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『北極百貨店のコンシェルジュさん』(2023)/絶えず査定されている圧迫感があった原作よりもアニメの方が柔らかくなってる感じがしたが、どちらも好きです🤵🏻‍♀️🏬


監督:板津匡覧 脚本:大島里美 原作:西村ツチカ『北極百貨店のコンシェルジュさん』(2017-2018) 作画監督&キャラクターデザイン:森田千誉 編集:植松淳一 美術監督:立田一郎(スタジオ風雅) 撮影監督:田中宏侍 動画検査:野上麻衣子 コンセプトカラーデザイン:広瀬いづみ アニメーション制作 Production I.G 配給&制作:アニプレックス 音楽:tofubeats 主題歌:Myuk『Gift』(2023) 製作国:日本 上映時間:70分 公開日:2023/10/20

 


漫画家・イラストレーターの西村ツチカ先生の漫画のアニメ映画化。
西村ツチカ先生はまだX……Twitterとかも無い頃、MIXIの時代にたまたまPIXIVを見つけてファンになりました。
西村ツチカ - pixiv
僕世界で一番好きな漫画が高野文子先生の『黄色い本』(1999)なので、西村ツチカ先生のどことなく高野文子っぽい、上品だけど人を突き放したような乾いた絵柄や、『ムーミン』のトーベ・ヤンソンの少しお淋しげな画風に似たところに惹かれました。乾いた感じは画風だけでなく、漫画の内容もそうで、良い人間も少し距離を取って描いてるもんだから心の醜い卑小な人間はもう異常に突き放して描いていて、読んでて身が引き締まる気持ちになって癖になります。あと女の子やお年寄りが魅力的で好きです。
その後、すぐ商業誌デビューなさって7冊くらい?単行本や画集を刊行なさって今日に至ります。初の単行本が出たときは何冊か買って友達にあげました。
で、去年このビッグコミック増刊号で連載されていた漫画が突然プロダクションIGから映画化されて驚きましたが、最もどの国の老若男女が観ても楽しめそうなのはこれなので納得でした。なんでも監督の板津匡覧氏が西村ツチカ先生のファンだったので本作を劇場初監督作に選んだそうです。
3日前、Netflixで配信が始まったので観ました。
北極百貨店のコンシェルジュさん | Netflix
「そんな前から好きだったんなら映画観に行けよ!」と言われそうですが、本作の予告編を観て果たして面白いのかなと未知数だったので行くか悩んでる間に公開が終わってしまってました。でも実際観たら面白かったのでやっぱり観に行けばよかったです。

ネタバレあり
ちょっと映画観る直前に原作漫画を読み返したので、映画と漫画の感想いっしょくたにしてしまうかもしれないが、まぁ見逃してください。

 

 

 

 

新人コンシェルジュとして人間の秋乃(CV:川井田夏海)が働き始めた〈北極百貨店〉は、来店されるお客様が全て動物という「何でも揃う」百貨店。
一人前のコンシェルジュとなるべく上司先輩たちに見守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えたお客様が現れます。
中でも“V.I.A”(Very Important Animal)と呼ばれる絶滅種のお客様の御要望は一癖も二癖もあり――

そんな話。

一言で言うと、新人コンシェルジュ秋乃さんが絶滅種の御要望を叶えようと奮闘し、先輩たちや時には他のお客様の力を借りつつ解決する話。
……いま言ったばかりのあらすじを二回繰り返しただけで全く意味のない要約してしまった。まぁいい。『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)における〈バスケ〉と同じくらい「秋乃がVIAの御客様の要望を叶える」という部分が作中の9割くらいを占めている生粋の百貨店アニメ。
絵柄も、ほぼ西村ツチカの絵柄のまま動く。でも原作での斜線とかはなく全体的な色合いが、かなりカラフルなので引いた画になると西村ツチカっぽさが薄まる。登場人物がアップになると西村ツチカのタッチが再現されてて西村ツチカっぽさが高まる。

 

秋乃の上司や同僚キャラ

新人コンシュルジュ秋乃(CV:川井田夏海)は、北極百貨店で働き始めるところから物語が始まる。御客様の心に寄り添う優しい接客で活躍したり失敗もする、時には他の部署や御客様を巻き込んで御客様の要望に応える。幼い時に夢のような北極百貨店を訪れ、はしゃいで走ったらぶつかった優しいコンシュルジュさんに憧れを抱いた……という映画オリジナルの発端+αが描かれる。原作では最終話でVIAの後輩ができるが本作ではそれとは違う映画オリジナルの結末がつけられている。

フロアマネージャー東堂(CV:飛田展男)は、あらゆるフロアに偏在している。彼は百貨店の裏側を移動おり戸棚やスープの中からも登場し、新人の秋乃を見張って厳しく叱咤するが褒める時は褒めるツンデレっぽい上司。見た目は『魔法使いサリー』ちゃんのパパに似てる(……といっても古くて老しかわからないか)。

大先輩コンシェルジュ (CV:潘めぐみ)さん。仕事ぶりも人格も、ほぼ「完璧な人間」として描かれている印象。『らんま1/2』の天堂かすみお姉ちゃんみたいな感じの「穏やかで常に微笑みを浮かべているが誰も敵わない年上女性キャラ」を思わせる。作中数少ない「困ったお客様」であるVIAカリブモンクアザラシ(演:氷上恭子)のお客様に困らされた秋乃を救出する。

もう一人の先輩コンシュルジュ岩瀬(CV:藤原夏海)は、森先輩と秋乃の中間の先輩。のび太のママのような大きな眼鏡をかけている。社割で散財したりスイーツで喜んだりと、明るく楽しい先輩って感じ。序盤、秋乃が御客様を怒らせそうになってしまった時に助けてくれる。出番はないが一番好き。

絶滅種であるオオウミガラスエルル(CV:大塚剛央)は、いつも百貨店を徘徊している。秋乃は彼を御客様だと思っているが実は百貨店の偉い人(北極百貨店創業者の孫)。秋乃に目をかけており優しく声をかける。

コンシェルジュOB丸木(CV:吉富英治)さんは、既に引退した伝説のコンシェルジュ。コインマジックでお客様を楽しませたり古のコンシェルジュ七つ道具の一つ、回転式カードホルダー(めちゃくちゃカッコいいので欲しくなる)を駆使して要望に応えるが、なにぶん現役を引退しているがために情報が古い。しかしお客様方に絶大な人気があるので失敗しても皆を笑顔にする、そして長い現役時代がもたらした奇跡でそれを挽回したりする。フロアマネージャー・東堂は丸木さんが大好きで(東堂の先輩だったのだろう)秋乃が丸木さんの失敗で微笑んだりしたら咆哮をあげて威嚇したり、丸木さんが活躍すると「コンシェルジュ・マジック!」と改心の絶叫したりする(ここは楽しいコマなので映画版でも気合が入っていた)。それよりも丸木さんは原作ではクリスマス時期にサンタクロースの扮装をするほどふくよかなおじいさんなのだが、原作では細身の老紳士と、キャラデザが全く変わってしまっている。デザインもモロに西村ツチカキャラなので西村ツチカがデザインし直したのだろうと思われる。別にキャラデザが変わったことに異論があるわけではないし新丸木さんデザインもカッコいいのだが、元の丸木さんで何の問題もないし好きなデザインだったので「何でだろ?」と不思議な気持ちが湧いた。変更理由がわからないのでクエスチョンが頭から消えないといったところ。

北極百貨店内レストラン給仕長(CV:福山潤)は、「コンシェルジュ教育」の一環として秋乃が給仕をしたり、その後も何度か出てくる。スタイルが良く切れ長で線のような目をしている。秋乃の新人ならではの提案を優しく訂正したりと有能だが彼自身もミスしてしまったりもする。かなり好感の持てるナイスガイ。この、線みたいな目の日本人イケメンというデザインが秀逸。西洋人がこうデザインしたら差別的だと叩かれるだろうし、そういう意味では日本人じゃないと作れないキャラなので希少だ。かなりナイスキャラ。こんなイケメンの西村ツチカキャラは珍しい。もし彼の目が一重でなければ腹黒いキャラになっていた可能性が高い(気がする)。

トキワ(CV:中村悠一)は北極百貨店のリストラ執行人。職業柄、本作では数少ないイヤミなキャラ。見た目も精力の強そうなIT社長っぽい若き実業家っぽい見た目。あまり秋乃を評価しておらずリストラ対象として見ている、それはフロアマネージャー東堂の熱心な厳しさとは違い、最後まで冷たい印象がある。秋乃だけでなく絶滅種を優遇するという北極百貨店にも疑問を持っており、原作では最終回でVIAを愚弄してVIA特権で退場させされる(殺されるわけではない)。映画版ではVIAを愚弄したりはしないので、人間の悪を一身に背負った原作での彼とは違い、ただ厳しく店員達を観察してるだけの人のように印象が好転した(だがそれなら一人のキャラとして東堂に統合してもよかった気がしなくもない)。

本編にメインで多く出てくるのは秋乃と絶滅種たちなので、彼ら同僚の出番はあまり多くない。秋乃と絶滅種たちの活躍は映画を観てればわかりやすくお届けされるので同僚の方が気になって書いてみた。

 

 

映画は原作漫画の全20話、殆どのエピソードが入っており、そのまま入っていたり少しバラして上手く他のエピソードと合体させてみたりと、これをアニメ化したいと思っていただけあって凄く上手く一本の映画にしていた。
映画に入り切らなかったのは、耳が良いイリナキウサギ夫婦と菓子職人ドードーの話。アカネズミ夫婦やクアッガ親子へのホスピタリ茶(ティー)が上手くいかずリストラ執行人・トキワ(CV:中村悠一)がイヤミを言う失敗回、最終回で秋乃の後輩となるVIAドードーのような動物の青年……は映画に入ってないが他は全部入ってたと思う(というか彼らも多分、アニメのどこかで出てきてるだろう)。
原作漫画を読んでた時点で「人間のコンシェルジュが天国のような百貨店で絶滅動物達の要望に応える」「毎回、絶滅種の生態や絶滅した原因が語られる」「その絶滅した原因の殆どは人間のせい」「百貨店の外部は描かれない」……といったところを読んでて「あの世で人間が、滅ぼした動物に贖罪しているのを百貨店で表現したのかな」と思っていたが実際に映画の終盤(原作では最終回)で、似たような感じだったと判明する。
今世での生命活動を終えた生物たちが全員まとめて、次の「新しい世界」へと転生する前に「人間の罪」を問わずに移行してしまえば、また「人間たちのような暴虐を行う魔物」が出てきてしまうかもしれない。
だから人間達が滅ぼした絶滅種を祀って後世に残すため、そして人間達に、自分たちが滅ぼした絶滅種を「人間流のもてなし(百貨店という大量消費)」で、もてなしてせめてもの罪滅ぼしをさせる。それが北極百貨店だった。
……という百貨店の真相が原作でも映画でも終盤に一応語られるが、話の途中で察せられるので、原作でも映画でも特に具体的に語らず匂わせるだけでよかったような気がしなくもない。
それと本作のメインは、そういった真相よりも「新人コンシェルジュさん秋乃が御客様の要望に応えるための奮闘」「絶滅種動物について」という、本編の殆どで描かれている方なので、そういった真相は原作でも映画でも終盤でエルルがさらっと語るだけになっている。
原作では、秋乃が一話完結でVIAの難問に次々と応える、それが西村ツチカ先生の乾いたタッチと人物描写で描かれるので、ぱっと見の優しさとは裏腹に毎回、査定されてるような圧迫感があった。絵柄も人がすぐ死ぬエドワード・ゴーリーっぽいし。
映画版では秋乃を初めとする登場人物たちがアニメ声+アニメ演技で喋りリアクションも若干大きめ、一話完結ではなく二時間繋がってたり複数の事案が合体してたりするので現作に比べてかなり柔らかい印象になっている。
漫画を読んでいた時、個人的には、西村ツチカキャラはもっと滑舌悪く棒読みで喋ったり会話の途中で不自然な数秒間の間があるものだと思ってた(つまり演技してないかのような現実の人間みたいな喋り方)。
だがアニメだと全キャラが滑舌良くテンポよくオーバーリアクションで喋る。
まぁそりゃそうか。ただの勝手な思い込みだったので聞き流してください。

原作ではVIAの後輩ができて先輩コンシェルジュとなった秋乃がいつものように奮闘してこれからもコンシェルジュ頑張るぞという想いを新たにして終わる。
映画版だと世界が光に満ちた後のいつもの北極百貨店、「幼い頃、百貨店に来て走り回った秋乃がコンシェルジュさんに助けられて彼女に憧れる」という冒頭が繋がり、現在の秋乃がはしゃいで走り回る少女を助ける。

つまり真相部分で語られた「この百貨店は人間が動物たちへの贖罪を行う煉獄」だという事で、人間達は世界が一新されるまで繰り返しおもてなしをしているのだという事が匂わされて終わる。
これはキャッチーで良い改変だと思った。
この世界は、人間が今後も生を続けてもいいか?を査定されている場所なのだから、原作漫画で最初から感じていた「絶えず査定されているような感じ」という感触も間違ってなかったわけですね。
そういう感じで普通に良かったです。でも次また西村ツチカ作品のアニメ化があったら、もっとクセが強い人を選ぶ感じにして欲しい。

 

 

 

 

そんな感じでした

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