原題:Ant-Man and the Wasp: Quantumania 監督:ペイトン・リード 脚本:ジェフ・ラブネス 製作:ケヴィン・ファイギ 原作:スタン・リー、ラリー・リーバー、ジャック・カービー 製作会社:マーベル・スタジオ 製作国:アメリカ 上映時間:125分 シリーズ:マーベル・シネマティック・ユニバース、『アントマン』シリーズ第3作目
MCU第2ウェーブ〈マルチバース・サーガ〉、本作はフェイズ5一発目を飾る作品。
去年までのフェイズ4、大好きな作品もあったが(『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)、『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエヴァー』(2022)とか)、Disney+のドラマの方は無能ディズニーCEOボブ・チャペックがDisney+の会員者を増やそうと11本も乱造しまくったせいでクオリティが落ちた。勿論全ての作品にも良いところはある、でもそれは僕がアメコミ好きだし「MCU終焉まで全部観るマン」と化してるせいだ。Twitterの僕のTLでも『ミズ・マーベル』(2022)あたりからアメコミ好きやMCU全部観るマン以外……普通のお客さんは離れた。Disney+の会員は確かに増えたが抜けられて結局アカンことになった。だから無能CEOボブ・チャペックは辞めて有能CEOボブ・アイガーが戻ってくる羽目になった。一極集中は腐るので、僕としてはジェームズ・ガンが責任者になったDCUが再来年から盛り上がって「DC vs,MARVEL」という対立構造が復活し鎬を削って互いに向上していくのを期待している。
🐜話を戻そう。
というかしばらく1作目と2作目の話するけど本編の感想より長いので興味ない人は飛ばしてOK。だがそんな人はTwitterやTikTokやYOUTUBEでさくっとレビューを見てブログとかいう字の連続体などを読まなさそうだからこんな注意は要らないとも言える。
一作目『アントマン』(2015)は大作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)の直後の気楽なコメディ作品だった。主人公スコットはバツイチ無職の中年犯罪者(ハンク・ピムを主人公にしなかったのは……DV男としてネタにされまくってるせか?)。でも静かな感動があって素敵な作品だった。2作目にして前作『アントマン&ワスプ』(2018)は、これまた超大作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)と続く超大作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)に挟まれた気楽なコメディ作品だった。どちらも評価、売り上げ共に程々だった。
そんな感じで『アントマン』シリーズはMCU全体の中で「たのしい箸休め」的な役割を担ってきた。
で、三作目の本作はというと前述の通りフェイズ5の一発目。そしてMCU第2ウェーブ〈マルチバース・サーガ〉のメインヴィラン〈征服者カーン〉が本格的に出てくるという、今までとは違って若干シリアスな雰囲気。
『アントマン』シリーズの魅力は「主人公スコットと娘キャシーの父娘愛」「スコットの周囲の愉快な人達のコメディ」「ピム博士の(インフィニティ・ストーンにも匹敵する)凄すぎる科学力」「MCUユニバースを拡張する〈量子の世界〉」「蟻の活躍」……など、この5本柱。そして「アントマンはお気楽なタイトルだから観ても観なくても自由だよぉ!」という感じで、観る者を気楽にさせるライト感も魅力。6本柱か。
一作目『アントマン』(2015)はラストバトルで娘のために命を捨てたスコットが一瞬、〈量子の世界〉に行く。スコットの愛に感動できたし科学的にも凄い飛躍で大好きだった。そしてピム博士の妻ジャネットは〈量子の世界〉で生きている可能性が高くなりMARVEL世界にはミニミニ世界があるので2作目『アントマン&ワスプ』(2018)は当然〈量子の世界〉で大冒険するのだろうと思っていた。そして確かに『アントマン&ワスプ』(2018)では〈量子の世界〉に行ってジャネットを助ける。だが〈量子の世界〉に行くのはピム博士だけでアントマン&ワスプはゴーストとかいうどうでもいい別に悪くもないヴィランやウォルトン・ゴギンズを無駄遣いした只のチンピラと追いかけっこして、後は人気サブキャラのルイスが可笑しな活躍したりしてる間に終わった。3年間楽しみに待ってた〈量子の世界〉の秘密は全く描かれなかった。ジャネット何にも喋らないし。そんな感じで2作目は「MCUのユニバース拡張」や「科学」ではなく「愉快なコメディ」に全フリしてしまった。「蟻の活躍」も少なくなり僕は大いに不満だった。一応言っとくけど『アントマン&ワスプ』(2018)も最後まで楽しめたし4、5回?は観て「たのしい映画」という認識はある。だがMCUという大きな流れにおいてはワクワクする一作目に比べて凄く停滞した作品だった。酷い言い方するなら正直ポスクレの「アントマンが〈量子の世界〉に囚われる」シーン以外あってもなくても構わない作品といえる。スコットやルイス達の楽しいコメディが大好きな人もいるだろうが三作目の本作がルイスやキャシーの両親を切ったので「やっぱ『アントマン&ワスプ』(2018)は失敗だったとわかってるんだな」と思った。MARVELスタジオは「失敗した~」という感じの後の作品ではそれまでのシリーズとはがらっと変えてくるので。
『アントマン&ワスプ』(2018)といえば友達の女の子で『アントマン&ワスプ』(2018)と『アントマン&ワスプ』(2018)をシネマティック・ユニバースの一部だと知らず観た人が居た。彼女は愉快な『アントマン&ワスプ』(2018)を観終えるとラストで意味なくハンク達が粉微塵になって死ぬので訳がわからなかったらしい。そしてネット調べて一週間でアイアンマンからMCU全部観てた。「アントマン2作だけを観た人」の感想は非常に珍しく、面白かった。確かに何でワスプ達がチリになるのかわからないよね。
そんな感じで本作は「〈量子の世界〉の全貌や秘密」にやっと取り掛かる。だけど、この内容は『アントマン&ワスプ』(2018)でやって欲しかったというのが正直なところ。ささっと〈量子の世界〉に行けばいいのに寄り道したせいで8年かかってしまった。ここ数年でMCU一気観した人にとっては大した問題じゃないだろうが僕はリアタイでずっと観てたので「やっと量子の世界ですか……」という感じがあった。もう俺の中の〈量子の世界〉は半分以上冷めてしまっていた。予告見たら大体全部わかったし。
ペイトン・リード監督は『アントマン』シリーズの前は『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(2008)とか『New Girl ~ダサかわ女子と三銃士』(2011-2012)など、当時大好きだったズーイー・デシャネルをコメディで魅力的に見せていて好きだったが『アントマン&ワスプ』(2018)でかなりガッカリした。「リード監督はコメディは得意だが、アメコミや長大なサーガには興味無いのかも」と思った(一作目『アントマン』(2015)は文句なしに全部良かったが、あれはエドガー・ライトが完成させた脚本を使ったから……かもしれない)。
長くなったがそんな感じであまり期待せず……期待しないと言いながらしっかり初日に観に行きました。
本作のネタバレまぁまぁあるが過去作のネタバレもいっぱいある。
🐜🐜『アントマン』(2015)
娘キャシーが大好きなバツイチ無職中年スコット・ラングは、初代アントマンだった天才科学者ハンク・ピム博士のスーツを着て縮小ヒーロー、アントマンになりハンクの娘ホープ・ヴァン・ダインから格闘技を習い蟻の力も借りて、ハンクの元弟子ダレン・クロス/イエロージャケットの野望を砕く。スコットとダレンは〈量子の世界〉に飲み込まれるがスコットは生還。ハンクは過去に量子世界に消えた妻ジャネットの生存を確信する🐜『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)
超人登録法〈ソコヴィア協定〉はアベンジャーズを二分する。のんきなスコットは憧れのキャプテン・アメリカの味方につきアイアンマン派と戦う。アイアンマンは政府側なのでスコットは犯罪者となった。なお本作からスコットは縮小だけでなく巨大化した〈ジャイ アントマン〉になれるようになった🎨『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) ※アントマン関連の登場人物は出てない
アベンジャーズはシビルウォーで二分してアッセンブル出来ていなかったためサノスに敗北。サノスはインフィニティ・ガントレットのパワーを行使し、指パッチンによって全宇宙の半分の生命体を消滅させる。ヒーローの半数は塵となった🐜🐝🐜🐝『アントマン&ワスプ』(2018)
シビルウォーの罪でスコットは2年間の自宅謹慎を喰らったがもうすぐ終わる頃。ピム父娘は捜査当局から姿をくらまし量子の世界で生存してるであろうジャネット救出のため研究をしており、ホープもスーツを着て縮小ヒーロー〈ワスプ〉となっていた。
ハンクは〈量子の世界〉に閉じ込められていた初代ワスプ、ジャネット・ヴァン・ダインを数十年ぶりに救出。しかし同時刻にサノスの指パッチンが行われたせいでワスプとピム夫妻は塵になり、スコットは量子の世界から出られなくなった🐜🐝🐜🐝『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)
蟻のおかげでスコットは5年ぶりに現世に帰還。幼かったキャシーは14歳に成長していた。サノスに宇宙の全人口の半分を消されて勝ち逃げされたアベンジャーズとガーディアンズはしょんぼりムードだったが、スコットの量子の知識によってアベンジャーズはタイムスリップが可能となり塵になった人達を元に戻す事に成功。過去からサノスも侵攻してきたが今度はちゃんとアッセンブルしたので倒せた。アントマンとワスプも当然ラストバトルに参加。アントマンはジャイ アントマンとなってサノス軍の戦艦をぶん殴ったりと背景で活躍。ハンク・ピムは同僚でありライバルだったハワード・スタークの息子トニー・スタークの葬式にジャネットと共に訪れる。ハンクとスターク家の言い合いとか和解が最後まで見れなかったのは残念だった(SHIELDで働く若ハンクはちらっと見れる)。ちなみにMCU世界の一般人達はアントマンの事をあまり知らない。かくして全てのヒーローや人間たちは束の間の幸せを味わうのだった〈インフィニティ・サーガ完結〉
🕛ドラマ『ロキ』〈シーズン1〉 (2021)
〈マルチバース・サーガ開幕〉主人公ロキ2012とシルヴィは、神聖時間軸(MCUの世界の時間軸)以外のマルチバース発生〈分岐イベント〉を防ぐ組織TVAの代表者のもとに辿り着く。〈在り続ける者〉と名乗るその男は「TVAは、無数のマルチバースの邪悪な自分の変異体の発生を防ぐ組織だった」と言う。しかし既に疲れ切っていた〈在り続ける者〉はシルヴィに自分を殺させて自死しまう。これにより〈分岐イベント〉抑制の力は消え無限にマルチバースが誕生。死んでしまった〈在り続ける者〉の邪悪な変異体……その一人が本作に登場する〈征服者カーン〉👨🏻ドラマ『ワンダビジョン』 (2021)
後のスカーレットウィッチことアベンジャーズのワンダ・マキシモフが起こした〈ウエストビュー事件〉の解決に、本作の冒頭に数秒出てきたジミー・ウー捜査官が活躍した。ウーの今後の活躍にも期待🐝ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) ※アントマン関連の登場人物は出てない
サノスの指パッチンによって人類の半分が消失、そこで移民がアメリカに移住してきたが5年後にアベンジャーズの指パッチンで消えた人々は消失。そこで元の移民の行き場がなくなりテロリスト集団フラグ・スマッシャーズが生まれた。本作クアントマニアではピムテック社を継いだワスプが住まいや食糧難をピム粒子で解決しようとしている。🐜ドラマ『ホークアイ』 (2021) ※アントマン関連の登場人物は出てない
街では「誰も知らないヒーロー」だったアントマンのコスプレしてる人がおり古参ホークアイより人気のようだった。また、ホークアイが観劇にいった「『アベンジャーズ』(2012)のNY決戦を元にしたミュージカル」ではNY決戦に参加してないはずのアントマンもミュージカルで踊っていた。一体いつの間にアントマンが有名になったのか?🐜ドラマ『ミズ・マーベル』 (2022) ※アントマン関連の登場人物は出てない
第一話で主人公カマラが行くアベンジャーズ・コンで「サノスを倒した英雄アベンジャーズの一人」であるアントマンは各メディアのインタビューを受けまくっていた事がわかった。他のヒーローはインタビューなんて受けそうにないし、スコットがセレブになった理由がわかった。ちなみにガーディアンズやサノスの存在も一般人に知れ渡っている🐜🐝🐜🐝アニメ『ホワット・イフ…?』〈シーズン1〉 (2021) ※別のマルチバースでの話
完全に違う世界線のアニメだが、第5話のゾンビ回で「ワスプの腕のブラストは本気で撃つと人の首を簡単に吹き飛ばす威力がある」「ワスプもジャイアント化が可能」など、MCU本編でのワスプはキャラとしてもヒーローとしても存在感なさすぎたためか「ワスプが殺る気出したら実は強い」というアニメスタッフの粋な心意気を感じた。あとスコットは首だけになっても陽気。スコットの仲間のバーバ・ヤーガ怖いニキも何故か登場したが普通に死んだ。ゾンビの発生源は量子世界のジャネットからだった
また第3話では、闇落ちしたハンクがアベンジャーズを皆殺しにする回もあり「ハンクは天才だが情緒が不安定」「ハンクが本気で殺る気出せばピム粒子でアベンジャーズを皆殺しにできる」という描写のわかりみが凄かった
なんかノリで本作に関係ありそうなものを全部振り返ってみた。
本作を楽しむには『アントマン』(2015)と『アントマン&ワスプ』(2018)あと『ロキ』〈シーズン1〉 (2021)だけ観とけば大丈夫だと思う。『アントマン』過去作よりむしろ『ロキ』〈シーズン1〉 (2021)の方が重要かも(「カーンはどういう存在なのか」が大体わかるので)
🐜🐝🐜🐝🕛『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)
サノスから地球を護ったスコット・ラング/アントマン(演:ポール・ラッド)はすっかり有名人。自伝”Look Out For The Little Guy”の売上も好調。
同じアベンジャーズで恋人のホープ・ヴァン・ダイン/ワスプ(演:エヴァンジェリン・リリー)、その父ハンク・ピム(演:マイケル・ダグラス)、その妻ジャネット・ヴァン・ダイン(演:ミシェル・ファイファー)らも、地球を救った恩赦で無罪放免となり皆それぞれ幸せに暮らしていた
そんなある日、スコットの愛娘キャシー・ラング(演:キャスリン・ニュートン)が〈量子の世界〉に信号を送る装置を作動させた瞬間、スコット父娘とピム一家は〈量子の世界〉に吸い込まれてしまう。
〈量子の世界〉は、ジャネットの旧知の人物、征服者カーン(演:ジョナサン・メジャース)が征服する世界だった――
そんな感じ。
🐜スコットの自伝はアメリカ本国で本当に発売された。
Amazon: Look Out For The Little Guy
内容が充実してるなら邦訳して欲しいが、トニーの自伝ならともかくスコットの自伝というのが微妙に邦訳されなさそう。スコット自伝は劇中でスコット自ら朗読してるオーディオブック版もあるようでスコットはマイカーの中で聴いてホープとキャシーに笑われていた。
冒頭の「スコットや皆の幸せ描写」が思いのほか楽しい。MCUの主人公たちは辛い時間の方が多いせいかもね。本編より、この「スコット達の楽しい毎日」だけ全6話でDisney+ドラマでやってほしい。ハンクに科学を習うキャシーとか面白そう。
全編楽しいスコットだがカーンにぶん殴られて「お前は小物だ」と言われた時なんともいえない気まずさがあった。ジョセフがDIOに「お前のスタンドが一番なまっちょろいぞ!」と言われた時と似てるというか。
だが本作には何故か人気サブキャラ、ルイスが最初から最後まで登場しない。冒頭の「スコット幸せ描写」の中でもスコットと飲んでるのはジミー・ウー捜査官だ。
僕個人はそこまでルイスに愛着ないんだけど、ピーター・パーカーにおけるネッドくらいの存在感になってたルイスを全く出さないのは不自然過ぎる!まるでスコット達がセレブになったから付き合いやめたように見えて気まずい。何故出さなかったのか?最初のウー捜査官と飲んでる数秒にルイスが居るべきだし、ラストの語りもルイスでいいだろう。さっきも言ったように「ルイスを出してくれなきゃ嫌!」とまでは思ってない、ただ「ルイスがいないのが不自然過ぎる!」という感じ。気になって仕方ない。ルイス以外の二人は別にいらんがルイスは絶対いる。何故出さなかったのか?
🐜キャシー役の俳優は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の時の俳優から変わってしまった。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の時の子の方がポール・ラッドに似てて娘感あって良かったのだが変わっちゃってしまったものは仕方ない(理由は不明)。新しいキャシーの子は若干いじめっ子顔なのが気になるが「幼少期キャシーが成長したらこんな顔になるかも?」という感じがあって、そういう意味ではいいかも。
冒頭キャシーが収監されてたので「えっキャシー不良になったん!?」と一瞬思ったが、そうではなく正義感が強すぎてデモ活動して警察のパトカーを縮小して捕まった模様。シュリ/ブラックパンサー、エレーナ・ベロワ/ブラック・ウィドウ、ケイト・ビショップ/ホークアイ、アメリカ・チャベス、カマラ・カーン/ミズ・マーベル、リリ・ウィリアムズ/アイアンハート……フェイズ4以降、色んなヤングヒーローが出てきたがキャシーは量子の世界に行ってからも「悪い奴は許せない!」「困ってる人を見捨てられない!」と正義感を出しまくってた。今のところキャシーが最も正義感強いかも?
🐝ミシェル・ファイファー演じるジャネット・ヴァン・ダインは、娘同様全く存在感なかったが量子の世界が舞台なので司会進行のようにガイドを務めてくれる。量子の世界で何があったかも語ってくれる(本当は5年前の前作でこれ観たかったんだけど……)。
ジャネットは本作の中盤まで「量子の世界での数十年間、量子の世界の秘密を仲間に一切喋らない」という、喋らない事によって物語を推進するのだが、この作劇法がイライラする。前作で救出された後てっきり仲間には……せめて夫ハンクには喋ってると思ったが一切喋らないなんて有り得るだろうか?量子の世界に吸い込まれ今回の事件が起きたのはジャネットが喋らなかったので危険を知らないキャシーとハンクと蟻達が量子世界への信号を送る機械を作ったことで起きた。今後、アベンジャーズ5で起きるカーン・ダイナスティの神聖時間軸への侵攻も、そこで死ぬであろう何人かのヒーローの死もジャネットが喋らなかったせいと言っても過言ではない。量子世界に行って色んなものに巻き込まれても一切喋らないのでハンクとホープが可哀想になってくる。「ここは私に任せて」とだけ言って外界では考えられない行動したりするので「一言でもいいから何か説明しろよ!」と中盤あたりまで思わされ続ける。説明する時間がないので仕方ないが平和だった時に話しとけよ、と思う。あと単純にミシェル・ファイファーは十代の時から好きだったしアップになった時に「こんな綺麗なかたちの鼻と唇の初老おる?」と驚いた。
🐝ホープ/ワスプに至ってはこれまでもそしてこれからも全く目立たない予感がする印象の薄さがある。正直ワスプになる前の『アントマン』(2015)の時の方が目立っていた。今回、冒頭でホープはピムテックの社長になったようだがルイス達も警備で雇ってあげろ!でも可能性連続体となってもスコットを救いたい一心で1つのワスプに集約するシーンは良かった。最後に助ける場面も。だがそれを足してもスコットのサポートキャラの印象は拭えなかった。タイトルに『&ワスプ』と付いてる事だけが救いだ。
🐜ハンク・ピム博士は今回もカーンに致命傷を負わせるおいしい役をもらっていた。まぁ本当ならアントマンですから主人公補正を持ったサブキャラみたいなもんだからね。蟻の凄まじい大活躍には蟻ファンの自分も満足。変わり果てた姿の元弟子ダレンを見ても「なんじゃその姿?ひでぇなぁこりゃ」って感じでやはり酷い態度が良かった。「キャシーが私を尊敬する気持ちは誰にも止められんからなぁ」みたいな台詞も良かった。
そういえばビル・マーレイも只の最低な奴だと判明して数秒ですぐ死んでしまった。僕が好きな装備、縮小拡大ピム手裏剣で。『ゾンビランド』とかでもそうだが「ビル・マーレイ出たけどすぐ死ぬ」みたいなノリを何度か見たことあるから、その一環ですぐ死んだのだろうか?それとも昨年末、ビル・マーレイのセクハラや暴言が問題になってたから出番が減らされたのか?謎だ。ビル・マーレイがジャネットに昔肉体関係があった匂わせしてるのも「昨年末問題になったビル・マーレイのセクハラや暴言」を思い起こさせて微妙に嫌な気持ちになった。なんかジャネット=ミシェル・ファイファーがセクハラされてる感じもしたし。だがその後のジャネット「私だって女だし」、ハンク「私だって男だしデートした!」、ホープ「二人共やめて!」、ハンク「でも付き合わなかった。お前じゃないから……」という流れは良かった。このシーンを生むためにビル・マーレイは出てきたのかもしれん。
量子の世界の不思議な世界や生き物などは、あまりに悪い意味でのディズニーっぽすぎてキッズ感を感じて乗り切れないものが合った。すぐドロドロしたスライム的なものが出てくるし「やっぱキッズが観るようなものを中年男性の自分が観に来てるのは……」と自分自身への疑念が生まれてしまったぞ。〈量子の世界〉と聞いたら、やっぱ見たこともないようなヤバい世界を想像しちゃうよね。見たこともないようなものは天才しか創造できんし今回はニコロデオン的な世界だったわけだが……ブロッコリーは好きだったけど。やはり8年間〈量子の世界〉を楽しみにしてたのにキッズ感ある世界だったのが……デザインもちょっとな……もうちょいジャック・カービー的な奇想天外なデザインにして欲しかった。友達の女の子の子供がMCU観てたりする、その子は数十年後もMARVEL好きで応援するのかもしれない、自分が死んだ後も……そう考えるとおじ(中年男性)の自分がヒーローもの観て「ここキッズっぽい」とか文句つけるのは良くない気がするから、黙っとくか。
だが、カーンが求めてるあの玉(名前忘れたから「カーン球」と呼ぶことにする)、あそこに接近するとアントマンもワスプもいくつもの選択によって無限に増殖する……こういうのは大好き。「量子」と言えば都市伝説などでも殆ど魔法と同義って感じで「量子」と付ければ何でもアリだし、まだまだワクワクできる余地がある。
カーン球は接近した存在の「無数の可能性」を生み出す。この「アントマンやワスプの可能性」達は、『ロキ』 (2021)や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)などに出てきた「別のマルチバースの変異体」……ではなく、この神聖時間軸内に”疑似”的に発生させた「別のマルチバースのスコットの変異体」。
カーン球はマルチバース間の移動を可能にするパワーがある。だから近づくと「マルチバースの変異体」のような分身を擬似的に生み出す副作用があったのだろう。
だが「バラバラだったスコット達も全員『キャシーを救いたい』と思っているので突然、一致団結する」というネタは素直に良かった。そして「アイスクリーム屋のバイトを続けられた可能性のスコット」が「ぶちかましてやれ!」と言うのがどうしようもなく感動的……。
スコットたちと同時に吸い込まれたピム研究所の助手蟻たちも、量子の影響で「数千年の時を過ごして文明や強さを手に入れたスーパー蟻」となっておりカーンに致命傷を与える。そうそう、前作ではこういう要素が観たかったんだよね。
「量子」と付ければどれだけ飛躍しても良くてアントマン達だけがその超科学を操れるのは「愛」があるから……こういうとこが『アントマン』シリーズで一番好きなところ。で、前作にはこの要素が希薄だった。
本作は映画始まってすぐ〈量子の世界〉行くし、アントマン分裂や蟻の進化以外にも量子世界ネタがこれでもかと出てくる。『アントマン&ワスプ』(2018)では行ってすぐ帰っただけだったし量子世界ネタがいっぱい溜まってたんだろうな。
ちなみに〈量子の世界〉はマルチバースから切り離された世界のようなのでTVAも剪定できないらしい?
🕛今回のカーンだが、科学技術が凄まじいのは当然だが格闘も割と強め設定でしたね。演じてた俳優が『クリードIII(原題)』のためにめちゃくちゃマッチョになったから、監督が彼の身体見て「じゃ、このカーンは喧嘩も強いって設定にしとこう!」と思ったのかも。そして「あのカーンは四天王の中では最弱……」を地で行く結末。だが実際にアントマンチームだけで何とかできたしダイナスティからハブられてるし、このカーンはあまり強くない。『ロキ』 (2021)の〈在り続ける者〉より弱そうだ。だがカーンの怖さは強さではなく無限に居るから倒せないところですからね。ジョジョで言うところのファニー・ヴァレンタイン大統領。本作のカーンは最初から最後までマルチバースに全く行けないカーンなんだから羽をもがれた鳥みたいなものか。
邪悪なカーン・ダイナスティへの恨みを滾らせる時の芝居に雰囲気あったので、実は本作のカーンは「征服」など邪悪な要素もあるが大きな視点では更に邪悪なカーン・ダイナスティの他マルチバースへの侵攻を止めようとしてたんだろう。そういう意味では『ロキ』 (2021)の〈在り続ける者〉同様に大きな目で見ればヴィランと言い切れない系のヴィランだったのかも。日本版のMCUではいつも専門用語を訳わからん日本語にするが「インカージョン」はそのまま字幕にしてて嬉しかった。……自分は嬉しかったがアメコミ知らん人はいきなり「インカージョン」と言われてもわからんと思うが。だが今後何度も何度も出てくる単語なんだから「インカージョン」で良いんだ。じゃないと「天界人」を痴漢みたいこっそりと「セレスティアルズ」に直すような羽目になってしまう。「ノバ」も早く「ノヴァ」に直せよ?
🧠でも何といっても本作はモードック(M.O.D.O.K.)でしょう。イエロージャケットの時は全然好きじゃなかったが(当時、MCU腐女子がピムとスコットとの三角関係に萌えてた記憶)、今回モードックになっちゃったのでスコット同様に「な、なんという姿に……」としか思わなかったな、原作のモードックにもあまり思い入れないし。だがカーンにいじめられてる時に「あれっちょっと可哀想かも……」と心がざわつきました。
でもキャシーと一騎打ちするから「なるほど一作目の因縁をキャシー本人が断ち切るのかな」と思ってたが、やはりキャシーがモードックをボコボコに……。
「ざまぁ」と思ってたら憐れな顔でキャシーを見るモードック……いや、ダレンの負け顔を見ると心がまたざわつく。
ダレンが「なぁ……俺まーたこんなんなっちゃったよ……キャシー、俺どうしたらいい?」みたいなことを泣き笑いみたいな大顔面で言う(台詞覚えてないから)。
え……何これは……またも心がざわつき俺の心に波紋ができはじめる……。
ダレンは「見た目もこんなんで中身もクソ野郎で……俺もう生きていたくないよ」とでも言いたげな、なんとも言えない顔!
正義感が強く優しいキャシーは呆れと憐れみと優しさが混じった表情で「さぁ?わかんないよ!好きな自分にでもなれば?でも”クソ野郎”以外にね!」と言い残し父の闘いに合流する。
そしてアントマンチームが苦戦していたカーンのシールドを、ダレンは命を捨てて破る。ダレンが「んんんんううんぬぬぅぅああああーーーっ!俺はクソ野郎じゃないーーーーっ!」とか叫んで顔面からバリアに突っ込むのだ。
正直ここまでは「はいはい……まぁ、最後まで楽しめる程度には面白いけど、そこ止まりな、いつものまぁまぁなアントマン作品ね……」と嫌なお笑いファンみたいな、割と醒めた感じで観てたんですが、敗れた憐れなモードックのキャシーとの会話、ダレンがバリアを破るシーンでぶわっ!と感動してしまいました。「えっ感動?この俺が?」と思った。理由はよくわからない。一作目のイエロージャケットもよくいるしょうもないヴィランだと思い興味なかったし本作もモードックが元気な時はあんまり興味なかった、やはりキャシーに完敗してどうしようもない表情と台詞で自分自身を見せた場面、そして特攻、その後の最後の会話、あそこら辺でダレンの内面が初めてわかりグッと来たのかも。
尊敬する師のピム博士も、他人に心を砕く人じゃないしダレンは誰にも心を見せた事なかったんじゃないのか?そんでスコットに完敗しグシャグシャになった肉体をカーンにダルマみたいなボディにされて(どんなボディにも出来るはずなのに一頭身にするカーンの意地悪さ)、ダレンは”モードック”と呼ばれなければ返事しない程に無理矢理に誇りに思っていた(カーン球の近くだと脳がおかしくなるというのもあるかも)でも本当はそれが嫌で嫌で……そうこうしてると「どんなに敬愛しても自分を鼻にもかけないサイコパス師匠ハンク・ピム」「そんなピムが自分よりも愛した無職の男……自分をここに叩き落としたスコット」「自分がかつて殺そうとしたスコットの幼女キャシー」ら、懐かしい一同に会えてダレンは嬉しかったのかもしれない。そして、その三人全てに完敗して……もう被れる仮面がない……そんなダレンにどういうわけか同調したのかも。
やはりモードックのルックスってどうしようもないじゃないですか。ボディの90%が顔で。自分がモードックになったら恥ずかしいですよ。「う、うわあ!どしたんお前……!」って感じですよね。「な、何があった!?お前……自分に何をしたんだ!?」という、人間が言われたら一番傷つく言葉を投げかけられそうなルックスじゃないですか。だから心を打たれたのかも。瀕死のダレンも「ピム博士……たはは……俺こんなんなっちゃった……」とでも言いたげな哀しい笑顔で見てくるし。100人いたら100人が「かっこ悪い」という見た目ですからね。そんな恥ずかしいモードック・ボディで顔面からエネルギーフィールドに突っ込む様を観て(モードック自身の殆どが顔面しかないから顔から突っ込むしか無いという事も含めて)。最後の最後くらいは”クソ野郎”じゃない自分でいたかったのかもね。どういうわけか、そんなダレンにぶわっ!と感動するものがありました。
一作目のダレンはテック業界を牽引していくカリスマITハゲみたいな印象あったじゃないですか、そんな彼がモードック……って一番なりたくない姿だと思いますよ。そんなギャップも良かったのかもね?最後の瀕死のダレンも
モードックほど極端ではないが我々の殆ども理想とする者にはなれない、環境が悪ければ容姿や健康も衰えていく。人によっては心も醜くなっていく。生まれた時は誰しも綺麗な赤ちゃんなのにね。そんなこんなで我々は皆モードックに対し「道を踏み外したバージョンの我々」を感じてしまうのかも。でもダレンが昔のままの容姿なら、そうは思わなかったと思う。モードックの容姿が滑稽で醜いというのがこの謎の感動を増幅させていると思う。
最後に「これで俺もアベンジャーズ?」と訊いて戸惑うスコットとホープ「う、うん。君もアベンジャーズだよ」というシーンも「ダレン……お前悪いことばっかしてたけどヒーローになりたかったのか……?」と思った(このシーンはギャグなのかシリアスなのかわからない変な雰囲気だった)
イエロージャケットなんて全く興味なかったMCUヴィランだったのに、キャシーに負けてからの数分間で一番好きなMCUヴィランになった。まさかモードックで感動するとは思ってなかったね。
それより一作目で「ピム粒子持って逃げていったヒドラ党員」はどうなったんだよ!?出てきて1秒で死んでもいいからどうなったか見せてくれよ。もう8年近く「ピム粒子持って逃げていったヒドラ党員を覚えとかなきゃ」と覚え続けてて脳が痛いよ。
そんな感じで、やっとこさ〈量子の世界〉を冒険したけど待ちすぎて疲れたし思いのほかキッズっぽかった。プラマイ総合するといつもより大規模にはなっているがミニミニ世界が舞台ではあるしノリはいつもの「ほどほどに楽しいアントマン」だった。スコットの娘への変わらぬ愛は良かった。そしてダレン/モードックの良さが思いがけず良すぎた。いかにも「アントマン死ぬぞ~死ぬぞ~」という予告を連発していたが、それを前フリにして「シリーズ完結作っぽいけど死なず、幸せに暮らしていく」というラストもアントマンらしくて良いかも。アントマン&ワスプは死なないまでも量子世界に取り残されるのかな?と一瞬思ったがピム夫婦とキャシーには量子世界と往復する方程式がもう完全にあるので、そうもならん。
アベンジャーズ5までにスコット達が出てくるとすると……『ロキ』シーズン2?またはキャシーが他の若手と顔合わせするとか?いまいちわかんないね。アベンジャーズ5までもう出ないかも
次のMCUは……5月3日にDCUに行ってしまうジェームズ・ガンの置き土産ガーディアンズ完結編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』(2023)。必見でしょう。
Disney+ドラマは、(多分)今年の上旬にニック・フューリーがスクラル人の侵略と闘う『シークレット・インベージョン』(2023)があるはず。去年までのペースだと『シークレット・インベージョン』(2023)は年明けには配信してたはずだが未だに公開日が決まってない。単純にDisney+ドラマの評判が悪いせいだろうね。自分のTwitterTLでも僕しか観てないもん。MARVELスタジオは、評判悪かったり停滞したらテコ入れするので不評だったDisney+ドラマも全体的に立て直してると思われる。
今年のMCU作品は多分11月に公開されると思われる『ザ・マーベルズ』(2023)が一番楽しみ。前作『キャプテン・マーベル』(2019)は未だ大好きなMCU作品だし共闘するカマラの『ミズ・マーベル』(2022)は、作品自体は足がもつれてコケた印象だが主人公のカマラも中の人も今MCUで一番好きだし。期待。
でもアメコミ映画だと、長年好きなジェームズ・ガンがDCに行った事もあるし二人のバットマンやスーパーガールの出る『ザ・フラッシュ』(2023)が一番楽しみかも。
そんな感じでした
〈MCU関連作〉
gock221b.hatenablog.com
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)/予想を裏切り期待に応えるMCUの到達点🎨 - gock221B
『ワンダビジョン』全9話 (2021)/後半までは「ツイン・ピークス」と「バイオレンスジャック 超高層の悪魔編」を足した感じで死ぬほど面白かったのだが……。+追記👩🏻🦰 - gock221B
『ホークアイ』全6話 (2021)/大部分とても楽しく観てたが最後にガッカリして全てどうでもよくなるというパターン🏹 - gock221B
『ミズ・マーベル』全6話 (2022)/凄くバランス悪いが最初と最後とカマラやキャラは良いです👩🏽⚡ - gock221B
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