gock221B

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『モンタナの目撃者』(2021)/「ウインド・リバー」同様、異常に小物で追い詰められた敵の描写が最高🔥


原題:Those Who Wish Me Dead 監督&脚本&制作:テイラー・シェリダン 原作&脚本:マイケル・コリータ『Those Who Wish Me Dead』 脚本:チャールズ・リーヴィット 製作国:アメリカ 上映時間:100分

 

 

 

『ボーダーライン』(2015)『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(2018)の脚本や、監督した『ウインド・リバー』(2017)で容赦ないバイオレンス描写や西部劇を思わせるアメリカンスピリット的なテイストで一躍売れっ子になったテイラー・シェリダンの新監督作。
それと、2000年代に完全にハリウッド女優のNO1女性俳優になって以降、ここ10年以上、慈善活動や映画制作ばかりしてもう映画は『マレフィセント』などのバイト感覚でしか映画に出ないと思ってたアンジェリーナ・ジョリーが、こないだのMCU作品『エターナルズ』(2021)同様に、急に以前のカリスマ的なヒーロー主演活動を再開したね。
想像だけど10年以上、第一線から離れて知名度やカリスマが下がってきたのでプロップスをまた上げようと思ったのかも?
大ヒットはしなかったが評価は高かったみたい。日本では……まぁ無風でしたよね。地味なので僕も配信来るまでスルーしてました。
ネタバレあり

 

 

 

山脈が連なるモンタナ州森林消防隊員ハンナアンジェリーナ・ジョリー)は、山火事から子供たちを救えなかった自責の念で心に深い傷を負い、山頂の見張り塔の勤務していた。
一方、街から逃亡中の法廷会計士の男が森で殺し屋に襲撃される。陰謀に巻き込まれた会計士は、ハンナの友人でもあるキャンプ場を営んでいる義弟ソーヤー夫婦ジョン・バーンサルメディナ・センゴア)の元に逃げようとして移動していたところを暗殺者に撃たれたのだ。会計士は幼い息子コナーに「これを信頼できる人に渡して欲しい」と手紙を渡して息絶える。
コナーを保護したハンナ、殺害された会計士の義弟夫婦は、生き残ったコナーを抹殺するため追ってきた殺し屋ブラックウェル兄弟エイダン・ギレンニコラス・ホルト)からコナーを護る。彼らは殺し屋と、彼らが放った山火事に挟み撃ちにされるが――

要するに、アンジー演じる森林消防隊員ハンナが山火事(=人生)に立ち向かう事にトラウマを持ってしまい山の見張り(=引きこもり)になってしまった。それを、克服するという挫折した中年が再起するというドラマ……かな?
ハンナが護る少年、その父が狙われてる理由は最後までよくわからん。検事が暗殺されて次に会計士が狙われ……その会計士が「パパは正しいことをしたんだ」と真っ直ぐな目で言ってたので恐らく大物の政治家もしくは大物の犯罪者……まぁ同じことか。とにかく会計士はそういった「The Man(大物)」を告発してしまったがために殺された。
生き残った少年を暗殺者からトラウマから再起しようとする中年女性が護る……という『グロリア』(1980)とか『エイリアン2』(1986)みたいな母性アクション映画というのが本作なのかなと思った。
前作『ウインド・リバー』(2017)は、閉塞した「インディアン居留地」もしくはそれと似た状況の問題を浮き彫りにしたかった映画だったが、本作で言いたい「テーマ」的な事はよくわからず、漠然とした「善人はアメリカそのものに消される」ということや、後はせいぜい山火事に絡めた中年の再起?そういったこじんまりとした事が言いたい事くらいしか感じませんでした。
だからといってピンとこなかったわけでなく、この監督らしい長所とかは発揮されてたので楽しめましたけども。

 

 

 

そんな感じでボンヤリと本作を観てた僕ですが本作の場合、作品のテーマ?みたいな事や主人公達よりも、会計士父子の抹殺を命じられた殺し屋兄弟、この悪役に視線が吸い寄せられました。
前述の通り、会計士が告発したのは何なのかよくわからん。まぁ多分、政治家の汚職や大物犯罪者の悪事を捨て身で暴いて報復されてるのだろうという事くらいしかよくわからない。
殺し屋兄弟は2人だけで暗殺にあたっている。上の者に「人員が足りない」と言っても「2人で最後まで何とかやり遂げろ」としか言われない。
2人しか居ないのだから、殺し屋兄弟は会計士を暗殺してたら村人の女性に見られる、「顔を見られた」という事でその女性を銃殺。そして少年を探すにあたって邪魔が入らないように大規模な山火事を起こす。まるで陰謀論者の妄想のような行き当たりばったりの無茶苦茶さ。
殺し屋兄弟は会計士が身を寄せようとしていた義弟(ジョン・バーンサル)の家を襲うが、その妻の反撃に遭い致命傷を追う。そしてその女には逃げられる。次に出会ったのは女の夫である会計士の義弟(ジョン・バーンサル)、「女を人質に取っている」と嘘をつきコナー少年探しを彼に命じる。だが会計士の義弟が言うことを聞くはずもなく何度も反撃され、やがて会計士の義弟の妻や主人公ハンナなど女性たちの反撃に遭いブチ殺される……。
この殺し屋兄弟が、あまりにも行き当たりばったりすぎる。そこがこの殺し屋兄弟のリアリティある人間臭さを感じさせて目が話せなくなった。
前作『ウインド・リバー』(2017)で善人夫婦をレイプして殺した犯人たちが、悪人ではあるがモンスターではなく「我々が一歩足を踏み外しただけの人間」として描かれてて「つまり我々もボタンの掛け違い一つでどこまでも醜悪になれる」という胸糞さを提示してたのと似ている。殺し屋兄弟は大物に「2人で明日までに全て始末しろ」と無茶を言われて「子供を殺そう、それをやりやすくために山脈に放火するか……」という無茶苦茶な行動に追い込まれている。殺し屋兄弟は任務を除外しても二人とも明らかにクズとして描かれてるので被害者などと擁護するつもりはないが、もともとクズだった殺し屋兄弟が上の者(アメリカそのもの)によって、よりどうしようもないクズに変貌されたんだろうな、という、そういう哀れな小物感は感じた。それでいて「暗号を喋ってる!」と間髪入れず撃ち殺そうとしたり普通のエンタメ映画よりも殺しの判断が早いのが凄く良かった。あと任務だけじゃなく「あの女は俺に反撃しようとしたから、あの女だけは俺にブッ殺させてくれ!」などという個人的な動機も見せるし、この監督、犯罪者を描くのが本当に上手いなと思った。正義の主人公でなく小物犯罪者を主人公にしたほうが向いてる気がする。
これは前作『ウインド・リバー』(2017)と共通してた。と言えなくもない。
で、アンジー演じる主人公は昔の彼女が演じてたような無茶苦茶な強さのヒーローではなく「腕力では男にとても勝てないが、母性と勇気と知恵で悪に立ち向かう」という、昔より現実的なヒーローとして描かれていた。
そしてジョン・バーンサルは前作『ウインド・リバー』(2017)同様に、正義感あって活躍するが悪の前に亡くなってしまう役だった。ジョン・バーンサルの代わりに妊娠した彼の妻が殺し屋達に立ち向かう。強い女性の活躍は今っぽいが、それよりも善人ジョン・バーンサルが今回もまた戦死してしまうところに、監督の何か言いたげな雰囲気を感じた。……しかもジョン・バーンサルは、銃撃戦とかじゃなく「山火事を妻と共に生きのびた……と思ったら、劇中で負ってたよくわからん負傷が元で知らん間に死んでた」という死に方だったからね。最初から善行して死ぬことが運命づけられてる感じ。よくわからんが彼のキャラはアメリカの一般の白人男性全体を象徴してるような気がした。何もかもアメリカ社会と結びつけて観る必要はないが……この監督なのでそう観てしまいがち。
そして前作『ウインド・リバー』(2017)で、主人公に殺される最悪のクズを演じてた俳優は、本作では主人公をラストで救助しに来る「良い森林消防隊員」として出てきてたので「善人に転生したようだ」と思った。
特別に「良い!」って感じの傑作ではないし地味だが、最後までじっくり観させられる……クリント・イーストウッド作品で言うと『トゥルー・クライム』(1999)とか『目撃』(1997)みたいな映画だと思った。

 

 

そんな感じでした

テイラー・シェリダン監督作〉
『BOUND9 バウンド9』(2011)/ウインド・リバーの監督デビュー作のトーチャーポルノデスゲーム✂ - gock221B
『ウインド・リバー』(2017)/現実にある地獄の土地を舞台にした現代西部劇。今年一番面白かったかも‥⛄ - gock221B

 

テイラー・シェリダン脚本の映画〉
『ボーダーライン』(2015)/巨大な暴力を目の前にした時の無力感と不思議な快感、同時に我にあり💀 - gock221B
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(2018)/カルテルよりアレハンドロとアメリカの汚さにクローズアップしてて前作より好き💀 - gock221B

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Those Who Wish Me Dead (2021) - IMDb

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