
原題:Eyes of Wakanda 監督&製作総指揮:トッド・ハリス、ジョン・ファング 脚本:マーク・ベルナルディン、ジェフリー・ソーン アートディレクター:オーガスト・ホール 音楽:ヘシャム・ナジ 製作総指揮&企画:ライアン・クーグラー 制作:ダニエル・コスタ、パティ・ジャウソロほか 原作:MARVELコミックス 制作スタジオ:MARVEL 制作&配信サービス:Disney+ 製作国:アメリカ 上映時間:各話約30分、全4話 配信開始日:2025年8月1日(全世界同時配信) シリーズ:Disney+のMCU作品・第21作目
MCUのDisney+制作のアニメの新作。
フェイズ4&5の粗製乱造によりクオリティ落ちた作品を提供し続け、興行収益が凄まじく激減したことにより映画製作、Disney+作品制作も大幅に減らしたMCU。映画は1年後の『スパイダーマン:ブランニュー・デイ』(2026)まで無いしDisney+作品も大幅に減らす予定。本作はイケイケだった時に企画して発表したもの。
全作観てきてる僕は、MCU疲れやアメコミ映画疲れなど既に何回も喰らっては復活してるがMCUは本当に「10本に1本面白ければ良い方」という感じが数年続いたのでさすがに疲れてきた(そしてそのたまに面白かったものも続編やマルチバースお祭りでしかなかったりする)。既に何度も訪れた「MCU疲れ」などは通り越して正直もはや「MCUとか観たくない」レベルになりつつある。一年に一度出ていた症状を繰り返してるうちに慢性的な病気になってしまった感じか。
そんな感じだが、最近はMCU映画作品ですら駄作が多いせいか、最初は粗製乱造によって駄作ばかりの印象だったDisney+作品が意外と面白かったりする。そして特にDisney+アニメ作品は更にハズレが少ない気がする。
何でだろう?と考えたが、恐らく一人の代表者が好きなようにビジョンをまとめる作品が増えてきたからではないか?と思っている。
Disney+作品も最初は大勢の映画製作者が群がっていた。たとえば膨大にあったフェイズ4などの制作者でアメコミ好きな人は皆無だったし「問答無用に多くの人が観る作品=MCU」だったので群がる。その最たる例は『シークレット・インベージョン』(2023)だろう。このドラマはあまりに映画制作者が群がりすぎて現場で派閥が3つもできて互いの足を引っ張りあって結果としてMCU全作品の中で最も駄作なものが出来上がった。
しかし「MCU=落ち目」という流れになってからは誰も期待してなかった『アガサ・オール・アロング』(2024)やアニメ作品など、どれも結構面白い。
面白いと言っても、映画での設定を借りてやりくりしてるだけなので「これが最高!」というほどのものは出てこないのだがどれも平均点以上はある印象。一方、メインストリートである映画の方は「外したらMCU終わるから絶対外せない!」という状況のためか置きにいって「悪くないが別に良くもない」といった感じの地味な作品が増えた、たとえば先日の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(2025)とかがその典型。もしくは続編とかマルチバースお祭り作品で一過性のヒットで稼ぐのみ。
🐈⬛
第1話 「ライオンの根城へ」
アフリカの隠された超文明国家ワカンダ王国。その秘密の陰に”闘犬”の姿有り。
紀元前1260年、クレタ島。
海賊に人身売買で集められた長身の女性ノニは高い戦闘力を有しており反逆する。
彼女は、正義感が強く馴染めなかったワカンダ王親衛隊〈ドーラ・ミラージュ〉の戦士だったのだ。ノニはドーラ・ミラージュ隊長アキヤから密命を与えられ放たれた。
ワカンダ国王の元護衛隊長だった男ンカティが、ワカンダでしか採れない万能鉱物ヴィブラニウムを持って出奔し、「ライオン」を名乗り外界で暴れている。
このままではワカンダが秘密を守れずヴィブラニウムが諸外国に流出してしまう。
ノニはライオンを捕獲または抹殺しヴィブラニウムを持ち帰る任務を与えられた。
……という話で要はワカンダの戦士を主人公にしたスパイもの。
最近スパイとミステリーといった王道古典イギリスコンテンツにハマってるので「スパイだ!」と割とすぐ入っていけた。忍者も中世のスパイと言えるし割とスパイも゙のは王道コンテンツといえる。
「ライオン」も実はノニ同様に外界への工作員だったが、外の世界を見たことで自分だけの自由が欲しくなりワカンダを出たことが明らかになる。
旅行して感化されて元に戻れなくなるタイプ……ということは彼は純粋なタイプだったのだろう。ノニを勧誘するライオン。
ドーラ・ミラージュに馴染めなかったノニも「自由か……一理ある?」といった雰囲気で話を聞くが、人を誘拐して鎖で繋いでいるライオンがシンプルに許せずライオンと戦闘、勝利。敗北を知ったライオンは実家に帰るくらいなら、と満足そうに自爆。ヴィブラニウム製の装備は海に沈んだ。
ノニはライオンから「ワカンダ王国が秘密を秘匿するため外界で活動するスパイ集団〈ハトゥットゥ・ザラゼ〉その戦闘員〈ウォー・ドッグ〉」の存在を聞いた。帰国したノニは王国内でワカンダを護るドーラ・ミラージュへの復帰を辞退し、外界でワカンダのため闘うハトゥットゥ・ザラゼのウォー・ドッグとなる事を希望する。
アキヤ隊長も最初からそのつもりでこれは入隊試験だったらしい。
『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエヴァー』(2022)でドーラ・ミラージュをクビになってしまった人気キャラ・オコエが「ミッドナイト・エンジェル」という名前も見た目も最悪な工作員になって彼女の魅力が全て消えたがオコエも「ハトゥットゥ・ザラゼのウォー・ドッグ」になったってことなのかな。
第1話は、ヒーローものオリジンの定番の型である「主人公のダークサイドが敵」だった。しかし主人公がライオンと違うのは、弱き人たちの苦しみを見てライオンの甘言に惑わされず正義執行したことだろう。
ライオンは仮面からして『ブラックパンサー』(2018)の人気ヴィラン、キルモンガーを思わせる敵だった。しかしヴィブラニウムを装備ライオンを単身で撃破するノニは強すぎ。子どものように「強くて正しいノニかっこいい」と素直に思った
そういう感じで今まで何十回も観てきたステレオタイプなヒーローもののオリジンまんまの第1話だったが好感触。「全く観たくなかったがこのアニメは義務CUアニメではなくMCUアニメと呼ぼう」と思ったのだった。
ライオン軍団に鎧武者みたいな奴がいたのが気になるが見なかったことにしよう。
第2話「伝説と嘘」
紀元前1200年、トロイに苦戦中のギリシャの英雄アキレス……の戦友メムノン。彼こそワカンダのウォー・ドッグスだった。
彼はトロイの女王に渡ってしまったヴィブラニウムを取り返すためアキレスの元で9年間戦っていた。
オデッュセウスの奇計「トロイの木馬」で侵入したアキレス達。
メムノンはヴィブラニウム奪還に成功するが、アキレスにスパイだったことがバレてしまい、親友だという想いが裏切られたことで激昂したアキレスと死闘となる。
メムノンはアキレスを制止するがアキレスの激昂は止められず仕方なくワカンダ製の装備で対抗し、最終的には刺殺する。
親友アキレスを殺して任務を果たして10年ぶりに帰国したメムノン……本名ブカイは、ワカンダに居場所を見つけられず、ノニ隊長(年老いた第1話の主人公)にすぐさま次の任務を申し出る。
……という話。
「歴史的に有名な◯◯の戦いの裏に本作の登場人物あり!」系の、これも定番の話。
ワカンダの技術が進みすぎており、第1話……60年前では衝撃波を放つ武器程度だったが今回では携帯用通信機やウィンター・ソルジャーに提供したようなハイテク・アームを装備していて強すぎる。
「実は他より圧倒的に科学が進みすぎている」というのがワカンダの魅力ではあるが、仲間に隠れてハイテク通信機でワカンダと通信したり、裏切られたと激昂するアキレスにもワカンダの凄い武器で対抗してるのに殺しちゃったりして、ワカンダに対してたまに抱く「ワカンダって『隠されたアフリカの小国の黒人』って設定じゃなければ成り立たないほど感じ悪いよな」という想いを新たにした。
アキレスを気絶するに留めるとか、それでも限界まで説得するとか何かできなかったものか。アキレスを殺したことよりも皆に隠れてワカンダ製ハイテク機器でポチポチしてる姿の方が何かムカついたな、つぶらな瞳で……。
メムノン本名ブカイは、帰国後もダークサイドに囚われる。
真の目的は「ヴィブラニウム」奪還だったが、実は外界でアキレスと戦ってる時が彼の人間としての青春で、そしてそれを自分で終わらせてしまったから彼の心も死んだのだろう。
トロイ軍に女性戦士が一杯いたのが気になった。しかしギリシャ軍の男女同権アタックで普通に殺されていった。
第3話 「遺失と修得」
1400年、中国で山村の守り神となっている龍の像、その舌がヴィブラニウム製の遺失物だった。村に潜入していたウォー・ドッグのバーシャが無事回収、ワカンダ製UFOで帰国……というか1400年にステルス戦闘機とか開発してるワカンダの科学力ヤバい……しかし、そうなると未だに大して変わらずスーツとか棒で戦ってる現代のワカンダに対して「なんでワープとか宇宙進出してないの?発展が遅すぎる」などと思えてきた。
そして古代で一人だけワカンダ科学を振り回して好き勝手してた第2話のあとなので中国の服を着て中国語で話す黒人青年バーシャを見て「こいつら……世界のどこにでもいやがる」と謎の反感が少し湧いてきた。
お調子者で迂闊なバーシャは、遺失物担当のイーボに叱られるが禄に話を聞いていない。しかし食堂で騒ぎが起こる。何者かがバーシャが帰国するために搭乗したワカンダ航空機に潜んでワカンダに侵入したのだ。
中国の山村への進入時に倒れたバーシャを介抱して、良い感じになっていた女性ジョラニだった。
覆面を被ったジョラニは食堂にいたワカンダ戦士たちを一人で倒し、遺失物室のドアを拳で吹き飛ばした。
ジョラニは一つの時代に一人現れる、氣をまとった鋼鉄の拳を持つヒーロー、鐵拳……アイアン・フィストだった。
鉢合わせて互いの正体を知ったバーシャとジョラニは『ブラックパンサー』(2018)でも出てきた地下の貨物車両などで戦いつつ遺物室で争う。
といってもバーシャが、慢心した自分の性格を反省してジョラニや上官イーボに謝罪して丸く収まる楽しい感じの回だった。
この回はやはりアイアンフィストのゲスト出演が楽しい回。ブラックパンサー同様に代替わりしながら古代から居る系のヒーローなので確かに出すことができる。
とはいえアイアンフィストはNetflix作品には出てたがMCU作品にまだ出てないので、MCUしか見てないキッズは「何だろうこのキャラ」と思うかも……と思いかけたが、もはや今となってはMCUより若者に人気ある勢いのPVPシューティング・ゲーム『MARVELライバルズ』でアイアンフィストもプレイアブルキャラなのでそっちで知ってるか。アイアンフィストに対するバーシャは只のドッグス(工作員)だから全てにおいてアイアンフィストの方が勝ってる描かれ方してて、2人は惹かれ合ってるしバーシャが反省したりジョラニが互いが納得する解決策を見つけてコメディ的な着地するのは上手いなと思った。
アイアンフィストは色んな中国拳法の動きしたり中身のジョラニの小柄さを活かして牛若丸的な身の軽さで闘ってて魅力的だった。ドラマ『アイアン・フィスト』のダニーは殆ど動けなかったし経費節約のためか必殺アイアンフィストも数話に一回壁を破るためだけにしか使ってなかったしで本作のジョラニの方が遥かに魅力的だった。ジョラニはチェーンパンチ(詠春拳の細かく連打しまくるパンチ)もしてたが、そういえば『ホワット・イフ…?』〈シーズン1〉全9話 (2021)で、中国拳法まったく関係ないブラック・ウィドウがチェーンパンチしてたし、MARVELアニメーションの中にイップマンとか好きな人がいるんだろうなと思った。
第4話「最後のパンサー」(最終話)
1896年、紛争が起きているエチオピア アドワ。
伝説のウォー・ドッグス、クダ長官が、ウォー・ドッグス入りを希望しているタファリ王子を連れて実地訓練している。
タファリは三男であるためワカンダ王にもブラックパンサーにもなれない。だから初代ウォードッグのノニや隣のクダなど数々のウォー・ドッグス伝説に憧れを抱き、自身もウォー・ドッグスに入って自己実現したがっている。
功名心にはや゙って言うことを聞かないタファリに手を焼くクダ。
タファリは、この地に流れていたヴィブラニウム製の斧を回収する。
言う事聞かず無茶する王子に注意していたクダだったが、そこに突然ブラックパンサーのような戦士が現れ2人が回収したヴィブラニウム製の斧を奪おうとする。
……というところから始まる話で、ブラックパンサーの正体、そしてこの斧が何故そこまで重要なのか、など色々明らかになるが素直に面白かった。
作品全体のまとめに入るが、MCUアニメってMCU本編で描いた要素を使ったり、MCU本編に影響を及ぼさない範囲でしか物語を描けないという、制約だらけのMCU本編より更に制約だらけのアニメなわけで、その限られた条件で面白いアニメを作るのはかなり難しい気がする。MCUアニメって地味であまり観てる人自体少ない気がするが、そのギチギチの成約の中で頑張って面白いものを作ってて偉いなと思った。
ウォー・ドッグスは、あくまで国のために動く工作員なので厳密には利他的なことに命を賭ける「ヒーロー」とは少し違う気がするが、しかし第一話のノニが悪の誘いを断るところ、タファリが決断するところなどはかなりヒーロー的だった。
めちゃくちゃ地味な印象だがMCUアニメってハズレが少なくて面白いと思う。
そんなMCUアニメは10月3日に『ホワット・イフ?』のスタッフによる『マーベル・ゾンビーズ』(2025)がある。これはシャン・チーやミズ・マーベルなどフェイズ4のキャラが主人公サイドで旧アベンジャーズなどはゾンビになって出てくると思われる。もう今後フェイズ4以降の新キャラの活躍を見る機会ないかもしれないのでそういう意味で楽しみ。
そんな感じでした
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Eyes of Wakanda (2025) directed by Todd Harris, John Fang • Reviews, film + cast • Letterboxd