gock221B

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『1922』(2017)/死ぬほど地味で暗い話だがS・キングっぽさが出てるしクトゥルー神話っぽい陰惨な雰囲気に妙に惹き込まれた🐭

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原題:1922 監督&脚本&製作総指揮:ザック・ヒルディッチ
原作:スティーヴン・キング 製作国:アメリカ 配信時間:102分 配信局:Netflix

 

 

 

スティーヴン・キングの中編小説が原作のNetflixオリジナル映画。
‥何か異常に地味で暗そうだな‥と思って観なかったが、僕はモニターの右側で作業する時に何か作業中にモニターの左側で吹き替えありの映画を再生したい時に再生したら思いのほか魅力的な作品だったので結局ちゃんと観た。
この主人公の俳優どっかで観たことあると思ったら、同じくキング原作の「ミスト (2007)」の主人公を演じてた俳優だった。本作もミスト同様、父と息子の悲劇でもある。あと「ドリームキャッチャー」にも出てるしキング俳優と言ってもよさげだ。アメコミ的には映画「パニッシャー (2004)」でパニッシャー役してた人だった( 二本目のパニッシャーね、トラボルタがヴィランのやつ)
今回は丸っきり全部完全ネタバレありき。最初から結末で全部書いてしまうタイプのページなので御注意ください

 

 

Story
ペンを取り自ら犯した妻殺しの事実を書き残していく農夫ウィルフレッドトーマス・ジェーン)。
田舎暮らしが嫌な妻は、自分が権利を持っている農園と家を売って都会に行くと言って聞かない。この家を離れたくないウィルフレッドは、隣の家の娘と恋愛しているために父と同じく引っ越したくない息子を引き込み、二人で妻を殺害し井戸に棄てた。その殺人は新たな恐怖への序章に過ぎなかった――

 

 


あらすじ通り、酷く絶望した初老の主人公ウィルフレッドが一年くらい前?に「妻を殺した」ことから始まる己の身の不幸を書き記しているところから始まる。
妻と15歳の息子が居た農夫ウィルフレッド。
夫婦の描写はあまりないのでよくわからないが、別に夫婦仲が冷え切っていたほどではないが特に愛し合ってるわけでもない感じの夫婦(時代が昔なので、子供が出来たので結婚したとか家の都合で結婚した感じか?)
だが田舎暮らしに飽き飽きして都会に憧れていた妻は、自分が所有者である家と農園を売っぱらってその金で都会に住もうとしていた。
だがここでの暮らしに満足しており家も農園も手放したくないウィルフレッド。
15歳の息子も特に都会に行きたがっておらず、何よりも隣の農園に住む同級生の娘と愛し合っており絶対に引っ越ししたくない。
ウィルフレッドは引っ越しを思い直すよう説得しようとするが妻は話し合いにも応じず、息子がしていた清い恋愛に対しても「あの娘とまだヤッてないの?w さっさと自分のムスコおっ立ててブチ込んでやればいいのよ!あ、でも中に出しちゃダメよ」と言う。思春期の純愛を侮辱された息子は傷つく(この殺された妻はそんなに下品な女にも見えないのにここだけ過剰に下品すぎるので、この下品さもウィルフレッドが自分の記憶を書き換えたかのように思える)
ここでウィルフレッドは彼の中に居たという「悪巧み男」が目を覚まし、息子を抱き込んで妻の殺害を決意する。
‥悪巧み男‥妻を殺す決意に名付けるには随分可愛らしい名前だ。「魔が差す」ろ言い方や、東京埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤の中に居たという「ねずみ人間」同様、悪事を軽減させて自分の心を防衛するために作り出したソフトな言い方なんだろう。

 

 


とにかく妻と一緒に引っ越すと嘘をついて妻を喜ばせ、引っ越しパーティで妻を酔っ払わせる。そして酔って寝ている妻の身体を息子に押さえさせ喉を切り裂いて殺害するウィルフレッド。死体は井戸に棄て蓋をした。
そして血の跡を拭き取り、妻が失踪したかのように服やカバンを減らして工作するウィルフレッド。妻を棄てた井戸を覗くウィルフレッド、妻の死体にはネズミがたかり、ネズミは妻の口を出入りしている。たまらず嘔吐するウィルフレッド(これ以降ウィルフレッドにはネズミが付きまとう)
この井戸を覗かれては妻殺害がバレる、だが意味なく井戸を埋めてしまっては怪しすぎる。
だからわざわざ飼ってた牛を井戸に突き落として撃ち殺すウィルフレッド。
「井戸に牛が誤って落下してしまい引き上げる手段もないので撃ち殺した。そして埋めた」という筋が通ったアリバイ。同時に土で埋めることによって死臭も隠せる。
これら殺害後の処理の描写が異常に丁寧なので「キングっぽいなぁ~!」と思った(キングっぽいイコール荒木飛呂彦っぽいとも感じた)
妻が土地や家を売る約束をしていた会社の男が半日かけて車で来る。
「妻は失踪した」と告げるウィルフレッド。
しかし土地と家を売れば大金が入ってくるのに売却する前日に失踪するなどありえない。
翌日にはウィルフレッドと顔なじみである村の保安官がやって来る。保安官は若干怪しんでる雰囲気も出してたがウィルフレッド父子のアリバイに綻びもないし引き上げた。田舎の一般人女性が消えたところで熱心に探す時代ではなく、これで終わり。
妻殺し成功。これからも父子は望み通り農園で暮らすことが出来る。

 

 


しかし「普通の人」である父子には「利己的な理由で、妻or母を殺した」という事実に耐えられるはずもなかった。
ウィルフレッドは、死んだ妻やネズミの幻覚を見ることが増えた。
息子は元気がなくなり彼が付き合ってる隣の農園の娘にも怪訝に思われる。
それまで父に従順だった息子だったが自分の罪悪感を父にぶつけるようになる、そして苛立ちからか隣の娘との性交渉が増えて、まだ15歳だったにも関わらず隣の家の娘を孕ませてしまう。
息子はまだ子供だし、その子供が子供を生んでも育てるだけの養育費はウィルフレッドには無い。息子は母殺しの罪悪感や何一つ自分の思い通りにならないことから「母さんがしたがってたように土地を売ってれば金があったのに!」と父を軽蔑する。
隣の、金持ち農家の孕んだ娘の父親が家にやって来る。
彼は「娘は、ある施設にやって子供が産まれたら養子に出す。お前が金ないのはわかってる。だが義務として少しは金を払え」と言う。
割と良心的な提案に思えるがウィルフレッドはそれさえ払う事ができない。
息子は妊娠した娘を連れて駆け落ちした。

 

 


息子カップルの駆け落ち以降、ウィルフレッドは益々失調していき妻やネズミの幻覚を見るようになる。
そしてネズミに噛まれて高熱を出す。その時、自分が殺した妻の亡霊‥もしくは幻覚が現れ、彼女は「死人にしか知りえない事実」を述べる。
それは「無一文で身重の娘と駆け落ちした息子は、強盗しながら逃避行していると妻が撃たれて胎内の子が死に、逃げ込んだ廃屋の中で妻も死に、絶望した息子も生きることを諦めて凍死した」という事だった。
ウィルフレッドは「俺が悪かったァ!お前にしたように俺を殺してくれェ!」と妻の霊に懇願するが妻の霊は「そう簡単に殺さない。もっと苦しんだ末に死ね」と言い残して去る。
無言の帰宅をした息子は、死体をネズミに食い散らかされて顔がグチャグチャになっており、ウィルフレッドは「顔を修復してくれ‥」と泣きながら頼む。これで金は全て無くなった。
飼ってた家畜もネズミの獣害で死に絶え、また自身もネズミに噛まれた破傷風が元で片腕も失ったウィルフレッドは、土地を売ろうとするが妻が契約していた会社には売りたくないので隣の金持ち農家に行く。
娘を失った金持ち農家、ほんの少し前まで金持ちだったのに妻に逃げられていた。
ちなみにこの金持ち農家の妻は何を言っても「貴方の考えが一番よ」が口癖の従順な妻で、自分の妻が言うことをきかないウィルフレッドは彼の妻を羨んでいたが、それは男尊女卑の時代だから処世術として夫に従っていただけで、娘が居なくなったことを切っ掛けに夫に愛想を尽かしてとっとと出ていってしまった。
金持ち農家は「今年の始めには俺にもお前にも妻子が居たが今は誰も居ない、可笑しいな?お前に無くて俺にあるのは両手が健在なことだけだ。ここには二度と来ないで欲しい」と言う。
そして金持ち農家は、農業が順調だったのにも関わらず、あっという間に事業が立ち行かなくなり、ほどなくしてウィルフレッド同様に家も土地も売り払った。
ウィルフレッドの中に一瞬生まれた”悪巧み男”によって近隣の人間が全て不幸になっていく。
ウィルフレッドは仕方なく、妻が最初に契約していた売りたくなかった会社に家と土地を売る。あの時売れば大金だったのに今は二束三文で買い叩かれた。
ウィルフレッドは工場などで働くがネズミの幻覚を見続けるので仕事が長続きしない。家と土地を売って得た金も飲んで消えた。
そして冒頭のモーテルで自分の罪を書き記すウィルフレッド。
彼は、息子と共に妻を殺した夜の事を回想する。
息子は物陰から半身だけを見せながら(心を開かなくなった比喩表現)父と話す。
ウィルフレッドは息子に「母さんを殺したのは俺だ。お前は気にするな」と言うが
息子は「父さんと僕、二人で母さんを殺したんだよ」と父の意見を跳ね返し、更に前日まで信心深かった息子は「神様がもし居るなら僕は地獄行きだ。だから神なんて居ない方がいい」と言う。
ウィルフレッドは「‥こんな事になったが俺はお前を愛している」と言うが、息子は、やはり半身を物陰に隠しまま
愛される資格なんてない」と言う。
やはり、この夜、関係者各位は全員滅びる運命のレールへと車輪を乗せてしまっていたのだ。この回想がたまらなく良かった
このホテルにもネズミの数が莫大に増える。終わりの時が来た。
そこへ、自分が殺した妻、死んだ息子、息子の死んだ彼女などの霊が現れる。手には刃物を持って‥

 

 


‥という終わり。
何か今回は最初から最後まで全部書いてしまった。何かそういう気分だった。
暗い内容のストーリーが更にバッドエンドを迎えたわけだが、ウィルフレッドは悪事を行う前の序盤からずっと不幸そうだったし後半では本当に死にたがっていたので、この「霊たち(罪悪感)に殺されるんだな」というバッドエンドはむしろハッピーエンドにしか思えなかった。
不幸過ぎる展開しか起きないがために、殺されることがハッピーエンドになってしまうほどの暗黒。
ホラー映画での霊性は、ほぼ全てが「死」を始めとする不安やネガティブ要素の可視化に過ぎないのだが、本作の妻の霊やネズミの群れは、当然ウィルフレッドの罪悪感の可視化に過ぎない。父子は妻or母殺しの罪悪感に推し潰れて自滅したのだ。
そんな感じで死ぬほど地味で全暗いだけの反しだったが妙に心惹かれるものがあった。
やっぱり、まずSキングっぽさの再現、そして(原作読んでないけど)執筆したキングに思いを巡らせた。妻or母殺しをして後片付けしたり罪悪感に苛まされる描写‥「こんなの書いてる自分が辛いやろ」という事。
そして発端から結末まで一切のカタルシスなく、クソ地味でジメジメと陰惨なままで滅びるラストまでなのだが、何かそんな感じが水木しげる漫画やクトゥルー神話みたいでいいなぁと思えた。
若い時は自分の無限大の可能性を信じたいがために、自分が勝てずに滅びるだけのクトゥルー神話やバッドエンドのホラーが嫌いだったが、中年の今は気がつくと大好きになってた。きっと人生の半分終わって‥それはつまり死に向かうだけだから「自分はもう死ぬレールに乗ったから、ついでにこの世も滅びてしまえ」というネガティブな感情があるから好きなのかもしれないな‥と思った。
忍び寄る「死」や「破滅」の象徴が、ネズミなんかじゃなくて、もっと象徴的でカッコいいサムシングならもっと本作に乗れた気もする。
とは言え、妻の霊と共にたくさんのネズミが階段を降りてくるカットはカッコよかったけど。
全く話題にならなかったので期待してなかったが、思いの外、良作だった。
まぁ、こんな映画Netflixのメインユーザーである若者たちが好きになるわけがない
一切話題になったのを聞いた理由もわかる気がする。
自分が20歳位の時に本作を観ても「何なんだ‥この鬱なだけの作品は‥」と感じて今の自分のようなカタルシスは得られなかっただろうと思うし
別に犯罪なんか犯してないけど、何かしらウィルフレッドに共感したから心にヒットしたんだろう。それが何かはわからないし別にわかりたくないのでこのページはここで終わり

 

 

 

そんな感じでした

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1922 (2017) - IMDb

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Amazon: 1922 イチキュウニニ (文春文庫)

 

1922

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