原題:Love,Death + Robot (Season.2) 企画&製作総指揮:デヴィッド・フィンチャー。ティム・ミラー。他 総監督:ジェニファー・ユー・ネルソン 製作国:アメリカ 制作局:Netflix 配信時間:各話10数分、全8話、全長105分
ティム・ミラーとデヴィッド・フィンチャーが製作総指揮として制作するNetflixオリジナルのアニメシリーズ。
元は、カナダのSFアニメ映画『ヘビーメタル』(1981)のリブート作品として2008年に制作が始まったが製作者が代わりながら紆余曲折の末、映画じゃなくてTV作品、そして『ラブ、デス&ロボット』というタイトルのNetflix作品として2019年に全18話で公開された……というのは今、Wikipedia見て知った事をただ書き写してるだけなので恐縮ですが……僕は好きな映像作家やアーティストや原作者が関わってるし海外アニメ自体好きという事もあり『ラブ、デス&ロボット』のシーズン1が凄く好きだったんですが「映画『ヘビーメタル』(1981)のリブート作品を想定していた」というのは今、知って、それは自分が気に入ったわけだなと思いました。『ヘビーメタル』(1981)は、フランスのコミック誌”Métal Hurlant”の映画化で7つの短編、エロと暴力とホラーとロボットが詰まったオムニバスのアニメ映画で……一言でいうと自分より上の世代の海外のオタクが好きそうなものが詰まった感じの作品で、僕は20代の時に観て大好きだったので(多分、僕は一人っ子なので年上のオタクのお兄ちゃんと語りたかった欲求が解消されるから一世代上のオタクっぽいものが好きだったんだろう)、『ラブ、デス&ロボット』シーズン1を観て「なんかヘビーメタルみたいでいいな」と思ってたんですが、実質的に『ヘビーメタル』の現代版だと知って納得しました。『ヘビーメタル』の話はまた今度にするとして、ラブデス新シーズンが2年ぶりに来た。
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第1話『自動カスタマーサービス』 ★
老人たちはハイテクを駆使した福祉施設で生活を送っていたが、家電が狂って人間に反旗を翻して主人公の愛犬家の老婆が対抗する、……というディフォルメされた絵柄のコメディSF。特に文句があるわけではないが「ヨボヨボのおばあちゃんが家電とターミネーターみたいに死闘を繰り広げて何だか可笑しいね」って感じの妙に古臭い……30年前くらいのユーモアだと感じたし、そんなおばあちゃんの話が一発目というのはどうか、もっと派手な話を最初に持ってくるべきじゃないだろうか。原作はSF小説家のジョン・スコルジー……だそうだが僕は読んでないのでよく知らない。
第2話『氷』 ★★★★★
近未来、殆どの人類は自らの肉体を改造しており、改造してない人々は疎外感を抱えていた。主人公のアジア系青年もその一人。主人公は、身体改造している弟が参加しようとしている凍った海を走り抜けるレースに挑む。……という話。
主人公兄弟が参加するレースは、地域の不良たちが行っていて上手くやれば彼ら彼女らの仲間入りできる感じのイニシエーション(通過儀礼)的なもの。氷の上を全力疾走で走り抜けるだけだが氷の下に潜む電気をまとった巨大なクジラが氷をぶち破ってくるので速度が足りなかったり運が悪ければ絶命してしまう(というか死の恐怖がなければ、ただ走るだけなんて面白くないので当然とも言える)。レースを行う直前に恐怖を麻痺させるためにか何かスーパー大麻みたいなものを吸う、ドラッグもまた通過儀礼……。
身体改造していないため、このコロニーではマイノリティである主人公が、彼ら彼女ら不良たちに溶け込もうと奮闘し、レースを通じてあまり仲良くなかった弟とも打ち解けようとする話。なんか自分の10代とか20代前半にこういう通過儀礼的な事ってよくあったなと懐かしくなった。クリアしたから健在だが失敗すれば傷を負い部屋の隅で膝を抱えるしかない。だが不良との遊びに限らず現代社会は良くも悪くもこういうものではだよな。
……という物語は好きなものだしアニメもアクション主体で好みだが、やはり監督&アートを務める、いま世界で最もカッコいい絵柄を描くRobert Valleyのアートがカッコ良すぎる、というのが一番の売りだと思う。彼の描くアジア人はアジアンの特徴を残したままカッコよかった。いつもストーリーは割と普通なんだがビジュアルが鮮烈だし今回のシーズンでは貴重な2Dアニメでもある、不良少年がチキンレースして友情を深めるという爽やかさもあるので「何で、こっちを第1話にしなかったの」と激しく思った。
Robert Valleyは、二次元キャラによるバンド〈ゴリラズ〉のキャラデザを担当したり映画にもなったコミック『タンク・ガール』を描いたジェイミー・ヒューレットに影響を受けたらしい。そう言われたら絵柄そっくりだな。ジェイミーも好きだし。今回みたいに東洋人が出たらゴリラズのヌードルによく似てたしわかりやすい。
Robert Valley - IMDb Robert Valley - Vimeo
第3話『ポップ隊』 ★★
富裕層に資源が管理され、未登録の子供は国家に禁じられ処分される近未来……要は「子供が狩られる『ブレード・ランナー』」。貧困層ほど子供を産みやすいものなので、貧乏人ほど苦しめられ金持ちは贅沢し放題……という話。現実もこんな感じだ。
第4話『荒野のスノー』 ★★★
灼熱の惑星で"スノー"と呼ばれるアルビノ男性。彼は不死身であるため様々な賞金稼ぎに狙われていた。……要は『スター・ウォーズ』でハン・ソロが酒場でバウンティハンターを返り討ちにするくだりを一本の作品にしたようなもの。スノーとは違う理由で不死身である女性ヒラルドに命を救われ敵を全滅させハッピーエンド。企画の元になった『ヘビーメタル』で、よくありがちな、暴力&SEX&メカでカッコいい女性と結ばれてハッピーエンド……という実に『ヘビーメタル』的な物語。非常に都合が良くアラフォー以上の中年男性にとっては懐かしい感じのストーリー。短編だしたまにはいいだろう。……逆に言うと元の『ヘビーメタル』は勿論そうだったんだが『ラブ、デス&ロボット』も男のファンタジーが多すぎて女性のファンタジーが足りてないなと思った。まぁ最初から男性向け作品なのかもしれないが女性に向けたファンタジーが増えるのも悪くない気もする。酒場で出る酒のグラスも毒を盛られるのを防ぐためか店員が目の前でグラスの蓋の暗証番号を押して外すという細かい設定が良かった。昔、六本木のクラブで一服盛られて財布盗られた事があったし有名大学のサークルでも似た事件が多いから現実世界で採用してもいいかも。
第5話『草むらに潜むもの』 ★★★★
列車で旅していた旅行者が、人里離れた場所で列車が停まった時、草むらに入って顔のないバケモノに襲撃される……というスティーヴン・キングの『イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路-』っぽい話。原作のジョー・R・ランズデールは、僕も20代の時に『ボトムズ』『ダークライン』やハップ&レナードシリーズなど、翻訳されてるもの殆ど読んで好きだった作家だったし本作も良かった。アメリカの草むらホラーは、人がすっぽり隠れる草むらが多いアメリカならではのホラーだね。慣れきった機関士が良い感じ。そのまま殺されるよりこのラストの方が印象深い。
第6話『聖夜の来客』 ★★★
クリスマスイブの夜。興奮で眠れずにいた2人の幼い姉弟。そこに現れたサンタクロース……だと思われるギーガー風のモンスター。くそビビりまくる姉弟はプレゼントを貰える良い子なのか?そもそも喰われないのか?という「サンタさん実はモンスターだった?」系のお話。ほのぼのした可愛らしい話だが「良い子じゃなければブッ殺されてたんだろうな多分」という想像の余地を残してるところが良い話。
第7話『避難シェルター』 ★★
荒れ果てた惑星に不時着した戦闘機パイロット(マイケル・B・ジョーダン)。シェルターを見つけた彼は、そこでやり過ごそうとするが狂ったシェルターの設備が襲いかかってくる……という、この話もまた、よくある「機械の反乱」もの。おばあちゃんが家電と闘う第1話を劇画タッチにした話というか、でも熱演するマイケル・B・ジョーダンはかなり痛い目に遭っててバイオレンス成分がある。『世界の中心で愛を叫んだけもの』でお馴染みのSF作家ハーラン・エリスン原作らしい。
第8話『おぼれた巨人』 ★★★★★
ティム・ミラーがJ・G・バラードの短編小説を映像化したものらしい。
嵐の去った後の浜辺に巨大な鯨くらいデカい全裸の巨人男性の死体が打ち上げられる。人々は巨人を見ようと押し掛け、記念撮影したり上に登って遊んだりする。主人公の中年男性は巨人や集まる人々、そして人々が巨人に飽きる様子などを記録する、という淡々とした話。対象が巨人だという事以外は物凄く穏やかな話。主人公が、人々に対してとか巨人が腐敗していく様子など、何が起きても肯定的な感想を持って微笑んで眺めてる様子が静かに楽しい。最後にオチっぽい面白さで締めくくるが、淡々とした静かさが良かったのでどうせなら最後まで何もない方が良かった気がする。
短編である事やフォトリアル3DCGである事などが全てこの作品の後押しをしており、シーズン1&2合わせても1、2を争う完成度の高さ。
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そんな感じだった。とりたてて「そう来たかぁ」と驚くような話はないし面白すぎる 話があるわけでもないが、しみじみとした良さがあった。元の『ヘビーメタル』からしてそんな感じだしね、ただ現代版『ヘビーメタル』だと思うと、エロスが少ない気もするが時代の流れか。予告編を観て「こんな感じかな」と想像した通りの内容で、3DCGアニメの技術以外にこれといって優れたところはないので予告を観て「観たいかも」と思わない人や「日本のアニメだけ最高!洋物は苦手」って人は観ても面白くないと思う。僕は好きだけど。
一番良かったのはRobert Valley監督の第2話『氷』と第8話『おぼれた巨人』の2つで、三位が第5話『草むらに潜むもの』かな。
作品的には『おぼれた巨人』がぶっちぎりなんだが、『氷』はやはりRobert Valleyのカッコ良すぎる絵と優れた構図と貴重な2Dアニメ枠という部分で俺ポイントを稼いだ。個人的な好みだとやはりRobert Valleyみたいに一発で描いた人が誰だかわかる特徴的なデザインの方が良い。
あまりに実写的な、フォトリアル3DCG作品が多かったが「別にそれが悪いわけじゃないが、ここまで実写みたいな3DCGなら、実写で撮った方が良くない?」と感じてしまう。そのフォトリアルな3DCGで普通っぽいSFアクションが展開されると「ゲームのカットシーンみたいだな」と感じて凡庸に感じてしまう。でも『おぼれた巨人』の場合、リアルであればあるだけ面白さに繋がる作品だったからフォトリアルでやった意義があったなと感じた。
シーズン1は全18話だったが今回はたったの8話だったので一気に全部観れた。全話一気に観ても長くない長編映画くらいしかないし。その代わり来年2022年には今回のシーズン2同様全8話からなるシーズン3の公開が予定されてるそうなので溜めて出すんじゃなく毎年コンスタントに出す流れになったようだ。シーズン1では2Dアニメや実写が混じった作品もあったのだが今回は殆ど3DCG作品だった。それとシーズン1では『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)でコンセプトアートを描いたアニメーターAlberto Mielgo氏の『目撃者』が一番好きだったのだが今回はAlberto氏が不参加で残念。また2Dアニメが無くフォトリアルな3DCGアニメが多すぎた。シーズン1から話数が半分になってるしバランス悪かった、制作陣が「シーズン5くらいまで余裕で続けられるよ」と言ってるので推測だが恐らく数十話くらい一気に制作GOして先にできた8話をとりま配信したんちゃうやろか?お昼の定食屋の様に……。似たような話が被ったりしてるし、ミュージシャンが熟考してアルバムの曲順を考えてる感じはしない。しかし全体的なディレクションを詰めるともっと間隔が空いてしまうのかもしれないし別にこれでいい気もする。また来年。
そんな感じでした
〈ティム・ミラー〉
「デッドプール (2016)」一切リアクションしない中学生男子みたいなヴィラン以外は好き❌ - gock221B
『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)/意外と良かった!新キャラ良かったのでシュワとサラ・コナーはむしろ居なくてよかった💀 - gock221B
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ラブ、デス&ロボット | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
Love, Death & Robots (TV Series 2019– ) - IMDb