原題:Maps to the Stars 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
製作国:カナダ/アメリカ/ドイツ/フランス 上映時間:111分
ハリウッドのセレブ一家、ワイス家。
長男13歳は超売れっ子の慢心しきった子役スター。父はハリウッドの有名人に適当な事言って儲ける有名セラピスト(ジョン・キューザック)。母は息子のマネージメントをしてるが保身と息子への寄生しか頭にない。
そしてジョン・キューザックのセラピーを受けている落ち目の傲慢な女優(ジュリアン・ムーア)。彼女は映画が始まったら既に滅びかけてる。
全員わかりやすいクソ野郎だ。
リムジン運転手をしている俳優の卵ジェローム‥の車を、火傷の跡があるメンヘラ少女アガサ(ミア・ワシコウスカ)が利用してハリウッドにやって来る。。。
みたいな始まり方の映画。何か酷い事が起こりそうだ。。
ここ近年のクロネンは抑揚のない難解な会話が続く映画が多く、これもそんな感じの映画かな?と思って観たけど、ハリウッドが舞台というのも飲み込みやすいし、似たような関係性の人間が何組も出てきたり、劇中でネガティブな感情を持ってるキャラが揃って幽霊に遭いまくったりして非情にわかりやすく楽しめた。
クロネンは難解だと言われたら次の映画でやたらと判りやすくしてくれる事があるので、本作もコズモポリスが判りにくいと言われて簡単にしてくれたに違いないと思った。
そしてとにかく面白かった。
何故、面白かったのかというと、最後までこの映画は一体どうなるのか全くわからないので面白かった(何だかんだいって、どう着地するのかわからない映画が一番楽しい)
しかしメインキャラが全員ハリウッド系クソ野郎で、各人が冒頭からクソエピソードを量産して己の罪悪感から産んだような幽霊を見まくってるところに不思議ちゃんアガサがやって来るので、たぶんアガサが来たことによって何かが連鎖反応で起こって皆が破滅していく系のストーリーかなと思ったら大体そうだった。ざっくりした方向性だけは予想してたが細かくは次起こる事が何かわからないので楽しい。
全員クソ野郎なので破滅していく様子が痛快だった。
しかも僕が好きなタイプの破滅(自分の心に押しつぶされる形の、自分の中から毒が生まれてるので居場所や金があっても逃れられない種類の破滅)で破滅の具体的な形も、人知れず崖から落ちて死ぬとかじゃなくて、社会的に再起不能なものなので最高だった。
身内がプールサイドで焼身自殺して、しばらく驚いて固まった後に突き落とそうとして躊躇して周りをキョロキョロ見た後で椅子でグイグイ押してプールに落すシーンが、そいつの性格が全て出てて最高だった(すぐ真横のプールに落とせばいいだけなのに、自分の手が熱かったら嫌だから手が熱くない方法を考えてる間に、助かるはずの燃えてる身内が完全に焼け死ぬ)。燃えてる方もプールの真横で燃えたって事は途中でやめる事を考慮してプールサイドで燃えたのかもしれん
ハリウッドが舞台で、キャラが立ってて戯画化されたハリウッドクソ野郎達が泣き叫んだり極端な行動したり幽霊が出たり‥何かデヴィッド・リンチの映画っぽくもあった。
それでいて最後、両親の関係性が姉弟に継承されていくラストは一体どういう意味なんだろう?とよく判らなかった。破滅を孕んだ関係性が継承されたって事?
とにかく嫌な奴らが全員滅びるという判りやすい部分で快感を得て凄く面白かったのは間違いないが「これは具体的にこういう話だ」みたいな具体的な説明が出来るほどわかってるわけじゃないけど。
充分面白いが芯になってる部分はおみやげ(何度か観て考える余地を与えてくれる)を持たせてくれるというリドリー・スコットの「悪の法則」みたいな映画で、こういう映画が一番好きかもしれない。
そんな感じでした。