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『テトリス』(2023)/資本主義とソ連どちらにもある光と闇の勢力4つがテトリスを奪い合うスパイ巨編凸


原題:Tetris 監督:ジョン・S・ベアード 脚本:ノア・ピンク 撮影:アルウィン・H・カックラー 編集:マーティン・ウォルシュほか 音楽:ローン・バルフェ 製作会社:Appleスタジオ 配給:Apple TV+ 製作国:イギリス/アメリカ 上映時間:117分 配信開始日:2023.3/24(日本では2023.3/31)

 


動画配信サービスApple TV+が2025年の正月に数日間、無料開放してたので以前から気になってた「Apple TV+でないと観れない」映画数本を観た。本作もApple TV+制作配信映画の一本。

オランダ人のロジャースがソ連の革新的なゲーム『テトリス』(1984-)の販売権を獲得するためソ連で悪戦苦闘を繰り広げるゲーム自伝映画……というかほぼポリティカル・スリラー映画。

テトリス』自体については誰もが知ってるのし自分が特別詳しいわけでもないのでWikipediaを貼って自分は説明はしないが、
テトリス - Wikipedia
自分としては任天堂ファミコン版『テトリス』(1988)、ゲームボーイ版『テトリス』(1988)、SEGAのアーケード・ゲーム版『テトリス』(1988)、この思春期~20歳前後の頃にやった3つが僕にとってのテトリス。以降も携帯電話とかでもやってた。
また当時テトリスにあやかって色んな落ち物パズルゲームが出ていたが、ブロックが爆発する『ボンブリス』というゲームが日本で開発されてテトリスにおまけモードで入ってた。テトリスはあまりにもガチな世界になっていってたので僕はどっちかろいうとボンブリスをのんびりやってた記憶。今調べたら『テトリス2+ボンブリス』(1991)と『スーパーテトリス2+ボンブリス』(1992)を持っていたらしい。
20代の時に同棲してた彼女が、何か不満があると『スーパーテトリス2+ボンブリス』(1992)のテトリスの方をしながら僕への不満を脳内で推敲して僕を激しく攻撃する……といった事が繰り返されたためトラウマになったのか『スーパーテトリス2+ボンブリス』(1992)のテトリスモードの動画を今検索して見てもBGM聴いたら気分が悪くなった。
よくテトリスはプレイすると無心になれるというが、あれこれとゲーム内の事を思考する必要がないため、あれやこれやと独自の思考が進んでしまう。だからネガティブな人や現状が不満な人がやるのはそれを増幅させて危険だというのが僕の持論だ(エヴァのシンジくんが「風呂に入ると嫌なことばかり考えてしまう」と言ってたのも同じ理論だ)。

ネタバレあり



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東京に住んでいるアメリプログラマーでありビデオゲームのセールスマンでもあるオランダ出身アメリカ人ヘンク・B・ロジャース(演:タロン・エガートン)。
ロジャースは1988年、まだ分厚い鉄のカーテンが降ろされていた共産主義国家・ソビエト連邦で、プログラマーアレクセイ・パジトノフ(演:ニキータ・エフレーモフ)が開発したテトリミノ(ブロック)を組み合わせて消えていく麻薬的な楽しさに満ちた落ち物パズル・ゲーム元祖テトリス』(1984-)に衝撃を受けた。
ロージャースは『テトリス』を全世界で発売しようと販売権取得のためソ連へと飛ぶが……――

という話。

前半はテトリスと出会ったロジャースが、副社長でもある妻アケミ・ロジャース(演:文音)、任天堂ニンテンドー・オブ・アメリのトップたち、融資してもらう銀行支店長などを説得しトントン拍子で進む。この前半は『テトリス』の成り立ちについてのドキュメンタリー番組のようなテイストで進む。
また場面転換など行われる度に、8-Bit風に描かれたドットの登場人物や場所が表示されて実写に変わっていったりとポップな作風。
そして劇中のソ連、劇中の東京、そしてそれらに出てくる人たち、そしてその演技などは、アメリカ人が想像する「冷たく無彩色で殺風景なソ連」「ポップだが子供っぽい日本」といったテイストが誇張されている(だが誇張したくてわざと誇張してそうしてる感じなので「全然現地と違うぞ!」などと指摘するとその指摘した人の文化リテラシーが低く見られそうなそんな感じ)。
そしてアメリカや日本でのテトリス販売に向けて準備を整えたロジャースがソ連に飛び「後はテトリスの販売権を買って販売するだけだ!」というところで、ソ連の『テトリス』販売元であるElorg社に行く。
現地で声をかけてきた貧困女性サーシャ(演:ソフィア・レベデヴァ)を通訳にして交渉するロジャース。
起きる出来事だけ言うなら、ここから最後までElorg会長ニコライ・ベリコフ(演:オレグ・ステファン)と交渉するだけなのだが、私腹を肥やすため介入してきたKGB局員ヴァレンティン・トリフォノフ(演:イゴール・グラブゾフ)、メディア王ロバート・マクスウェル(演:ロジャー・アラム)一派との対立などにより異常に困難な世界に突入する。このソ連での奇怪な交渉生活が本編の大部分を占める。

 


まず『テトリス』の権利を買おうとしてるのはロジャースだけでなく買い叩こうとしているマクスウェル一派と権利を争っているというのがややこしい。Elorgと開発者アレクセイは「アメリカの資本主義者どもにカモられている」と感じているため交渉はなかなか前進しない。
またKGBの恐ろしい男ヴァレンティンが権力を盾に私服を肥やそうとして、ロジャースやElorgに圧力をかけて邪魔してくる。
しかし好ましい人格のロジャースが誠実に交渉してElorg会長には「君の方が良さそうだな」と誠意が伝わってくる。
開発者アレクセイの自宅訪問してテトリスのプログラムについて語り合ったり、ソ連アメリカのヒット曲を流す秘密のディスコ?のような場所でエンジョイしたりして友情を温める。しかし表立って外国人を自宅に招いたりすころは違反であるため、そういったささやかな遊びをするだけでもレジスタンス活動のようにコソコソしなくてはいけない。そしてそうしても全てKGBに記録されている。ロジャースがソ連に降り立った時からずっと監視されているし通訳を買って出てくれた女性サーシャもKGB局員だ。
社会主義国家であるゆえ『テトリス』がどんなにヒットしようと開発者アレクセイには一銭も入ってこない。だからアレクセイはせめてちゃんとした人に売りたいと思っている。
ロジャースがアレクセイの家で話してる時、この時まだテトリスは一列づつしか消えなかった。ロジャースは「同時に複数列が消えたら爽快じゃない?」と提案し、ここで”水色の長い棒”と呼ばれがちなI-テトリミノを差し込んだら四列同時に消えてめっちゃ気持ちいいというSEXを思わせるテトリスのあの快感が生まれた。
このエプソードがどこまで本当かは知らないけど、共産主義国家に住むアレクセイが「一列づつ消える以外のことを思い出しもしなかった……」と言い、アメリカ人ロジャースが自由で一攫千金的なアイデアを思いついたというのが示唆的で面白い。
またロジャースが「たかが楽しいゲームを売って広めたいだけなのに何でこんなに面倒で邪魔ばかりされるんだろう?」というロジャースに、通訳(KGB局員)サーシャは「あなたがアメリカ人だからよ。あなたやあなたがしたがっている事(テトリス爆売り)は西側の資本主義のそのもの。あなたはここでは只のゲーム屋ではなくアメリカの象徴なのよ」と言い、本作が言いたいの殆どを口頭で一気に全部説明してくれる場面もあって親切だ。

恐ろしいKGBヴァレンティンの様々な妨害で一度は敗北して諦めかけるが、開発者アレクセイやElorg会長のKGBの圧力に負けない助力、マクスウェルの自滅、ゴルバチョフにヴァレンティンの非道をチクったサーシャなどもロジャースに味方して、気持ちの良いハッピーエンドを迎える。

こうして見ると

良い資本主義=ロジャース任天堂
悪い資本主義=メディア王マクスウェル

良い共産主義アクレセイ&ElorgKGBサーシャ、ゴルバチョフ
悪い共産主義KGBヴァレンティン

といった感じで、あまり偏りがないように光と闇のバランスが上手く取れている。
現代の作品と考えると女性要素が少なく、実在の女性登場人物も日本で家を守っているロジャースの妻アケミだけというのもちょっと古風なので、色仕掛けでスパイさせられてた事を卑劣な上司ヴァレンティンを侮辱されたのが切っ掛けとなり反旗を翻したサーシャという活躍をする女性キャラを作ったのかも。
ティーブのキャラや映像や演出などが非常にポップで見やすいが、そうじゃなければなかなか胸糞悪くて観るのが辛かった映画かもしれない。別に誰かが直接死んだりするわけではないが、それほど圧政的な描写って観てるのが辛い。甘くしてくれないとかなり辛いものがある。
もう少し任天堂SEGAなどの日本要素も観たかった気もするが、そこがメインじゃないので仕方ない。任天堂SEGAの映画はいつか必ず何度も作られるだろうからその時まで我慢だ。しかしニンテンドー・オブ・アメリカが開発する〈ゲームボーイ〉はまるで「シンギュラリティを迎えた量子コンピューター」とか「魔力を秘めた現代のオーパーツ」であるかのように登場するので相変わらず高い欧米人の任天堂幻想も堪能した。
「良作」という感じで面白かったです。
「楽しいゲーム実話ものかな?」と思ってたらそれは前半だけで残りは「テトリスの販売権」というマクガフィンを奪い合うほぼスパイ映画になっている。「だから『キングスマン』(2014)の主人公の彼が本作の主人公に選ばれたんかな~」と思った。

AppleTV+専用映画なので観られてなさそうなのが勿体ない(この映画の感想とかマジで一度も見たことない)。
映画サブスクとしても、まずもはやインフラの一つとも言えるアマプラ。次にネトフリ?あとはMARVELやSWが観たい人やディズニーやピクサーが観たい御家族がDisney+。HBO作品やDC作品や旧作映画好きな映画好きが入るU-NEXT……こんな感じか?
AppleTV+は何だろう、Apple信者?入るとしてもアマプラやもう1つ2つサブスク入った人が更に入るパターンしか考えられないからサブスクにそんだけお金を使える人とか映画評論家くらいしか居ない。何となく意識が高い人が入ってそうな印象。
僕はアマプラとU-NEXTはずっと入っていたい。ネトフリとDisney+はどうしても観たいものが来たら仕方なく入って観終わったらなるべくすぐ抜ける印象。なるべく長居したくない感じ。

 

 

そんな感じでした

 


 

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Tetris (2023) - IMDb
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Tetris (2023) directed by Jon S. Baird • Reviews, film + cast • Letterboxd
テトリス - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

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