監督&脚本:黒沢清 脚本:池田千尋 原作:前川裕『クリーピー』 制作国:日本 上映時間:130分 公開日:2016/06/18 英題:Creepy
これ、大変な怪作なんだけど中盤くらいから観終わってから数日くらいイライラが止まらなかったんですよね。だから観に行って帰っても感想書かなかった。
というか正直よくわからなかったんですよね。
それで普通だったら「ムカつく」なり「よくわからない」と書けばいいんだが黒沢監督は90年代からずっと観てて舞台挨拶行ったり著作まで全部持ってるファン状態なんですよね。
それなのに何か、パワーは感じるけどイライラと不可解さが勝ってしまい不快スケールに引っかかってました(面白くても不快さが優れば、面白いとは言えなくなる自分の中の物差し)
放り投げたくないし、かといってディティールとか監督の得意技などの(悪魔のいけにえっぽさとか変な地下室とかモブの態度とか顔が真っ黒になるトンネルや変な車内とか)そういう判りやすい良いとこだけ挙げて取り繕う事は出来るが、芯の部分が全くわかってないのに上澄みだけ掬ってお茶を濁したくないし、ポエムも詠みたくないので(黒沢清ファンは具体的な感想が言えない時は突然、個人的で難解なオブセッションを語り始め、まるでポエムを詠んでいるようなモードになって難を逃れる)感想を保留してたが、レンタル始まって再見したらわかってきたので感想書くことにした。
香川照之のキャラが活き活きとサイコパス犯罪者を演じていて、まあこのキャラもムカつかせるんですが、そもそも演じている中身の香川照之が活き活きと何かに打ち込んでる姿もまたムカつくものがありますね。
しかし、ムカつくキャラ+ムカつく俳優がハマっていて、これはいい悪役だという事でまあ問題はない。
それよりも香川照之以外が原因なのかな。
彼は天才犯罪者ではなくどっちかというと杜撰なんだけど、どういうわけか世界の物事全てが ほぼラストまで香川照之に有利な様に進む。これだねイライラの原因は‥。
そういえば世界中で不評な「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」が、僕はつまらないと思いつつ何故か好きなんですけど、好き嫌いは置いといてアレもイライラさせる映画でした。そのイライラは登場人物が不自然な事ばっかりするからなんだけど、あのイライラに似てました。
主人公はかなり早い段階で香川照之を怪しいと思いながら「まぁいっか」と忘れてしまう。
妻の変化にも気づかないし、何よりも過去の事件の生き残りである少女を怯えさせて真相を訊けなくなってしまうという‥。メインキャストの一人がやってるキャラに聞き込みに言って何も得られないって事があるか?だから観に行った時は「あの少女は何なんだよ!」とムカついていた。
二回目観たら少女の役割は「西島秀俊は異常」という事を示すためだけだったんだね。
竹内結子も行動が異常なんだが何故変なのかよくわからずラストも全部わからず「???理解不能理解不能?」という感じだった。
今思えば西島秀俊周りの事は「西島もまた香川照之と同類だった」という事で全て説明がつくんだね。
よく見たら竹内結子は結婚生活に絶望してたっぽい事を後半言ってるんだが西島みたいに「幸せそうなのに何故?」と思っていた。
また少女に「あなたは人の心あるんですか?」と何度も言わせてるから、サインは出してたんですね。全くわからなかったという事は自分もサイコパスっぽい人間なのかもな‥。
むしろ西島と同化して少女に対して「知ってる事を早く喋れ!思い出せ!もっと少女を掴んで動けなくするんだ!」とか思ってたもんね。
西島周りの事は気づかなかった自分がアホだったのか、もしくはサイコパスだったかどちらかだとして世の中全体が香川照之の有利に運ぶのも不可解さに拍車をかけてましたね。
まず、どの刑事も必ず一人でしか行動しないし、後輩(東出)以外の刑事は、主人公の言うことを全く聞いてくれない。
すると突然言うことを聞いてくれた笹野高史は、主人公と一緒に捜索してくれるが「二手に別れよう」とか言って二手に分かれて香川照之の家に喰われてしまう(まるで「キャビン」のアホになるガスを撒かれたかのようだ)
まあ好意的に考えると、この町そのものが香川照之ハウスという彼の口の中に獲物を蠕動して誘い込む逃れられない装置(その装置を倒すには同種のサイコパス王子にしか不可能)なのかと思うしかない。
そういえば謎の薬も不可解でしたね‥(シャブと呼びたくない)。
薬漬けにする過程を飛ばしてるだけかもしれんが、観てたら刺した瞬間に効果MAXになってるとしか思えないよね。
この過程を飛ばしてるのとか、魔法の薬っぷりが不可解さに拍車をかけてる気がする。
監督のファンなら世界の寓話性に慣れてるから色々と良く思うことは出来るかもしれないがネットを見ると結構、不評で特に「主人公夫婦と刑事たちが全員アホすぎる」という批判は、無理もないなという気がする。
「幽霊」とか「恋愛」とかの形のないものを扱った作品なら、寓話性が高かったり世界そのものがおかしくても、何となく腹立たない気がするが、
本作の場合、物理的な犯罪について描いてるのだから、心に問題ありそうな主人公夫婦はいいとして、やっぱり刑事たちは適切な行動をすべきだと思う。
そんな感じでイライラの正体がわかって、観に行った時よりは楽しめました。
だけどやっぱりイライラと不可解さが面白さより勝って、あまり好きじゃないかも。
好みの問題だが、敵が香川照之じゃなくて幽霊とかなら、妙な描写や不自然な警察たちも受け入れて擁護できたと思うが、香川照之の犯罪が現実にあった事件と近くて非常に不快で、その上で数々の事を汲み取らなければいけないので疲れた。
ただ凄くパワーがあるのは確かで、それに当てられ胸焼けしているだけかもしれない。
後で、好きになるかも可能性もある。ただ今はあまり好きになれない
ガチ犬のマックスが、振り返って銃を見てめちゃくちゃビビってシーンは笑った
そんな感じでした
〈黒沢清監督作品〉
「岸辺の旅 (2015)」幽霊が黄泉平坂で宇宙の終りと始まりを語る場面に感動👫👻 - gock221B
「復讐 運命の訪問者 (1997)」監督の作品の中でもエンターテイメント性が高い映画でした🔫 - gock221B
「893(ヤクザ)タクシー (1994)」 縛られた中での製作の姿勢を感じました🚕 - gock221B
「ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985)」洞口依子の可愛らしさと大学のフワフワした感じ👩 - gock221B
「散歩する侵略者 (2017)」理由はよく分からんが黒沢映画の壊れた夫婦もの観ると物凄く胸に来る👉 - gock221B
「予兆 散歩する侵略者 劇場版 (2017)」黒沢清/本編の方は愛の話だったが、こっちは〈心の弱さ=悪〉という闘いがメイン 👉 - gock221B
「ダゲレオタイプの女 (2016)」本作のあらすじ同様、現実世界から隔絶されたような黒沢幽霊映画inパリ👱♀️📷👱♀️ - gock221B
『彼を信じていた十三日間』(「モダンラブ・東京」第5話)(2022)/黒沢清への興味を失ってたが久々の名作!💔 - gock221B
『地獄の警備員』(1992)/今まで黒沢清作品の中ではあまり好きじゃなかったんだけど20年ぶりに観たらありとあらゆる清要素が入ってて良かった。地獄の警備員よりサラリーマンの方がキャラ強い👮 - gock221B
『復讐 消えない傷痕』(1997)/菅田俊演じる哀川翔大好きヤクザが良すぎてメインストーリーなどどうでもよくなってしまった感ある🕶️ - gock221B
『蛇の道』(1998)/セルフリメイクからカットしたらしい”コメットさん”と”宇宙の法則を教える塾”は今見ても面白いのだが、面白すぎて確かにメインストーリーの邪魔かも📺️ - gock221B
『勝手にしやがれ!! 強奪計画』『勝手にしやがれ!! 脱出計画』『勝手にしやがれ!! 黄金計画』『勝手にしやがれ!! 逆転計画』『勝手にしやがれ!! 成金計画』『勝手にしやがれ!! 英雄計画』(1995-1996)/言っても仕方ないが1本でよくね?💴 - gock221B
『蜘蛛の瞳』(1998)/90年代当時はおもろいけど意味わかんなかったが今見たら色々言語化しにくいサムシングが浮かんできて楽しかった👤 - gock221B
『Chime』(2024)/45分間でサイコパスと幽霊どちらも楽しめる。今回の全く映さない幽霊表現いい🔪 - gock221B
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