてカッコいい。翡翠や真には無理なこと……凶暴な犯人を取り押さえなければならないので自動的に鐘場警部は物理最強キャラでもある。しかし及川光博が荒々しく男っぽい喋り方するのは正直似合わないものがあった。

システムエンジニア同士の殺人事件を翡翠が崩す第1話「雲上の晴れ間」、小学校で盗撮校務員を殺した正義感の強い女性教諭のアリバイを崩す第2話「泡沫の審判」、うぶな男子高校生が知らない間に殺人を犯してしまったのか?を探る第3話「生者の伝言」、元刑事の大手調査会社の社長という、あらゆる意味で手強い男による殺人のアリバイを捜査する第4&5話「信用ならない目撃者・前後編」。
などなど、こっちから観始めたのもあるが倒叙ミステリー自体好きなので「ネタバレした状態で観た」「香月が最初から好きじゃない」などの理由もあるが『霊媒探偵・城塚翡翠』より本作のほうが数倍面白かった。また『霊媒探偵・城塚翡翠』で翡翠が演じていた儚い美少女キャラが全く好きじゃなかったので、本作での傲慢で自惚れが強く真と仲の良い翡翠の方が数十倍よかった。
最終話「信用ならない目撃者・後編」でもちょっとした仕掛けはある。原作は「映像化再現不可能」って感じのものだったらしいが読んでないので知らない。映像再現不可能な大好きなミステリー小説といえば筒井康隆の『ロートレック荘事件』(1990)があったが、あんな感じだったのかな?
まぁ原作は知らんので置いといて、このドラマではタイトル通り……「信用ならない目撃者」という目撃者に仕掛けがあったのだが、この目撃者キャラの情報を今まで遠景でしか見せてなかったので「実はコイツは……」とやるのは少しズルい気もした。
だが僕は『霊媒探偵・城塚翡翠』も本作も最終話のサプライズは正直どうでもよくて第1話~第4話のサプライズのない普通の事件の方が好きだった。この本作の普通の倒叙ミステリーを古畑任三郎みたいにあと50話くらい観たい!と思った。

翡翠が鐘場警部と知り合って殺人事件を手伝っている理由」などは明かされないまま終わったのできっと続きが書かれてドラマも作られて欲しい。
邦画や日本のドラマにありがちな下品なアニメ的演技も控えめだし、やたらめったら派手な有名人を起用せず確かな演技力の感じの良い俳優ばかり起用していてたし構成や美術も凝っていて「まず第一に、面白いミステリーやキャラクターを見せたい!」という意気込みが凄かった。だが日本では、そういう方向性で洗練されても人気は出ない。凄く高い完成度とは裏腹にそこまでブレイクしていないような気がする。
まぁでもしかし、しかしですよ?人気出すぎて古畑任三郎シーズン3みたいに荒れて無茶苦茶になるより、洗練された内容で細々と長く続いてほしい。芸人で言うと売れてるけどMCにはならない深夜TVに永遠に出続けられてる感じでいてほしい……有吉ではなくケンコバでいて欲しいという感じ。わかるか?
好きなキャラは、もちろん翡翠は好きだが鐘場警部と真の方が好きかも?
1、2年後には続きが作られて欲しい。
邦画や日本のドラマって、庵野秀明黒沢清勝新太郎黒澤明宮崎駿高畑勲富野由悠季北野武古畑任三郎、あとJホラー……くらいしか観ないので新しい好きなもの出来て嬉しいですわ。
では参りましょう……
ゴックでした

 

 

 

 

そんな感じでした

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invert 城塚翡翠 倒叙集 | TVer
invert 城塚翡翠 倒叙集/霊媒探偵・城塚翡翠|日本テレビ

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『ナイブズ・アウト:グラスオニオン』(2022)/前作の長所は更に伸ばし短所は長所に変え、前作より全て向上させられてた傑作ミステリー。暮れゆく今年のベストはこれかな🧅


原題:Glass Onion: A Knives Out Mystery 監督&脚本&制作:ライアン・ジョンソン 製作:ラム・バーグマン 製作&配信サービス:Netflix 製作国:アメリカ 配信時間:139分 シリーズ:『ナイブズ・アウト』シリーズ

 

 

監督のライアン・ジョンソンは、ブレイクした切っ掛けの『LOOPER/ルーパー』(2012)も『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)も、良いところもないわけではないが長所より短所の方が多かったし、このライアン・ジョンソンは前まで好きな監督じゃなかった。
だがアガサ・クリスティ大好きだというライアン・ジョンソン監督が突然作ったオリジナルのミステリー映画、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)が、めっちゃくちゃ良かった。ミステリー映画で一番好きかも。この前作一本でライアン・ジョンソンも要チェック監督になるほどに。本作はその続編。だから制作決定して……2年くらい?ずっと楽しみにしてた。本作からはNetflix映画になった。だが配信前に一週間だけ劇場公開するという初の形式だったみたい。だがいざ観ると本作もまた面白すぎるし豪華なので「いや、もっと本格的に劇場公開せい」と思った。

ネタバレなし

 

 

 

 

Story
コロナ禍の中、世界一の探偵ブノワ・ブラン(演:ダニエル・クレイグ)はギリシャの孤島にある「ガラス製の玉ねぎ」のような大豪邸〈グラス・オニオン〉に招かれる。
島と豪邸の持ち主は、巨大ハイテク企業の代表である大富豪マイルズ(演:エドワード・ノートン)。彼は毎年、古くからの友人たちを招いて休暇を楽しんでいた。
メンバーは、コネチカット州知事クレア(演:キャスリン・ハーン)、元スーパーモデルの現ファッション・デザイナーバーディ(演:ケイト・ハドソン)、そのアシスタントのペグ(演:ジェシカ・ヘンウィック)、元Twich人気ストリーマーだった人気YOUTUBERデューク(演:デイヴ・バウティスタ)、そのアシスタントのウィスキー(演:マデリン・クライン)、マイルズの下で働いている科学者ライオネル(演:レスリー・オドム・Jr)。著名人である彼ら彼女らは「常識や旧来のやり方を破壊する〈破壊者たち〉」を自称していた。そしてマイルズによって解雇された元共同経営者だったアンディ(演:ジャネール・モネイ)も姿を現し一堂は動揺する。
数日間、マイルズと友人たちと探偵ブノワしか居ない孤島のグラス・オニオン。
やがて事件が発生し探偵ブノワは彼らの秘密を解き明かしていく――

そんな感じ。数人しか居ない「孤島の豪邸」で殺人事件が発生。探偵は殺人犯や彼ら彼女らの人生の秘密を解き明かしていくという〈グラス・オニオン〉を舞台にした密室殺人ミステリー。
映画の構成は前作と似ていて、

前作

(1)殺人事件発生。主人公の探偵ブノワや全容疑者の紹介
(2)犯人の視点から事件発生を描く
(3)解決編。何度もどんでん返しが起こる。痛快すぎる結末

しばらく観てないからまた観てみようと思うが、そんな構成だったと思う。
倒叙ミステリーというやつ。「倒叙ミステリー」とは『刑事コロンボ』(1968-1978)や『古畑任三郎』(1994-2008)みたいに、殺人を犯した犯人の視点で誰が誰をどうやって殺したのか先に見せ、探偵や刑事がアリバイを崩していくのを見守る構成のミステリーのこと。犯人の主観で観せられるので観客や視聴者は、刑事や探偵よりも犯人に感情移入して観せられ「証拠を見つけないでくれ~!」思いながら観てしまう。
ライアン・ジョンソン監督はミステリー好きだけあって、犯人や容疑者すべて伏線やどんでん返しがあり目が離せない面白すぎるミステリーだった。

本作

(1)主人公の探偵ブノワや全登場人物の紹介
(2)過去と現在で同時に殺人事件発生。しかし犯人はわからない
(3)解決編。登場人物たちの人生の秘密も明らかになる。痛快すぎる結末

という感じ、前作に輪をかけて捻ってある倒叙ミステリー……いや本作はあんまり倒叙じゃないかも?
前作は、(1)で主人公のブノワ探偵が尋問していくかたちで全容疑者の紹介してたが、一つの場所で主人公ブノワや彼ら彼女らがどんな人物たちかわからん興味が湧いてない状態で会話してるだけだったので正直、全然入って来ず正直退屈だった。しかし20分くらい?映画が経過した時に挿入される「殺人事件が起きた時の回想シーン」から後はジェットコースターのように面白すぎた。
本作は、前作の数少ない欠点だった「主人公のキャラが薄いし、容疑者紹介のための序盤が面白くない」というマイナスポイントも全て面白く向上させていたので欠点がない映画になった。映画が始まった瞬間からラストまでずっと面白い。
前作では「よく知らん人同士が同じ場所で話してるだけ」だったので全く彼ら彼女らのキャラが入ってこなかった。本作はというと「マイルズからのグラス・オニオンへの招待状」が入った、からくりボックスを友人たちがそれぞれスマホで協力しながら職場や自宅で解く。からくりボックス自体の見せ方も面白いし、前作の数十倍キャラクラーの情報が面白くバンバン脳に入ってくる。前作はメインの2、3人しか記憶に残らなかったが今回は全員キャラが立っている。
前作ではキャラが薄すぎて舞台装置にしか思えなかった主人公ブノワも、今回は自宅が映るし「事件を解いた後はスリル中毒の廃人のようになる」「実際の推理は天才的だが、頭を使うゲームは得意じゃない」というところを見せて「こういう奴だったのね」と、やっと思えた。自宅で退屈していたブノワはバスタブに何日も浸かりっぱなしで年配の友人たちに『Among Us』でボコボコにされていた。そしてバスルームには難問パズルなどが散乱している。
配偶者っぽい雰囲気で料理してくれてる同居人(ヒュー・グラント)もいたし、ブノワはどうやらゲイなんだろう。

 

 

そしてパズルを解いたマイルズの旧友である成功者たちのグループ〈破壊者たち〉と、少し前まで〈破壊者たち〉の一員だったアンディ。誰が招いたのかわからない探偵ブノワは孤島のグラス・オニオンに赴く……。
最初から面白かったし「一体、誰が殺されるんだろ?」「彼らの関係は?そしてどうなっていくんだ?」というのが絶妙に読めず目が離せない。第二幕の冒頭で遂に殺人事件が発生し、そこで時系列が序盤に巻き戻りブノワとある一人の人物が、序盤から「現在」まで何を考え何をしていたのかが明かされ殺人事件が発生した「現在」に時系列が追いつく……そして二転三転する解決編が起きて……今回も前作より更に面白すぎる。面白い時間が最初から最後まで持続して痛快な結末を迎えて終る。「復讐者が暴れまわるのをバックに、禁煙の場所で葉巻を吸う主人公」というのは「最高の反抗の展開」や「最高のラストシーン」を量産しまくってた監督、ジョン・カーペンターの『エスケープ・フロム・L.A.』(1996)の結末を少しだけ思い出したし胸が熱くなる。
前作ではキャラが薄かった主人公ブノワも「正義感あるし、推理や捜査はするが法に触れる事はしない。しかし復讐者にヒントは与える」という性格が前作よりわかりやすくなっていた。ダニエル・クレイグといえばジェームズ・ボンドで、彼のボンドは「時代とズレ始めた滅びゆくマッチョ」という氷河期を迎える恐竜のような哀しさが魅力だったキャラだったが、このブノワは恐らく意図的にボンドと全て正反対なキャラというところも面白い。御洒落だし暴力は振るわないしおしゃべりや演説が得意、あと多分ゲイ?だが燃える正義の心だけはボンドと同じ。ボンドに続けて良い役もらいましたね。
他の出演者は、もともと好きなデヴィッド・バウティスタが「筋肉や銃に依存する男権主義者だが実家住まいでママに頭が上がらない」というキャラを演じててよかったし、これまた好きなジェシカ・ヘンウィックはケイト・ハドソン演じる炎上ばかりしてるファッション・デザイナーのアシスタントとして常時こまってて全カット可愛かった。
主催者マイルズはエドワード・ノートンがはまっていた。MCU第二作目『インクレディブル・ハルク』(2008)では彼がハルク役だったんだよね。マーク・ラファロのハルクの方が好感度高くて好きだがノートンの方が原作のブルース・バナーに似てるよね。もしノートンのままだったら、神経質そうだし絶対にワールド・ウォー・ハルクが起きてた気がする。ケイト・ハドソンは昔はラブコメの女王だったけど久々に観た本作では炎上ばかりするアホのセクシー熟女役しててインパクトでかかったね。
そして何といってもアンディ役の俳優さんは始めて観たけど最高でしたしね。

どんでん返しが多いミステリーだからネタバレしたくなくてネタバレなしで書いた。
まぁそんな感じで、期待してただけあって最高でしたわ。ちょっと強引な部分もあるが他の要素が全部面白いので気にならない。あまり気まずいシーンもないので年末年始に家族と観ても大丈夫。爽快な新年を迎えられるだろう。
ライアン・ジョンソンは『ナイブズ・アウト』三部作としてNetflixと契約したので最低でもあと一本は作られるだろう。だが、ライアン・ジョンソン監督が全て一から考えるオリジナルのミステリーなので、ストーリーやトリックやキャラクターを考えるのが死ぬほど大変で脚本だけで1、2年かかるらしい。だから三作目が何年後になるのかわからない。だが本当に好きなシリーズなので願わくば新しいスター・ウォーズとか作らなくていいから、このまま永遠に作っていって欲しい。
ミステリーと言えばサム・ロックウェルシアーシャ・ローナンという好きな二人のミステリー『ウエスト・エンド殺人事件』(2022)が劇場にかからずDisney+スルーになってしまい悲しかった。ミステリーって流行らないのかな。
とにかく本作は2022年の映画で一番面白かった。……いや『バーバリアン』(2022)も捨てがたい……決めかねるが、本作か『バーバリアン』(2022)のどちらかが今年一番良かった映画だ。2回目観たら見え方が変わるので最低でも2回は新鮮に楽しめた。クリスマスは二夜連続でこれ観たからね。

 

 

 

 

そんな感じでした

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『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)/映画としてもSWとしても完全に破綻してるが初見時はその焼畑農業っぷりを楽しんだ部分もあった⭐ - gock221B

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ナイブズ・アウト: グラス・オニオン | Netflix (ネットフリックス)公式サイト
Glass Onion: A Knives Out Mystery (2022) - IMDb

www.youtube.com


『ウェンズデー』〈シーズン1〉(2022) 全8話/絶妙なキャラ設定だしティム・バートン作品を20年ぶりに良いと思えた!👧🏻✋


原題:Wednesday 製作総指揮&第1-4話の監督:ティム・バートン 監督:ガンディア・モンテーロ(第5-6話)、ジェームズ・マーシャル(第7-8話) 脚本:アルフレッド・ガフ&マイルズ・ミラー(第1-2、8話)、ケイラ・アルパート(第3-4話)、エイプリル・ブレア(第5話)、アルフレッド・ガフ&マイルズ・ミラー&マット・ランパート(第7話) 原案&製作総指揮:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー 作曲:ダニー・エルフマン、クリス・ベーコン 原作:チャールズ・アダムスアダムス・ファミリー』(1930年代) 配信:Netflix 製作国:アメリカ 配信時間:各話47-59分、全8話 シリーズ:『アダムス・ファミリー』を元にしたドラマ

 

 

👧🏻1930年代にチャールズ・アダムスが描いてた一コマ漫画『アダムス・ファミリー』……の中の、思春期に成長した長女ウェンズデーを主人公にした大御所ティム・バートンによるNetflixドラマ。
アダムス・ファミリー』は過去にドラマや映画やアニメなどに何度も映像化されてた怪奇系コメディ・コミック。「死」や不気味なものを好む黒尽くめの変り者一家のギャグ漫画。そんな不気味ファミリーではあるが、互いを思いやっていたりして、むしろ普通の家庭よりも優しいファミリーという認識。僕は一番好きな漫画家が水木しげるなので『アダムス・ファミリー』のことは読んでないし詳しくないが、どことなく水木っぽくていいなと思っていた。
40代の僕はというと高校生の時に『アダムス・ファミリー』(1991)『アダムス・ファミリー2』(1993)が公開されたからそれしか観てない。この二作は『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)同様に「ティム・バートン監督作……に見えるがそうじゃない2大映画」の一つだった。『アダムス・ファミリー1&2』(1991-1993)は正直「(本作にも出演している)クリスティーナ・リッチが演じたウェンズデーが可愛い」という事以外は特に記憶に残っていない。ウェンズデーとテーマ曲以外はあまり印象に残らないフンワリした面白さだった。
少し前に公開された3DCGアニメ映画『アダムス・ファミリー』(2019-2021)2作も観てない……が、この『ウェンズデー』が良かったので年末年始に観てみようと思う。

👧🏻で、この大御所ティム・バートン監督。僕は直撃世代の40代なので当然好きだった。彼は「陰キャ陽キャに復讐する」という流れをメジャーに持ってきて大成功した最初の監督という認識。彼の『バットマン・リターンズ』(1992)は未だに「好きな映画マイベスト10」に30年間以上入ってるし『バットマン』(1989)、『エド・ウッド』(1994)もクソ好きだし、『スリーピー・ホロウ』(1999)、『マーズ・アタック!』(1996)……などもまぁまぁ好き。だが20歳半ばになった2000年以降は嫌いではないが前ほど好きではなくなった。本作『ウェンズデー』(2022)が面白かったから2000年以降のものも再び再見しようとしてるから今はよくわからないが、彼は「中高生やデザイン専門学校に通ってる20歳前後の若者が支持する監督」という認識。本作も若者にウケてNetflix作品としては『ストレンジャー・シングス 未知の世界』並の超大ヒットになったしね。
僕もティムバートンへの興味を失って30年経つし観る気なかったんだけど、あまりに大ヒットしすぎて観ざるを得なくなった。そしてめちゃくちゃ面白かった。
「自分が興味あるもの」が大事だが、それと同じくらい「特に興味ないけど凄いウケてるもの」は観た方が良い……と思ってるけど、それが当たりました。自分だけの感覚だと充分じゃないですからね。一個人なんて愚かだから。

👧🏻主演のウェンズデー役は『X エックス』 (2022)で裏方だったのに突然ポルノ映画に出ちゃった可愛い陰キャ女子役をしてた顔芸が素晴らしかった娘。本作『ウェンズデー』一本で『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のエディ役の人同様に大ブレイクした。
ネタバレなし

 

 

 

 

Story
アダムス・ファミリー
の長女ウェンズデー・アダムス(演:ジェナ・オルテガ)は、サイコメトリー(物や人が経験したことをに触れる事で知覚できる能力)で、弟パグズリー(演:アイザック・オルドネス)をいじめた子を認識してピラニアに男性器を噛ませて高校を退学になった。
そんな問題児ウェンズデーはジェリコという街にある父ゴメス(演:ルイス・ガスマン)と母モーティシア(演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)の母校でもある〈ネヴァーモア・アカデミー〉に入学する。〈ネヴァーモア・アカデミー〉は、あらゆる超能力者……世間に溶け込めない〈のけ者〉が集まる学園だった。
そんなネヴァーモア・アカデミーの中でも、ウェンズデーは偏屈すぎて同級生に溶け込めずルームメイトの陽キャ人狼少女イーニッド・シンクレア(演:エマ・マイヤーズ)とも仲良くなれない。
そんな彼女は謎のモンスターによる連続殺人事件に巻き込まれ、調査し始める。
――

そういう話。

 

 

👧🏻ウェンズデー
普通の高校を何度も退学になり、とうとう変り者の両親が出会った「超能力を持ったメタヒューマンを集めた学校」に入学するしかなくなった主人公ウェンズデー。
アメコミ的に言うなら「X-MENの『恵まれし子らの学園』内で連続殺人が起こった話」とも言える。
生徒や教師の99%は能力を持っている。
ウェンズデーはサイコメトリー(過去に物や人が経験したことを触れると追体験できる能力)を持っている。そして頭脳明晰でフェンシングや護身術が得意。小説家を目指している。
何の能力も持っていない人間(又は不明なの)は、アダムス夫妻の同級生だった校長・ラリッサ演:グウェンドリン・クリスティー)、「唯一人普通の人間」だと自称する植物学教師・マリリン演:クリスティーナ・リッチ)、学園があるジェリコという町の保安官・ドノバン演:ジェイミー・マクシェーン)と、その息子の〈風見鶏カフェ〉店員タイラー演:ハンター・ドゥーハン)、セラピストのヴァレリー博士(リキ・リンドホーム)くらいだ。
アダムス・ファミリー』でも御馴染みのゴス少女ウェンズデーだが、ハイティーンに成長して偏屈さは増している。幼少期に町の悪ガキのせいでペットのサソリが事故死してしまった事で偏屈さが加速したらしい。
弟をいじめた悪ガキのチンコをピラニアに噛ませて退学になり両親が通ってた学園に来たウェンズデー、会う人会う人に悪態しかつかない。全米から〈のけ者〉の子ばかり集まった学園なのに転校して数時間で〈のけ者〉中の〈のけ者〉クイーン・オブ〈のけ者〉となる。
前述の通り、ここ20年くらいティム・バートン作品への興味を失ってたし正直、最初のは怪訝な気持ちで観ていた。また、自分も捻くれていた思春期~青年期は〈のけ者〉が陽キャをやっつけるティム・バートン作品が好きだったが、さすがに中年の大人になった自分が今観ると最初の1、2話くらいは「ティム・バートンは大成功して30年以上経ってるのに、まだこういうマインドなのか……」と思ったし、そのせいもあって「この新ウェンズデー、確かに可愛いが幾らなんでも偏屈すぎるな」と、彼女に悪態をつかれる明るい人物や大人たちに同情していた。しかし3話くらい観ていくとウェンズデーは偏屈とはいっても中身は嘘はつけない正直ものだとわかる。気に入らない奴には猛然と立ち向かってボコボコにするし。そして彼女は「無口な無表情キャラ」ではあるものの思っていることが表情に出すぎる。はっきり言って「無口な無表情キャラ」どころか、他の友だち多い生徒よりも考えてることが丸出しなのだ。
そういった事がわかるとウェンズデーは確かに「無口な無表情」かつ「偏屈」ではあるものの「陰湿」や「悪意」などは全くない、むしろ他の者より「真の意味で明るい人物」だと言える。彼女は他人のために戦う「ヒーロー」ではないが自分のために戦う。ついでに身近な人が傷つけられたら倍返ししようとする。いわば「ウェンズデーはダークヒーローだな」と思った。
自分や自分の趣味や自分の行動に自信を持ってるからね、陰キャは自己肯定感が低いがウェンズデーの場合は逆に自己肯定感が高すぎる。
だから何か失敗やトラブルを起こす時も、卑屈さや嫉妬などのジメジメした感情からではなく自信ありすぎるので「私の考えや行動に間違いない!」と自信満々に行う。
しかし意外と失敗ばかりする。推理は外れるし頻繁にピンチに陥る。そんな時にも特殊な嗜好の彼女は割とワクワクしてたりするので捕まったりしてもあまり悲壮感がないのが頼もしい。
どうやって突破するのかというと、その物や人が体験した過去を見れるサイコメトリー能力でヒントを得たりする。ミステリーとして考えるとチート能力だが見れる過去が1、2秒しかないのであまり当てにならない。サイコメトリーと強引な捜査あとは仲間達の協力で真相に近づいていく。まるで怪力男が知恵の輪を力づくで解くかのようなやり方。繊細そうな見た目に反して捜査が剛腕過ぎて可笑しい。
彼女は風見鶏カフェ店員タイラーや、絵画が得意なゼイヴィアなどから好意を向けられるが、恋愛に積極的じゃない上に偏屈すぎるウェンズデーは男子たちに常に塩対応。
男子たちは普段はウェンズデーを尊重してるし、そういうとこも好きなので受け入れてるが、彼女にあまりに酷い対応されると「君って最低だよ!」と何度も怒られる。ウェンズデーは無表情のまま「う……」という感じで身体が揺れる。謝罪や反省はわかりやすく表に出さないが「今回は私が悪かったかも……」と思っていそうな顔をしたりバツが悪そうな雰囲気だけを出す。そういったウェンズデーのキャラ設定が絶妙。
こういった「無口な無表情」キャラの場合「表面的に綾波レイ的な態度のキャラを作ってるが実のところ中身は普通」というのが殆ど。ウェンズデーも前述通り、表面的には「無口な無表情」なのだが中身は自信過剰な熱血漢。
だがウェンズデーが凡百の「無口な無表情」キャラと違うところは「偏屈さのブレンドが絶妙」というところだろう。
自分は中年男性なので観ていて正直「もうちょっと普通に話そうよ……」とウェンズデーに思うことが多い。しかし彼女は思春期の、しかも〈のけ者〉の中の〈のけ者〉なので少々歪なのも当然だ。「むしろ中年のくせに彼女の態度に何か思う自分の方を心配した方がいいかもな……」などとウェンズデーを見ていたはずが、いつの間にか彼女を鏡として自分自身を見てしまう時間もあった。
そもそもウェンズデーが普通の学校の生徒達に復讐したのは弟がいじめられたからだし、幼い頃にペットが死ぬ原因になったからだし〈のけ者〉学園の生徒や教師たちも、一体誰が殺人鬼なのかわからないのだから心を開かなくて正解なんだよね。「若い少女にとって外界の者は全て信用ならざる者」。そんな風に表現してるのかも。父兄が訪れる回では「父が殺人犯?」という疑いを晴らす事になる。
そんな感じでウェンズデーは「可愛いけど、あと一歩二歩でムカついたり嫌いになってしまうかもしれない!」という絶妙のところで踏みとどまり「ウェンズデー好き」ゾーンに踏みとどまる絶妙な偏屈さ。これがウェンズデーを、急造の無表情キャラとは違い、本当に近くにいるような親近感、人間らしさを感じさせる。
このティム・バートンによるウェンズデーのキャラ設定が絶妙で、さすがゴスっ娘や〈のけ者〉や陰キャ主人公を作り続けて30年!陰キャのまま世界の頂点に立った陰キャ界の頂点、ベテラン陰キャティム・バートンの集大成だな~と感心した。最初は「どうせ今回もつまんないだろ」と意地悪な気持ちで観ていたが、そんな第3話くらいから姿勢を正し、ティム・バートンが好きだった20数年前くらいの気持ちに一瞬でスライドして観た。
だがウェンズデー役のジェナ・オルテガは「タイラーとゼイヴィアとの三角関係」を演じることに現場でいつも反対していたそうだ。彼女の解釈では「ウェンズデーはマジで、まだ男子に興味ない」というものだったようだ。そう言われてみると僕は恋愛描写を悪いとまでは思わないが「確かに三角関係でウェンズデー周りの人間関係を構築する様は少し古いな」と思った。SNSとか検索しても恋愛よりもイーニッドの女同士の友情の方が盛り上がってるし僕もそっちの方が熱かった。この辺だけはティム・バートンの古さを感じた。だけどゼイヴィアも好きなのでシーズン2では頑張ってほしい。タイラーは笑い方が最初からサイコパスだったのであまり好きじゃなかった。
もちろん加齢のせいか生徒たちより、どっちかというと教師や保安官など大人キャラに感情移入して観ていた……いや、どっちかというと完全にフォスターおじさん(演:フレッド・アーミセン)とハンド(演:ビクター・ドロバントゥ)を合体させた、でも頭髪はある中年男性が自分か。
そんな感じでウェンズデーは、同室の自分とは正反対の少女イーニッドとの友情、両親の殺人容疑を晴らす、そして学園で起きている連続殺人事件の解決……に立ち向かっていく。

 

 

🐺イーニッド
同室のイーニッドは、まだ未熟で爪しか変身できない人狼少女。ウェアウルフという点以外は、金髪をレインボーヘアに染めていたりVlogやポップミュージックが大好きな明るい少女。
イーニッドは同室のゴス少女ウェンズデーと対象的なキャラ。
明るい性善説的な思想のイーニッドは塩対応のウェンズデーに歩み寄るが毎度拒絶される。だが共に行動し、大喧嘩してそして……。という友情が展開される。
イーニッド個人のドラマとしては石化能力を持つゴーゴンの男子エイジャックス(演 - ジョージ・ファーマー)と付き合う(これは大して障害もなくスンナリくっつく)。ウェンズデーが入部した部員が一人だった養蜂クラブ会長ユージー(演:ムーサ・モスタファ)もイーニッドに想いを寄せるが最後まで全く何もなかった。ユージーンの今後も気になる。
あとイーニッドの母親が「ウチの娘は、大きくなったのに人狼に変身できないのが恥ずかしい」という態度を隠そうとしないので、母と会うたびにイーニッドは傷ついて自己評価が低いまま……という悪循環に陥っている。どうやってそれを打ち破るのかというと言うと勿論ウェンズデーとの関係性だ。
本作だとウェンズデーとイーニッドの友情が一番好きだった。
ウェンズデーと同じく全身黒尽くめの母モーティシアも全身白尽くめの校長と同室だった、しかし最後までわかりあえなかった。つまりウェンズデーは次世代のモーティシアで、イーニッドは次世代の校長。先代では果たせなかったモーティシアと校長の結びつきを今回は果たせるか?というテーマもある。
本作で一番好きなキャラもイーニッドだった。かわいい。だがそれはイーニッドが「主人公とは対象的なサブキャラ」だから魅力だけが出すぎているせい、というのもあるだろう。多くの作品ではイーニッドが主人公で陰キャのウェンズデーがサブキャラな事が多い、その場合ウェンズデーの方が好きになっていただろうなと絶対に確信している。サブキャラのウェンズデーは「可愛い顔でボソボソっと面白い事いったり男子を叩きのめしたりする」という良いところだけ出てただろうしね。逆にイーニッドが主人公だったら多分サブキャラの現在ほど可愛いと思ってないと思う。
彼女は猫じゃなくて犬……というか狼なんだけど、本作のティム・バートンが30年前に撮った、僕が30年クソ好きなままの『バットマン・リターンズ』(1992)のキャットウーマンのオマージュをボート大会でしてくれたのも嬉しかった。


✋そんな感じでウェンズデーが殺人事件や友達や家族の問題に立ち向かう楽しい話。
多くのミステリーものと同様に本作も連続殺人事件の方は割とどうでもいい。
犯人も、動機がありそうな怪しいキャラを多く用意しているが、もうキャスティングの時点で、最初に「こいつとこいつが怪しいな」と思ったやつがそのまま犯人だった。
他のキャラやアダムス・ファミリーについても一人ひとり書いていく事は出来るが、本作の肝はウェンズデー7割、イーニッド2割、他の全ては1割……って印象だったのでウェンズデーとイーニッドに語ったところで書くのはやめよう。
タイトルに偽りなく〈ウェンズデー〉を描くためのドラマで、他の全てのキャラはウェンズデーを際立たせたり対象的だったりするキャラだった印象。
それにしても大人キャラや生徒も凄い勢いで死んでいくので楽しい青春コメディの割には死人が異常に多かった。
そして、それは成功した。シーズン2はアダムス・ファミリーの出番を増やすらしい、それも良いけどイーニッドやゼイヴィアや養蜂部会長や学園のクイーン以外の目立たなかった生徒、のっぺらぼう二人組とか吸血鬼の生徒の事も見たい。今回はウェンズデーのことを描くので精一杯で時間切れって感じだった。でも僅かにあったイーニッドの恋愛とかウェンズデーと関係ないサブプロットもソープオペラ感あって楽しかった。次は色んな生徒たちを目立たせて欲しい。
そういえばモンスター「ハイド」とか人狼などのCGが異常にショボかったのだけ気になる。やはり殆どのCG制作スタジオはMARVELの制作ラッシュで疲弊してるんだなと思った。
年末年始に全話観返してみよう。ついでに2000年以降のティム・バートン映画も今観たら面白いかもしれないので観てみよう。

 

 

 

 

そんな感じでした

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ウェンズデー | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
Wednesday (TV Series 2022– ) - IMDb

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