原題:The Holdovers 監督:アレクサンダー・ペイン 脚本&制作:デヴィッド・ヘミングソン 製作:マーク・ジョンソンほか 制作会社:ミラマックス 製作国:アメリカ 上映時間:133分 公開日:2023.10/27(日本は2024.6/21)
物凄くカッコいい名前のアレクサンダー・ペインだが、あんまり観てない。大昔『アバウト・シュミット』(2002)観て、このブログにあるものだと『ダウンサイズ』(2017)、この2本しか観てない。どちらも、オッサンの哀愁を漂わせて面白かったけど個人的にはあまり強烈に印象に残らなかった。
ストーリーは、脚本家兼制作のデヴィッド・ヘミングソンの半自伝的な内容らしい。
本作は凄い評判よかったし主演のポール・ジアマッティ好きだし期待してました。
第96回アカデミー賞にも作品賞を含む5部門で候補に挙がり、学食のマネージャー役ダヴァイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞を受賞した。
レンタルに来てたので観ました。アカデミー賞作品賞ノミネート作品……は、昔は大抵つまらなかったのだが近年はとても面白いので全部観ることにした。順調に観てきて本作を観て、残ったのはスコセッシの『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)だけなんだが、どういうわけかずっと販売だけで全くレンタルに来なくて観れない。このままじゃ次のアカデミー賞が来ちゃうよ。ちなみに9作品やはり面白いものが多くて、つまらないものはあまり無かった。
ところでサウンドトラックのジャケットがめちゃくちゃ良い。
というかポール・ジアマッティの顔が結構好きな事に気づいた。本作では随分、斜視っぽいのだが元からこんな目だっけ?
ネタバレあり
🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳 🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳 🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳
1970年12月。ボストン近郊にある全寮制の男子校バートン校。
皆、帰郷して家族とクリスマスを楽しむ季節だが学園には居残る者が僅かにいた。
偏屈で嫌われ者の古代史の教師、ポール・ハナム(演:ポール・ジアマッティ)。
ホールドオーバーズ(居残り)で補習する事になった反抗的な生徒、アンガス・タリー(演:ドミニク・セッサ)。
息子をベトナム戦争で喪った料理長、メアリー・ラム(演:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)。
クリスマスに家族と過ごすことができない孤独な三人は置いてけぼりのホリデイを過ごす事となった。
そういう話。
まず、このバートン校は金持ちのボンボンばかり通う男子校という前提。
ポール・ジアマッティ演じる古代史教師ポール・ハナムは「絶対に嘘をつかない」というバートン校の掟を守り、相手が誰だろうとクリスマスだろうと容赦なく教育しており、生徒からも同僚も融通が効かない奴だと嫌われている。学園に多額の献金してくれた議員の息子をも容赦なく落第させてしまった罰として、ハナムは、彼の最初の教え子でもあった校長から居残りを命じられる。
しかし家族もおらず学園が全てであるハナムにとっては罰になっていない。
ポール・ジアマッティはいつも偏屈な独身中年男性を何十年も演じてきてるね(それ以外の役を思い出せない)。
ハナム同様に嫌われ者の生徒アンガスも、母親が新しいボーイフレンドと旅行に行ってしまい、また成績不振で居残り勉強する羽目になった。
他にも4人くらい居残り生徒は居たのだが、金持ち生徒の親がヘリコプターでやって来て急遽スキー旅行に行くことになり皆飛んでいった。アンガスは、男と旅行に行った母親と連絡が取れないので一人だけ居残りとなった。
……「別に現代でも構わない話なのに何で1970年が舞台なんだろう?」と不思議に思ったが、アンガスが母親のスマホに電話できないようにするためか。
アンガスは現在不在の父に心が残っており、母が新しい男と恋愛して自分を全寮制の学園に入れて放ったらかしにされていると感じている。それで思春期ということもありトゲトゲしくなっており他人にキツく当たっている。
アンガス役の俳優は、ひねくれ者の役だけあって実にひねくれてそうなフェイス(……それは只の演技なのだろうが元からこういう顔したひねくれた思春期の少年にしか見えない)。
料理長メアリー・ラムは、若くに夫を亡くし、金がなくて入隊せざるを得なかった優秀な息子も戦死してしまった。彼女は何も目的がなくなってしまっているのだが、せめて愛する息子が居た学園で働いている。いわば息子が死んだ瞬間にこの学園で時間が止まってしまっている人間。だが息子のこともあってか、親に金があるというだけで大学まで自動的に進学できるバートン校のバカ生徒に若干腹立たしい気持ちも持っている。
そんな行き場のない三人がクリスマスから年始までを過ごす。
最初は全く仲良くなかった三人だが色々な小さなことの積み重ねで三人には(ハナムとアンガスには特に)絆が生まれていく。こういう話だと当然そうなる。「三人だけ学園に閉じ込められてる」ってことは映画的には「三人で旅をする映画」みたいなものなので、映画を通して三人が成長したり絆が生まれるのは必然だ。
ちなみにもう一人、優しい黒人男性の掃除夫も居るのだが、彼には特に人間ドラマがなく、イベントの日に三人と一緒に楽しむくらいのサブキャラクター。
そういえば近所のバーのハナムが好ましく思っている女性のクリスマスパーティでアンガスが、その家の上品な可愛い娘をチラチラ見てたら「どうしたの?私の服を脱がしたい?笑」と言われてアンガスがドキィッ!とする時に完全にアンガスとシンクロして観てたので一緒にドキィッ!として楽しかった。
ハナムとアンガス、あと時々メアリーも近所でちょっとしたイベントを過ごして互いの秘密やトラウマを打ち明けて結びつきを強くしていく。
問題児アンガスは色々問題を起こすのだが、父親絡みで最後にしたことがホールドオーバーズ終了後に波紋を産み、大きな問題に発展する。
それもハナムとアンガス間の秘密だったのだが、よりによってアンガスの他社への愛情が元で外界にバレて悲劇に繋がってしまうのが皮肉。
そしてハナムは絶対に守っていた掟を破って己を犠牲にしてアンガスを護る。
そうしなければ、アンガスが両親によって陸軍学校に転校させられてしまっていた。アンガスがそんなところに入れられたら初日でいじめられて一瞬で精神崩壊してダメになってしまう、それは防がなければならない(何で子供に理解のない親は極端な所にブチ込んで余計にダメにしてしまうのだろうか)。
傷つきひねくれたガキだったアンガスは、ホールドオーバーズを通じてハナムと触れ合ったことで真っ直ぐ伸びるようになった。
またハナムは「彼の全て」のように思われたバートン校を去らなければならなくなったが、全く悲壮感はなくハッピーエンドのように終わる。
恐らく作中で何度か言っていたが勇気がなかった著作執筆に向かうのだろう、と想像させる。
ハナムとアンガスが今後の人生でまた会うことがあるのかないのかはわからないが、互いの中に良いものを残した両者にとって物理的にまた会う会わないは大して問題ではないのだろう。
爽やかな風が吹きました。終始ベタベタしておらず好みの感じでした(それこそアメリカ映画に求めるものよ)。
ハナムが元生徒の校長に「君は男性器のかたちを取った腫瘍のような奴だ」みたいな凄い悪口も良かった。
この、いがみ合ってた者同士が共同生活を通じてわかり合うようになる……みたいな話は無数に作られてるしラスト直前くらいまでの面白さを持つ映画も一杯あるが、やはりラスト10分くらい、この終盤の良さがあってこそ心に残り本作をアカデミー作品賞ノミネートさせたんだろうなと思った。
🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳 🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳 🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳
そんな感じでした
〈アレクサンダー・ペイン監督作〉
『ダウンサイズ』(2017)/縮小化の設定やそれを捨てた後半の人間ドラマも悪くないが両者が上手く絡んでない気がした🚶♂️🚶♀️ - gock221B
🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳🎄🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳🎄🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳🎄🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳🎄🏫👨🏻🏫👨🎓👩🏿🍳🎄🏫
The Holdovers (2023) - IMDb
The Holdovers | Rotten Tomatoes
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ - | Filmarks映画