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『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022-2023) 全50話/鈴木則文映画のような気取らず楽しさ儚さ全て詰まった作品……などと申しており…。


脚本(第26話以外):井上敏樹 監督:田﨑竜太ほか 原作&脚本(第26話のみ):八手三郎 プロデューサー:白倉伸一郎ほか 音楽:山下康介 主題歌&ED曲:MORISAKI WIN 製作:東映ほか 上映時間:各話30分、全50話 放送期間:2022年3月6日~2023年2月26日 シリーズ:『スーパー戦隊シリーズ』第46作目 中国でのタイトル: 暴太郎战队DonBrothers


先日、東映の50周年&第49作目を迎えた「スーパー戦隊シリーズ」が一旦終了して『宇宙刑事ギャバン インフィニティ』(2026-)が始まった。終了の原因は少子化による関連玩具の売上低迷、視聴率の低下、制作費の高騰などが重なったことによる収益性の悪化が原因らしい。
「スーパー戦隊シリーズ」も観てなかったが、仮面ライダーとかウルトラマンも子供の時以来観てない(怪獣への興味も薄いのでゴジラもあまり……)。やはり昭和は「卒業」する風潮が強かったので中学生くらいで徐々に戦隊とかライダーも観なくなってきた、そんな時に丁度『バットマン』(1989)が公開されて「精神異常者みたいなノリで描かれたヒーロー?かっこいい!」と当時の僕の厨二病的な感性にヒットして、そして小学館の『X-MEN』邦訳とかアニメ化などによる第二次アメコミブームにハマって……30年?すっかり「ニチアサ」的なものから離れていたが、アメコミ疲れに加えて「もう高齢が近づいた中年だからそろそろアメコミヒーローも……」と思い始めてた最近だったこともあり「戦隊終了とか言われたら幼い頃観てたから最後も観とくか」と、最終作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(2025-2026)を全部……はキツいので最初と最後の数話観てて「なんか結構いいな」と思い、数年前にライムスター宇多丸氏が取り上げたお陰で特撮外の映画クラスタやサブカル勢にまで話題になってた本作を観ようかなと思いYOUTUBEの第1、2話観たが(東映特撮は全作品の最初の2話だけ無料公開してる)、あまりにも面白い。
そうなるともう「ドンブラザーズしか観たくない」感じになって他の映画観れなくなってきたので「これは通して観ないと収まらんわ」と思い東映特撮作品が観れるサブスク「東映特撮ファンクラブ」とやらに入って本作を全話観たわけ。
想像の2倍面白かったので5話づつくらい観て半月で全部観れました。「やばいこの勢いではすぐ全部観てしまう」と思い、スタッフや出演者やその他の作品について「勉強」してドンブラ視聴に「意図的に遅延」を加えて視聴時間を引き延ばそうとしたが、それでも半月で全部観た。全100話くらい欲しかった気もする。
中国に輸出した戦隊もの第1作目らしいが中国でも大ヒットしたらしい。やはり人気はドンドラゴクウ?中国でのタイトルは『暴太郎战队DonBrothers』。
本作の脚本家の井上敏樹氏が特撮界隈で作家性の強い脚本家みたいですね。本作はこの井上氏の30年ぶりの戦隊ものらしいが前回の『鳥人戦隊ジェットマン』(1991-1992)も少し観てたわ。でも前述の通り特撮卒業しかかってた時なので真面目に観てなくて「ホワイトの戦隊ヒロイン可愛いな」という感じでたまに観てただけだった(そのヒロインはドンブラザーズ劇場版にゲスト出演してた)。
本作があまりに良かったので他の井上敏樹作品も観てみようと思ったが、本作っぽいコメディっぽいものがあまりない。とりあえず似た雰囲気を感じる『超光戦士シャンゼリオン』(1996)と、当時たまに観てた『仮面ライダー555』(2003-2004)を観てみようと思う。どちらもU-NEXTにあるし。

ネタバレあり

 

 

🍑👹🐵🐶🐦️🐲🐯1️⃣2️⃣3️⃣🦈

 

 

Story
女子高生漫画家鬼頭はるか(演:志田こはく)は、喫茶どんぶらで顔に飛びついてきた不思議なサングラスによって人間に紛れ込んでいた怪人が見えるようになり追いかけられ、私生活では自身の漫画が盗作疑惑で連載が打ち切られ高校での地位も急降下。
更にはるかの同級生が「強い欲望を持った人間から生まれる怪物」ヒトツ鬼へと変貌してしまい、はるかのサングラスは鬼を浄化させるため彼女を強制的に戦隊ヒーローオニシスターへと変身させる。
はるかは次々と愛妻家の会社員・雉野つよし/キジブラザー(演:鈴木浩文)、働いたことがない風流人猿原真一/サルブラザー(演:別府由来)、逃亡中の指名手配犯犬塚翼/イヌブラザー(演:柊太朗)、そして宅配の配達員・桃井タロウ/ドンモモタロウ(演:樋口幸平)と知り合う。このタロウは、20年前に高次元から送られてきた、はるか達「お供たち」を従えて「鬼退治」を目的とする暴太郎戦隊ドンブラザーズリーダーだった――

そういう話。

🍑ざっくりした設定

一言で言うと「ドンブラザーズが、”鬼”から日本の人たちを護る話」という事になる。
だが、その倒すべき鬼、ヒトツ鬼(ヒトツキ)は無から湧いてきたバケモノではなく、強烈な欲望が暴走してしまった人間がヒトツ鬼となる。つまり道を違えてしまった者を、自警団ドンブラザーズが無償で倒す。ドンブラザーズが倒したヒトツ鬼は元の人間に戻って改心する。
そのドンブラザーズを指揮するタロウは、高次元イデオンからの使者。
高次元イデオンは人間界の波動が乱れれば荒廃してしまう。そのためイデオンの住人、脳人〈ノート〉はヒトツ鬼が発生すれば排除する必要がある。
ドンブラザーズが倒したヒトツ鬼は元の人間に戻ってしまう。それだと同じ人物が再びヒトツ鬼になる可能性がある(事実、本編で何度もヒトツ鬼化した人物も多い)。だから脳人はドンブラザーズが倒す前にヒトツ鬼を倒したい。脳人がヒトツ鬼を倒した場合、元の人間は異次元の牢獄に閉じ込める。
だからドンブラザーズは「犯罪者(ヒトツ鬼)を倒してチャンスをあげたい」
脳人は「犯罪者(ヒトツ鬼)を倒して永遠に閉じ込めたい」
と、こういう思想の違いがあり、故に両者は争う。
ドンブラザーズより先にヒトツ鬼を倒すために派遣されたライバル集団の脳人三人衆、タロウの宿敵となる高潔なソノイ(演:富永勇也)、人間の恋愛を知りたい美少女ソノニ(演:宮崎あみさ)、人間の喜怒哀楽を知りたいソノザ(演:タカハシシンノスケ)。
脳人は感情の機微に疎いらしく、三人衆は人間に興味を持ちドンブラザーズと戦い続けるうちに、どんどん人間の感情を知っていく。
基本的な流れはドンブラザーズと脳人三人衆が争いながらヒトツ鬼を倒していく。
そして、タロウと同じくイデオンのドン王家から地球に送られた桃谷ジロウドンドラゴクウorドントラボルト(演:石川雷蔵)も追加戦士としてドンブラザーズに加わる。
更に、人間に化けて人間社会に隠れ住む第三勢力、獣人〈ジュート〉。獣人はドンブラザーズと脳人、共通の敵。獣人は不死で倒すことができないためイデオンは対獣人の兵器として人工生命体ドンムラサメ(声:村瀬歩)を派遣する。
そんな感じで話が進むにつれて、それらの謎や真相、ドンブラザーズの各メンバーの秘密が明らかになっていく。
……と、メインストーリーの設定についてだけ書いても長くなって一向に感想が書けないのでドンブラザーズが得意とする〈アバターチェンジ〉や次々とバージョンアップする戦隊ロボなどのギミックについての説明は省略する。
色んな強化フォームやロボが追加されてオモチャが出る、それをキッズが買って売り上げにつながる……という感じでギミックとか戦隊ロボも重要なのだが、はっきり言うとストーリー的には大して関係ないんですよね、タロウが最初に乗ってたロボでもヒトツ鬼ングを倒せるし、後で全員で合体するオニタイジンや更なる強化ロボも出てくるのだが「最初のタロウだけのロボと全員で合体した究極合体ロボはどっちでも倒せるけど、では両者は何がどう違うの?」という感じはある。まぁそういうものだ。今更買っても戦隊終わったので意味はないのだが面白かったのでオニシスターのフィギュアを買いました。

 

🍑前半の全体的な流れ。その良さ

前半。
第1話~第26話(総集編)&YOUTUBEでのスピンオフ(第4話あたりの時期)&映画(第20話の後にあたる)
あらすじ見るとわかるように、本作の前半は完全に鬼頭はるか/オニシスターを主人公にして進んでいく。
本当の主人公は桃井タロウ/ドンモモタロウなのだが、彼は”高次元世界で作られた人工生命体”という特殊な存在、しかも前半のタロウは謎が多いことに加えて「無表情」「嘘がつけない(ついたら死ぬ)」など独特の性格によって序盤の彼は感情移入しにくい主人公、だから前半は巻き込まれ系主人公として鬼頭はるか/オニシスターが主人公としてドラマを引っ張っていく。
はるかは異次元で謎の男、タロウの育ての親桃井陣(演:和田聰宏)に「タロウを見つけて忠誠を誓え」と言われタロウを探すがなかなかタロウが見つからない。
というのも、ドンブラザーズはヒトツ鬼が現れて暴れ出したらドンブラザーズ装備が、はるか達メンバー「お供たち」を自動的にドンブラザーズに変身させてヒトツ鬼が暴れている現場に転送させる。そこで戦いが終わればまた元いた場所に戻される。だからはるかにとっては「変身前のタロウが誰なのか、猿や犬やキジの正体が誰なのか」わからない。この「変身前のドンブラザーズは誰なのか?」というのも面白い要素。物語が進むにつれて変身前が誰なのかわかっていく(犬塚翼/イヌブラザーに至ってはドラマ終盤くらいまで誰も犬塚がイヌだと気づかないので「最後まで正体がわからないままかも」と少し思った)。後半になると一堂は「喫茶どんぶら」に入り浸るようになり喫茶どんぶらが昔の戦隊ものでいう秘密基地みたいな場所になっていく。
やがて5人のドンブラザーズが揃う。
本作の前半は特にカオス度が高く、僕は第一話からすぐ大好きになった、特に最初の数話、ヒトツ鬼を倒した後ドンモモタロウが高笑いしながらお供をボコボコにしていくのが意味わからなさすぎて面白すぎた。少し後で「お供たちが弱いからシゴいてた」とわかるが、そう言われても「本当にそう?」と思わされるものがあって、そこも良かった。
一見ドンブラザーズはキャラが濃くてハチャメチャなだけに見えるが、5人は割と「人助けをする」「困った人がいたら自分が困っても自然と助ける」といったシーンも必ずあるので「やっぱヒーローだな」と思わされる。
はるかも普段はお調子者で最初はドンブラザーズを辞めることや人気漫画家に返り咲くことばかり考えているが、第15話『おかえりタロウ』で、タロウを蘇らせる代償で歩けなくなっても「タロウが助かるならどうなってもいい!」とまで言う(それにしても蘇生の代償が「下半身不随になる」というのは妙に生々しくて怖かった)。
猿原真一/サルブラザーは副リーダー的な、チームの潤滑液的な役割で主役回も少ないが、希少な猿原の主役回、第21話『ごくラーメンどう』は結構印象に残った。先代サルブラザーが出てくるのだが彼は女子にモテたかったりと私利私欲のために使ってクビになったらしい、そして同様にドンブラザーズのパワーを誤った使い方して適格者でなくなった人たちが5千人くらい居るとわかり先代に「猿原くんは何で他人のために戦えるんだい?」と訊かれた猿原、普段は風流人を気取りつつ妙にプライドが高かったり俗っぽい彼だが「あ、あぁ……いや、なんとなく?」と言うのだが、そこで「あ、いま風流人ぶってるわけでなく本心だな」と伝わった。
前半、ふざけた展開の中でちょいちょいそういった場面が多くて「やっぱ現ドンブラザーズの5人は、利他的な事に”自然と”身を投じられる奴らなんだな」と、理解(わか)らされる。これらは割とかなり前半にポンポンと見せてくるので、スーパーヒーロー映画を観すぎてもう常にスーパーヒーローに胸焼けしてるような僕ですが、おかげで早い段階で「ドンブラザーズはヒーロー性あるな」と思いました(その一方で雉野はかなり危うく「この人だけは流れでヒーローしてるだけでは?」感があったが最後まで観たら、まぁヒーローか、とギリ思いました)。
ドンブラザーズはヒトツ鬼を倒しつつライバル組織・脳人三人衆とも争う。脳人がヒトツ鬼を倒してしまうと消滅してしまう(後で「異次元の牢獄に囚われていただけ」という事がわかる)。そのためドンブラザーズは脳人より先にヒトツ鬼を倒さなければならず、脳人はドンブラザーズより先にヒトツ鬼を倒したいので自然と争いになる。
はるか主人公によるストーリーは、進むにつれて視聴者もメインキャラを理解してきた頃にタロウが中心となっていく。
二重人格の追加戦士・桃谷ジロウ/ドンドラゴクウも加わる。
タロウは変身前の宅配員の時に、ドンモモタロウ状態では宿敵として死闘を繰り広げている脳人三人衆リーダーのソノイの人間体と知り合い友情を温めていく。だが、やがて互いが「ドンブラザーズのドンモモタロウ」「脳人のソノイ」だと気づき、決闘を行う。
この「ドンモモタロウvs.ソノイ」がシリーズ前半のクライマックス。
ちなみに中編映画『暴太郎戦隊ドンブラザーズ THE MOVIE 新・初恋ヒーロー』(2022)は第20話の後くらいの話なので第20話まで観たら映画を見てまた第21話を観ればいい。
そういえば良かったところ、井上脚本作品に多いらしいが「庶民的な食べ物」が頻繁に出てくるのが良かった。観てないからわかんないけど井上脚本じゃなくてニチアサには多いのかな?唐揚げ!とかすき焼き!焼きそば!とかパフェ!とか分かりやすい昭和っぽい「ごちそう」が多くでてくるのも良かった。
またこれは戦隊もので多いイメージだが額に汗して労働する場面の多さも良かった。特にタロウが宅配の仕事をしてるシーンの異様な多さ。「やっぱ食事と労働は大事だな」と、作品ターゲットである児童のように素直に思えた。

 

 

🍑後半の全体的な流れ。その良さ

折り返し地点以降の後半。第27話~第50話〈最終話〉
ドンブラザーズと脳人との闘いは続くが「ドンモモタロウvs.ソノイ」を境に、他のソノニは犬塚翼/イヌブラザーに恋して、漫画に興味を持ったソノザは鬼頭はるか/オニシスターの編集者になったり、時に共闘したり脳人が喫茶どんぶらに普通にやって来たりと、ガチの宿敵同士というより「トムとジェリー」的な仲良く喧嘩しな状態になっていく。
ほとんど仲間みたいになった脳人三人衆だが、代わりに前半から少しづつ出てきていた謎の敵・獣人〈ジュート〉との闘いも本格化。
そして「犬塚翼/イヌブラザーの行方不明の恋人・夏美(演:新田桃子)と雉野つよし/キジブラザーの妻みほ(演:新田桃子)が全く同じ顔。両者は同一人物なのか?それともどちらかは獣人なのか?」という序盤からずっと引っ張ってきた謎が中心になっていく。ここまでは「犬塚がイヌブラザー」という事を他のブラザーズは知らないし、犬塚と雉野は「互いの愛する女性が全く同じ顔」という事もニアミスし続けて知らないまま引っ張ってきたので、それが明らかになる「などと申しており」で発動する瞬間などでは、ここまで溜めて来た分「気持ちいいいい!」という快感があり、それがずっと続く。雉野役の鈴木浩文氏が突然キレる演技が凄く上手いのも快感。
犬塚は黒尽くめで孤独な逃亡者……という完全に「古き良きブラック」なのだが、それって今ではパロディでしか語られないような「昭和の孤独なヒーロー」だから近年こういうキャラはむしろコメディ役を割り当てられることが多いという、犬塚も例外ではなく後半までずっと「またしても何も知らない犬塚」「誰も犬塚のことを知らない」といった感じで「面白いキャラ」として描かれている。変身後も「サイボーグクロちゃんみたいな二頭身の犬」という一人だけ可愛いヒーローなのも良い、それで面白ロンリーキャラで溜めに溜めて終盤では一気に主人公みたいに駆け落ちヒーローとして爆発する。これは一番おいしいキャラではないか?宮崎あみさ氏演じるソノニも最初から可愛いが犬塚との恋愛ドラマが始まると異常な可愛さ……だがあまりに色ボケになりすぎた気がしなくもないし異次元人なこともありボーン・セクシー・イエスタデイっぽさもちょっとある。
善良だが自己評価が低く妻に依存している雉野は妻の事になるとおかしくなり、何度もヒトツ鬼になってしまうし、この三角関係に、犬塚に惚れてしまった脳人ソノニ、獣人を殺す事ができる唯一の存在ドンムラサメも絡んでくる。
獣人問題にはジロウの哀しい秘密も関わってくるし後半のクライマックス。
あと「はるかの漫画を盗作した椎名ナオキの正体」など、序盤から引っ張ってきた謎の数々も明らかになる。
一話一話の完成度は前半の方が高いが、後半はこの「なつみほ問題」を中心として「仲間になった愛すべき脳人三人衆」「いつの間にか接しやすくなったタロウ」など、ここまでの積み重ねや「キャラ同士の関係性」が良い形になっており、ずっと観ていたいような楽しい時間が続く。
特にタロウは、唐突に第一話とかに戻ると演じている樋口幸平氏がまだ演技に慣れていなかったせいか全く別人?ってくらい演技が違う。樋口幸平氏の演技の上達と共にタロウのキャラクターも人間らしくなっていってて「樋口幸平=タロウ」がシンクロしている。
そして、すっかり仲良くなった脳人三人衆の代わりにソノシ(演:廣瀬智紀)、ソノゴ(演:髙井真菜)、ソノロク(演:小柳心)が攻めて来るので三人衆はドンブラザーズ入りして新三人衆を撃破。更に新三人衆を粛清しに来た脳人のソノナ(演:本橋由香)とソノヤ(演:村上幸平)が来て、とりあえずのラスボスになってくれるので記憶が希薄になったタロウが、はるかの漫画で一時的に記憶が戻り撃破する。
というのが全体的な流れ。
ソノイ達がドンブラザーズ化しちゃったので、敵として追加されたソノニ&ソノゴ&ソノロクの新脳人三人衆が倒されるために出てくるわけだが、たった5話出てきただけですぐ愛らしくなったのでソノナ&ソノヤに消されるのが嫌だったな。たった5話でキャラ立ってるのが凄い。
全くハズレ回がない本作だが第41話『サンタくろうする』だけは割とハズレ回だった。いや、「ハズレ回」というと少し言い過ぎか。この回だけ他の回のようにダブルプロットで濃度が高かったりしないし新要素もなく「いかにも特撮番組」といった綺麗ごと回で「つまらない」というより「この回だけ妙に普通だな……」という温度。ラストではるかが「またこのオチかい!」と言うので書いてる井上氏も自覚的だと思った。
本作の最終話の後の話というのもあって、他の戦隊とのコラボVシネ『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』(2023)、『王様戦隊キングオージャーVSドンブラザーズ』(2024)とかがそうで、ソノイを使って「生と死の流転」を語ったりと良いところも無くはないのだが、良いところを含めてもまぁ蛇足だと思いました。
後半の良いところも幾つかあるんだが、それは次の最後のまとめで語って終わろう。

 

 

🍑まとめ。本作の良さ

もうとにかく脚本が卓越しすぎていて、ほぼ全話、複数のプロットが同時に走り、時にそれらが相互作用しあい、そしてシリーズ通して語られる要素(タロウvs.ソノイ、タロウやジロウの秘密、はるか盗作問題、なつみほ問題、獣人の謎、ドンブラザーズがいつ互いの正体を知って揃うのか、など)も引っ張った末に丁度いいタイミングで明かされる。突然出てきたドンムラサメはオモチャを売るために突然ねじ込まれたので最初なんのキャラも役割も無かったが「獣人を殺せる存在」という唯一無二の役割を与えられて何とか存在感を与えられてて上手いなと思った。
それぞれの回の殆どは一話完結だが「毎回、変身しての戦闘とロボ戦がノルマで数分間入れなきゃいけない」という縛りがあるのに毎回笑いあり涙ありカオスや謎あり次回へのヒキあり……それが20分くらいの間に詰め込まれてて展開も早いしマジで面白い。全くハズレ回がない、普通なら飛ばしたくなるような「総集編」ですら工夫して面白くしていて本当に凄い。「急展開?伏線回収?結末?そんなの1分あればできるよ……」って感じの進行は本当に惚れ惚れしましたし、MARVELスタジオとかONEPIECEの作者とかはこれ観て反省して欲しい。
これ観て「なんか故・鈴木則文の映画みたいな、気取らないのに全てが詰まった面白さがあるな」と思った。鈴木則文は分かりやすい作品で言うと『トラック野郎』の人ね。
前半はツッコミ不在でカオス度が高く、個人的にそこが好み。
後半は、前半があまりに型破りな戦隊でわかりにくいと困惑されたのか?どうか知らないが、はるかが急に「◯◯なんかーい!」と頻繁にツッコむようになる。
これで確かにわかりやすくなったが、僕は別に第一話からすぐ入り込めてたので「いや、ツッコミいらんなぁ」と思った。前半の、はるかは苦言を呈されたら何か硬いもの持って「うわああああ!」と殴りかかりそうになって雉野に止められるというボケがあったが、こういう「ここはギャグですよ」っていうエクスキューズがないキャラの方が好きだった。彼女の顔芸は本当に絶品なのだが後半あまりに不必要にそれが増えたような気もするし、とは言えラストは、物語開始と同様に「はるかと初対面のタロウ」で締めるのは「やっぱこの2人が主人公だな」と思わせて素晴らしいラストだった。
物語が始まった序盤、孤独で感情表現にも乏しかったタロウは「俺は幸せというものがわからない。だから他人を幸せにして、それが何か見つけたい」と語る。
だがタロウは、ドンブラザーズや育ての親、ソノイや脳人や宅配先の客やヒトツ鬼など色んなものに触れ、友情や人間性を獲得する。
そして最終話間際で「戦い続けてリセットして闘いを休止する時が来た」タロウは、徐々にドンブラザーズ関係の記憶が消えていく。タロウは融通が利かず妙に古風な性格なのも相まって認知症で記憶が永遠に失われていく老人のように見えて非常に切ない。
結局全50話を通して、子供が様々な苦楽を通して仲間ができて愛を享受し、そして喪う、だがそれは必ずしも悪いことではない、そういった人間讃歌なんだろうなと思った。
そして、理不尽に日常を奪われた鬼頭はるかも、戦いを通じてドンブラザーズという新しい仲間を得て、脳人ソノザというアメとムチが絶妙な編集者を経て漫画家としても向上し漫画道を取り戻す。
タロウと鬼頭はるかという二人の主人公が、物語冒頭とラストで同じ場面を演じつつ、その表情は一変している(メタ的には、演じている俳優の演技力が格段に向上していることも大きい)。タロウは記憶を失ってしまったが、はるかと再び親交を育む予感、あるいは物語がループして『あの楽しい日々が再び繰り返される』かのような輪廻の予感さえ感じさせる。。
タロウは、ドンモモタロウの時はテンションが上り「理想化された織田信長」みたいな戦闘狂うつけ者みたいな性格だが、普段のタロウは戦隊ものレッドとは思えないほど虚無的な雰囲気をまとっていて、それがギャップになってて凄く良かった。
それに加えて最終話付近の記憶が消えつつあるタロウは、雉野の家の前に突然現れる場面などに象徴されてるが殆ど幽霊のようにしか見えない。ただし怖くない幽霊ね。
そしてタロウ以外にも、この世に存在しない人物に盗作されて挫折したはるか、隠り世に行ってしまった恋人・夏美を求める犬塚、世捨て人の猿原、この世に存在しない妻に依存する雉野、この世に存在しない恋人のために偽りの人格を作り上げたが全てを失うジロウ、最後まで「正体不明」というのがアイデンティティの喫茶どんぶらマスター五色田介人/ゼンカイザーブラック(演:駒木根葵汰)、そもそも現世にいない桃井陣……など、メインキャラが誰も彼も幻を追い求めていたり自身が幻みたいな存在だったりして、明るくハチャメチャで楽しい作風と反比例して妙に幽霊じみた要素が多い作品で、展開が早くて要素詰め詰めで楽しい以外に、その儚さも好きだなと思った。

好きなキャラは、やっぱはるか?あと犬塚とソノニ、タロウ、ソノザも好きなのだが漫画編集だけでなくもっと出番欲しかった気もする。とはいえ作品全体好きなので全員良かったけどね。
そういう感じで凄く楽しみました。

 

 

……などと申しており

 


 

暴太郎戦隊ドンブラザーズ THE MOVIE 新・初恋ヒーロー(キッズ / 2022) - 動画配信 | U-NEXT

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