
監督&脚本:川村元気 脚本:平瀬謙太朗 原作:KOTAKE CREATE『8番出口』(2023) 音楽:Yasutaka Nakata (CAPSULE) 制作会社:STORY inc.ほか 配給:東宝(全米はNEON) 製作国:日本 上映時間:95分 公開日:2025年8月29日(韓国は2025年10月22日、全米は2026年4月10日) 英題:Exit 8
人気のインディーゲーム『8番出口』(2023)の実写映画化。
先日、全米でも公開され、公開館数が他のハリウッド映画の数分の一しかないのに北米の週末興収7位という高成績を叩き出してヒット中(公開館数が多ければもっと上位を狙えただろう)。気になったのでレンタルで視聴。
ゲームはプレイしてないがYoutubeやTVで色んな人がプレイした動画を一通り観てるので概要はわかる感じ。
ネタバレあり
⑧
日本、東京。派遣労働者の”迷う男”(演:二宮和也)は地下鉄に乗っていた。
泣く赤ん坊を抱いた母親に怒鳴り散らすやばいサラリーマンがいたが男は無視した。
別れる予定だった恋人”ある女”(演:小松菜奈)から電話がかかってきて妊娠したと言う、動揺する男。
男は地下鉄を降りて8番出口から出ようとするが、その地下通路は無限に続いていた。壁に表示されている決められたルール通りにクリアしなければ脱出できない異界に迷い込んでしまっていた――
そんな話。
第一幕はゲーム『8番出口』(2023)を忠実に実写映画化している。
ルールは壁に貼ってある。
・「異変を見逃さないこと」
・「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」
・「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」
・「8番出口から外に出ること」
これが上手く行けば壁に貼ってある数字がカウントアップしていき、その数字が「⑧」に達すれば現世に帰ることができる。
映画開始からしばらくの間(無限ループに気付く辺りまで)は主人公の主観視点で映画が進む。正に原作ゲームそのまんま。
昔はゲーム原作映画なんてつまんねぇ映画ばっかりだったのだが、ここ数年は面白くて
『モータルコンバット』(2021)、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)、『マインクラフト/ザ・ムービー』(2025)など、どれも好き。
これらには「ゲームプレイ時の快感を再現してる」というところが共通している。
本作は、この第一幕でがっつりと『8番出口』をプレイしている感覚が表現できている。本作やマインクラフトなどは、プレイしてないのだが、その作品をプレイしてなくてもゲーム自体は好きだから大体想像できるじゃん。クラブ通いしたことない人がパーティのシーンを、SEXしたことない人が性交シーンを観ても、殆ど真に感覚が理解できないように近年、開花しはじめたゲーム映画にも同じ事が言える。
そしてこれら「ゲームした時の感覚」を映画に落とし込んだ「ゲーム映画」はどれも批評家ウケがめちゃくちゃ悪い。マリオは2作とも最低の評価、しかし観客ウケは反比例している。これは単純にキッズがいっぱい観るからってだけじゃなく批評家の評価軸(映画単体として優れてるかどうか、革新性、多様性)などに当てはまるポイントが少ないせいだと思う。ゲーム映画同様に感覚に訴える要素が多いホラー映画も評価が低くなりがち。だからホラーやゲーム映画は社会性を反映した要素を足すと高評価になりがち(もしくは『シャイニング』(1980)みたいに誰がどう観ても優れた映画にするか)。
主人公はやがて、無限に続く地下通路に囚われてしまったこと、ルール通りに無限通路を攻略して8番出口にたどり着かないとここから脱出できない事などに気づく。
気づいた辺りで主観視点だったカメラが回り込み、二宮氏演じる主人公を見せる。
本作で良かったところに、このカメラの回り込みの動きやタイミングが絶妙すぎるっていうのがある。映画全編の殆どがこの通路だけなのに全然飽きずに最後まで面白く観れた。
ホラー映画は現実での恐怖を恐怖表現に表象させたものが多いが主人公にとってのこのループ現象は「父親になる恐怖」。自己評価の低い主人公が「自分のようなものが父親になってもいいのか」「しかし彼女はいま産婦人科で俺の答えを待っている、早く決めなければ」という逡巡。それがこの無限地下通路になっている。そのためコインロッカーから赤ん坊の声が聞こえたり恋人からの電話がかかってきたり恋人の幻が見えたり……と、主人公が気にしてる要素が彼に襲いかかっている。
そんな彼は少年(演:浅沼成)と遭遇し、この子も異変かと思って引き返すが……。
第二幕は少し時間が遡り、主人公がいつもすれ違うNPCのような「人間ではなく、人間のように見えるこの異空間の一部」である”おじさん”こと歩く男(演:河内大和)が主人公となる。
同じ様にこの地下通路に迷い込んだ少年(演:浅沼成)と共にクリアを目指すおじさん。2人で異変を見つけかなり良いところまで行く。
この”おじさん”、ゲームと顔は全然違うが本当に3DCGで作った人間じゃないかってくらいゲームのまんまな見事な動きをしている。
そして主人公が毎回異変を確認しながら、ポスターを全部読み上げた辺りで毎回ピッタリおじさんとすれ違い主人公が「おじさん」と指差し確認する。この「おじさん」と確認するシーン、十数回くらい繰り返される。現在、全米公開中なのでおじさん役の河内大和氏がNYの地下鉄を「あの歩き方」で徘徊するプロモーションを行っていて好評。確かにすれ違う彼を指さして「おじさん……」と確認したい。
おじさんと少年は女子高生風の女性(演:花瀬琴音)と遭遇する。
彼女も地下通路に囚われており一緒にサバイブしようと言う。
女子高生は「満員電車に揺られる毎日を過ごすよりここに居た方がいいかも」「ここって罪を犯した私たちが落とされた煉獄とか地獄なんですかね?」と言う、それは冗談なのだが、おじさんは怯える。
結局、女子高生は「異変」の一部だった事がわかり、おじさんと少年は引き返してここはクリアするものの、少年が気づいた異変を無視して失敗してしまう。
おじさんは、その後の時間軸で主人公のNPCになってしまっているので、恐らくゲームに失敗したらこの無限の地下通路の要素の一部にされてしまうのだろう。
恋人の妊娠に怯えていた主人公に襲いかかる異変は「赤ん坊」「妊娠した恋人」などが多かったし「プレイヤーの恐れているものが異変に採用される」と考えると、”おじさん”は過労死やブラック企業など過酷なサラリーマン生活に疲れていたのかも。また女子高生が語る「罪」に怯えていたので、”おじさん”はひょっとして女子高生に痴漢したとかそういう過去があったのではないか?と深読みした(この女子高生もスカートが短すぎて異様にムチムチして妙に性的だし)。とはいえ「主人公にとっての”おじさん”」は全くもって赤の他人だったわけだし、この女子高生も”おじさん”のようにゲームに失敗して地下通路に取り込まれたプレイヤーだったのかもしれないが。
第三幕は少年の視点になる。
”おじさん”を失った少年は主人公と出会い行動を共にする。
2人は色々と乗り越え、映画冒頭では絡まれる母親を見捨てた主人公だったが、いつしか自分を捨てて少年を助ける。そして少年と主人公はそれぞれ別々に脱出する。
この少年は主人公の恋人の幻が出現した時に「ママ」と言っていた。そして主人公が見た未来の夢で男児がいたので「少年=主人公の未来の息子」かと思った。だが「父は居ない」と言ってたので、主人公が恋人と別れるが彼女は出産してシングルマザーとして子供を育てた……という「良くない未来」の息子が迷い込んだのか?この地下通路は時間の流れが現世と違うし。
「主人公に助けられた後に脱出する少年の主観視点のシーン」がわざわざあったので少年は女子高生のような異変ではない。
だが今は「少年は別に主人公とは関係のない只の迷い込んだ子供」なのかなと思っている。主人公の恋人の幻を見て「ママ」と言ったので「未来の息子」みたいに思ったが、少年から見たら本当に彼の母親の姿で見えていたかもしれないし。
しかし少年が「迷い込んだ只の子供」だろうと「良くない未来の主人公の息子」だろうと、少年は主人公に父親になる自覚を持たせるための役割なので実のところ少年の正体が誰だろうと大して変わらない。
地下通路での逡巡、自分を捨てて少年を救った経験……などの冒険で成長した主人公。8番出口を出て現世(冒頭の地下鉄の中)に戻った主人公は父になる決心が芽生えており、もう映画冒頭の無関心無気力な彼ではなくなっていた。
具体的な行動に移るラストカットも、行動に動き出した瞬間に映画が終わるのが良かった。というのも今の邦画って行動も全部見せる上に台詞でも「◯◯しなきゃ……逃げるな自分」とか全部言ってやったりするじゃん。本作はそういう嫌な邦画あるあるが少なくて良かった(だが最低限、多くの人がわかるようにはしてるし)。
なんか勝手に前述の嫌な邦画要素満載で「どうせ、説明過多で寒いギャグが多い映画に違いない」と思いこんでたが普通に面白かった。
ホラー映画として考えるとあまりにも怖いシーンがなさすぎるが、まぁホラーじゃないのかも?SF映画?いや、科学的要素ないからやはりホラーになるんだろうけど。映画自体は怖くないけど「父になる責任という恐怖」という主人公にとっての恐怖は描いてたから一応ホラーか。アラフォーの二宮氏が10数個歳下の小松菜奈と付き合ってるのは少し奇妙だが日本人にとっての元ジャニーズ事務所タレントって年齢不詳な感じなのであまり気にならなかった。もっと小松菜奈と歳の近いアラサーくらいの俳優の方が良かった気もするがまぁ別に二宮氏でもいいです。
全米でヒットしたのは意外だったが、よく考えたら「人気ゲームが原作」「ゲームしてる感覚になる映画」「リミナルスペース」「東京の地下鉄」「派遣労働者」「過労サラリーマン」「女子高生」「津波」「ミニマルでかっこいいルックやポスター」……など欧米人が喜びそうなJAP要素ばっかりで、今思うと納得だな。というかアニメやゴジラ以外で全米ヒットした邦画は快挙かも……。
そんな感じでした
8番出口 | Filmarks映画
Exit 8 (2025) - IMDb
Exit 8 (2025) | Rotten Tomatoes
Exit 8 (2025) Letterboxd













