gock221B

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『運び屋』(2018)/今まで観たイーストウッド監督作&主演作全62本中で一番好きかもしれん。自分だけの面白さを掴み取ろう🚙

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原題:The Mule 監督&制作&主演:クリント・イーストウッド
原案:サム・ドルニック「The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule
製作会社:マルパソ・プロダクションほか 製作国:アメリカ 上映時間:116分

 

 

 
メキシコ麻薬カルテルのコカインの運び屋をしていた元園芸家レオ・シャープじいさんの事を、ニューヨーク・タイムズのサム・ドルニックが記した実録記事を元にした映画。レオ・シャープ - Wikipedia
監督主演作としては「グラン・トリノ (2008)」以来10年ぶり、出演作としては「人生の特等席 (2012)」から6年ぶり‥。
ここ何年もアメリカン実録ヒーロー?路線を撮ってたが、自分に通じるものがあると思って主演したのか、それとも「演技指導とか面倒くさいし白人のジジイなら俺がやれば手間が省ける」と思ったんだろうか。きっと後者だと思う。後者の理由で主演してるうちに滲み出る作家性で自然と自分を語る結果になってしまったんだろうと思った。
他の出演者は、アールを追う麻薬取締局(以下麻取)の捜査官はブラッドリー・クーパー。その部下は「アントマン」でお馴染みマイケル・ペーニャ、その上司はローレンス・フィッシュバーンが演じる。アールの妻はウディ・アレン映画によく出てたダイアン・ウィースト。アールを嫌って疎遠になってる娘役はイーストウッドの実の娘アリソン・イーストウッド(「目撃」等ちょいちょい親父の映画出てる、唯一の監督作「レールズ&タイズ(2007)」も一応観たが父親の映画そっくりすぎたので父のスタッフが殆ど撮ったんじゃないかと疑ってる)。その娘でアールの孫娘は「死霊館のシスター」主演のタイッサ・ファーミガ(この子好き、姉は「死霊館」主人公のヴェラ・ファーミガ)。カルテルのボスは検索して今知ったがアンディ・ガルシアだった(この人若い時の印象が強すぎて年取ってからは顔見てもわからん)
ネタバレは多少してるが少なめ

 

 

 

退役軍人アール・ストーン(クリント・イーストウッド)はユリの栽培に情熱を燃やし、そのコミュニケーション能力で園芸界では一目置かれる存在だったが、代償として家族をないがしろにしてたせいで90歳の今、家族との間に埋めがたい溝を抱え、孤独な日々を送っていた。
やがてネット販売に敗北して農園の経営も行き詰まり途方暮れるアール。
そんな時「ドライブするだけで大金がもらえる」仕事を紹介される。
それはメキシコ麻薬カルテルの大量のコカインであることに気づく。
それでも90歳の老白人が疑われることは無く、順風満帆に大金を稼ぐアールじいさん。‥という実話通りの物語。
主人公アールの後悔‥「家族をないがしろにして創作と人の輪の中心になる事しか頭になかった男」というのは、もうメタファー‥だとか何とか言ったら顔真っ赤になるくらい恥ずく感じるほどイーストウッドの人生そのまんまのエッセイ状態。その後悔を実の娘役を演じる実の娘アリソン・イーストウッドに言うし、こうなるともうメタファーではない只の事実が展開されてるだけ!
少し話を戻そう。
とにかくカルテルのコカインを「運び屋」アールじいさんが運ぶ。白人の老人を疑うものは居ない。居たとしてもアールは難なく警官をかわす。また戦争経験があるため、カルテルに銃を向けられても一切恐怖を感じない。肝が座っており、運び屋の任務中でも平気で女と3Pしたりする。
前半は、アールがコカイン運びまくり警官&メキシコギャングをいなしまくり、SEXしまくり(しかもほぼ3P)、稼いだ大金を孫娘にパスしたり友だちの居場所(退役軍人会?)を確保したりボロ車も最新に買い換える。レイシストではなく単純に古い人間だから蔑称を使ってしまうアール。眼の前で、世界で一番恐ろしいメキシコ麻薬カルテル同士が険悪なムードになっても一切気にせずリップクリームとか塗ってやがる。このじじいリラックスしすぎ。やがて、アールに厳しく当たっていたギャングもアールに観せられていく‥。
そんな感じで、前半はギャング映画でいうと成り上がりパートみたいな感じで、痛快じいさんアールの活躍をこれでもかと観れる。正に最高。
だが麻取は確実にアールに近づきつつあり、アールと妻子との仲は一向に改善しない(タイッサ・ファーミガ演じる孫娘だけは仲良くしてくれてるし可愛い)。
中盤、アールは麻取のブラッドリー・クーパーとダイナーで出会い重要な会話をする。そしてアールに優しかったカルテルのボスが下剋上で殺害されて風向きが変わり、アールと疎遠だった妻は不治の病に倒れる。
後半、良くも悪くも今まで生きてきた人生の因果がアールに降りかかる。
そこでアールが取る行動と、その後の行動も共に、非常に地に足の着いた活躍でかっこいい。もし、これが10年以上前の監督主演作だったらドラマチックに死んだりしてただろう。昔はそれで良かったが今そんな事はしない。もしドラマチックに死んでたりしたら大きく減点してた。一切のナルシズムめいた気取りがないのがめちゃくちゃカッコいい。だから僕の中で本作がイーストウッド最高傑作かも。
そして映画の序盤から全部めっちゃ入りやすいし難しいシーンや台詞も皆無なので子供が観ても一発で理解できるし、そういうところもカッコいい。
それでいて撮影はいつも通りカッコいいし、イーストウッドはもう老人だからイーストウッドのカメラ目線パンチはなかったが歯食いしばった漫画チックな表情が懐かしかった。

 

 


イーストウッドは子供の時から好きだが、イーストウッド好きな人は得てしてシネフィルとかいう方が多いせいかの語りの圧が強くポエティックな言い方になりがち、「映画の魔」がどうのこうの‥。そんでイーストウッド好きだからイーストウッド好きのレビューとかも好きでよく読んでたが、そういう人たちの独自のオブセッションから生まれたポエティックなレビューに影響受けたりして‥、それはそれで間違いではないのかもしれないが「そのオブセッションは他人のイーストウッドオブセッションであって、他人の感じたことを俺が自分で感じたと勘違いしてどうする」って10年前くらいに感じて、そんでイーストウッドのこの10年間のリアルアメリカンヒーロー路線映画は主演してないせいかナルシスティックな雰囲気が一切なく「面白いけど何か結構まぬけだな‥」と、「映画の魔」どうのこうののカッコよさげなイーストウッドではなく、飄々としたイーストウッドくそジジイが俺の中で出来上がった。そんな今日この頃、愉快な主人公を演じたこの監督主演作を久々に観て、他人の評価とか関係ない自分だけの楽しいイーストウッドじいさんを初めて捉えられた気がして何だか嬉しかった。
男はともかく「反省しても許せん勝手なジジイや!」と苛立つ御婦人も結構いるという噂も聞くが、僕はそういう感情一切なかったな‥。というかハッキリ言って全然反省しとらん序盤の時点でアール好きだったから、僕もまた勝手な人間なんでしょうね。。
そういえばアールに感化されたギャングが最後出てこなかったのだけ気になる。
とにかく好きな映画。

 

 

 

そんな感じでした

『アメリカン・スナイパー』(2014)/時と共に増していく影が酸みたいに彼を侵す🔫 - gock221B
『ハドソン川の奇跡』(2016)/本作もさらっと凄い映画だった。久々にイーストウッド的ヒーローキャラが出た🛬 - gock221B
『グラン・トリノ』(2008)/久々に観たが面白すぎて15分間くらいに感じた。深い感動と牧歌的な間抜けさ🚙 - gock221B
『15時17分、パリ行き』(2018)/当事者達の素材の味を出しすぎて奇跡体験!アンビリーバボー化🚄 - gock221B
『リチャード・ジュエル』(2019) /正義を行った大柄まじめ系こどおじ一筆啓上、煉獄が見えた👮🏻‍♂️ - gock221B
『クライ・マッチョ』(2021)/本作のテーマには同意できるがそれを全部台詞で言っちゃうのはイーストウッドらしくなかったですわ🐓 - gock221B

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The Mule (2018) - IMDb
www.youtube.com

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