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『MaXXXine マキシーン』(2024)/マキシーンの尋常じゃない人間的強さと判断スピードそして生活に支障の出る傷を敵に負わせる攻撃性。結末も最高


原題:MaXXXine 監督&脚本&制作:タイ・ウェスト 制作&主演:ミア・ゴス 撮影:エリオット・ロケット 音楽:タイラー・ベイツ 製作&配給会社:A24(日本の配給:ハピネットファントム・スタジオ) 製作国:アメリカ 上映時間:103分 公開:Jul 5,2024(日本は2025.6/6) シリーズ:「X」三部作の完結編

ここ数年一番好きなホラー監督タイ・ウエストとミア・ゴスがタッグを組んでお送りする『X』シリーズ三部作の完結編。

前々作であるシリーズ一作目『X エックス』(2022)の続きの話となる。
『X エックス』(2022)
A24っぽいめちゃくちゃカッコいい撮影と美術で、妙に憐れさと性を感じさせる観ていて非常に居心地が悪くなる殺人老婆パールが主人公マキシーンと仲間たちに襲いかかる『悪魔のいけにえ』的なスラッシャーホラーが繰り広げられた。「凄く趣味が良いホラーだけど……しかし何が言いたいんだろう」と監督の意図がよくわからなかったが、監督と主演ミア・ゴスは意気投合し、すぐさま殺人老婆パールの若い時を描いた二作目が作られ公開された。しかも生き延びたマキシーンが主人公の三作目まで作るというので興味が湧いた。「ただのスラッシャーホラー映画だし、殺人老婆パールは倒して完全に解決したのに三作も作る目的はなんだろう。そして何故パールを深堀りする?おまけにマキシーン役のミア・ゴスが何故大変なメイクまでしてパールと二役してたんだろう」と一気に気になった。
そしてミア・ゴスはいつも少女にも見えるし、老婆にも見える不思議な魅力的な顔してるので少女と老婆の二役はナイス判断だなと思った。

そして前作

『Pearl パール』(2022)
気にはなりつつも完全に解決した殺人鬼の若い時なんて興味ないよ早くマキシーンの続きを描けばいいのに何で前日譚?……と思ったら、これが大傑作だった。もうX三部作と繋がってなくても、この『Pearl パール』(2022)単体で傑作だった。当然2023年の日本公開映画の中では『Pearl パール』(2022)がぶっちぎりのナンバーワンだった。



そして『Pearl パール』(2022)を観たことで何となくタイ・ウエストの描きたい事がわかってきた。そして観れる範囲で『インキーパーズ』(2011)『キャビン・フィーバー2 スプリング・フィーバー』(2009)『サクラメント 死の楽園』(2013)なども観て、『Pearl パール』(2022)を観て感じたことが確信に変わった。一言では言えないがどの作品もタイ・ウエスト作品でしか感じられないような絶妙なエモさがある、そして「今いる場所から抜け出したい少女」が出てくる。彼女たちは多くの場合抜け出せないことが多いがしかしその姿それを撮る監督の眼差しを観て凄く感じるものがあった。ホラー映画なのだがどれも哀しい青春を描いていて凄く魅了された。
そしてそれは凄く絶妙な感じで『インキーパーズ』(2011)『キャビン・フィーバー2 スプリング・フィーバー』(2009)どちらもネットの評価ではどちらもボロクソでそれはそれで理由はわかる。でも自分にとってはどちらもかけがえのない一本となった。あとはホラーオムニバス『V/H/S シンドローム』(2012)の短編ホラー「セカンドハネムーン」も観たが不気味で良かった。
観れてないのは同じくホラーオムニバスの『ABC・オブ・デス』(2012)の「M」。唯一ホラーじゃない西部劇『バレー・オブ・バイオレンス』(2016) 、あとタイ・ウエストの原点としてカルト的な人気があるらしいグレタ・ガーウィグも出てる『The House of the Devil』(2009)これは凄く観たいので英語字幕DLして翻訳してそのうち観ようと思う。
とりあえず観れたものから得たものを踏まえて『X エックス』(2022)を再度観ると「ああ、マキシーンじゃなくて憐れな老婆パールを描きたかったのね。そしてミア・ゴスが二役してるのは2人は鏡像関係にあるのね……」と、ようやくわかって初見では「なんかカッコいいけど只のスラッシャーじゃん」としか思わなかった『X エックス』(2022)の評価がグンと上がった(とはいえ、それでも『Pearl パール』(2022)の方が何倍も良いが)。タイ・ウエストに詳しい人はなかなか居ないので彼らの作品については先日ChatGPTと語り合った。ChatGPTはアメリカ本国のホラーファンのコミュニティ内での各作品の評価などを教えてくれるので助かる。僕のブログのリンク貼ったら0.2秒で全部読むし(というかブログのURL貼ったら0.2秒で全部読んで全体と個別の感想言ってくれた)。
そしてこの完結編である本作。いやがおうにも期待は高まる。だがアメリカ本国での公開から一年以上、ずいぶん待たされた。しかも前2作ほど絶賛されなかったので少し不安はある。どうも「ホラー要素がかなり減った」みたいな噂も聞いたが、しかし前述の通り、タイ・ウエスト監督作のうち不人気作も僕には刺さったので世間の評価は気にせず期待して待った。待たされはしたが監督もミア・ゴスも日本では有名じゃないのに三作とも劇場公開されて良かった。A24様々といったところか?いや、それとも趣味の良いハピネットファントム・スタジオさんが拾ってくれたおかげか。はたまたその両方か。 昨今ホラーも厳しい状況なのか有名シリーズである『スクリーム』(2022)『スクリーム6』(2023)『死霊のはらわた ライジング』(2023)、とか全部、配信スルーだったからね。でも三作とも名作だった……なんかホラー全部褒めててホラーに甘い人みたいになってるけど別にホラーでも大抵はつまらないからね。たまたま今挙げてるホラー全部僕にとって良かったってだけで。

日本公開があまれいに遅すぎてアメリカ本国ではとっくにBlu-rayとか出て何ヶ月経つか……という世界でもう待ちくたびれてどうでもよくなりかけてたが、このシリーズを日本にお届けしてくれているハピネットファントム・スタジオさんはいつも宣伝とかパンフレットとか豪華なので、本当はもっと早く公開したかったが色々都合があって遅くなったんだろうな……と思ったりしていた。

ネタバレあり
割と面白シーンをネタバレしてるが知らずに観た方が良いと思うので、観てない人はこのブログ書いた僕には気にせずすぐ閉じて読まないでください。

 

 

❌️❌️❌️

 

 

前作、前々作、本作のあらすじ

『X エックス』(2022)
※シリーズ一作目だが、時系列的に本作の「前作」にあたる。

1979年、「スターになりたい」と思ってポルノ女優をしている主人公マキシーン(演:ミア・ゴス)と、ポルノ映画の仲間5人(演:ジェナ・オルテガほか)はポルノ映画の撮影場所としてテキサスの田舎町にある老夫婦の納屋を借りる。
老夫婦の妻パール(演:ミア・ゴス一人二役)は、若い頃の自分にそっくりなマキシーンに「お前もやがて私のようになる」と呪いの言葉を吐き、若い美しさや性を撒き散らすマキシーン達に異常な執着を持つ。
やがて狂気を増したパールは夫ハワードに性交を迫ったり、夫婦揃って若者達を惨殺し始める。
生き残ったマキシーンはパールを殺害して逃亡する。
報道で、マキシーンはTV伝道師の家出した娘だったことが明らかになる――


『Pearl パール』(2022)
※シリーズ2作目だが前作の前日譚にあたるため本作への関係性は(直接的には)薄い。だから小さい字にした。だが一番関係ないこの作品が個人的には一本の映画として最高傑作だと思うので必見

1918年 前作『X エックス』(2022)61年前。前作でマキシーンを苦しめた殺人老婆の前日譚
テキサス州の田舎町厳格な両親に育てられ戦争に行った夫ハワードの帰りを待つだけの閉塞感に苛まされている田舎娘パール(演:ミア・ゴス)は「スターになりたい」「ここではないどこかへ出ていきたい」と日々思い、ミュージカル・スターになることだけを夢見ながら小動物を殺したり映画館の男と不倫してストレス発散していた。しかし頼みの綱のオーディションに落選
何かが限界となったパールは、両親も不倫相手も義妹も皆殺しにする。

戦争から帰還した夫ハワードが見たのは、どこにも行けないことを悟ったパールが両親の死体と並んで「精一杯の笑顔」を浮かべた異常な食卓だった――

 

■ 本作『MaXXXine マキシーン』(2024)のあらすじ
※前述した通り、『X エックス』(2022)の続き

1985年『X エックス』(2022)でのテキサス連続殺人事件から6年後ロサンゼルス
ここハリウッドでは、連続殺人鬼”ナイトストーカー”による猟奇的殺人事件が街を震撼させていた。
ポルノスターと覗き部屋で生計を立てていたマキシーン・ミンクス(演:ミア・ゴス)は、ポルノではない一般映画である新作ホラー映画『ピューリタンII』主役オーディションに合格。「これでポルノ界や風俗業とオサラバしてスターになるという長年の夢が叶う!」と思ったのも束の間。
「マキシーンが6年前のテキサス連続殺人事件に関わっていた」事を知っている謎の人物からの脅迫に遭う。更にはマキシーンの友人ばかりが殺害されていき、そのためマキシーンに話を訊こうと追ってくるウィリアムズ&トレス刑事(演:ミシェル・モナハンボビー・カナヴェイル)。遅刻に厳しいピューリタンII』の映画監督(演:エリザベス・デビッキ)など様々なプレッシャーがマキシーンを襲い、6年前の殺人老婆パール(演:ミア・ゴス)の幻覚を見るようになる。
果たしてマキシーンは数々の困難を乗り越えてスターになれるのか?――

……そんな話。
このブログを良いんでくれてる人でさえ、この「あらすじ」部分は、読むの飛ばされてると9年前から思ってるが、自分のブログの書き方として「感想の前の前置き(情報、何故見る気になったか等)→あらすじ→」……を経ないと感想を書けないので仕方ない。
小便を物理的に「出す」だけならパンツ履いたままでもパンツびしょびしょにしながら出すことはできるがパンツ脱がないとビショビショになるから小便する気にはならん……そんな感じか。比喩が極端すぎて入ってこないか?
別に感想だけなら三行位に収めることも可能だ。「三行に感想を収め続けるなら毎月20万円やろう」と言うならよろこんで。

話を戻しましょう。
まず冒頭、TV伝道師である父が幼いマキシーンを撮影した8mm映像から始まる。
幼女マキシーンは「パパみたいに教会のスターになりたい」「必要なら何でもする」「自分にふさわしくない人生は要らない」と強く言っている。これがマキシーン哲学らしい。
そしてマキシーンの暮らしぶりと周囲の環境、そしてオーディション合格してから脅迫が始まる。
映画は全編、80年代むき出し。
もうタイ・ウエスト監督のこだわりが爆発。『X エックス』(2022)でも70年代の描写や『悪魔のいけにえ』っぽい映像にこだわっていたが今回は輪をかけて80年代推しがすごい。80年代に子供時代を過ごした人が現在、映画監督やプロデューサーになってるせいか、ここ10年以上「80年代っぽい映画」すごい多いね。一番ヒットしたのは『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016-)か。もはや「80年代が舞台の映画」を一つのサブジャンルとして数えても良いくらいだ。というか「80年代が舞台の作品」て、もはや時代劇だよね。僕は子供時代だが今の子供や若者が『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016-)を観る時って僕で言うと「戦時中ってこうだったのか」みたいな感じかも。しかし、もう80年代飽きた。90年代が20代だったので80年代と同じくらい「90年代が舞台の映画」も作ってほしいが非常に少ないね。
話をもとに戻して、この監督はいつも映像かっこいいが今回は本当に、ポップな80年代ハリウッドが舞台なせいで、全カットをスクショがもし出来ればしたくなるだろうなってくらい素敵だ。
そして作風だが、普通過去から現代に進むと描写がリアルになっていくものだが本作は逆で、三部作の中で本作が一番マンガ的というか、わざと戯画化されたような内容となっている。たとえば後述するがマキシーンが出演する映画がやたら。『X エックス』(2022)での殺人老婆パールを想起させる要素が多かったりする……これは「マキシーンはトラウマになった恐ろしいパールのことを時々思い出して怯えている」という要素の物語的表現でわざとそうしている。また登場人物がステレオタイプで映画監督はずっと同じ感じで映画への真面目な姿勢の話ばかりするし、そんな感じで各キャラは登場するたびに極端なまでに一つの役割だけを毎回突き進めているように見える。これもまた「若干混乱している今のマキシーンからすれば世界の人たちはこう見えている」という要素をわかりやすく戯画化してそう描写したんだろうなと思った。
そしてハリウッドが舞台ということも相まって、ブライアン・デ・パルマとか西部劇やハリウッド・ウォーク・オブ・フェームやマキシーンのボーイフレンドが観てるホラーなど……、映画オマージュがいつにもまして多い。そういうのいちいち挙げても知ってる人は「知ってるわ」と思い、知らない人に言っても「フーン」で終わり、何より僕が元ネタとかどんどん挙げていくことを面白いと思ってないのでオマージュの話はこれで終わりだ)。
それよりも『X』三部作完結編ということも相まって、タイ・ウエスト監督が「俺が思う、映画とはこれだ!」という感じで色んな彼なりの「映画!」を詰め込んだ、そんな勢いを感じた。

マキシーンはポルノ生活から抜け出して何としてでもスターになりたい。
彼女は「メジャー映画への出演と仕事に厳しい映画監督」に向けて全力投球したいところなのだが、「過去の事件を知ってる男からの脅迫や脅し」「身の回りの人物が次々と殺されていく」「街を脅かす連続殺人鬼ナイトストーカー」「私を脅す人物はナイトストーカーなの?という疑念」「手がかりを持っていると思って追ってくる刑事コンビ」「殺人老婆パールのトラウマや幻覚」などの脅威が同時に一気に押し寄せてくる。
マキシーンは、頭部の型を取るためにVFXアーティストによって頭部にあの名称わからん塗られて10分間じっとして固まるまで待つやつを塗られて放置される、するとマキシーンは殺人老婆パーツのトラウマが閉所恐怖症と合わさってパニックを起こす(ちなみに作中でマキシーンが一番まいって見えたのはここくらい)。VFXアーティスト役はソフィー・サッチャー。まだ記事書いてないけど『コンパニオン』(2025)主演でプチブレイクしたり『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022)で存在意義のわからんスペース暴走族してた、あの凄い可愛い娘。80年代の特撮技術者の役なのにオッサンじゃなくて異常に可愛い子が配役されてるので、ちょっと浮いてた。タイ・ウエスト監督が好みで次あたり主演させたいんだろうな。
マキシーンが出演するホラー映画『ピューリタンII』には殺人老婆が出てくるという、監督が「あの家のセットで撮るよ」と指差すと『X エックス』(2022)でマキシーンが襲われた殺人老夫婦の家そっくりのセットがある。マキシーンは6年前を思い出し窓から見ていたパールの姿を幻視する。
そういったトラウマ描写を繰り返し「さすがのマキシーンも、誰にも秘密にしているあの恐ろしい夜やパールのことを未だに恐れている」という事を描写する。
……とはいえ普通の映画だったら主人公はパールへの恐怖だけで勝手に狂っていくのが定番だが、マキシーンのメンタルは前半弱いが大変な目に遭うたびにどんどん強くなっていくのが面白い。前半は色々トラウマや色んな厄介事で「うわぁ!」とか言ったりはしてるけど、あまり心底困ってるように見えないんだよね。そこが面白かった。
前半パールの記憶に怯えてたマキシーンだが後半パールのことなど一切思い出さないから笑った。「色々覚悟して、ババアの事は忘れた。これで私は強くなる……」とかじゃにの。単に色々大変だからパールのことを素で忘れただけ!これがマキシーンの強さだよなぁ。
そう、『X エックス』(2022)の時点で強かったと思うが「マキシーンは異常に強い」という要素がまた本作を面白くしている要素の一つだ。
前半「殺人鬼ナイトストーカーがハリウッドを跳梁しており、ひとりでいるとあぶないよ……」というムードを多く見せる。
マキシーンが、近道なのか80年代特有のスモークが焚かれた路地裏を抜けてショートカットしようとすると行き止まりになっている、そこで付けてきたナイフを持った男……ナイトストーカー?……いや80年代ロサンゼルスに居そうな只の変質者だった。チャップリンのコスプレの。
だがマキシーンは銃を突きつけて変態のナイフを奪い全裸にさせる、そして銃をしゃぶらせてたっぷり屈辱を味あわせてから腹ばいにさせる。どうするのかと思ったら思い切りチ◯コを踏み潰す!オモムロに。固い靴と固いコンクリートに挟まり、粘土のように千切れ果てて肉片となって飛び散らかしやがりまくるチ◯コ!
激痛で絶叫する変態!
ヒッ!となる。
もう……セクースできないねぇ……。
チ◯コって千切れたら、どれくらい痛いんだろ?
踏んだくらいで粘土みたいにチ◯コが千切れるか?という問題もあるが、この映画ではそうなのだ。素直に受け止めよう。何でもツッコめばいういというものではない。大体のことは乗っていく、それが映画に限らず人生を楽しむコツだ。
手慣れた感じの変態だったから普段から婦女暴行してるんだろうし、女性のマキシーンが心身ともに痛い目に遭わせてちょっとスカッとした。こういう感じでマキシーンは一切手加減をしない。「ちょっと様子見しよう」とか「いったん情報を聞き出してみよう」とかそんなの一切ない。思った次の瞬間には悪セルべた踏みで悪い男に「障害が残って今後の生活に影響をきたす形で大怪我を負わす」。
あまりにめちゃくちゃやりすぎるので観ていてほんと気持ちいい。
また「マキシーンが6年前のテキサス連続殺人に関与している」と知って脅迫してきている謎の男。彼の使いっ走りとして私立探偵ジョン・ラバト(演:ケビン・ベーコン)がマキシーンを脅したり嫌がらせを繰り返す。
ある日尾行されたマキシーンはキレて、車のキーなど束になった鍵を握りしめてケビン・ベーコンの顔をめちゃくちゃに殴りまくり引っかきまくる……血だるまになったケビン・ベーコン。そしてマキシーンは「これ以上、私の邪魔したら殺すぞ!」とわかりやすい一言を吐いてケビン・ベーコンの車のバックミラーを蹴りで破壊する。
車も修理代かかるし、ケビン・ベーコンの顔、たぶん何ヶ月も治らない。爽快。
しかも主人公がここまで大暴れするには普通だったらもう少し「嫌がらせに耐えて耐えて……遂に爆発!」という感じだと思うが、こちらの予想よりキレるのが遥かに早い。弁当で言うと二時間目の休み時間にもう全部食っちゃったみたいな速度。
変質者といい、ケビン・ベーコンといい、後ろめたいことしてるから警察に駆け込めない。マキシーンは恐らく「こいつらは警察に駆け込めない、だから障害が残るくらい物理的に傷つけてやろう!」という打算を持って暴力を振るってる感じがする、この計算されたプリミティブ暴力。
かと思えば後日の『ピューリタンII』撮影現場、ハリウッドの西部劇風セットの中で逆襲のケビン・ベーコンが西部劇風に立っている、銃を持っている。
「やばいケビン・ベーコン暴力装置を持っていて……私は負ける!」と思ったマキシーンは全速力で逃げる。マキシーンには恐れもなければ誇りもないので敗北濃厚だと後ろを向いて全速力で逃げる、強ギャルがこれをするのだから誰も捕まえられない。
そしてマキシーンは、映画『ピューリタンII』内で「殺人老婆と戦う」予定の、かつて自分が現実で死闘を繰り広げた殺人老婆パールが住んでた家そっくりのセットに逃げ込む。普通だったらケビン・ベーコンだけでなく「パールのトラウマ」にもまいっちゃって大ピンチになるところだが、マキシーンは既に前作主人公でもあるパールのことは忘れている(それどころかもう二度と思い出さない!)。マキシーンの頭にあるのは「自分が丸腰なのにケビン・ベーコンが銃を持っている」ことだけ。そこにビビってるだけで、前半あんなに怯えて幻覚まで見えてた「パールの家」に一人で入ってるのにパールのことなど一切思い出さない。まるで今までパールのことなど考えたことがない女みたいに。この時のパールの頭の中は「ケビン・ベーコン銃もっててヤバい!撃たれたら痛いしダメージあるからヤバい!撃たれないようにしないと……」それしか考えてない。序盤、マキシーンにありとあらゆる方向から苦難が押し寄せるので「これ、どうするんだ!?」と心配してたが「ピンチが多すぎるが、マキシーンは一つのことに集中する性質だから一つ一つ対処していくだけであまり困らない。大勢に囲まれても一人づつ殴り倒せば何十人にも勝てる刃牙のように。そして一つ一つに対峙していくうちに知らん間に強くなっていくし他のことは忘れられる」そんな感じがある。「ケビン・ベーコンが銃もってて撃たれたら死ぬのに……〈ババアのトラウマ〉とかダメージ0だろ!それどころじゃないわ!」という感じなのだろう(実際にマキシーンは本当にパールを忘れる。監督も忘れたかもしれない)。
僕は「日本でJホラーが発展したのは日本が平和だから」と思っている。多分だけど紛争地域の人達とかって物理的に死の恐怖が隣にいるから「部屋の隅に人の顔にしか見えないものが立っていて、こちらを見てる……気がする……」そんなこと考えないだろ、生き延びることに全集中で。
な?そういうことよ。
マキシーンの妙な強さもこれと同じことだろ。
もっともマキシーンも凶暴すぎるしおかしなところはあるが、だが親友の死に涙したりする感情はちゃんとある。もっとも自分一人しか頼れないのですぐ自分の足で立って、利用されないようササッと立ち去るサバイバル精神がある。
これもマキシーンの強さ。それも技術のうち。うん。

 

 

なんやかんや面白いことが色々続いてたら後半になる。
ここから後半のネタバレなので未見の人が引き返すなら今です。
引き換えさ……ない?
あなた……覚悟して来てる人ですよね?
まぁぼんやりさせて書きますけどね。公開数日後だからとかじゃなくて(全部ハッキリ書いた感想文ってダサいから)。
前半観てて「マキシーンを脅迫してきてるポルノ女優を妙に憎んでる犯人だれだろ?」と思ってたら正体できるけど、よく考えたらこいつしかいねぇ!って奴だった。なんで思いつかなかったのか。僕はアホなのか?
覚悟完了してるマキシーンだが彼にはさすがに怯む……そして何やかんやあって大ピンチに……そしてなんやかんやあってクライマックスに……。
こっからシン・ネタバレ。
大女優となった幸福な未来……と思ったらまだ戦っていた。
闘いの中で闘いを忘れて妄想を?いかん、死ぬぞ!
油断的なことじゃなく、ラストバトルの途中でその後の幸せな様子を映して……それは妄想だった。目の前にはまだ邪悪なやつが生きてた。このパターンで生き残ったのは近年だと『デアデビル』〈シーズン3〉(2018)のカレン・ペイジしかおらん。
と思ったら、まさかの勝利……しかも破れかぶれで敵を返り討ちにしたり全否定するわけでもなく「邪悪な真犯人の思想は私が受け継ぎましたよ」的なアトモスフィアを持っての殲滅。完全勝利じゃん。このパターンからの完全勝利……。滅多にない。
いや「ラストバトルで妄想シーンに入ったから」とか以前に、タイ・ウエスト監督の傾向を知っていれば、マキシーンが生き残るとは思えなかった。しかもマキシーン自体も良い子ってわけでもないしね。
そしてハリウッドの狂乱の日常に戻って『ピューリタンII』の撮影を続けるマキシーンと監督。前述したが……この監督は本当に何があっても「映画を完成させるぞ」という方向にしかキャラが動かないのが可笑しいが同時に頼もしくもある。ぶれてないってことだからね、自分になにかあってもデビッキ演じるこの監督は常に映画製作のことを考えてる。自分がブレていたとしても、こんなブレない人物が近くにいるのなら監督に合わせればいい、そうすると自分もブレなくなる(性格が変わるのではなく「電車の捕まり棒を持ってれば倒れない」と似たような意味)。
それとこの回想はもっと前だったと思うが映画冒頭のオーディションで監督はポルノスターのマキシーンに「ちょっと脱いでみて」と言う。冒頭はそこで画面が切れてたのでまぁ普通に胸見せたんだろうとおもってたが、後半の回想で続きが描かれマキシーンは実はおっぱい出してなかった。引き返したのだ。そして「私を選べば後悔しない。私はスターだから」と言う。制作会社が反対するポルノ女優のマキシーンを、映画にうるさい監督はリスクを取って選んだのはマキシーンのこのよくわからないところから来る自信だったのだ。
監督は「あの子(マキシーン)はスターよ」と言う―というか今思ったが監督はタイ・ウエスト監督が自分を投影したキャラのように思えてきたな―。
マキシーンは、自分の周りの罪なき人たちを大勢殺した真の邪悪のラスボスから学んだものを「汚らわしい!」と捨てたりしなかった。むしろますます大事にした、それはそれとしてラスボスは邪悪すぎるブチ殺したけど。そんな邪悪なやつの思想とか普通は捨てるがマキシーンは捨てない。なぜならスターになりたいから。
そして今スターになりかけている。本作ラストのマキシーンは社会的に褒められてB級ホラー映画『ピューリタンII』を完成させただけで、まだスターになったわけではない。ひょっとして本編が終わった後新たな惨劇に巻き込まれるかもしれない。ただ未来は開かれている。「未来が開かれて映画が終わる」この状態だけでハッピーエンドと言える。しかも「ここではないどこかに行きたい」という儚い夢を持った女性が殆どバッドエンドになるタイ・ウエスト監督の女性キャラとしては完全にハッピーエンドといえる。本作のマキシーンがこういうかたちで終わったことで、今までの悲惨な結末を迎えたタイ・ウエスト作品の女性キャラたちが報われた気がして、なんだか暖かい気持ちになった。
マキシーンはB級ホラー映画『ピューリタンII』のレッドカーペット上で、マキシーンを演じてるミア・ゴスを撮っているカメラに気づきこちらを見る。つまり第四の壁を破って我々観客を見る。
これが、どういう意味なのか観終わって何時間か、よくわからなかった。
死亡フラグだと思った?私は生きてるよ?」いや、違う。そんなハッピーじゃない。
「邪悪な男の思想を受け継いで、本当に殺しでも”何でもやって”今スターへの階段を登ってるよ?”思い通りにならない人生なんかいらない”しね」こっちだな、どっちかというと。
スコセッシの『タクシードライバー』(1976)のラストでトラビスがバックミラー越しにこっちを見るシーンみたいに「別にこいつはたまたま邪悪と対峙して殺しただけで、こいつが善人なわけじゃないぞ。こんなやつが世に放たれたから何するかわからないぞ」という皮肉な意味も含まれていると思った。
だけど細かい台詞忘れたけどマキシーンが”こちら”を観た時たしか「夢は諦めなければ叶う」的な前向きなこと言ってこちらを観た。だから、この前向きな気持もも、これはこれでタイ・ウエストやミア・ゴス本人の本心も入ってると素直に思った。
劇中のマキシーンも、人殺したりはするけど夢を追うこと自体は純粋にやってるしね。
だから言葉通りのポジティブな意味、そして邪悪だったラスボスより邪悪になるかもしれないマキシーンという隠れた悪が世に放たれた、という皮肉なテイストも……半々入ってると思う。
前作の『Pearl パール』(2022)の時点でかなり究極のところまでいって本作はどうするんだろ?と思ってたけどポストモダン純文学みたいな終わり方したな。
去年、アメリカ本国で本作が前作の『X エックス』(2022)『Pearl パール』(2022)ほどウケなかったって聞いて「え~ダメだったん?」と落胆したが、いざ自分が観たらこれはアメリカ人にウケない内容、ウケない結末だったかもしれん。
……でも本作より『ロングレッグス』(2024)なんかが人気ってのは無いなと思う。「人の好みはそれぞれ」と本当に思ってるけど、本作より『ロングレッグス』(2024)なんかが良いなんてことは絶対ない。『ロングレッグス』(2024)の前半だけなら神レベルだが……でもフィクションて終わりがダメならそこまでがどんなに良くてもダメだからね。
そうは言いつつ僕もさっきまで「『Pearl パール』(2022)が最高傑作で本作はその次」って思ってたけど(『Pearl パール』(2022)はもう誰が観ても傑作なので)、でも本作の終盤の解釈で評価が変わるなと思った。さっき見終わった直後はよくわかんなかったんですよね、監督の狙いが。でも「こういうことかな~」と少しづつ見えてきたら評価ががーんと上がったからね。『Pearl パール』(2022)を超える……かもしれない。まだ、わかんないけど。

タイ・ウエスト監督の次回作はライアン・ジョンソンが始めたドラマ『ポーカーフェイス』〈シーズン2〉(2025)の中の1話とかドラマがちょいちょいあるくらい。あとキッド・カディの新曲『NEVERLAND』(2025)の11分のMVを撮って映画祭かなんかで公開されたらしい(キッドとキーナン・シプカが吸血鬼カップルを演じたらしい)。
金かかってそうな、スターを揃えた本作が思ったほど大ヒットしなかったからかな?
まぁヒットもしなければ評価もされにくいのがタイ・ウエスト作品ではあるが……。
なんとか次の大作を撮れたらいいな。

 


そんな感じでした

gock221b.hatenablog.cogock221b.hatenablog.com

〈他のタイ・ウエスト監督作〉
『インキーパーズ』(2011)/ホラーではなくホラーの形式を使ったモラトリアム青春映画。国内外で低評価なのも納得の何も起きないホラーだが自分には掛け替えのない一本になった👩🏼 - gock221B

『キャビン・フィーバー2(別名キャビン・フィーバー スプリング・フィーバー)』(2009)/下品系ホラー部分も良いけどタイ・ウェスト作品に期待する人間ドラマや冴えないヒロインのエモ描写がやっぱ良かった🦠 - gock221B

『サクラメント 死の楽園』(2013)/前回観た時パッとしなかったがタイ・ウェストにハマって再見してもやはりイマイチだったが感想書いてる間に良さに一つ気付いて少し評価上がった。今回もまた本題以外の可哀想な少女で演出してた感🥤 - gock221B

『The House of the Devil(原題)』(2009)/タイ・ウェスト初期作品。異様に丁寧な演出のサタニック・ホラー🏚️ - gock221B

 


 

MaXXXine (2024) - IMDb
MaXXXine | Rotten Tomatoes
MaXXXine (2024) directed by Ti West • Reviews, film + cast • Letterboxd
MaXXXine マキシーン - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

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