原題:Alien: Resurrection 監督:ジャン=ピエール・ジュネ 脚本:ジョス・ウェドン 主演&製作:シガニー・ウィーヴァー 製作:ゴードン・キャロル、デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、ビル・バダラート キャラクター創造:ダン・オバノン、ロナルド・シャセット プロダクションデザイン:ナイジェル・フェルプス 撮影:ダリウス・コンジ 編集:エルヴェ・シュナイ 音楽:ジョン・フリッゼル 制作会社:ブランディワイン・プロダクションズ 配給:20世紀フォックス 上映時間:通常版は109分/完全版は116分 製作国:アメリカ 公開日:1997.11/28(日本は1998.04/25) シリーズ:『エイリアン』シリーズ第4作目
先日『エイリアン:ロムルス』(2024)観て思いのほか面白かったので、折角だからシリーズ全部観返そうという感じ。本当は前日譚2本が観たいのだがどうせだから全部観ることにして、まず観たら色んな意味でションボリしそうな『エイリアン3 完全版』(1992)を処理。中年になって数十年ぶりに観たがやはり、つまらないしションボリした。ムカつくとかじゃなくてなんか観たら元気なくなる。もう観ることもないだろう。続いて一本だけ時代が離れていて時系列が最後の本作を観た。
これは当時、レンタルで観て面白くて好きだった記憶。ただし1回しか観てない。
世間での評判
監督は『デリカテッセン』(1991) 『ロスト・チルドレン』(1995)などでお馴染みのフランス人監督のジュネ氏。『アメリ』(2001)がいちばん有名か。
脚本は数々の人気作の脚本を書いてたり監督でも『アベンジャーズ』(2012)で世界を獲ったジョス・ウェドン……まさか、その5年後にセクハラ&パワハラで完全に業界から干されるとは思わなかったし今頃、本人も毎朝起きる度に「あぁ夢じゃなかった……」とガッカリ目覚めていることだろう。
完全にネタバレあり。ちなみに観たのは完全版。
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前回までのあらすじ
『エイリアン』(1979)
西暦2122年、ウェイランド・ユタニ社の所有する宇宙貨物船〈ノストロモ号〉は巨大な異星人の遺体がある惑星LV-426にて未知の宇宙生物エイリアンと遭遇、搭乗員は次々と殺される。ノストロモ号の科学主任アンドロイド・アッシュ(演:イアン・ホルム)はウェイランド・ユタニ社によって研究用のエイリアン回収の命令、そしてその為なら乗組員を破棄しても構わないとインプットされていた。
かくしてノストロモ号はエイリアンとウェイランド・ユタニ社のせいで壊滅。
エイリアン成体を宇宙に放逐した唯一の生存者エレン・リプリーは脱出用シャトル〈ナルキッソス〉で生き延びた。
『エイリアン2』(1986)
西暦2179年。前作の後57年後宇宙を漂流していたエレン・リプリーはウェイランド・ユタニ社に救助され、エイリアン・クイーンを頂点とするエイリアンの巣となって連絡の途絶えた惑星LV-426探索に向かう植民地海兵隊に同行。リプリーと仲間達は犠牲を出しながらもクイーンを倒し、再び冷凍睡眠に就いた。
『エイリアン3』(1992)
西暦2270年。前作の91年後。エレン・リプリー達の乗った宇宙戦艦にクイーン・エイリアンの卵が産み付けられていたために破壊され、脱出艇は流刑惑星フューリーに不時着し、リプリー以外は事故死してしまう。
リプリーと囚人たちは共闘してエイリアンを倒すが、リプリーはエイリアン・クイーンの卵を産み付けられていた。それがウェイランド・ユタニ社の手に渡れば生物兵器化されて大勢の人が死ぬと思ったリプリーは、溶鉱炉に身投げして胎内のエイリアン・クイーンごと死亡した。
西暦2470年頃。200年前の前作でエレン・リプリーは死亡。ウェイランド・ユタ二社も買収されて消滅していた。
軍の実験用の超巨大宇宙船オーリガでは、前作での流刑惑星フューリーに残っていたエレン・リプリーの血液を採取し、彼女のクローン、リプリー8号(演:シガニー・ウィーバー)を生成。リプリー8号の胎内に居たエイリアン・クイーンを取り出し、秘密裏に違法の実験をしていた。
リプリーは、クローン化の途中でDNAがエイリアンと一部融合しており怪力や酸の血を有していた。研究のため生かされたリプリーはエレン・リプリーの生前の記憶が一部残っており「エイリアンを手懐けられるわけがない」と軍の科学者に警告する。
民間貨物輸送宇宙船・ベティは、エイリアンを繁殖させるための苗床となる冷凍睡眠中の人間たちを盗んで連れて来た。
そんな中、科学者に囚われていたエイリアンは仲間を殺し、その酸の血で床を溶かして脱出した――
そういう事で超巨大宇宙船オーリガは乗ってる軍人やら科学者が数分でエイリアンに皆殺しに遭い、リプリー8号と宇宙船ベティ号の宇宙海賊たち数人はエイリアンの追跡を振り切ってベティ号に辿り着けるか!?という割とシンプルな話。
リプリーと共に逃げる今回の仲間。ベティ乗組員は、謎めいた女性コール(演:ウィノナ・ライダー)、粗野なロナルド(演:ロン・パールマン)、下半身不随の障害者ドム(演:ドミニク・ピノン)、その他三人。
あとオーリガでリプリー8号からエイリアン・クイーンを取り上げた博士。あと警備兵の生き残り。他には冷凍睡眠中にベティ号に誘拐されて連れてこられた眼鏡の男など。
エイリアン数体が脱出し、エイリアン・クイーンも脱出。卵を産みまくりオーリガ内は阿鼻叫喚となる……のだが、割と数分でほぼ全滅してしまうのでオーリガの乗組員はまるで30人くらいしか居なかったように見える。もっとエイリアンによる乗組員惨殺をもっと観たかった気もする。
リプリー達はベティ号まで逃げる。
本作も当時は「とにかくラストまで走る走る!全力疾走」という感じで言われていて僕もそう思ってたが今観たら、古い作品となってしまったためか「猛ダッシュで走る映画」というイメージではなく割と普通のアクションって印象になってしまっていた。
ジュネ監督の特色か、他の『エイリアン』作品よりもグロ描写が若干多い印象。あとシズル感も強く、エイリアンの体液やヨダレなどいつもより汁気が多くてビッシャビシャの印象。艦内も水漏れやらなんやらで凄く濡れているし、水中を潜水してエイリアンから逃げるシーンも本作独自の場面。
途中、エイリアンを研究していた部屋が見つかり、エレン・リプリーの血液から作ったクローンの失敗作が6体ある。そして憐れな姿のリプリー7号が「コロシテ……」って感じなのでリプリー8号は怒りの火炎放射でリプリー1~7号を焼いてあの世に送ってやる。ウェイランド・ユタニ社が消えても結局人間の本性、悪なり。
後でコールがアンドロイドだと判明した時もリプリーは「やっぱりね、人間は貴女ほど優しくないもの」と言い人類性悪説が強調される。
そういえばリプリーだが、1~2作目のヒットで「戦う女性」として時代の寵児となった。そのため『エイリアン3 完全版』(1992)では2までよりリプリーの扱いが完全にカリスマキャラみたいな大袈裟なものになっていた。本作では、エイリアンのDNAと融合した事で怪力や超感覚を備えた超人となっているためか、事あるごとにニヤリ……としたりしてカリスマ度が上がった。ルックスも、長身にノースリーブのスーツに常に濡れたオールバックでロックスターみたいだ。
リプリーやシガニー・ウィーヴァー氏の功績は凄いし文句というわけではないのだが、このたっぷり間を取って行動したり暗黒微笑するキャラはちょっとな……ナルシスティックすぎる気がする。今後、シガニー・ウィーヴァーで『エイリアン』作品撮る時もこのニヤニヤして「待って……感じる……」とか言うキャラのままなんだろうか?最初の一般人キャラのままで良かったが。これはやはり世界を代表して「戦う女性キャラ」になってしまったのでシガニー・ウィーヴァー自身がエゴをそのキャラに合わせて増大させたせいなのかもね。
あ、でも生まれたばかりの無感情リプリー8号が「金髪の少女の写真」を見て「うっ」と感情を取り戻したり、コールと胸の内を喋ってる時にニュートの話をして「女の子、守れなかった……もう名前を思い出せないけど……」というのも胸に来るものがあった。本作作ってる人らもニュートは気になってたのね。
エイリアン・クイーンの巣に落ちたリプリー。
リプリーがエイリアンのDNAを取り込んで超人となったように、エイリアン・クイーンもまたリプリーから子宮を自らに取り込んだ。そしてエイリアンと人類のハイブリッドであるエイリアン、ニューボーン・エイリアンが産まれる。
その一部始終を、エイリアンに拉致され繭にされたポニーテール科学者がずっと「なんと美しい……蝶のようだ」などと実況してるのがおかしい。
ニューボーンは、頭部が人間の頭蓋骨のような形状で恐ろしいが光が当たると眼窩の奥に人間そっくりのつぶらな瞳があり、その瞳がたまに照らされて見えたら何か「見たらいけないもの」を見たような気分になりハッとさせられる。下半身は膣のようなものが付いていて女性っぽくもある。その出自やデザインやあらゆるものが「冒涜的な生命の禁忌」を感じさせる。『エイリアン:ロムルス』(2024)の”オフスプリング”はニューボーンとは全く違う工程で出来たモンスターだが、どう見てもニューボーンを意識したものだろう。
『エイリアン』シリーズといえば「女性を追い詰める走る男性器」といった加害的な男性性ホラーのイメージだが本作は割とそういうメタファーは控えめ、でもニューボーンがコールの胴体に空いた風穴に指を入れて苦しめる描写はわかりやすいレイプのメタファー、あとベティ号のセクシー女性乗組員が潜水で泳いでてその開いた股ぐらに泳いで近づくエイリアンに脚を引っ張られるのもそうか。でも本作での「迫る男性器」っぽい描写はそれくらいで少なめ。
産まれたニューボーンは、自分を出産したエイリアン・クイーンを引きちぎって殺す。そしてリプリーに懐いてスリスリペロペロする(全作にある、リプリーの顔にエイリアンが顔近づけるシーン)。「クイーンは違う!自分のママはリプリーだ」という事だろう。
ラストバトル、自分には懐くがそれ以外は惨殺しまくるニューボーンと一緒にやってはいけないのでリプリーは仕方なくニューボーンを残酷な方法で殺す。ニューボーンくんも凶暴な顔ではなく「何で何で!?痛いよおかあさん」といった苦痛を伴った戸惑った顔しいた。クールなリプリー8号も思わず号泣して「ごめんね」と言う。さすがにニューボーンが可哀想すぎて胸に来るものがあった。
昔は何とも思わなかったので当時はただバケモノとしか思ってなかったんだろうな。
これ、リプリーも一緒に逃げてるベティ号クルーという他者たち……つまり人間社会と行動を共にしていたから殺したけど、逃げてるのがリプリーとニューボーンだけなら2人で一緒に逃げてもおかしくないね。……いや、どっちにしてもリプリーは前世の記憶があるから早かれ遅かれニューボーンは殺してたか。
久々に観ても好感度あったが、さすがに道中の展開は古くて、昔ほど面白くはなかった。ハイテンション展開って映像技術とともに色褪せるよね(一方『エイリアン』一作目は当時の時点でクラシックな怪奇映画っぽく撮ってるので逆に今観ても色褪せてない)。その代わり昔は何とも思わなかったニューボーンが可哀想で、ニューボーンばかり記憶に残った。
そういう感じで「道中ハイテンション→なんか普通だな」「ニューボーン?死ね→ニューボーンかわいそう……」この二点が昔と今で大きく印象変わったポイントでしたわ。
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そんな感じでした
Alien Resurrection (1997) - IMDb
Alien Resurrection | Rotten Tomatoes
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