原題:Insidious The Last Key 制作:ジェームズ・ワンほか 監督:アダム・ロビテル
製作国:カナダ/アメリカ 上映時間:103分
制作:ブラムハウス・プロダクションズ シリーズ:「インシディアス」シリーズ
一作目で主人公が死んでるのに延々と続く不思議なシリーズ「インシディアス」。日本ではまぁまぁ‥でDVDスルーになってしまったが、アメリカ本国では大ヒットなので早くも5作目制作が決定したらしい。
またこのシリーズは「おばあちゃんが主人公、しかもそれが賞レース的な内容じゃなく老若男女が観てヒットしてるエンタメ大作」という‥よく考えたら他にこんな映画ないなと思い始めた。このエリーズ役の主演の御婦人やその孫は絶対嬉しいと思うのだがどうか?そして、こんなに重用するのならポスターにも「コマンドー」のシュワさんよろしくエリーズおばあちゃんをドンと載せろ。
Jホラーが衰退した現在、Jホラーっぽい手法を取り入れて大ヒットさせてた、このジェームズ・ワン制作ホラーにハマって何年も応援してたのだが一昨年公開の「アナベル:死霊人形の誕生 (2017)」が、今までで初めてつまらなかったので「あれ?もうそろそろ終わりか?」と感じ、また昨年、彗星のように現れたアリ・アスターの「へレディタリー/継承 (2018)」が凄すぎて、何だか他のホラー映画全てがどうでも良くなってきたというのが本音。
本作もDVDスルーだったので「きっとつまらないんだろう」と見くびってスルーしてたが「面白かった」と聞いたので‥というか、その人物からネタバレ全部聞いてしまったのだが、そのネタバレが面白そうなので借りて観た。
本作は「パラノーマル・アクティビティ5」の監督らしい。感想は書いてないけど、それネトフリで観た(まぁまぁ面白かった)
僕は宦官びいきなので「インシディアス」シリーズの方が人気あった時は「死霊館」シリーズを推してたのだが何時のまにか「死霊館」がユニバースを形成するほど巨大化して逆転したので今はインシディアスを推したい気持ちがデカい。
インシディアス=現代が舞台。霊能力者エリーズと心霊科学バスターズが悪魔と闘う。〈彼方の世界〉という、時間と空間を超越した異界があり、エリーズはそこを使って悪魔を倒す
死霊館バース=1960年代が舞台。実在する超常現象研究家ウォーレン夫妻がポルターガイスト現象を悪魔祓いで退ける。本編に出たアナベル人形、悪魔のシスターなどを扱ったスピンオフ作品も同一の世界としてシネマティック・ユニバースを形成している
みたいな認識。今回の感想は完全にネタバレあり殆ど全部書いていく系のスタイルでいくので興味持ったらそこで読むの止めて本編をどっかで借りて観て下さい。長いです
2010年、超常現象の専門家として活動するエリーズ(リン・シェイ)の元に仕事の依頼がやってきた。
それは1953年、エリーズが幼少期に暮らしていた家に現在住んでいるという男が「引っ越してきてから不可解な現象が続くため助けてほしい」という内容だった。
迷ったあげく仕事を引き受けたエリーズは心霊科学捜査を行うスペックスとタッカーを部下として、かつての生家に行くが思わぬ事態に遭遇する――という話。
まず続きものだった1作目&2作目があって、前日譚の「序章」があって、4作目の本作は序章の続編、一作目の直前の話。前日譚と本編を繋げる‥というスター・ウォーズで言うと ローグ・ワンみたいな感じ。
こんな言い方すると「前日譚とか間とか‥どうでもいいよ!」と思われがちだが、このジェームズ・ワン制作ホラーは何作か作られた後の方が色んな撮影テクニックやアイデアが洗練されて上手くなってるしストーリーはぶっちゃけ超単純なものなので、むしろ後に作られたものの方が面白い(インシディアスは序章、死霊館バースはアナベル一作目が一番面白いと思う)
そんな時系列的には橋渡しポジションの本作。ストーリーはと言うと主人公の霊能力者エリーズおばあちゃんのオリジン、彼女を掘り下げるものになっている。
一作目の時点では、どのホラー映画にも出てきそうな霊媒師おばあちゃんに過ぎなかったが(そうじゃないとあんなにあっさり殺さない)何か知らん間に4作も主役を勤めてオリジンまで描かれるという‥本当に凄い。
霊感の強い悪魔学者エリーズの、幼少時や少女時代の過去が語られる。
彼女の父の仕事は死刑執行も行う刑務官で、幼かったエリーズは処刑された囚人の霊や若い女性の霊などをよく目撃していたが、それを言うと父に折檻されて地下室に閉じ込められた。エリーズはそこで〈キーフェイス〉と名乗る悪魔に遭遇し、そこに居合わせたエリーズの優しいママは殺されてしまう。
ママがエリーズの弟クリスチャンにプレゼントしたお守りホイッスルも無くなる。
ティーンネイジャーになったエリーズは以前にも増して情緒不安定な父のDVや霊を恐れて暮らしていたが再び若い女性の霊を目撃する。それを父に言うとまた折檻されそうになったエリーズは弟クリスチャンを置いたまま家を飛び出した。
5、60年の時が過ぎ現在、引退状態にあったエリーズは前作「インシディアス 序章」で知り合った、若き心霊科学YouTuberの2人組スペックス&タッカーと楽しく過ごしていると、かつてエリーズが辛い少女時代を過ごした生家に住む独身男性から悪魔祓いの依頼が来て、エリーズはスペックス&タッカーと共に生家に向かう。
スペックスとタッカーは今まで面白いけどほんのちょい役って感じだったが、やっと認められたのか本作では完全にエリーズのサイドキックとして活躍するようになった。
こいつらは「骨董品とか車を鑑定するようなケーブルTV」とか「海外面白YouTuber」とかに本当に居そうな外見をしている。訳のわからん心霊観測装置を携え、エリーズの指示でスーツを着せられた面白ゴーストバスターズめいた格好の友だちになりたさが凄い。世界的なタレントや俳優になれるほどのスター性はないがネットで有名人くらいにはなれそうな絶妙のキャラをしている。
依頼してきた独身男性は「有り金はたいてこの家を買ったんだよ」と必死。「悪魔が出るから引っ越して違う家に住もう」なんて容易く出来ない。かといって警察に「悪魔が出るんで」とか言ってもしょうがない。霊障が本当に存在するのかどうかはしらんが、もしあったとして自分がこんな事態に本当になったら、確かに霊媒師に頼むしかないわな
エリーズは町のダイナーで、5、60年前に生き別れた弟クリスチャンと彼の娘である美しい姉妹と出会う(というか歳が離れすぎてるので孫娘とかにすればよかったのに)
50、60年ぶりに会ったわけだが、クリスチャンは幼い自分をDV父の元に置き去りにして出ていったエリーズへの恨みがあり和解は失敗。だが娘たちとは仲良くなった。
姉妹の片方イモジェンは、エリーズのような霊感があるという。
深夜、生家を調査していたエリーズとタッカーは、若い女性の幽霊に誘われて地下室へ行く。そこには鎖に繋がれた女性の霊が‥違う!幽霊みたいに見えるがタッカーにも見える彼女は、本物の監禁された女性だった。
依頼者は女性を誘拐して監禁していたが、同時に脳内に響く悪魔の声に耐えられなくなり、誘拐監禁がバレるリスクを冒してでもエリーズを呼んだのだった。
悪魔の声に支配されエリーズとタッカーも閉じ込めた依頼者だったが、事の成り行きを全てモニターしていたスペックスの活躍により死亡。警察を呼んで一件落着。
幼い頃に失くした母がくれたお守りのホイッスルを探しに生家を訪れたエリーズの弟と姉妹だったが霊能力ない方の娘メリッサが、かつてエリーズのママを殺した悪魔キーフェイスに襲われ、喉と心臓に鍵をかけられて支配され、意識不明の重体となる。
依頼者がというよりも、この家に居る悪魔キーフェイスがやらせていた事だったのだ。
悪夢が終わってない事を悟ったエリーズは、スペックス&タッカーにイモジェンを加えた布陣で悪魔退治に再び乗り込む。
例の地下室を調査するエリーズは発見した女性ものの衣類を触りサイコメトリー能力によって「かつて自分が家出した日に見かけた若い女の幽霊は、実は幽霊ではなく(先日見つけた監禁された女性のように)父に地下室に監禁されていた本物の可哀想な女性だった」事を知る。自分が彼女を見殺しにしてしまったのだ。
更に通風孔の中に進むと、父が監禁して殺したと思われる女性の遺物や頭蓋骨が無数にあった。父もまた死んだ依頼者と同じくキーフェイスに取り憑かれ女性を監禁して殺し続けていたのだ。
だがエリーズはキーフェイスによってメリッサ同様、時間と場所を超越した異界〈彼方の世界〉の牢に閉じ込められてしまう。そこで〈彼方の世界〉に閉じ込められたエリーズとメリッサを助けるため、スペックスとタッカーはエリーズ同様の霊能力を持つイモジェンに催眠術をかけて〈彼方の世界〉へ送る。
‥というかバスターズとイモジェン、何気に凄い事できるね。まぁそこはノリで!
そして終盤、〈彼方の世界〉で最後の闘いが繰り広げられ、インシディアス一作目直前の夜で終わる。
最初は只の霊媒師ばあさんキャラに過ぎなかったエリーズだが作品を重ねるたびに「小さい子を苦しめて許せん!」と、まるでヒーローみたいなキャラになっていったエリーズだが、今回はエリーズの方が好きだったママに同じように助けられたのはエリーズの悲惨な子供時代が報われたようで良い展開でした。
そんな感じで面白かったです。
悪魔キーフェイスはエリーズの「嫌な思い出」や、父や依頼者など気の弱い中年男性の「魔が差した」の「魔」の部分のキャラクター化という感じで良いキャラクターでした。
そんな感じで、エリーズや弟クリスチャンの過去と現在。
過去の父の犯罪が、全く同じ場所で全く同じ犯罪が起こることで「エリーズが置き去りした放っておいたネガティブなもの」が具現化して新たな被害者を生んでしまった感じ。
など、エリーズのネガティブな過去が時間を超えて恐ろしい結果を生み続けていく構造が凝っていて、ストーリー面では今までで一番面白かった。
だけど「怖さ」という尺度で言うと、今まで本シリーズや死霊館で披露してきたJホラー表現的な描写は影を潜めてアメリカンな感じだったので怖さは殆どなかった。
今まで新作作るたびに新しい心霊描写のアイデアが刷新されてたのだが近年のアナベル2や本作では新アイデアは出なくなった。アイデアが尽きたのか「Jホラーっぽいのはもう飽きたからアメリカンホラーで行こうぜ」と路線を変えてきてるのかもしれない。
悪魔キーフェイスはモロにモンスターめいた顔や特異なボディをモロに見せすぎて面白いキャラクターだが怖さは全くない。どちらかというと本作はキーフェイスの造形も含めて「ポルターガイスト」などのファンタジーホラーに近い印象。
だけど、このシリーズとかエリーズおばあちゃんというキャラとか〈彼方の世界〉など独自の設定が好きな僕は面白い!と思ったけど、そうじゃない人や「ホラーでも観るか」とインシディアス・リテラシーが無い人が、いきなり本作だけ観ら「何だこれ?怖くないし謎の空間が出てくるし、よくわかんない映画だな」と思っても不思議じゃない。
「インシディアス」ファン向けだったかもしれん。僕は面白いと思ったがアメリカのロッテントマトやimdbなどのネット評価が妙に低いのはそういう事だろう。
僕はと言うと、ストーリーだけなら「インシディアス」全4本、「死霊館バース」全4本‥全部で8本合わせた中で、本作のストーリーが映画として一番面白かった。‥だけど、ホラーとしての怖さとしては本作は相当怖くない一本になっている。
何だかんだ総合して考えると未だ「インシディアス 序章」が一番ちょうど良いかも。
ちなみに心霊バスターズのスペックス(真面目そうな方)は前作「インシディアス 序章」の監督だと今知った。敵をブッ殺したり最後に美人とキスしたり「構わんけど不自然なほど扱い良いな」と思ってたが、序章ヒットのご褒美的なものだったのかもしれん。
それにしても「カッコいい廊下」「善のランタン」だけで異界を表現する〈彼方の世界〉って面白い設定だなと思った。
あそこに居た被害者の人間とかじゃなさそうな、フリークスっぽい変な奴らは何なんでしょうね?囚われて永久の時の中で悪魔化しちゃった人間なのかも。今回のキーフェイスや一作目のリップスティック・デーモン(全作出てくるダースモールみたいな赤い顔の悪魔。演じてるのはシリーズの音楽監督)も、元はここに囚われてた犠牲者が悪魔化したのかも。
それか続編で使えるようにするための、死霊館のアナベル人形や修道女みたいな伏線なのか(ちなみにちょろっと出てくるスキンヘッドの悪魔っぽい顔の女性は先天的な障害を持つモデルの女性が演じていて役名は「堕天使」になっている、天使だったの?)
妙な雰囲気といい何かよくわからん住人がいたり「赤い扉」を強調してるところいい、絶対にデヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」シリーズに出てくる異界〈赤いカーテンの部屋〉を意識してると思う(今回は特に)
ツイン・ピークスと言えば、ジェームズ・ワン制作ホラーはツイン・ピークス同様「これ本当に2018年のアメリカ映画か?」っていうくらい白人しか出てこない。メインキャラは全員白人だ。スペックス&タッカーも新キャラの美人姉妹も全員白人。
「白人」がメイン客層なのかな?
それにしてもエリーズを掘り下げ、4作使って一作目に繋げて円環構造にして、もうさすがにエリーズおばあちゃんはさすがに使い切った感じしますね。
霊能力を持った若手のイモジェンを出したのは次からの主人公交代のためかな?
イモジェンは美人だけど主役オーラがエリーズおばあちゃんの半分もないモブ系美人だし主役は無いな。主演にするとオーラ出るかもしれないがスペックス程度とくっついてる時点で主役はないな。
エリーズおばあちゃんサーガはさすがに終わっただろうし5作目どうするんだろうね?
正直きれいに終わったからこれで終わりでいい気もする。それでも続けるならもう思い切ってエリーズおばあちゃんを生き返らせてくれよ。誰も怒らんだろ。
そんな感じでした
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