
原題:Cuckoo 監督&脚本:ティルマン・シンガー 制作:ケン・カオ 制作会社&アメリカでの配給会社:NEON 制作会社:フィクションパークウェイ。ポイント・エンターテインメント ドイツでの配給:Weltkino Filmverleih 製作国:ドイツ/アメリカ 上映時間:102分 公開日:アメリカは2024年8月9日/ドイツは2024年8月29日(日本は2026年1月9日に配信スルー)
新年の1月、観たい映画が少なくて中国のテンセント版ドラマ『三体』(2023)全30話を観てて、積んでた本も同時にたくさん読んでるので更新が少ないです。
……とはいえ全然更新しないと「人が出入りしない建物は、廃屋っぽい雰囲気になる」のデジタル版で虚しい雰囲気になりそう。最低でも4回は更新すれば週刊にはなるし、あと2回は何かの積み映画観て更新すると思う。
この映画の詳細はよく知らないけどポスターとか予告がかっこいいから気になってた。が、ここ近年、ホラー映画はよほどの売りがない限り劇場公開されない。本作もまた知らん間にアマプラで配信スルーで公開されていた。
トランスジェンダー女優ハンター・シェイファー主演。
ネタバレあり。
そんなに特異な話でもないがネタバレしない方が面白いので読まない方が良いです。
両親が離婚し、17歳のグレッチェン(ハンター・シェイファー)は最愛の母と離れ、悲しみに暮れていた。
グレッチェンは、父ルイス(演:マートン・チョーカス)と、義母ベス(演:ジェシカ・ヘンウィック)、2人の娘である口がきけない異母妹アルマ(演:ミラ・リュー)と同居することになり気乗りしないまま、ドイツ・アルプスのリゾート地へ引っ越す。
到着した一家は、謎めいたオーナーのケーニヒ(演:ダン・スティーヴンス)だった。
新しい家族やうさんくさいケーニヒに苛立つグレッチェンを不可解な出来事が襲う――
前半はグレッチェンの「最愛の母と離れて暮らす」「新しい義母ベスも義妹アルマも気に入らない」「そして家族が全員、病弱な義妹アルマに構ってばかり」といった感じで、新しい家族や環境は気に入らないが、かといって自分が放っておかれるのも気に入らないという思春期っぽいアンビバレントな不満をためていく。
うさんくさいオーナーのケーニヒにホテルのバイトを紹介してもらうが、やたらと嘔吐する町民が多いし叫び声をあげて白いマフラーとサングラスを付けた「ヒッチコックやデ・パルマ映画に出てきそうな白いスカーフとサングラスの怪女」に追いかけられるが、父はてんかん発作を起こしたアルマに構ってるし警察も信じてくれないし、何も良いことがない。
グレッチェンは辛いことがあるたびに一人で泣いて実母に電話するが、母は出ないので留守電に愚痴を残す。そしてグレッチェンは金を貯めて母の家に帰ろうとしている。そんなに母が好きで父の新家族とぎくしゃくしているのに何故、父についてきたのだろうか?
グレッチェンはホテルの宿泊客エド(演:アストリッド・ベルジェス=フリスベ)と良い感じになり、ホテルの金を盗んで駆け落ちする……が、再び怪女に襲われて病院送りに。
少し前にアルマが変な叫び声を聞いててんかん発作を起こした時も、この叫ぶ怪女による再襲撃時も同じシーンが何度も繰り返されるので「この叫びは時間の流れがおかしくなってループ現象を起こすのか、それともグレッチェンの不安な内面の映像化なのか?」ということはどちらかわからない感じで曖昧に描かれている。
そんな感じで前半は「世界と歯車が合わない思春期の少女の苛立ち」を中心とした苦い青春映画みたいな感じで進む。
それプラス謎の怪女にちょくちょく襲われるホラー要素。
だが、本編はずっとグレッチェンの不安がそのまま映像になった感じなので、怪女に対しても「これは、特殊能力を持った怪人なのか、それとも不安なグレッチェンの幻覚……っていうか彼女の内面がホラー映画として描写されてるだけなのかな」ということは観ててもまだ謎。というか、前述の怪女の叫びによるループ現象同様に、わざと分かりにくく描かれている。
中盤、元々大事にされてなかった父に更に下に見られてグレッチェンは絶望。そんな時にヘンリー刑事(演:ヤン・ブルトハルト)と知り合う。
ヘンリーは白いスカーフで叫ぶ怪女を追っているという。誰も信じてくれなかった怪女を信じてくれたのでグレッチェンはヘンリーと行動を共にして怪女を捜索する。
そうこうしてると父が「実家のグレッチェンの荷物を持ってきた」ことで「グレッチェン最愛の母は死んでしまっていた」事が明らかになる。好きなのに一緒に暮らさないし電話しても出ないなど変だと思ったらそういうことか。グレッチェンが「金を貯めたら母のもとに行く」と言ってたのは実家に戻るってことだったのか。しかし父は実家を売ってしまい、グレッチェンはどこにも行き場がなくなる。
そして怪女の正体も明らかになる。
それは……単純に「妊娠出産する器官を持たないので人間の女性に受胎させる、特殊効果を持った叫び声をあげる鳥類のカッコウのような声質を持った亜人種だった(以下”カッコウ人”と呼称)。
今までの描写だと「映画的にはグレッチェンの幻覚かなぁ」という感じで描かれてたが「本当にカッコウ人類でした」という方向だった。だが、最近のホラー映画は「劇中で怒る怪異は、幻覚や映画的メタファーに見せかけて実は見たまんま、そのままのバケモノでした!」っていうパターンが多い。本作も凄く何か……たとえばグレッチェンの不安や不満を擬人化したメタファーのように見せかけて実は見たまんまのバケモノでした、というのは近年のホラー映画のトレンド?に沿っているといえる。
更にオーナーのケーニヒは、金や権力を駆使してカッコウ人を保護して増やす手助けをしていた。この辺は特に理由は描かれない。「偏執狂的に環境保護活動をする金持ち」みたいなものだ。
そして更にグレッチェンの家族が何故巻き込まれたのかなどの謎も明らかになりつつ、病院でグレッチェン vs. ヘンリー刑事 vs. ケーニヒ vs. カッコウ人、という入り乱れたラストバトルが行われて映画は終わる。
それにしても、このカッコウ人は口がバクンと空いて絶叫、聞いた人間は嘔吐したりして行動不能になる。グレッチェンはそれを防ぐためにいつも聴いてる音楽再生デバイスで爆音で音楽鑑賞しながら戦う。敵の能力や、それを若者らしい要素や機転で破る……という感じ、そして不気味で奇妙すぎる敵の描写など全体的に荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』っぽい。しかも「奇妙な新生物」があるので第8部『ジョジョリオン』の敵や新生物感があるな。荒木は荒木でもジョジョリオン以降のジョジョや『岸辺露伴は動かない』など、ここ10年くらいの直近の荒木漫画っぽい展開だ。立ち向かうグレッチェンも中性的な超スタイルいい美形だし、だんだん8部以降のジョジョの実写化のように見えてきた。
そして不安や子供っぽい不満や嫉妬を抱えていたグレッチェンもついに家族や自分が信じるもののために命がけで戦うようになる(これもまたジョジョっぽい)。
だから本作の本質を一言で言うと「子供だったグレッチェンだったが、護りたいものが出来て大人になる」という話をエンタメ系ホラーアクション映画として描いたって感じ。ちょくちょく書いたが、ミスリードをばら撒いて本編をかなり後半まで良い意味でわかりにくく描いていたのが興味が持続して面白かった。グレッチェンは勿論、怪人カッコウ女や敵のオッサンやヘンリー刑事もなかなか魅力的だし、それで結末のグレッチェンの打開策も少年漫画的だしグレッチェンの成長や演じてるハンター・シェイファーも魅力的で、これは結構いい映画だと思った。
途中「これはちょっと……」という穴も幾つかあったので、そこを指して気に入らないという人もいそうだが、僕は長所が短所を上回っていたのでトータル好きでした。だから欠点は、書くのはやめとく。後半とか謎を考察交えて書くのも面倒くさいし……。
そういえば義母ベス役のジェシカ・ヘンウィックが好きなんだけど、このベスは本当に只のつまんない母親キャラで、彼女が演じてる意味あんまりないと思った。まぁ監督が好きだったのかも。
そーいう感じで「めちゃくちゃ良い!」と年間のベスト10に入ったりはしなさそうだが「なかなかいいじゃん!次回作も見てみようかな」と思うくらいには好感持てた映画でした。
そんな感じでした
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