
原題:Hitman Hart: Wrestling with Shadows 監督&脚本&制作:ポール・ジェイ 製作国:カナダ / アメリカ 上映時間:93分 発売日:1998.12/20(日本は2000年8月28日)
これ2000年頃にVHS(ビデオテープ)で出てたけど、レンタルで無かったし配信にもデジタルレンタルにも入らなかったので観たことなかったが突然ダメ元で検索したらアマプラに本作『レスリング・ウィズ・シャドウズ 完全復活バージョン』があったので20数年ごしに観れた。
Amazon.co.jp: レスリング・ウィズ・シャドウズ 完全復活バージョンを観る | Prime Video
「完全復活バージョン」と付いてるのは数年前に劇場公開されたバージョンらしい。
同時期に出た、本作同様にWWEの内実を描いたドキュメンタリー『ビヨンド・ザ・マット』(1999)は、当時DVDを買ったのか借りたのか……忘れたけど観た。これは凄い面白さだった。で、『ビヨンド・ザ・マット』(1999)は色んな好きなWWEスーパースターが出てたが本作は「ブレット・ハートvs.ショーン・マイケルズ&ビンス・マクマホンJr」ってだけなので「バラエティ豊かなビヨンド・ザ・マット観たからまぁレスリングウィズシャドウズは買ってまで観なくていいか」と忘れていた。
これは世界最大のプロレス団体WWEで、1997年にスーパースターの”ヒットマン”ことブレット・ハートの身に起きた「モントリオール事件」(aka モントリオールの悲劇)をつぶさに捉えたドキュメンタリーになっている。
このブログは何も知らん人……たとえば自分の親戚が読んでもわかるように書いてるのでいつもは感想の前の前置きで作品の前提を書いてるが本作の場合、ブレット・ハートとは、ハート一族とは、対戦相手のショーン・マイケルズとは、真の敵ビンス・マクマホンJrとは、WWEとは、プロレスとは……などそれぞれの説明やそれに対しての自分の考えとかとか……一体どこからどこまで書かなくてはいけないのか考えるだけで面倒なのでやめておく(年明けに配信されたNetflixのドキュメンタリー『Mrマクマホン』もどこからどこまで書いていいのか考えるだけで面倒だから感想書くのやめた)。
異常にまとまってるアニヲタWIKI(仮)の当該ページを貼っておく。なんかこのページ異常にまとまってて(Wikipediaでたまにあるよね、書籍みたいに異常にまとまったページ……)これを読んだら映画を観なくても全貌はおろか映画が終わった後から最近まで全部書かれてる。
モントリオール事件 - アニヲタWiki(仮)【4/7更新】 - atwiki(アットウィキ)
でも端的に言うと、まずこのアメリカの世界最大のプロレス団体WWEは日本のプロレス界と違い、詳細は省くが「WWEでのプロレスは試合の勝敗は決まっていて、ストーリーも複数の脚本家が書いている」というのをあらかじめ公表している。それは株式上場するために明言する必要があったので90年代にオーナーだったビンス・マクマホンが明言した。観客や世界中の視聴者はそれを前提にして楽しんでいる。
明言する以前から、本気で戦ってると思ってる人も殆ど居なかったとは思うが、とりあえず明言するとしないでは大違い。「日本もWWEみたいに明言して新たに始めれば……」と2000年代にWWEにハマってた時に思ったが、日本人の国民性を考えたり勝負論が妙に強い日本のプロレスを鑑みると、やはり明言しない方がいいのかも?等と未だにどれがベストな有り様なのかよくわからなくなる。
「モントリオール事件」を一言でいうとそれまで長い期間トップスターだったチャンピオンのブレット・ハートが退団して当時のライバル団体だったWCWへと移籍が決まった。最後にブレットの地元であるカナダはモントリオールで最後の試合が行われた。WWEオーナーのビンスは「最後の試合で負けて欲しい」と言うがブレットは英雄のように崇められてる故郷で負けるのは嫌だ、だから勝敗の間を取って乱入だの何だので無効試合ということになる。通常、引き分けは防衛になるのでブレットは勝てはしないが負けもなくベルトを持ったままWCWに移籍する事になる。
そこでビンスはブレットを騙し討ちする。敵であるショーン・マイケルズがブレットにブレットの得意技シャープシューターをかけた瞬間、ブレットはギブアップしてないのにレフェリーは「ブレットがギブアップした」とゴングを鳴らしブレットが敗北させられてしまう。そんな事件。わかった?
負けを飲まないブレットに対してビンスは「引き分けでいいよ」という筋書きだったが、ビンスはその筋書きを守る気は最初からなく、強引にブレットを負けさせてチャンピオン王座を奪い取ったという事件。負けを宣告されたブレットはリングの上からビンスの顔に唾を吐きかけバックステージでもぶん殴った。
一言でいうとそんな裏切り劇。
一つ一つについて書くと長くなるので逆にもう説明するのは全部やめておく。
自分の仕事や学校に当てはめて「良い条件で辞める約束だったのにそれは嘘で最後に恥をかかされた」という感じの想像を各自してもらうとわかりやすい。
で、本作の場合は本作のスタッフが偶然ブレット・ハートのドキュメンタリーを撮ろうと楽屋にも入ってたら「モントリオールの悲劇」の現場に鉢合わせてしまい、一部始終をカメラに収めることに成功してしまいそれがクライマックスに来ているのが凄い。ブレットもビンスを疑っていたせいか二人だけでの打ち合わせの場に隠しマイクを持ち込んでビンスの言動を録音してそれを本作に盛り込んだりしている。
本作を観た限りの感想だと、主人公ブレットはストイックで真面目ゆえに過激になっていくWWEから取り残され気味の誠実なレスラー。ビンスはやり手だが狡猾なクソ野郎。対戦相手のショーン・マイケルズは上り詰めつつある当時イケイケの生意気な若者……という印象。だけどまぁ実際その印象で合ってそうな気もする。
ビンスは昨今よくあることだが深刻なセクハラ&パワハラで失脚して完全に消えたので「クソ野郎なのは知ってたがよりクソ野郎だった」という印象になり、ショーン・マイケルズは僕が観始めた2000年代からの印象では本作での「下品で生意気だったお調子者」時代はよく知らず、その後WWEに尽くして頑張りまくって今ではNXT(WWEの養成機関的な下部番組)責任者となって若手を育てているという身を粉にして尽くしている印象しかない。本作のクライマックスでブレットの当時の妻に「いつか因果が巡るから覚悟しておきなさい」と罵倒されて下を向いていたショーンの相棒HHHは現在ではWWE社長。HHHもまたプロレス大好きでWWEにひたすら尽くしている印象しかない。肝心のブレットだが正直僕が観始めた時には居なかったので情報でしか知らないというのが本当のところで「モントリオール事件の人」という印象しかない。見た目は派手な男前だが技がクラシックなものが多くて使う技の数が少なそう……という印象で自分が好きなプロレスラーの予感するけどいかんせん試合観たことあんまりないかも。だがそれらの要素に加えて「ハート一家はガチも強い」という要素は、なんだか日本の昭和プロレス好きが好みそうなレスラーの予感するね。
だから本作を観ただけの感想だが、ストイックな求道者だが時代に取り残されたスーパースターという印象で、だから本作を観たら味方したくなる人柄ではあるのだが、しかしプロレス部分を考えると「チャンピオンがライバル団体に移籍するってのに、負けてベルトを置いていかずベルト持ったままライバル団体に行くって、そんなのアカンやん」としか思えない。ビンスはクソ野郎なので味方したくはないが人柄を度外視してプロレス部分のみを考えると割と騙したビンス側に入るかもしれない。
しかし本作を観るのは初めてだと言いつつ、モントリオール事件は神話のように語られてるので全部観る前から知っててそれを確認するだけという不思議な時間だった。
ブレットや同じくレスラーだったが今は年老いた父スチュを語ってる前半部分。
スチュが夜な夜なバーで屈強な若者たちを品定めして連れ帰り、地下にあるトレーニング場で関節技を用いて屈強な若者を苦しめていた……という恐ろしい描写。床の下から若者の「ギャア~……痛い!もうやめてください」という悲鳴が聞こえたり、それを聞いた孫が「じいちゃんまたやってんなぁ」とニヤリとしたり……まるで刃牙のワンシーンとしか思えず最高だった。
続いてブレットも「俺もレスリングに打ち込んできたが……」とか滔々と語ったかと思うと、映画のSFXみたいな等身大の電気椅子にかけられた死刑囚がもがき苦しむ機械が置かれている。
死刑囚人形が死のダンスを踊る横で、真顔のブレットがカメラを見つめて
「こんなの家にあるなんて変かな?」
と言う。
変だよ!
これらの一連のシーンは既に伝え聞くモントリオール事件とは関係なく初めて知ったことで新鮮な面白さがあった。
「あの電気椅子の人形なんなんだ?お化け屋敷から買ったのか?何百万もしそうだが。しかしブレットはこういうの集めるオタク的な雰囲気は全く無いのに、あの人形は何なんだ?」と頭にハテナマークがいっぱい出てくる。ギレルモ・デル・トロとかそういうオタクならわかるけどブレットってレスリングと家族と過ごす以外なにもしてなさそうなスポーツマンだからギャップありすぎて不気味だったわ。
気になって検索したらRedditでも「ところでブレットは何で地下室にあんな変なもん置いていたのか知ってる人いる?」みたいなスレッド出てきて笑った。
Did we ever find out why Bret Hart had this bizarre thing in his house? (This scene appears in Wrestling With Shadows) : r/SquaredCircle
これらハート父子の奇妙なエピソードの演出意図は謎だが、制作者が作品に深みを出そうとしてか
「プロレスに打ち込むストイックな一家だが、彼らの中には闇がある……かも?」
と、視聴者に思わそうとしているのを感じた。
それにしても、各自それぞれ問題ある人しか出てこないし、どうしようもない騙し合いしてるだけなのがまるで神話の中の一つの悲劇を観てるかのような甘美さが濃密に立ち込めてるのが何とも不思議だったね。
そもそもプロレス自体が極端に人間ドラマを誇張して戯画化したもので、そして筋書きが決まっているにも関わらずプロレスは肉体を総合格闘技以上に痛める(それなのに必要以上にバカにされる)不思議なスポーツエンターテイメントであるためか、ギリシャの悲劇みたいな味わいがある。
あらかじめ知ってた話とはいえ数十年越しに、やっぱり観てよかった。
そんな感じでした
️
Amazon.co.jp: レスリング・ウィズ・シャドウズ 完全復活バージョンを観る | Prime Video
Hitman Hart: Wrestling with Shadows (TV Movie 1998) - IMDb
Hitman Hart: Wrestling With Shadows | Rotten Tomatoes
Hitman Hart: Wrestling With Shadows (1998) directed by Paul Jay • Reviews, film + cast • Letterboxd
レスリング・ウィズ・シャドウズ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画