原題:Eurovision Song Contest: The Story of Fire Saga 製作&脚本&主演:ウィル・フェレル 監督:デヴィッド・ドブキン 脚本:アンドリュー・スティール 制作局:Netflix 製作国:アメリカ 配信時間:123分
20日近くも更新が空いてしまった。
あんまり面白くないジョジョ8部漫画『ジョジョリオン』の最新号を惰性で読んでたら俺が好きな石仮面やエンヤ婆やエルメェスなどが出てきて10年ぶりくらいにジョジョ熱が来たので、ジョジョのアニメを観返してて映画観てなくて更新できなかった。ジョジョの感想は長くなりそうだしジョジョなんて人気漫画の感想書いたら大量にアクセス来て映画ブログやる気が失せそうだから今はやめとく。以前『幽☆遊☆白書 』の感想書いたら普段の数千倍アクセスがあってアンダーマイニング効果(好きでしてた事に報酬を与えられる事でやる気がなくなる現象)に似た感情が起こってこのブログの存在意義が揺らいだ事があったので、アクセスが多くなりそうな有名なコンテンツの事はなるべく書かないようにしてる。僕は「映画観た感想や書きたい好きな事だけブログに書きたい」という気持ちを死ぬまで継続させたいのでアンダーマイニング効果が起きないようアフィリエイトもしていない(そう言いつついつか始めたら悪い)。
そんな先日、『ブラック・パンサー』でお馴染みのチャドウィック・ボーズマン氏が大腸がんで亡くなるという突然の訃報(俺より若いのに……)。とても哀しいので昨夜は氏の作品を幾つか観てたが、より哀しくなったので今日は逆に楽しい映画を観ようと、このウィル・フェレルのコメディを観た。
僕が30代を過ごしてた2000年代の映画ライフでは、ジャド・アパトー一派やアダム・マッケイとかウィル・フェレルやジャック・ブラックのコメディやラブコメをめっちゃ観てたが2010年代に観なくなった。何故かと言うとそれらコメディの主人公たちがドラッグできまってたり酔っ払って無茶したりSEXがしたりウンコもらしたりしてるのは楽しかったが、それは彼らが30代のキャラを演じてたからで、どう観ても40代のキャラがそんな無茶してたり無職だったりすると痛々しくて観てられないだけだから2010年代に入って、それ系コメディめっきり観なくなった。決定的だったのがジャド・アパトー制作コメディ『40歳からの家族ケーカク』(2012)で、これは今ではアントマン役で日本でも知られるようになったポール・ラッド主演で「40過ぎて妻子と上手くやってくか?」というコメディなのだが、急にガクッと楽しくなくなったし痛々しい内容だったので「もうジャド・アパトーはいいか……」と思って以降観なくなった。だから最近のアパトー作品は観てない、ひょっとして良くなってるかも。
そんな感じでコメディもウィル・フェレルも久しぶりだし、ヒロインも僕が好きなレイチェル・マクアダムスだし邦題もめっちゃ面白そう。
ネタバレどうこうって内容じゃないけど一応ネタバレ注意、と書いておきます。
1974年、アイスランドの漁村レイキャビク。母を亡くして落ち込む主人公の少年ラースス、そして隣の家の父を亡くした少女シグリットの仲良し2人はTVで〈ユーロビジョン歌合戦〉を観て元気を取り戻す(このヒロイン幼女時代を演じる子役がめっちゃ可愛い)。
そして現在。アラフィフになった男性主人公ラース(ウィル・フェレル)と女性主人公シグリット(レイチェル・マクアダムス)は音楽ユニット〈ファイア・サーガ〉を結成し曲を作ったり町のパブで演奏しながらユーロビジョン歌合戦にアイスランド代表として出場する事を夢見ていた。冒頭の1974年って俺が生まれた年だから自分より5~6歳くらい年上っぽい主人公たちの年齢がすぐわかった。僕の姉くらいか。
成長した2人の脳内で再生されているMVが流れる……。2人はアバとかが好きらしく歌い上げる感じの楽曲、しかし衣装は北欧ファンタジー風。↓
『ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語〜』劇中歌「ボルケーノ・マン」 - Netflix - YOUTUBE
ちょっと待って
『マイティ・ソー』のようなバイキング風コスで歌い上げるラースとシグリット。
インパクトありすぎる。ありすぎるので、この冒頭で「ちょっと待てぃ!」ボタン押して一時停止、そして「このユーロビジョン歌合戦って実在してそうだな」と検索したら当然あった。
ユーロビジョン・ソング・コンテスト - Wikipedia
Eurovision Song Contest - YouTube
なんと1~6億人ものヨーロッパ人が視聴している、ヨーロッパ中心に世界各国が予選を行って決戦を争うオリンピックみたいに巨大な歌合戦らしい!
何故こんな大規模な大会を我々は知らなかったのか?!
実在の大会動画や、本作の歌唱シーンを見るかぎり歌唱力ある歌手が高らかに歌い上げている。そして衣装はセクシー、天使、バイキング、ストリート、サーカス、悪魔……まるでハロウィン・コスプレのように多種多様で一貫性がない。共通してるのは悪趣味な格好した奴が高すぎる歌唱力で歌い上げまくってるという一点のみ。
この大会から大物アーティストになった有名歌手はセリーヌ・ディオンだと言う。
ここまで聞くと何となく掴めてきた。この大会は悪い言い方すると「ダサい」、クールじゃないのだ。クールじゃないのが一番の特徴。本作内でも、このネット全盛の時代で大会を観てるのはTVで観てる中高年~老人のみ。ファイア・サーガのドラムしてる小学生男子も「僕はユーロビジョン歌合戦に出場できなくていいよ、あれ出てるのバカばっかだし恥ずかしい」と言ってたし。多分だけどこれは地方のど自慢大会のゴージャス版みたいな感じだろう。間違ってもビリー・アイリッシュは出場しなさそうなイベント。……いや、ビリーはむしろ「いいじゃんユーロビジョン歌合戦。何がダメなの?楽しそうじゃん」と素直に参加しそうな性格だな。……まぁビリーは置いといてエッジの立ったミュージシャンが出場しなさそうな大会と言いたかった。
そして日本にクールな音楽を発信する国……アメリカと韓国が参加してない。
他にクールな音楽を発信しがちなイギリスやヨーロッパ諸国などもこの大会に参加してるが恐らく「クールな音楽」としてメディアで紹介されるようなミュージシャンは参加してなさげ。参加してるとしたらセリーヌ・ディオンみたいに中年以上の庶民が聴く演歌歌手だけだろう、多分。
そして我々が受信する音楽メディアやサブカル人は基本「若者や高感度高い人が好むクールな音楽情報」だけを発信する。数億人が視聴していながら我々がユーロビジョンを知らない理由がこれでわかったな。この一時停止したままの冒頭、僕はすっかりこの歌合戦に魅せられてしまった。
そう言われてみれば自分が普段良いと思って聴く音楽もクールな音楽が多い、あとミニマルテクノなどミニマルなもの(まぁミニマルテクノはヨーロッパでは庶民が聴いてるっぽいけど)。クールじゃない音楽についてあまり考えてなかった。しかしユーロビジョンに参加してる人たち楽しそうでいい。こういった頭から抜け落ちてた、しかし巨大な文化を突きつけられるとハッとする。我々の小さいコミュニティ外に広く広がるアウタースペース外宇宙を感じさせるからだ。それだけでも本作には価値があったな?
そんな冒頭1分だった。
話を元に戻そう。
ウィル・フェレル演じる主人公ラース。彼の父親は、面白い顔のラースとはうって変わったイケメンで男らしく厳格な漁師(ピアース・ブロスナン)。息子の音楽活動をバカにして早く就職して一人暮らししろ!と言っている。ラースは音楽をやっていきたいとだけ考えてる幼児のままアラフィフになったような純粋で優しい男。世間にはただわがままを通したいだけで「少年のまま大きくなったような大人」を自称するアホがいっぱいいるが、ラリーは本物だ。「”良い意味で”少年のまま大きくなったような大人」。
ラリーは無職っぽいけど大柄の駐禁切ってたので交通整理してるフリーターかも?
レイチェル・マクアダムス演じる相棒シグレットは小学校の女性教員。美人なので町じゅうからモテてるがシグリットの心は幼少期からずっとラースのもの。笑いのノリもラースと同じ。ラースにない点として妖精エルフを信じており海岸にエルフの小さい家を作ってお参りしてるメルヘン女性。
2人は互いを想っているがラースの「バンド内で恋愛すると崩壊する」というストイックな考えによって、音楽で成功して自己実現するまでは恋愛とか考えないようにバンドメンバー兼親友のまま逡巡している。
「幼少期からアラフィフまでずっと一緒なのにそんなのあり得るかい!」という感じもするが、そういうのはスルーして鑑賞した方がいい。何故なら演じているウィル・フェレルとレイチェル・マクアダムスが中年だから主人公たちもアラフィフのキャラになってるだけで、本作の内容は主人公たちが高校生でも大人でも全く構わないストーリーになってるから。だから本作の主人公たちの年齢についてリアルに考える必要はない。
ファイア・サーガは普段、近所の漁村のパブでライブしている。そこしかライブするところがないからだ。
有名曲のカバーばかりリクエストされてる中たまにオリジナルソング歌おうとしたらブーイングかまされる。一日中発狂してる大柄常連客が「だめだ!『ヤォヤォ・ディンドン』歌え!」と絶叫する。『ヤォヤォ・ディンドン』が何なのかは知らん。きっとアイスランドの民謡だろう。
演奏が終わり、ファイアサーガの2人は休憩しながら「くそっ!クソみたいな町だ。全然オリジナル曲やらせてくれん!もう『ヤォヤォ・ディンドン』なんかやりたくない!」とボヤいてるとさっきの大柄が店から飛び出してくる。
大柄「おい!何してる!?早く『ヤォヤォ・ディンドン』歌え!」
ラース「え……、さっき歌ったばっかやろ?」
大柄「だったら、もう一回『ヤォヤォ・ディンドン』歌え!何度でも何度でも死ぬまで聴きたいいいい!」
このレイキャビクの日差しに頭をやられた大柄は一日中ブチギレている。
そもそもアイスランドの印象がない。裕木奈江が出演したホラー映画『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』(2009)しか知らん。そもそもフィンランドやスウェーデンとの区別もあまりついてない。
区別ついてないのに言うのも何だが俺は映画でしか知らないそれらの国に漠然とした憧れを持っている。福祉が充実して豊かな自然と善人ばかり、でも若者はその反動で刺激に飢えててヘヴィメタルやブラックメタルやったりSEXしまくりがち。白すぎる白人が多い……そんな印象。平和な田舎は若者にとっては辛いので若者の気持ちはわかるが年寄りが住むには最高に快適そうなイメージ。あくまでイメージだが。アニメ観て日本に憧れる欧米の非リア充みたいなもんなので、この感情は主と共にレイキャビクの冷たい土の中に寝かせておこう。
そんで映画に出てくるこれらの国の自然観てたら凄いSEXしたくなるのは俺だけでしょうか?映画内でのそれらの国ではSEXと飲み行く事とメタル以外娯楽がねえ!って印象のせいか。さっきの大柄も「ライブ?行くよ!他に娯楽がねえからな!」と激昂してたし。美しい自然の中ぽつんと建った一軒家のありとあらゆる部屋または雑木林で立ったままSEXしたら多分いいだろう。壁に押し付けて。しっかりと壁にだ!
ドラム担当の近所の小学生男子は子供だから出場できないのでラリーとシグリット2人だけの〈ファイア・サーガ〉は〈ユーロビジョン歌合戦〉アイスランド代表となるべくアイスランド予選に出場。
だが予選には優勝候補の「アイスランド最高のミュージシャンたち」が参加しており、本番に弱いファイア・サーガはステージで失敗し落選。
失意のラリーを海岸で慰めるシグリット。すると本大会出場予定のアイスランド代表の最高のミュージシャンを乗せて船上パーティ中だった豪華客船が突如、大爆発!
シグリット「アイスランド最高のミュージシャンたち、みんな死んじゃったぁ!」
ラリー「やった!ユーロビジョンに出れる!」
このアイスランド最高のミュージシャンたちが全身バラバラにゴミみたいに爆死した場面笑った。
かくしてアイスランドに唯一残ったミュージシャン……ファイア・サーガは繰り上げでユーロビジョン本大会へと駒を進めた。
こんな感じで、ラスト以外の重要な場面は全部ウィル・フェレルが書いたギャグ漫画のような展開で進んでいき最高。
ユーロビジョン大会の地に赴いたラリーとシグリット。生まれて初めてアイスランド外に出たらしき2人は観光地やクラブで大遊び。この2人が本当に楽しそうで可愛い。いつまでも2人で幸せで居てほしくなる。2人は絶滅の危機に瀕しているセグウェイにも乗ってパワーアップ!グジュグジュル潰して。
大遊びした後、二人っきりで夜景を観てたシグリットはラリーへの想いが溢れそうになってキスしようとするがラリーは「いや!集中できなくなるから優勝するまで恋愛はお預けにしよう」と言い、渋々従うシグリット。
そんなシグリットに近寄るイケメン。
このイケメンは本大会の優勝候補の一人である出場者、ロシアのデカチン&ヤリチン大金持ちイケメン歌手(ダン・スティーヴンス)、彼はシグリットにアプローチをかける。ラリーへの一途な思いは譲らないものの、ストイックすぎるラリーに比べて優しいイケメンに乙女心が揺れ動くシグリット。
酔ってイケメンと一夜を共にしたシグリット。だが何もエッチな事はされてなかった。
イケメンは彼女をラリーから奪って歌のパートナーにしたがってるのだが、それは彼女を食い物にしようというのではなく、本当にシグリットを気遣ってサポートもして正々堂々とパートナーにしようとする描写が良かった。まぁこれには別の理由もあったのだが、とにかくラブコメでただただ悪者にするためだけの恋のライバルとか出しても今どきはしょうもないもんね。
同時にラリーに言い寄るセクシー美人歌手も出てきて、この四角関係が元でラリーとシグリットは大喧嘩。だが互いに誤解を解いて仲直りし決勝戦に挑む!
普通のエンタメ・アメリカ映画ならここがクライマックス。だが本作はこのアメリカ映画定番の「死→再生」をもう一回繰り返す。本作が長いのはこのせい。
本番でファイア・サーガはいつものようなハプニングを起こす。ここで空中分解してラリーはアイスランドに帰国。だが不仲だった父との相互理解を経てついでにアイスランドで暗躍していた悪者をエルフに殺してもらいラリーは大会決勝戦に舞い戻り祖国でラリーをバカにしてた人たちも固唾を呑んでファイア・サーガを応援する中、真のハッピーエンドを迎える……。
ちなみにラストカットは、そうまでして栄光を勝ち取ったファイア・サーガの凱旋ライブ。
いつもの常連の大柄は叫ぶ「ヤォヤォ・ディンドン歌ええええ!」
なんと優勝しても今までと全く変わってなかった。このヤォヤォ・ディンドン大柄は同じ台詞を繰り返すRPGの村人モブのように一生ヤォヤォ・ディンドンを要求するためだけに生きている、そんなレイキャビクのクリーチャーなのかも。
ちなみにこのページの前半で「この大会はクールな音楽やってるアメリカ&韓国が参加してないから俺らも知らんのだろうな」みたいなこと書いたが、本編中に両者とも出てくる。韓国人は「ファイア・サーガの人間味溢れる曲をクールにし過ぎて魅力を落とす音楽P」として、そしてラリーに何度も遭遇するアメリカ人大学生男女も何度も出てくる。ラリーはアメリカ人が嫌いらしく、彼ら彼女らに「バカのアメリカ人は壁でも作っとれ!」「観光地に来てもスターバックスに行くアホども!お前らはスタバでも行っとれ!」などと罵詈雑言を浴びせるがアメリカ女子大生は「えっ!スタバあるの?どこ?」と顔を輝かせる。一進一退の攻防。
ネットでの評判は2時間超えの長い本編が仇となり「普通」「平凡」という評価が多いようだ。だが俺は最初から最後まで楽しめたし、最近アメリカエンタメ映画どれも同じだな……と映画鑑賞率が下がってたのでクライマックスを2回繰り返してまでラリーの問題に向き合う本作に好感を持った。何よりもユーロビジョン歌合戦やアイスランドへの興味も高まったし主人公2人の純粋さに暖かい気持ちになった。
これは久々にかなり良作コメディだと思ったワ。
これ読んで興味を持った人は観てみてください。俺を信用して俺を!
そんな感じでした
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