gock221B

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『ザ・メニュー』 (2022)/序盤と結末は良いんですけど、こんな荒唐無稽な展開じゃなく同じ結末で普通の料理映画の方がよかった👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳


原題:The Menu 監督:マーク・マイロッド 脚本&製作総指揮:セス・リースウィル・トレイシー 製作:アダム・マッケイ/ウィル・フェレル他 製作国:アメリカ 上映時間:107分

 

 

アニャ・テイラー=ジョイが出てるからチェックしてたが、高級レストランが舞台でサスペンスコメディ的なストーリー?予告を観ても内容が全くわからんところが気になってた。『注文の多い料理店』とかジョジョ四部のトニオの店とか、レストランが舞台のサスペンス・ミステリーは面白いものが多い(そういう作品凄く少ないけど)。
この監督の、僕が他に観たことあるものは『運命の元カレ』(2011)と『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011-2019)で何話か監督してる。制作のアダム・マッケイ&ウィル・フェレルもそうだが、がっつりアメリカン・コメディの人が制作に多く関わってる。よくわからんがブラックな笑いをシリアスムードで進めていく映画なんだろうなという予感はしてた。

ネタバレあり

 

 

 

 

Story
太平洋に浮かぶ孤島の人気レストランを訪れたカップル、マーゴ(演:アニャ・テイラー=ジョイ)とタイラー(演:ニコラス・ホルト)。レストランに向かう他の客も映画スター(演:ジョン・レグイザモ)など有名人や金持ちばかり。
目当ては、なかなか予約が取れない超一流三ツ星シェフ、スローヴィク(演:レイフ・ファインズ)の極上フルコース・メニュー……だったのだが――

そういう感じ。
映画が始まると、レストランのある孤島に、有名人や料理評論家や金持ち全員で向かうとこから始まる。いきなり本題という感じで好感触。
アニャ・テイラー=ジョイ演じるマーゴはライダーズ・ジャケット着て煙草吸ってるのも好感(僕はこの現代に煙草吸ってる人が好き)。
アニャ・テイラー=ジョイは当然好きだが、アニャ氏とフローレンス・ピューは出る作品出る作品、客入りも評価も共に高い作品ばかりで短期間で一気にトップ女優になってしまった。同じく本人の事は好きなのにヒットしないし微妙な作品に10年選び続けているクロエ・グレース・モレッツと対象的。これってアニャ氏とピュー氏はよっぽど事務所の脚本選びが上手くてクロエ氏の事務所は下手ってことなんだろうか?
アニャ氏は最初ふっくらした頬とグラマーな身体って印象だったけど、ここ数年ヤバいくらい痩せている。本作は最も痩せてるね。普段も金髪ロングへアにドレスをよく着てて何だか「漠然とした黄金時代のハリウッド女優」って感じの風貌になってきた。彼女は自分の特徴的な容貌に自信がなかったらしいから漠然とした匿名性のある美人になりたがっている気がする。そして演技は目に見えてわかるくらい自信に満ちて凄い感じになってきた。以前の親しみやすいルックスの方がずっと好きだが、演技が凄くなってきたので引き続き応援していきたい。
話を戻そう。
グルメである連れの男タイラーに「味がわからなくなるから!」と喫煙を注意される。
今からごく一握りの選ばれた人しか行けない最高級三ツ星レストランに行く、しかも後でわかるがレストランのシェフ、スローヴィク(演:レイフ・ファインズ)はタイラーが神のように崇めている超有名天才シェフ、タイラーは準備万端にして行きたいわけ。
タイラーを演じてるのは、今は亡きFOX版『X-MEN』シリーズのハンク・マッコイ/ビースト役とか『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)のニュークス役とかで御馴染みのあの人。自分が印象深かった役を並べてみると本作のタイラー役もそうだが「誰かを異常に敬愛している役」が多いな。
船で孤島のレストランに着き、テーブルに着く各員。一品目の料理が運ばれてくる。
この映画は、この孤島のレストランという社会から切り離された密室……異界のような場所で次々とメニューが運ばれてくる、客はそれに対峙していく……という展開がラストまで続く構成。
一品出す毎にシェフのスローヴィクがウンチクを述べてから提供される。配下のシェフや店員達は軍隊の兵士のような感じでスローヴィクに従っている。
レストランの全員は口調こそ丁寧だが内心、客をめちゃくちゃ見下しているんだろうな~という居丈高な雰囲気がめっちゃ出ている。
2品目は「ソースが数種類添えられたパン」……なのだが「今回はパンなしで味わっていただく」と言うスローヴィク。各テーブルにはソースだけ乗せられた皿が運ばれてきて困惑する客。
スローヴィク信者なので喜んでソースを舐めるタイラー。困惑しながらもソースを舐めてみる客。「いやいや、パンちょうだいよw」という客など様々。
個人的には、この辺が本作のピークだった気がする。何故なら、この先一体どうなるのか想像できないから。
「意識が高すぎるあまり純文学的な領域に行ってしまったシェフなのか?」などと想像力をかきたてられる。
アニャ氏演じるマーゴは「アホくさ」と女子トイレで煙草を吸うという好感の持てる振る舞い。すると突然、スローヴィクが女子トイレに入ってきて「何で私の料理にひとつも手をつけないのですか!?」と怒鳴り込んでくる。
早い段階でスローヴィクが完全にイカれてる事がわかってしまい少し醒めた。
だが、どうやらマーゴはこの夜のレストランの中で唯一、スローヴィクの思い通りにならない異分子だという事が早めに示される。アメリカにとってのスノーデンみたいなもんだろう。
で、次は自分と母親の悲惨な過去について語って客を嫌な気持ちにさせた後、各テーブルにトルティーヤ的なものが運ばれてくる。その皮には客が触れられたくない過去の画像が写真のように焼かれている。老夫婦の皮には不倫現場、成金たちには不正な経営の証拠書類、映画スターには大コケした過去の出演作、「料理の写真を撮るのは控えてください」と言われたのに隠れて料理の写真を撮っていたタイラー……などなど。
こういう感じの映画はみなそうなんだが本作もまた、シェフが客を攻撃していく内容のようだ。
その後も、客への攻撃だけでなくスローヴィクは自分がセクハラしていた部下の女性シェフに自分をハサミで刺させたり、自分の実態ではなくメディアでの姿に憧れて入ってきた自分を崇拝する部下のシェフに拳銃自殺させたり、横暴な店の経営者を溺死させたり、と自傷行為も入ってくる。
どうやら客への復讐ではなくスローヴィクは、自分も含めた島にいる者全員で死んでメニューを完成させるという料理と死で芸術を完成させるのが目的だったのだ。
スローヴィクは自分の人生に絶望しており、その原因となった者たちをメニューに則って自分もろとも殺す事で人生を終えようとしている。
自分を抑圧してきた横暴なオーナーとかはわかるのだが「クソ映画観て気分悪くなったから主演俳優を殺人メニューに招待した」「自分を褒めてシェフにしてくれたが、酷評ばかりで色んな有望店を潰した料理評論家ムカつくから殺す」「自分の熱狂的ファンに調理させてシェフ全員でガン見して酷評して自殺させる」など、殆ど八つ当たりのような正当性のない理由で大して悪くない人たちに八つ当たりする復讐なので”世直し殺人鬼”みたいなもんじゃなく『悪魔のいけにえ』みたいな「狂った人間……サイコウォーリアーの店に入ってしまったから皆死ぬ」という不条理なコメディホラーみたいな感じだ。
客たちは、スマホも通じないし、屈強なスタッフの方が客より多いので抵抗しても無駄なので店からは出られない。
で、その後も色々あるんだがマーゴは、スローヴィクの心中の絶望を知った上で「そもそも客を圧迫してばかりだし意識高すぎてメシ全然うまないし最低のメニューやん」と当然の説教をする。そして自分もスローヴィクも両方、歓喜できる……という『美味しんぼ』的な注文をして活路を見出す。
そういえば全員のキャラ付けが割と薄いのだが傲慢な料理評論家女性が、主人公が脱出しようとする時に「早くいきなさい」と手でジェスチャーしてたので彼女だけ「シビアに仕事してただけなんだな」と奥行きを感じた。

 

 

この「絶望して狂気に走って誰も止められない天才シェフを、一般庶民の客である主人公がたった1つの注文で勝利する」という結末は良かったんですけど、割と本編がファンタジーすぎるというか荒唐無稽すぎて乗れないものがありましたね。スローヴィクがカリスマなので何人か狂信的な部下がいるくらいならわかるが、あんな何十人もの大勢の店員全員が、最後に自分たちも死ぬことを覚悟してせっせと全力で料理してるのも違和感ありましたね。スローヴィク普通に嫌な奴だし。別に以前は理想に燃えていた素晴らしいカリスマだった事を示す場面もないし。というか最後、満足したように自殺のメニューを完成させてしまうのが腹立ったね。もう助からないにしても誰かがスローヴィクを滅多刺しにしてメニュー完成前の本懐を遂げる前に殺してほしかった。
前述したように、スローヴィクが自分や店や客を恨んで殺す理由も正当性がないので「どうせ逃げられないんなら、スローヴィクに走っていってメッタ刺しにして殺せばいいじゃん」とか色々思ってしまう。正当性があるなら「最後のメニューまでにスローヴィクを心変わりさせる解決法を決めなければ……」と思うだろうが。
こういう感じで、人がバンバン死ぬ寓話的な話だと二品目くらいで白けてしまったので、ちょっと傲慢な程度で人は殺さない圧迫シェフのスローヴィクの心を最後に同じやり方でマーゴが溶かす……という普通の料理映画の方がよかった気がしました。
とはいえ最後まで楽しめるくらいには面白かったです。

 

 

 

 

そんな感じでした

👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔👱🏻‍♀️👨🏼‍🍳🍔

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