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『プレデター:ザ・プレイ』(2022)/一作目を踏襲した展開に、ガラスの天井に立ち向かう女性要素や三すくみのハンターという要素を盛り込んだ佳作👩🏽


原題:Prey 監督:ダン・トラクテンバーグ 脚本:パトリック・アイソン キャラクター創造:ジェームズ・E・トーマス、ジョン・C・トーマス 配信サービス::Disney+  製作国:アメリカ 上映時間:99分 シリーズ:『プレデター』シリーズ第5作目

 


このシリーズ、一作目『プレデター』(1987)は勿論、最高だったが以降は「別につまらないわけではないが特に凄く良かったという「ほどほど」程度の面白さシリーズ。
一作目は「ジャングルでのガンアクション映画……と思いきや途中から急に異星人との死闘になる!」という新鮮な構成や、「独自のルールやハイテク装備を持つハンター異星人”プレデター”」というオリジナリティ溢れるキャラクター、そして「当時全盛期だった筋肉アクションスター、アーノルド・シュワルツェネッガー vs.ハイテク装備の異星人」と、売りが色々あった。後続作品は舞台を変えたりエイリアンとのクロスオーバー映画を作ったりと色々工夫してたが今ひとつ盛り上がらなかった印象。同じく他の人気SFアクション映画の『エイリアン』や『ターミネーター』も似た印象で、これらのシリーズは最初のインパクトがデカすぎてシリーズに向いてないのかも。シンボリックなキャラが登場する各ホラー映画も似た事が言えるよね。まぁどれも新作が作られたら観ちゃうけど。
本作の監督も『プレデター』作品って事を隠したまま公開したかったらしいが当然ながら予告編が公開されたら一目瞭然だしネット記事も当然「『プレデター』シリーズ新作!」とか書くので早々にバレた(まぁ一作目もプレデターが出てくると知って皆、観てたけど)。
普通、有名シリーズは、シリーズであるというだけである程度の人気は獲得できるので言いたいもんなのに本作の監督は『プレデター』シリーズだと隠したかった理由は、多分「ジャングルでのアクション映画と思いきや異星人との死闘に!」というサプライズ構造を再現したかったのかもしれない。それと本作の監督は一作目の予告を観て「このインディアンのキャラクターもプレデターと戦うのか?」とワクワクしてたら本編では一撃であっさりやられて拍子抜けした、みたいな事をインタビューで言ってたから「一作目の、勘が鋭いネイティブ・アメリカンプレデターと戦ったら?」という本作の展開を思いついて企画を練ったのかもね。
監督は、一番な有名作は『ザ・ボーイズ』(2019~)の中心的な監督。確かにボーイズも逆境に立ち向かう女性をよく描いてる物語だね。

ネタバレあり。週末かなり酔って観たので細部を覚えてない。

 

 

 

 

1719年北米大陸中西部の大平原グレート・プレーンズ
ちょっと待って、何時代かよくわからん。検索したら……ロンドンで世界初の日刊新聞が出来た頃。日本は享保4年、江戸開府して100年、赤穂浪士討ち入り、江戸大火、富士山噴火などがあった頃か。中国は清の時代。

狩りをして暮らしているネイティブアメリカンコマンチ。部族の他の女性のように飯炊きするのではなく男たちのように狩りがしたい少女ナル(アンバー・ミッドサンダー)が主人公。サイドキックは愛犬サリーナルの兄タエベ(ダコタ・ビーバーズ)は部族の中での信頼も厚い戦士。
ナルはコマンチ族の狩りをしてる兄タエベを始めとした男連中から「女は能力的に劣るし狩りに着いて来ず飯炊きでもしてろ」という扱いを受けている。だからナルはそんなガラスの天井(女性やマイノリティが十分な素質を持つにもかかわらず昇進が制限される見えない障壁の意)を打ち破る」という女性の社会進出的なテーマが全編に込められているのは一目瞭然。
ここで良いのは、兄タエベや男たちは如何にもな悪役としてナルを虐めたり馬鹿にする訳ではなく……いや、兄以外の男たちは若干バカにした感じあるか……とにかく昔の映画のようにナルをあからさまに虐めたりはしないという意味。虐げているというより「女が狩りに来ても危ないからさ……いいから帰れよな……」という空気が薄っすら充満してる感じ。ステレオタイプな悪役なら「腹立つ!嫌な男たちをぶっとばせ!」と思っておしまいだが、このリアルな感じの「女は狩り(現場)に出てくるな」的な同調圧力は身近に感じられて凄く良い。
もし自分が男たちの一人だとしても仲間の少女が猛獣に食い殺されたら嫌だし、兄や男たちの気持ちもわかるし。この塩梅が丁度いい。
そんなライオン狩りの最中、ナルは空飛ぶ光る物体(宇宙船)、巨大な足跡、皮を剥かれた毒蛇……など、人間とも動物とも違う痕跡を目撃する。
ナルは兄や仲間に「ジャングルに得体の知れないバケモノがいる!」と訴えるが「正当な戦士にもなれてない女が何か言うとるわ笑」と相手にしてもらえない。何の業績も上げていない新人OLが「倉庫でオバケが出た」と言ってるような感じか?
そんでナルはライオンに果敢に挑むが惜しいところで失神、最終的に兄タエべがライオンを倒し、部族の新たな族長となる。
悔しいナルは皆を見返すため、愛犬サリーと共に一人でライオン狩りに出かける。
ナルは途中、皮を剥かれたバッファローの無惨な死体を見つけ「前日のバケモノの仕業だ」と思いバッファローの冥福を祈る。そして、泥のぬかるみにハマって溺れそうになったり、熊に襲われそうになるが、透明のバケモノが現れ熊を屠る。
勿論”プレデター”だ。
屈強な熊を手のクローと格闘だけで倒した透明のバケモノに驚くナル。

 

 

プレデター
ナルが驚くのと同時に観てる俺も「えっ、プレデターってそんなに強かったっけ?」と少し驚いた。
過去4作品で「自分だけハイテク兵器で全員フル装備で人間達を不意打ちする俺様ルールを振りかざすハンター異星人だが最後に必ず人間にブッ殺される、負けそうになったら人間もろとも自爆して盤をひっくり返そうとするみっともない異星人……それがプレデター」という認識だったので「ハイテク装備で全身フル装備して、ようやく人間より優位なくらいだから素手ではめっちゃ弱いんだろう」と、作品ごとにプレデターの戦闘能力の印象がどんどん下がってきていたのだ。だから熊を倒して頭上に持ち上げて歩くのを見て「えっ!そんな怪力だっけ?」と思った。
そういえば本作の序盤、ハイテク武器で只の野良犬を虐殺したりしてて「相変わらずプレデターって本当にムカつくな」と思った。そんな感じで僕はプレデターというキャラクターの事はあまり好きではない。エイリアンやターミネーターの脳内は「殺す!」という純粋さだけが占められていて美しく感じるがプレデターというエイリアンは狩りという文化を持っているのが唯一無二にして最大の特徴。そして彼らは「戦力を持ったものだけ襲う」「プレデターを倒した人間は、称えて追撃しない」等の独自ルールを持つ。そこが面白いところなのだが、そんなプレデターを指して「カッコいい……サムライだ」など言われてカルト的な人気があるのだが、僕としては自分勝手なルールを押し付けて狩りをするプレデターは昔からただムカつく存在だ。
……だが「ムカつく」というのは優れたヴィランの証でもあるのでヴィラン、モンスターのキャラとしては認めている事になる。
それと昔と違って「でも、それがプレデターが持つ”文化”なんだからプレデター達は、それでそれで純粋なのか。あまりに人間側からの視点で見すぎてたな」と少し反省した。一方からの視点だけでものを見すぎると良くないことになる、だから久々にプレデターへのムカつきが消えた。

 


”3つのプレデター
話を本編に戻そう。
ナルのもとに仲間たちがやってくる。「大勢でも脱落したのに一人でライオン狩りなんて無茶だ」と、新しい族長となった兄タエベが差し向けたのだ。
なんとしてでも狩りを続行したいし透明のバケモノも気になるナルは帰宅を拒否、だが腕力では男に勝てず取り押さえられる。
そこへプレデター来襲!仲間たちは果敢に立ち向かうもプレデターに皆殺しにされる。
遅れて到着した兄タエベとナルは、ひとまず逃走。
ここまでのライオン狩りや、ナル一人での冒険などプレデター以外の展開を凄く丁寧に描き、同時に少し離れた場所で動物を無邪気に狩りながらコマンチ族にじわじわ近づいて来ているプレデターを描いておいての突然のプレデター来襲!これは一作目の展開を踏襲してるなと思った。やはりこれがプレデター映画のベスト展開なのかも?
だが、プレデターを振り切ったところでナルとタエべと犬のサリーは何者かに囚えられる。銃を持った白人達だった。白人たちのボスはバッファローの毛皮を着ている。前半、皮を剥かれて死んでいたバッファロープレデターではなく白人という別のプレデター(捕食者)だったのだ。
スペイン人はネイティブアメリカンを奴隷にして売ってたらしいからスペイン人かな?台詞で言ってたかもしれんが酔って観てたので細かいとこは覚えてない。
白人達のボスはナイフでタエベの胸を切ったりナルを棒で突っついたりと混じりっけなしの嫌な奴。いま思ったがナルを「棒で突いた」のはレイプの暗喩かもな。とにかく私利私欲で行動してサディスティックだしで一考の余地もなく嫌な奴。
とにかくナルを少し下に見ていた部族の男たちは同調圧力や半分心配する気持ちでそうしていただけだが、この白人達は単純に悪くて嫌な感じの敵だ。
さっき「プレデターちょっとムカつく」とか言ってたが、こんなモロに嫌な奴が出てくるとプレデターが純粋な奴に見えてくるので自分の中でプレデターも殺菌された。
白人達の中で、ナルを同じ人間として見て同情気味の男が一人いるのも良い。彼が一人いるだけで嫌な白人達モンスターとしてではなく幅のある人間として認識できる。
どうやら狩りをしていた白人達もプレデターに襲われたので「野蛮なコマンチ族」を釣り餌にしてプレデターを狩る目的のようだ。
「ナル vs.プレデター」ってだけの構図ならシンプルすぎるかな?と思い始めた瞬間に投入されたので良いアクセントになっている。
杭に縛り付けられたナルとタエベ。しかしプレデターは銃で武装した白人達を襲う!嫌な奴揃いの白人達がプレデターに虐殺されるので、さっきまでとは打って変わってプレデターを応援する俺。二転三転する良い展開。
無防備な自分たちではなく武装化した白人達を襲う透明のバケモノを見たナルは「無力化された者は襲わないんだ……」とプレデターの習性を一つ一つ知っていく。ナルは「単純な腕力では男たちに劣るが観察力・洞察力に優れている」という頭脳派である事が最初から一貫して描かれていた。兄タエべも「お前の行動がヒントになってライオンを倒せた」とか言ってたし。

そんなこんなで一作目『プレデター』(1987)同様に、少女ナルとプレデターの一騎打ちになる。ナルは仲間の男たちに喧嘩で負けてしまう少女なのでシュワ氏のように「そりゃコイツなら勝てるやろ」というキャラじゃないので色々と工夫して戦う。だからナルがハイテク狩猟異星人のプレデターを殺っても不自然ではないよう良い塩梅だったと思う。
一作目の流れを踏襲した展開をベースに、「ガラスの天井を打ち破る女性」というテーマ、「コマンチ族<邪悪な白人<プレデター」という食物連鎖の一番下が一番上を狩る展開……など、一作目以降の続編の中では一番よかった。
ただ別に悪く言うわけではないが、かなりこじんまりした印象はある。原始的な武器しか持たないコマンチ族の少女がプレデターと戦うわけだからね。劇場公開作品として作られ始めたのに配信スルーになったのはそれが理由か?いい意味で「良い感じの佳作」という印象。でも配信映画って面白いものが少ないので本作はかなりトップレベルにおもろい配信映画と言える。
配信されてまだ数日だが本作は大好評。後続作品が作られるかどうかは知らんがダン監督は続編のアイデアがあるという。もしまた作るなら次はあっと驚くド派手な要素が観たい。

 

 

 

そんな感じでした

『プレデターズ』(2010)/プレデターの一方的な誇り高さやルールって結構イラッとするな👽 - gock221B
『ザ・プレデター』(2018)/人体破壊描写と容赦のない人死にがよかったです👽 - gock221B

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Prey (2022) - IMDb
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