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『コズモポリス』(2012)/当時はピンと来なかったが再見したらインタレスティングでそこそこ楽しめた


原題:Cosmopolis 監督&脚本:デヴィッド・クローネンバーグ 原作:ドン・デリーロ『コズモポリス』(2003) 制作:パウロ・ブランコほか 撮影:ピーター・サシツキー 編集:ロナルド・サンダース 音楽:ハワード・ショア/Metric 制作会社:アルファマ・フィルムズほか 製作国:カナダ・フランス・ポルトガル・イタリア 110分 公開日:(日本は2013年4月13日)

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いま「PTAの次回作はドン・デリーロの『アンダーワールド』の映画化?」っていう噂が今あるのでドン・デリーロ原作映画をさらいたくなり、その一環で観た感じ。
10数年前の当時は「デヴィッド・クローネンバーグ映画だから」という理由で観たが、非常に特異な、感情移入を一切させないタイプの映画なので「映像や映画の佇まいはカッコいいけどあまりにもピンと来ないな。”このリムジンがアメリカ、または資本主義のメタファーだ”とか、どうやらそういう方向性の話っぽいけど、それは頭で考えて想像しただけで実際はあまりに自分とかけ離れた世界過ぎて全くピンと来ない」と思いつつかといって文句を言ったら馬鹿に見えるタイプの映画なのでスッ……と本作を「視聴済」の棚に入れて終わった。10数年経った今はどうか?
「昔はわかんなかったけど今は感動した!」「相変わらずピンと来なかった」どちらもありうる。

ネタバレあり。

Story
ニューヨーク
投資家エリック・パッカー(演:ロバート・パティンソン)。

彼は28歳という若さで巨万の富を手に入れ大富豪の娘とも結婚していた。
彼はいつも白いリムジンの中で金の動きを見ながら、愛人たちとの快楽にふける日々を過ごしていた。ある日、エリックは、NYで暴動が起きている日に散髪をしに床屋に向かうが――

大富豪エリックが朝、リムジンに乗り床屋に向かう一日の話。
暴動が起きてるのでリムジンは凄くゆっくりでしか進めない。リムジンには次々と同僚、友人、愛人などが乗ってきて哲学的な会話をしたりSEXしたりする。
エリックと近親者の会話は噛み合っていない……というのも相手は凄く一般論を語っているし、対するエリックは更に輪をかけて神のような視点から俯瞰した事しか言わないので尚更かみあってなさが際立つ。まるで一昔前のAI同士の会話のようで気が遠くなってくる。
エリックは本編の殆どを特製リムジンの中で過ごしトレーダー業務、会議、食事、SEX、健康診断、果ては排泄に至るまで全て車内で行う。
リムジンの外には警備主任が居てリムジンを警護している。
車外の暴動はどんどん激しくなっていき、焼身自殺する者まで現れるが車内のエリックや近親者はまるで窓の外を他人事のように見ている(つまりリムジンの窓から見える景色は車内の上級からすればTVでニュースを見ているような距離感なのだろう)。
エリックは、実家が大富豪の美しい(演:サラ・ガドン)に執着しており朝から何度も街中で出会いホテルへ何度も誘うが妻は付いてこない、それどころかリムジンにも全く乗ってこない。妻に相手にされない彼は二回愛人とSEXするが、その度に全部妻にバレる。そしてエリックが破滅したら妻は粛々と離婚する。夫婦間には愛情がなく妻はエリックをしょうもない奴だと思っている。妻は、数字やアルゴリズムを追うだけのエリックよりも人間的なステージが上で、彼女は夫と居るより本屋で読書して思索する方が楽しいと思っている。エリックが破滅すると妻は、金の切れ目が縁の切れ目とばかりに離婚する(だが「貴方が大丈夫なように出来るだけの援助はするわね」という同情心は持っている)。
朝、車で出発して車内でチャートを見たりSEXしたりしていたエリックは同じ姿勢のまま気がついたら自身の殆どを失っていた。そして婉曲的な自死に向かう。

 

 

この映画、このリムジンは恐らく前述した通り、やはり「リムジン=アメリカ合衆国のメタファー」「リムジン=現代資本主義の行く末」みたいな事が言いたい気もするが”考察好きの若者”がよく言う「正しい観方」「正解」とは違うかもだが自分は日本の小市民なので、単純に「リムジン=エリックそのもの、彼の人生」と、ミニマムな観方をした。
前半、健康診断の結果「前立腺が左右非対称」と医者に言われる。常に無感情のエリックだが、この「左右非対称の前立腺」についてだけ妙に最後まで固執している。
「だから自分は特別だ」と良い意味に捉えたのか、はたまた「インヒアレント・ヴァイス(内在する欠陥)」って感じで「完璧な自分にも僅かな欠点が」と、ネガティブな意味に捉えたのかはよくわからなかった。
だが、命を狙ってくる男(演:ポール・ジアマッティ)の発言を聞く限り、エリックは完璧な自分(=会社)にあるインヒアレント・ヴァイスのようなものは常に排除して生きてきたようなので恐らくネガティブな意味に思っていたのではないか?でも、その割には前立腺の話をする時に嬉しそうな顔してたから、欠点があるのも良いかもと思い始めていたのかもしれない。
そもそも警護主任が何度止めても執拗に、散髪するために自分が幼い頃に行っていたダウンタウンの床屋に行こうとしてた、そして髪型も散髪の途中で切り上げて左右非対称の髪にしてたので、映画後半では綻びを愛しているように見えた。
後半の婉曲的な自殺も、ただ多くを失ったから自暴自棄になったり懺悔がしたかったようにも見えず、テーザーガンで自分を撃たせようとしたり自分の手を撃ち抜いたりしてたので自傷で生の実感を得ようとしてたように見える。
「数字の上下だけを神の視点から見てきた社長が、自分の欠陥や下々のものを色々と見て今までの自分を顧みようとした」……というよくありそうな話を、凄く変な感触で撮った映画……そんな印象。
そして「最後、エリックはどうなったのか」というところだが、映画のラストと共にエリック危機一髪の終わり方だったので死んだように見えるし、しかし一方で相手のポール・ジアマッティが土壇場で殺したりしなさそうな男なので殺さなかった気がする。だが本作は「ラストの直後に生きてた」「いや死んだ」などと考えても仕方がない話なので、割とどうでもいいっちゃどうでもいい。まぁ生きてたとしても殺人を犯したし破滅は破滅だろうけども。
……という、そんな本作に対し、今の自分が何を思ったのか。
一言で言い表すのは難しい。
というかこれ観て自分が何を思ったのかも自分でよくわからないというのが正直なところ。機械で出来た内臓のようなリムジン車内や、いつも妙にエロいSEXシーンや、車内排尿や手を撃ち抜くシーンや過去の闘いで目を怪我してる運転手など「凄くクローネンバーグっぽいなぁ」と、クロネンらしさを感じた時、原作が原作だけに美しい映像で動くポストモダン文学を読んでる読書感……そういった感触が楽しかった。
政治的テロ芸術家”焼き菓子アサシン”ことアンドレ・ペトレスク(演:マチュー・アマルリック)(演:マチュー・アマルリック)や床屋のじいさんも良いキャラだった。
そういえば常に無感情で離婚されても銃を突きつけられても表情を変えないエリックだったが、焼き菓子アサシンにパイ投げられた時だけブチギレて焼き菓子アサシンに飛びかかってキックしてたのが今思い出すと、平時がクール然としすぎてるのでそれとのギャップでどんどん可笑しくなってきた(いや他にも、友人のラッパーが死んだ時や床屋では感情を出してたので、エリックは個人的なことでは感情が出るんだろう)。
床屋のじいさん(演:ジョージ・トゥリアトス)は、エリックが幼い頃に通っていたダウンタウンの床屋。エリックが唯一童心に戻って笑みを見せる相手。彼と会ってる時はエリックが唯一、人間的になっていたと言える。そしてじいさんが刈った左右非対称の刈り上げが、エリックを更に人間に近づけた(近づけば近づくほどエリックは死に近づくのだが)。
そういえば愛人役でフランス映画界の大御所女優のジュリエット・ビノシュも出てたね。調べたらこの時42歳……だから「20代の大富豪が40代のセクシー熟女とセフレ」って感じか。もうちょっと良い役でもよかった気もするが……というかフランスの有名女優がハリウッド映画に出る時ってこういうエロい役ばかりな気がする。
といっても「凄く面白い!」「感動した!」とか、そんなほどでは全然ない「インタレスティングを感じて仄かに楽しんだ」それくらいの温度感か?少なくとも「なんだこれ」としか思わなかった10数年前よりはずっと面白かった。
自己分析すると、昔は「自分とかけ離れすぎた主人公に感情移入できず乗れなかった」という感じだが今は「自分とかけ離れすぎた主人公だが感情移入できるところや気になるところは幾つかある」といった感じで昔より視野が広がった……だが更に面白がるにはもっと教養や素養が必要かも?という結果となった。

 

 

そんな感じでした

〈デヴィッド・クローネンバーグ監督映画〉
『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2014)/クズ共が全員わかりやすく再起不能な形で破滅していくのが最高 - gock221B

 

〈ドン・デリーロ原作映画〉
『ホワイト・ノイズ』(2022)/コロナ禍の揶揄&陰謀論コメディかと思ったら死生観の映画?思いのほか面白かった - gock221B

 


 

Cosmopolis (2012) - IMDb
Cosmopolis | Rotten Tomatoes
Cosmopolis (2012) Letterboxd
コズモポリス | Filmarks映画

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