
原題:Ferrari 監督&脚本&制作:マイケル・マン 脚本:マイケル・マン、トロイ・ケネディ・マーティン 原作:ブロック・イエーツ著『エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像』(1991) 撮影:エリック・メッサーシュミット 編集:ピエトロ・スカリア 製作:ジョン・レッシャー、ガレス・ウェスト、アンドレア・イェルヴォリーノほか 音楽:ダニエル・ペンバートン 製作会社:STXフィルムズ、Moto Productionsほか 配給:NEON 製作国:アメリカ 上映時間:132分 公開:Dec 25, 2023(日本は2024年7月5日)
video-share.unext.jp「神々は私達に罰を与えたのよ。」(本編より)
アメリカのジャーナリストのブロック・イエーツに書かれたフェラーリ社の創始者エンツォ・フェラーリの伝記『エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像(Enzo Ferrari: The Man and the Machine)』(1991)を元に劇映画化した伝記映画。陰鬱な物語はクライマックスはイタリア公道レース〈ミッレミリア〉でクライマックスを迎える。
エンツォ・フェラーリ - Wikipedia
ミッレミリア - Wikipedia
作中に出てくるエンツォの息子で現在フェラーリ副社長のピエロが本作を観た感想によると「父がイタリア公道レース〈ミッレミリア〉直前にアルフォンソ・デ・ポルターゴと知り合ったのは創作、本当はもっと以前から友人」「私がアルフォンソ・デ・ポルターゴのサインを欲しがってたのは創作、当時に有名人のサインの文化はない」「父はレース前に過剰に勝利を要求したことはない」等の創作はあるらしいが(だが最後のは父や会社を庇って言ったのだと思う)ハリウッドの伝記映画にしては、登場人物をめっちゃアホに描いたリドリー・スコットの『ハウス・オブ・グッチ』(2021)や、同じくデヴィッド・ザッカーバーグによると「ほぼ全部事実と違う」というデヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』(2010)等と比べると創作がかなり少ない印象。そして個人的には、他人事なので描かれた当人や遺族が「やめて!」と叫ぶほど哀しがってない限り、大幅に創作しても良いと思ってる派、僕は。
ちなみにフェラーリはおろかレースや車に全く興味なくて、そーいう方面の話は全くできません。とはいえ最近人生で初めて映画の中の車に急に興味出てきました。とはいえ全くわかりません。どれくらい知らないかというとベンツを見てもベンツだと確信を持てないくらいわからない。知ってる車種が一台もないレベル。アストンマーチンは007効果でわかるか。
ネタバレあり
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1957年、夏。イタリアの自動車メーカー〈フェラーリ社〉創始者エンツォ・フェラーリ(演:アダム・ドライバー)と妻の物語。
業績不振で会社経営の危機。幼い息子ディーノの死によって妻であり共同経営者でもあるラウラ・フェラーリ(演:ペネロペ・クルス)との夫婦関係も破綻。
愛人のリナ・ラルディ(演:シェイリーン・ウッドリー)との間に産まれた息子ピエロを認知することは出来ない。
何もかも上手くいっていないエンツォはイタリア全土1,000マイルを走破する公道レース〈ミッレミリア〉に挑んだが……――
という話。
1957年が舞台だが実際は1950年~1957年前後の出来事を1957年に集約させた内容。
エンツォ・フェラーリ(演:アダム・ドライバー)59歳。
かつてはレーサーだったが最高峰のレーサーとまではいかずフェラーリ社を立ち上げて息子ディーノが生まれてレーサー引退。彼のレーシング・チームがローマ・グランプリで優勝して名門チームとなり地元の名士となるが息子ディーノが死去、妻ラウラ・フェラーリ(演:ペネロペ・クルス)との間も冷え込む……といった基本情報が冒頭で語られる。
「夫婦仲が冷え込む」というレベルを越えており、妻ラウラは朝の挨拶代わりに彼の近くに発砲したりする。様々な愛憎、巨大な家や共同責任者という責任ある地位、意地やら何やら、それらの複合的な感情で無理やり夫婦というシステムを維持しているだけ、普通の家庭ならとっくに離婚している状況。
前半……第一幕は夫婦のギスギス感、会社経営も上手くいかないギスギス感……など凄く全編「ギスギスした様子」をじっくり見せる。外に出ればレーサー志願やマスコミに追われ、それを防御するかのように無表情で更にその上からグラサンもかけた「笑わないタモリ」のような風貌で防御するエンツォ。
本当に全編「ギスギスしてる」としか言いようがない。そして色んなギスギスも台詞も凄く少ないので理解するため前のめりでギスギスを味わう必要があり、更にギスギスして疲れてくる。
偏見だが、配信されても前半でもういいやとポチッと止める人が多そう。
前述した通りエンツォ本人にも車にも興味ない自分だが、いつも面白いアダム・ドライバーがエンツォ役のせいか、画面が持つので観れる。
本物のエンツォは170xm後半くらいだったらしいがアダムは190cm近い。更に『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)でもいじられてたけど、スタイル良いはずなんだけど胸が縦にも横にもデカすぎる、それと反比例して顔が小さくて細すぎる。まるでゲームのキャラクリで胸だけ1.5倍デカくしたオリキャラのようだ。
そんな巨人体型のエンツォがグラサンかけた無表情で終始イラついてるので威圧感が凄い。またアダム・ドライバーはここ数年ずっと色んな巨匠の映画への出演をフルコンプしてる印象で、とにかくアダム・ドライバーは居るだけで面白い。だから無言でギスギスしてる時間も間が持ってしまう。
妻ラウラを演じるペネロペ・クルスも昔はセクシーヒロインばかりやらされてたが(ラテン系美女にはそれしかやらされなかった)久々に観た。終始イライラした中年女性の役をすっぴんで上手く演ってた。……とはいえ、これでもまだ可愛いすぎる気もしたが……だがラウラ本人のことは知らないが「世間知らずのお嬢様がエンツォと暮らし息子を無くしこうなってしまった」と思うとペネロペ氏で丁度いいかも。
険悪な夫婦だが一度だけ仲が良くなる場面がある、会社経営の駆け引きを通じて一瞬だけかつての愛し合っていた夫婦に戻る。
それにしてもアダム・ドライバーが相手の目を見ながら「そんな金はない!」とか大声出したりする時に絶妙に可笑しい雰囲気になるのは何故だろう?身体がデカいのに目が綺麗すぎるからなのか?
また全登場人物がオペラに行く、すると全員が思い出のオペラが唄われ、各人はかつて幸せだった時を思い出し涙する。
エンツォが唯一、やりたい事であろうレース場でも基本、無表情。だが家にいる時よりは心中は楽しいのかも。だが練習中に物凄い事故が起きる。とんでもない勢いでレーサーが吹っ飛んだ……本当にひと目見ただけで「生きてはいないだろう」と思える「とんでもない吹っ飛び方」をする、凄いシーン。ギスギスしたシーンを越えた観客に対するご褒美がこの悲劇か……。この車体もCGではなくわざわざ金属製の車を作りぶっ飛ばしたという。
中盤はエンツォの別の私生活。
愛人のリナ・ラルディ(演:シェイリーン・ウッドリー)と息子ピエロと過ごすエンツォ。愛が枯れたラウラと違い、リナとは未だに恋をしていて車好きなピエロもエンツォを尊敬しており幸せな空間。
愛する息子を失った後にできた息子……しかも車好き、後継ぎにしたい気持ちはエンツォもリナも勿論あるが、ラウラが許すはずもない。三人は隠れて楽しい時間を過ごすことしか許されない……というかそれも本当はラウラからすれば許されないが僕は他人事なので見守るのみ。
ラウラも、不機嫌とは言いつつ共同経営者としての仕事だけはちゃんとしている。

経営は悪化したままだが1,000マイルを爆走するイタリアで最も有名な公道レース〈ミッレミリア(Mille Miglia)〉で勝ち〈フェラーリ〉の名を再度轟かせれば注文殺到して経営も上向きになる。上手くいかないあれこれをミッレミリアに賭けるエンツォ。
……とはいえミッレミリアで勝とうがピエロを跡継ぎには出来ないだろうが……とりあえず経営不振は吹っ飛ばせる。
息子ピエロを早く認知して欲しくてやきもきするリナ、夫の不倫や息子が居るらしき事に気づきつつあるラウラ(リナの家を発見し、庭のレーシングカーの玩具を握りしめたラウラの気持ち!)、レースも同じラインを2台は通れない。
それと並行して後半はミッレミリアでのレースに挑むエンツォのチーム中心に進む。
エンツォのチーム、レース中も喫煙したがる最年長ピエロ・タルッフィ(演:パトリック・デンプシー)、ピーター・コリンズ(演:ジャック・オコンネル)、エウジェニオ・カステロッティ(演:マリーノ・フランキッティ)、そしてエンツォに直談判してチーム入りした、エンツォの息子ピエロも大ファンで大女優と交際中のレーサー、アルフォンソ・デ・ポルターゴ(演:ガブリエル・レオーネ)。
書く時なかったけど、本作のレース・シーンはどれもめちゃくちゃ良い。
何度も言うようにクルマに全く詳しくないので「めっちゃ良い」としか言いようがないのが歯がゆいがとにかく良い。
特にレーシングカーの助手席にカメラマンが座って撮ったという主観シーン。美しいイタリアの自然の中を弾丸のように吹っ飛ばす。こないだ観た『F1®/エフワン』(2025)より良いかも?いや『F1®/エフワン』(2025)はブラピがF1レーサーとして高齢すぎるのが鑑賞中気になってただけでアレも本当は素晴らしかったはずか。
とにかくクルマに興味ない僕が素晴らしい!と思うほど素晴らしいのでクルマ好きな人は観て欲しい。劇場でなくお家で観ても充分凄い。
単純にレース映像そのものも素晴らしいのだが、前半と中盤あまりにギスギスした夫婦のいがみ合い、息子の事で悩む愛人とエンツォ……などを見せられた時間とストレスがあまりに大きすぎたためか、このレースシーンへの没入感が凄い。
それと真っ赤なクルマがどれもカッコいい。そういうルールなのかどうか知らんが全てのクルマが真っ赤なので判別しにくいが。そしてフェラーリの車、エンツォは見栄えは気にせず速く走れるエンジンだけを追い求めてたら自然と美術品のような美しさになったという。「機能美」ってやつか、肉食獣や馬など高機動の動物の肉体、銃や刀剣などの効果を追求して行き着いた殺傷武器が持つ美しさ、それと同じで速さだけ追い求めて美しくなったのだろう。
レースはライバルたちが倒れ好調、しかし愛人と隠し子の存在を知ったラウラは、注文殺到するまで現金化するなと言われた手形をレース中に現金化した、夫への復讐?フェラーリ社倒産か?
そしてとんでもない大事故が起こる。
これは長年にも渡る愛人母子を挟んだフェラーリ夫婦の互いへの愛憎、その「良くないもの」……「災厄」がレーサーとフェラーリの美しいレーシングカー……時速160kmで吹っ飛ぶ鉄の弾丸となり、その災厄はエンツォ……またはラウラ……ではなく、何の罪もない美しい善良な村民が「おっかぶる」形となって現れる。これはまた物凄いシーンだった。
そして帰宅するエンツォを灯りを点けず自宅で待つ地獄の審判のようなラウラ。
彼女がくだした救い?いや復讐?愛憎?この結末も良かった。
この辺の結末は是非最初から全編倍速視聴などせず観て欲しい。
特に事故は、もちろん現実に起きた事だし痛ましすぎるのだが「あまり観れない凄い場面が観れた!」という映画ファンに己の業を見せつけられる形の悦びも与えてくる。そこがつくづく映画だと思った。
「レースを扱ったヒューマンドラマの伝記映画」ではある事は間違いないが「上流階級の夫婦の不和が災厄を予備、どういうわけか善良で素朴な市民だけが惨殺される、そしてそれを悦ぶ観客をハッとさせる」というオマケ付きの恐ろしいホラー映画として感じた。

ネットをざっと見たら評価高くないみたいだが僕はこれ傑作だと思った。
マイケル・マンの映画は『ヒート』とか色々有名作が多いが『コラテラル』(2004)と本作しか観てないんだけどどっちも良かったから好きかもしれん。観れるものは全部観ることにした。
そんな感じでした
※2024年で一番良かった映画は本作にした
※本作の続編としても観れる恐ろしい映画
『フォードvsフェラーリ』(2019)/途中まで痛快だったが最後はどんなに加速して引き離しても絶対に諦めない社会が足をすくい人生からコースアウトさせられるホラー映画のようなレース映画 - gock221B
〈マイケル・マン監督作〉
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Ferrari (2023) | Rotten Tomatoes
Ferrari (2023) directed by Michael Mann • Reviews, film + cast • Letterboxd
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