gock221B

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『帝都物語』(1988)/冒頭の陰陽道バトルは最高、というかそこだけでいい⛤

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監督:実相寺昭雄 製作国:日本 上映時間:136分
原作:荒俣宏 シリーズ:「帝都物語」シリーズ⛤

 

荒俣宏の伝奇大河小説「帝都物語」の、1巻「神霊編」から4巻「龍動編」までを、約10億円という当時としては巨額の制作費を投じて映画化。
実在した人物が実名のまま多数登場し、人造人間「学天測」の権威・西村真琴博士を実子の西村晃が演じたことも話題となった。
クリーチャーデザインには「エイリアン」のH・R・ギーガーも参加している。

 

 

Story 
f:id:gock221B:20180815125145j:plain明治45年。魔人・加藤保憲嶋田久作)は、平将門の怨霊を呼び覚まして帝都壊滅を企んでいた。
その加藤の野望を防ぐため、陰陽師・平井保昌平幹二朗)、大蔵省の辰宮洋一郎石田純一)、その妻で巫女の目方恵子原田美枝子)など、ありとあらゆる政治家や霊能力者や科学者などの闘いを描く――

 

 

 

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本作は何だかんだ言って10年に一度は観たくなって観てる気がする。

そして毎回、前半で「帝都物語最高!」と思いつつ、観終わるくらいには熱が冷めて「はぁ‥」という感じになる。
そして10年後その事を忘れて再び観て「帝都物語最高!」と思いつつ、観終わるくらいにはまた熱が冷めて「はぁ‥」という感じになる。
そして10年後‥(ループ)
こういう人は多い気がする。
要は、印象には残る良い場面も多いが一本の映画として観ると、いま一つという感じ。
それでも「二度と観るか」とは思わないあたり、良い映画の部類に入ると思う。
映画というのは終盤や終わり方が凄く良いと、遡ってイマイチだった前半や中盤の印象が良くなったりするが、逆の現象は少ない。
原作のファンなら、映画で描写不足な部分さえも脳内補完して楽しめるかもしれないが、あいにく僕は原作読んでないのでよくわからない。
あとは単純に、金のかかったビジュアルや雰囲気は素晴らしいと思う。
バブルな時に作ったのでギーガーのクリーチャーやSFXや豪華なセットや出演者など、どれもふんだんに金がかかっている。
帝都の繁栄と滅亡、復興などをずっと見ている渋沢栄一役が勝新というのがまた、本作の特別感が増している。
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※追記(2019年4月9日):この実在の人物、渋沢栄一元号が平成から令和に変わた今日此の頃、一万円札、五千円札、千円札などの絵柄が変わるそうで、一万円はこの渋沢翁になるらしい。一万円が物理的、霊的に守護された紙幣となる‥?!
魔人・加藤のキャラ。陰陽道式神。帝都東京。実在の人物や出来事がたくさん出てくるところ‥等のあらゆる要素が当時のリアル中学生だった僕の厨二魂にヒットしました。
未だに関西に行った際は、京都の清明神社で安倍晴明の五芒星ステッカーとか買ってドアやパソコンに貼ってしまいがち。
本作は(おそらく荒俣だから一冊ごとのウンチクなどが異常に多いと思われる)数冊分の原作を無理やり一本の映画に押し込めたために情報量が多すぎるし、メインキャラクターの内面が全く描かれない。次から次へと出てきては消えていく登場人物が多すぎる。更には時間がポンポン飛ぶ(平気で数十年経ったりして、その度に興味や面白さが途切れるのでこれが繰り返されて後半はどうでもよくなってくる)
そんな要素が合わさって、前半は大興奮だが中盤→終盤と進んでいくうちに曖昧な印象になってやがては「一体何だったんだろう‥」という鑑賞後感になるんだろう。

 
魔人・加藤
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加藤は、中学生の目から見てあまりにカッコよかった。
嶋田久作インパクトある顔面や陰陽道のカッコよさもさることながら、
こんな濃いキャラなのに名前が「加藤」とあまりに普通すぎるのがカッコいい。
僕は「濃いキャラの名前は、逆に普通すぎる方がカッコいい」と思っている。
もしこいつの名前が「鳳凰院凶真」とかだったら、カッコよさ減だ。
しかし今観ると加藤とは一体何者なのか、何故東京を破壊したいのかなどはあまり語られないので良くわからない。勿論、原作とか読めば書かれてるんだろうけど、映画だけ観たら「とにかく帝都を破壊したいおじさん」って事しかわからない。
とりあえず悪や災厄のメタファーだとでも思っておくか。ゴジラみたいなものか。
いつも日本軍の恰好してるから、日本を内側から蝕む旧日本軍の邪悪さを擬人化したのか?
また今回本作を観てると、加藤は部下の女を使い潰したり辰宮由佳理を孕ませたり辰宮雪子を利用しようとしたり辰宮恵子を自分の女にしようとしたり‥と、ストーリー中でやたらと「女」に固執して利用しようとしてるので序盤ではカッコよかったのだが後半では、ひたすら気持ち悪い印象で終わる。



中学生が好きなものが全て入った前半
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映画の冒頭、いきなり魔人・加藤 vs.陰陽師軍団との呪術バトルが始まる。
この映画、正直この数十分だけ観て最後の5分くらい観ればそれでいい気がする。
魔人加藤を迎え討つのは天皇家直属の陰陽師の名家、土御門家一門総帥・ 平井保昌(平幹二朗)。
雑魚陰陽師が叫ぶ「加藤が来たぞ~っ!」
まるでゴジラが来たかのような騒ぎぶりだが、そこで叫ばれる名前が「加藤」という平凡極まる日本人の名字なのが最高にカッコいい。
大塚芳忠の声で喋る雑魚陰陽師が叫ぶ
式神返しにあった!これで加藤は自由に自分の式を打てるようになった!

式神を使役する事を「式を打つ」と表現してるところなどが中学生の僕を前傾姿勢にさせた。中学生当時は夢枕獏菊地秀行の伝奇小説も読んでたから、こんなもんばかり好きだった。
加藤の配下「紅巾の女」も印象的。

この人一体誰だろう?と長年思ってたので検索してみたら有名なファッションモデルで映画は他には出てないらしい。
妖怪かと思っていたが一応人間らしい。加藤の情婦みたいなもの?

明治40年だというのにハイレグのこの忌まわしい女がばら撒く黒い五芒星の札カラスに変化して、土御門流の陰陽師たちを襲う
陰陽師か、加藤の外道印!ドーマンセーマン!
平井保昌くっ!加藤の蠱術に堕ちようとは‥
紅巾の女オンキリキリバザラウンハッタ‥オンキリキリバザラウンハッタ‥
あまりにも中学生が好きなものが全て入っている。大興奮だ。

中学生の時の俺は「オンキリキリバザラウンハッタ」と唱えたり、加藤の式神にビビるような職業に就きたかったものだ。
それにしても現代の目から観ると、この魔人・加藤 vs.土御門一門による陰陽道バトルは、まるでハッカー同士によるコンピューターウイルスの送り合いとか障壁破りに凄く似てる(そういう意味では昔観た時よりも今観た方がイメージしやすい)
加藤が呼び出す式神はギーガーが関わってるためか西洋風のものが多い。護法童子は特にギーガー丸出し(回転ノコギリを備えた殺人ボール)
だが護法童子あまり強くない。というか学天測を破壊しに来た式神などは、年老いた西村晃が腕を振り回しただけで追い払われてしまうので野良犬以下の強さだ。
気分といえば今回気付いたが、加藤との呪術合戦で敗れた陰陽師たちが蜘蛛の巣だらけで死んでたのが可笑しかった
。彼らは数ヶ月間くらい動かずに闘ってたのか?それとも超スピードで動く蜘蛛が彼らに巣を張りまくったのか?まぁ「敗北して白髪になった」同様、敗北のサインなんでしょうね。
他にも腹中蟲や人造人間・学天測や、悪を監視する二宮金次郎像なども厨二心をくすぐられた。
正直、ここだけでいいっていうか、本作をたまに観るけど平井保昌が死んだところで「誰が加藤を止められるのか‥」とか言いながら再生を止めた方が楽しめる気がします。というか平井との闘い、もしくは関東大震災をクライマックスに持ってきて映画を終えた方が良かった気がする。

 

 

辰宮家
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加藤のところでも述べた本作のパッとしない理由の続きだが、まず主人公格の辰宮家の人達が魅力ない。
いや、ラストで加藤と対決する、原田美枝子が演じる辰宮恵子は、さすがにカッコいいのだが、主人公の辰宮洋一郎(石田純一)が凄く魅力がない。
何しろトレンディな感じの石田純一を指して「実は石田純一が陰ながら国を護っている」とか「実は加藤より霊力がある」とか言われても「別に石田純一のことは好きでも嫌いでもないけどさぁ、こいつにそんな力ないよ!」と言いたくなる。要は説得力がない。
加藤は将門の血を引く辰宮洋一郎の妹・辰宮由佳理をかどわかして怪しげな呪法を施し、その結果、辰宮雪子が生まれる。
そして終盤で加藤は雪子を使って将門の怨霊を呼び起こし帝都を滅亡させようとする。
勝負の決め手となるのは「雪子は実は加藤の娘ではなく、辰宮由佳理が実兄・辰宮洋一郎との近親相姦の末に生まれた娘だった!」という衝撃の事実がわかり、それがきっかけで加藤の計画が崩れて、恵子と相討ちになる
この近親相関の要素って結構な大事件だと思うのだが、劇中で全然語られない。
だから洋一郎と由佳理がそういう衝撃的な関係である感じが全くしない。
恵子は近親相姦の事を知っているのだが、その事で洋一郎と語り合う場面も全然ない。
結構な問題だぞ‥?
しかもそんな可哀想な恵子は単身、加藤と対決に出かける前に洋一郎に「生きて帰って来れたら私を本当の妻にしてくださいね」などと健気な事を言う。
石田純一は軽い感じでさらっと送り出す。もっと何とか言ってやれよ。
心中では色々思ってるのかもしれない、石田純一が何考えてるのかサッパリ伝わってこないし推し量る気にもなれないので「一体、何なんコイツ‥」と腹が立ってくる。

だが将門の首塚を鎮めるために呪われた辰宮兄妹は首塚に身を捧げるので
「死ぬんなら、まあいいか‥」
とか思ってたら実は兄妹は生きてて、ラストで幸せそうに散歩してるので嫌な気分になって映画が終わる。
原作では、各人の心理描写などもあったのだろうが、別に読む気ないし、とにかく永遠に恵子が可哀想で石田純一にムカつくだけだ。

 

 

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そんな感じで、
前半のオカルトバトルや色んな厨二要素が詰まった細部はカッコいいんだけど、何度も書いたようにあまりに話やキャラがとっ散らかってますね。
主人公と加藤はやたらと女に固執してすぐ孕ませたり女に働かせたりしてカッコ悪いし気持ち悪い。
加藤は悪役だからキモくてもいいが、ヒーローポジションっぽい辰宮洋一郎はこんなキャラじゃダメだろう。
石田純一の妹に惚れていた佐野史郎も加藤にびびって刺されたら実家に帰ってしまう
。何なんだよこいつも!
それともこういったドロドロした人間関係の因果が、呪術をより強力なものにしているとでも言いたいのだろうか。
数年後に続編の「帝都大戦」が作られたが、それは式神とかは一切無くなって加藤や超能力者がムーン!と唸って大爆発が起こる感じの大味な映画になっていて、中学生だった自分は観に行ってガッカリした。
本作は10年に一度くらい観直してるが「帝都大戦」は一切観返す気になれないので、やはり幾つか欠点はあるものの、本作は「面白い映画」の部類に入ると思う。

 


そんな感じでした

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