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『邪悪なるもの』(2023)/今までずっと現実を見てなかったダメ男が土壇場で急にやる気出して災厄を拡散させて邪悪なる者だと証明してしまう素晴らしいホラー


原題:Cuando acecha la maldad 監督&脚本:デミアン・ルグナ 製作総指揮:フェルナンド・ディアス。エミリー・ゴット。サミュエル・ジマーマン 撮影:マリアノ・スアレス 音楽:パブロ・フー 製作国:アルゼンチン/アメリカ 上映時間:99分 公開日:アルゼンチンは2023.11/9。アメリカは2023.10/6(日本は2025/01/31) 英題:When Evil Lurks



先週だか先々週だかに観たが最近忙しくてブログが更新できないままになってたやつ(というか正月に観たAppleTV+映画の感想もまだ全部書いてない)。年に何回かあるブログ書くのが面倒くさい時期だ。とはいえ今年で10年目だから続いてるよな。
シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀長編映画賞を受賞してネット評価も高いらしい。ホラー映画はよほど面白くてもホラーというだけで「死んでばかりで内容がない!」などという訳のわからない評価によって低評価にされがちなのでネットで評価高いのは珍しい(こう言う人は伏線回収とかハッピーエンドによって評価を高める傾向があるので殆どのホラーは低評価になりがち)。
『テリファイド』(2017)で有名になったアルゼンチンのホラー系監督らしいが『テリファイド』(2017)観てないわ。そのうちアマプラとかに来たら観よう。

ネタバレあり

 

 

😈

 

 

アルゼンチンの片田舎に住む、妻子に逃げられた独身中年男性ペドロ(演:エセキエル・ロドリゲス)、その弟ジミー(演:デミアン・サロモン)。
彼ら兄弟は、夜更けに銃声を聞き、翌朝、町のはずれでバラバラにされた死体を発見する。
変死体が持っていたメモの住所は近隣の顔見知りの老女の家で、行ってみると彼女の息子が見るも無惨な肉塊となって生きていた。
兄弟は一年以上この状態で生きているという肉塊となった青年を見て「これは悪魔に魂を乗っ取られて身体が腐敗していく“悪魔憑き”だ」と確信。“悪魔憑き”は専門の”処理人”によって適切に処理されなければならず、古くから伝わる”7つのルール”を守らなければ、悪魔が忍び寄りパンデミックのように拡散し世界の終わりが訪れるという。
老女は息子の悪魔憑きを1年も前に警察に届け出ていたが、警察の怠慢によって”処理人”がようやく来たのが昨日。しかも処理人は老女の家に辿り着く前に悪魔に既に惨殺されていたということだ。
地元の警察は全く協力的でないので、兄弟は仕方なく地元の名士的なハゲのおっさんに頼る。兄弟はハゲのことを嫌ってるようだが”悪魔憑き”を信じて適切に処置しようとする奴がこのオッサン3人しか居ないのだから仕方がない。3人は肉塊となった青年をトラックの荷台に載せて遠くに捨てに行く。しかし途中でどうやら青年をトラックから落としてしまった。「どこに落としたのか……範囲が広すぎる。”遠くに捨てる”という目的は果たしたからまぁ……ええやろ」と、肉塊青年を放ったらかしにして帰宅してしまう。コロナ禍で言うと根源となるコロナ患者を隣町に捨ててきたようなもので、後の悲劇が想像できる。
翌朝、さっそく悪魔はヤギの姿をとってハゲの農場に現れたのでビビったハゲは”7つのルール”の一つ「悪魔憑きを銃殺してはいけない」を破ってしまいヤギを撃ち殺してしまい、悪魔はハゲの妻に憑依、ハゲと自分を斧で滅してしまった(ちなみにハゲ夫婦は「悪魔を撃ってはいけない」のほかにも「(悪魔が憑依しやすい)動物の近くに居てはいけない」「悪魔を恐れてはいけない」など、”7つのルール”のうち3つも破っている)。
もうどうにもならんと悟ったペドロとジミーは愛する家族(兄弟の老母、ペドロの別れた妻子)だけでも救おうと車で遠くに逃げようとする。
しかし老母はOKだが、ペドロの元妻は悪魔を信じておらず、しかもペドロには接近禁止命令が出されてるので全くスムーズに脱出できず、しかもペドロたちは既に「(悪魔が憑依しやすい)動物の近くに居てはいけない」「(悪魔が憑依しやすい)子供の近くに居てはいけない」「悪魔を恐れてはいけない」と、”7つのルール”を知らん間に3つも破っているので上手くいくはずもなく、悪魔憑きによる被害はどんどん加速していく――

というのが前半くらい?まで。
映画が始まった瞬間に、兄弟が夜中に遠くで悪魔に襲われている処理人の銃声を聞くところから始まるが、ここで兄弟が「何の音だ?」と言った瞬間からラストまで、他の映画でいう第三幕のクライマックスがずっと続いてるような感じなので全編面白い。非常に面白いホラー映画だった。
『バクラウ 地図から消された村』(2019)とかもそうだが、訳わからん国の映画がアメリカで人気出て更に日本まで来た……というパターン、よほど面白いからそうなるのであって最初から面白いことがある程度保証されている。
悪魔憑き系の映画は、悪魔を退けるための「してはならない事」「すべき事」などのルールが割と明確に決まっているところが、何だかコンピューターのプログラムやバグに対抗しているかのようなシステマチックな対処法で、そこが面白い(漫画『呪術廻戦』の領域展開などの後付バトルも同様の理由で面白い)。そしてこういった映画の”悪魔”というのは、この世の”悪”そのものが突然塊となった概念のような強大な事象なので倒すことはできずやり過ごすことしかできない。そこも好きだし、そんな漠然とした”悪”に対して妙に具体的な対処法で何とかしようとするところもまた面白い。
アメリカのエクソシスト系映画は、割と似た展開があまりに多いのと、ここ10年くらいジェームズ・ワン制作のオカルト映画で作られすぎた。好きで全部観てるが、あまりにも似た展開が多いのに量産されすぎたのと、主人公側があまりに勝利できすぎてしまうのでさすがに飽きてきた(悪魔に勝っちゃう映画があまりに長年ヒットしてたのが如何にもアメリカだよな)。
そのせいか、アメリカ以外の悪魔憑き映画の方が、より”悪魔”に真に迫っているものが多くて面白くなってきた今日この頃。

ペドロとジミーの兄弟は犠牲を出しつつ老母とペドロの2人の息子を何とか連れ出す。
老母は孫に”7つのルール”を孫に教える。
老母「”悪魔の名前を絶対に言っちゃダメ”、これもルールのうち。」
孫「悪魔?たとえばどんな?
老母「たとえばルシファー、ベルゼブブ……
ペドロ「母さん!やめろ!
ジミー「言ってる言ってる!いま言っとるやん!
などと言ったやり取りが非常に秀逸。しかも祖母の言葉を聞いた自閉症の方のペドロの息子が「ベルゼブブ……ベルゼブブ……」と、言ってはいけない悪魔の名前をずっと小声で暗唱している。でも小声すぎてペドロとかには聞こえてない。ろくなことにならない今後の展開が期待できる。この様に「NOW」も面白いし、面白いNOWを展開しつつ「後の楽しみ」も撒いてくれてるので面白さが切れない。
また、これはアメリカの映画じゃないので「愛犬」「可愛い幼女」「可愛い男児」「妻」など、アメリカ映画では滅多に死なないポジションのキャラクターが、そいつらから先に無惨にブッ殺されていくのも新鮮だった。
非常に悲惨だが、ガザの紛争のニュースとか聞いてると何の罪もない子供たちとか医師とかから先に殺されてるので、ある意味現実に即した展開と言える。
死んでしまう人たちはペドロが来たせいで死んでしまったようなものなのでペドロは落ち込む。……「悪魔憑きは町じゅうに拡散されて蔓延してるのでペドロが来なくても死んでたやろ」と言われたら確かにそうなのだが、映画というのは現実ではなく描写されてる時間が全ての世界なので「ペドロが来たせいで皆死んだ」というのもメタ的には正しい。わかる?
また、離婚してもカネないからろくに養育費払わず元妻に嫌われてるペドロだが、急いで出てきたので「息子にアイスクリーム買う金すらない」とか、処理人をしているジミーの知り合いの霊能者女性の言うこともちゃんと聞かなかったりして「平時ではペドロ、かなりどうしようもない男なんだろう」という事が伺える。
ペドロというどうしようもない独身中年男性が、何とか肉親だけは救おうと良かれと思って奔走するが、ペドロ自体がダメ人間がために救いたかった肉親が全員ペドロのせいで惨死してしまい、更に国に悪魔をどんどん蔓延させてしまう。それがこの映画。
後半の展開は、説明が少ないのでよくわからないが、どうやら悪魔が子供を操って決定的に強力なダミアンみたいな感じの悪魔の王子を顕現させた感じ?
ペドロが悪魔の王子によって額に印を付けられ、ペドロだけは全く殺されないのは「このペドロとかいうダメな男……悪魔パンデミックを拡散させる才能アリ!」ということで、そういう役割にさせられたということか?よくわからないがそう解釈した。
全く役立てる時間がなかったが処理人女性が持つ、悪魔憑き処理道具も神秘的で興味深かった。またペドロの自閉症の息子を指して「この子、腐ってない?」みたいなことを言うのも面白かった。「子供」そのものがもう悪魔に憑かれやすいそうだが、この自閉症の子は悪魔を連呼して呼び込んだり、そもそも精神が曖昧な状態にあるから健常者児童より余計に悪魔に憑かれやすいという際どいことを指していたのかも。

後半わかりにくい展開が多いが全編おもろかったです。

さっきも言ったが本作は、ダメな独身中年男性ペドロが、ギリギリになってやる気を出して皆を救おうとしたが、それが仇となって余計に惨劇が拡散してしまい、当の本人であるペドロだけは最後まで元気満々で絶望して立ちすくむ……そんな映画だと受け取りました。
警官の怠慢など、アルゼンチンの今の国の空気を反映した部分もあるかもしれないが、アルゼンチンがどんな国なのかなんて知らんので置いとくとして、ということはつまり「邪悪なる者」というのは”漠然とした悪魔”などではなく、今まで現実を見ず駄目な日常でもよしとしていたダメ人間だった癖に、土壇場で急に皆を救おうと妻子の再婚相手の家に行くなどを初めとした極端な行動したせいで全員死ぬことになった主人公ペドロのことなんだろうと思った。

追記:しかし「家族は全員死亡した上に自身は悪魔と契約してしまう。残った息子も重罪を負う」という、これ以上ない救いのないバッドエンドに見えるが―実際バッドエンドだが―しかしペドロが「悪魔の子を見て打ちのめされ」最後に「家で息子のしたことを知り打ちのめされ」これらは「今まで現実を直視せずにいた主人公が遂に現実を直視して受け入れた」という事になる。だから表面的には「救いのないバッドエンド」に見えるものの実はそうではないと思うようになった。
勿論、別れた妻の再婚相手のようなまともそうな人の顛末や彼が主人公の立場でこのラストだったら……と思うとバッドエンドになる。だが主人公の場合これまでの現実逃避していた日常が既に真のバッドな状態にあったので「現実を直視して受け入れた」という、このラストはバッドなだけではない、ラストシーンの後に悪魔に抵抗するなどの勝てない反抗に出るかもしれない。そんな事しても勝てないわけだが今言ってるのはそういうことではなく、この主人公にとっての真のバッドエンドは「現実を直視しないまま終わる」ことなので、だからもし仮に主人公が底力を発揮して悪魔の子を打倒して家族も全員無事でした……というスーパーヒーロー映画のようなエンドだったとしよう(悪魔は絶対倒せないしあり得ないが仮定の話として)しかし、それって現実逃避したままなので、この主人公にとってはそれが真のバッドエンドだ。
主人公ペドロは映画が終わった後で息子と心中するかもしれないが、それでも現実逃避したまま終わるよりは救いのあるラストだったと、そういう話。



そんな感じでした

 


 

When Evil Lurks (2023) - IMDb
When Evil Lurks | Rotten Tomatoes
When Evil Lurks (2023) directed by Demián Rugna • Reviews, film + cast • Letterboxd
邪悪なるもの - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

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