
原題:Frankenstein's Army 監督&制作:リチャード・ラーフォースト 脚本:クリス・W・ミッチェル、ミゲル・テハダ=フローレス 特殊効果:ロジェ・サミュエルズ 撮影:バート・ベークマン 制作会社:XYZフィルムズほか 製作国:オランダ/アメリカ/チェコ 上映時間:84分 公開日:2013年7月26日(日本は2013年11月2日)
ぼんやり「観たいな~」と思ってたが金だしてレンタルしてまで観たいわけじゃなかったこれが配信にやっと来たので観た。
ポール・バーホーベンの『ブラックブック』(2006)の現場にスタッフとして参加してたオランダのCMディレクターの監督デビュー作で、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ホビット』シリーズの人が特殊造形を担当してるらしい。
『バイオハザード ヴィレッジ』(2021)に登場した機械と合体させられたゾンビの数々が本作の武器人間に酷似してるため監督が訴えはしないもののTwitter(現X)で悲しんだが、カプコンは「無視してスルー」という大企業仕草で押し通した。それと『チェンソーマン』(2019-2026)も影響受けてそう……だけど、こういう頭部や身体の一部が機械になったゾンビが出てくるものは本作より前からいる。だが『バイオハザード ヴィレッジ』(2021)に登場した頭部がプロペラになった巨漢ゾンビはどう考えてもパクってるだろう。本作のその武器人間プロペラヘッドは「プロペラ戦闘機の先頭が上半身になっている巨漢ゾンビ」で『バイオハザード ヴィレッジ』(2021)のそれは「チェーンソーがプロペラのように取り付けられたものが回転している巨漢ゾンビ」とアレンジしてはいる。だがどう見ても本作から来てるやろ感はある。カプコンは幼い時の『魔界村』(1985)とか後の格ゲー、バイオシリーズなどずっと好きで他の有名作品からアイデアをいただいてるのは見てきた。だがカプコンに限らず色んなエンタメはお互いにモチーフを貰ったりする各メディアはお互い様という認識だった。しかしここで問題なのは、今のカプコンは「好きな人は好き」って感じの90年代の時とは違って全世界的に老若男女が楽しむ巨大ゲーム会社になってるので90年代の時のようなパクり方をすると「巨大企業カプコンの『バイオハザード』という世界的に大人気であり続けてる覇権シリーズが『武器人間』(2013)という小さな小さな存在からパクり、訴えられてないことを良いことに(訴えられても乗り切れるだろうが)完全無視して『武器人間』(2013)側を泣き寝入りさせた」印象だから後味悪い。「ちょっと参考にしました、ゴメンネ」くらい言えば良かった気もするが、それが発端となって揉めたらややこしいので無視したい気持ちもわかる。ここが人気YouTubeなら、どちらかを攻めてアクセスを増やそうとするのだろうがこのブログはそういった要素から外れた場所なので(一応飾りでアフィリエイト貼ってるけど1円も入らない)白か黒かという結論はない、非常にモヤッとした結論になった。だがこの件に限らず世の中の殆どはそういう面白くないモヤッとした結論だけで出来ている。そういったモヤモヤ感から逃れてスカッとするために人は極端なことを言うSNSやYouTubeに触れてガス抜きするのだろう(別にディスってるわけではなく僕もする時あるし)。
ネタバレあり

Story
1945年、第二次世界大戦末期の東部戦線。スターリンの命を受けたソ連(現ロシア)の偵察部隊がカメラを携えた記録係を伴い、同胞を救うためにドイツ・ナチスの占領地域に潜入するが生きた人間は誰もいない。
そこは、マッド・サイエンティスト、三代目ヴィクター・フランケンシュタイン博士(演:カレル・ローデン)によって機械と死体を合体させた武器人間の製造工場だった――
全編は、主人公が撮影しているカメラ目線というファウンド・フッテージ形式で進む。
前半~中盤は、ソ連の小隊がナチ占領地帯で武器人間に遭遇して殺し合う。
後半は、武器人間工場に潜入して捕まった記録係が、狂気のフランケンシュタイン博士に迫っていく、そんな構成。
最初に言うけど、ホラー映画は低予算だがそれを考慮してもめちゃくちゃ低予算感が強い。映画冒頭とか、東部戦線というより「現代の俳優たちが第二次世界大戦という設定を演じているぞ」という感じしかしない。
だが冒頭で、戦地という設定の野原に”チェコの針鼠”が置いてある。あの戦車や戦闘車輌の進行を防ぐ鉄骨の塊みたいなやつ、あれが何個かあるだけで「戦場だ」と脳が勝手に思ってくれるのでチェコの針鼠は映画の記号として便利だ。
”チェコの針鼠”はさておき、本作が東部戦線に全く見えない理由。それは敵や死体の少なさに加え、映像があまりに綺麗すぎて「81年前の記録」という説得力に欠けるからだ。
ではアナログ・ホラー(古い映像を模して、わざと低画質にしたジャンル)みたいに荒い映像にすれば良かったのかも?
いや、後の展開を観てればわかるが本作の目的は「武器人間を見せたい」「相対するフランケンシュタイン博士のキャラを見せたい」という目的のみで作られたのは明確なので「画質を落とす」なんて有り得なかったのだろう。見せたい武器人間の造形が見えにくくなるからね。じゃあ普通の劇映画みたいに撮れば?という気もするが、それしたら本作のショボさが際立つ。難しい。
そのように本作が抱えるジレンマは「精巧に作った自信ある武器人間を鮮明に見せたい」という執念と「臨場感あるから低予算をごまかせるモキュメンタリー」という手法が完全に喧嘩しているところだろう。『ハードコア』(2015)みたいにPOVアクションが上手い監督が撮れば2つの目的を両立させていただろうが。
だがこの監督は設定を練るのは上手い。他のモキュメンタリー作品もそうだが「死にそうなのに主人公が何故延々と撮影してるのか?」問題があるが本作はその辺に意識的に取り組んで解消している。
主人公ポジションのユダヤ人記録係は実は「フランケンシュタイン博士の兵器を撮影し、博士を捕獲せよ」という密命をスターリンから受けている。命に従わない場合は人質の家族が殺されてしまう、だからもし失敗した時に家族もろとも処刑されないよう全ての証拠を残している、そういう設定。だから「撮影すること」がそのまま「彼と家族の命」に直結している。これは武器人間に襲われてる最中にも撮影し続けている説得力になってるし優れたナイス設定ですわ。
教会、そしてその地下で武器人間軍団に遭遇した一行。
ここが一番面白いかも?
趣向を凝らしてデザインされた武器人間たちは見てるだけで楽しい。
ちなみに武器人間は英語でなんて呼ぶんだろうと調べたら”Zombot”という、これまた頭が悪い名称だった。
武器人間は低知能で怪力で動きが緩慢、だが不死身、しかし脳を破壊されたら機能停止する。非常に絶妙な強さだ。下手したら熊の方が強い気もする。
だから武器人間とエンカウントする場所を限定的にしている。狭い教会、その迷宮のような地下通路、その先の武器人間工場。場所はこれらだけに限定されている。
これによって「こっちに逃げろ!うわ武器人間だ!じゃあ、こっちだ!うわこっちからも武器人間が!?」といった感じでアミューズメント施設の武器人間ライドといった感じの映像を楽しめる。教会の地下通路も凄く魅力的な通路だし。
この行ったり来たりする武器人間ライド場面は何度かあるが、ここは素直に楽しい。
だがファウンド・フッテージなのでカット割りが荒くて何してるかよくわかんない場面が多く「逃げて一息ついたら……あれ仲間が1人やられてる、死んでんじゃん」と、結果でやっとわかる事が多い。しかもカメラは武器人間に何度も目と鼻の先くらいの超至近距離にまで近づいても殺されないので「武器人間、全然襲ってこないな」という感じで緊張感が全く無い。ただ武器人間が可愛いので水着の女性や猫や犬の動画を楽しむように武器人間との追っかけっこを楽しむだけだ。
やはり普通の劇映画にして、しっかり武器人間とのチェイスや死闘を見せた方がよかった気がする。そんでモキュメンタリーの癖に落下の衝撃やフィルム交換といった言い訳で録画を停止して時間が飛ぶことがやたら多い。「モキュメンタリーにしたんならもっと長回しせんかい」という気持ちもある。
だから要は、乱暴な言い方すれば「映画自体があんまり上手くない」というのはある。ただし武器人間の造形などは最高に良い。ここが良いから「武器人間を観てくれ!それ以外は自信ないけど」っていう感じもわかる。観る前からそういう雰囲気が出てるので本作にわざわざ下手とかショボいとか言ったら、言った側が野暮という気もする。
後半はフランケンシュタイン博士を撮影して、武器人間がどうやって作られてるかとか博士との会話で博士のイカれ具合や「自分が武器人間に改造される」恐怖を楽しむマッド・サイエンティストものになる。こうなると追いかけっこの前半とは違うが、これはこれで味があって良い。
フランケンシュタイン博士の思想、それは実はナチ万歳!ではなく、彼はナチもソ連も全部嫌っており主人公の記録係の誘いに乗る気は最初からなかった。博士は人間を全て武器人間にすればOKというイカれた男だったのだ。
博士は罪もない人たちを殺して改造してるので悪人ではあるのは確かだが「どの権力にも肩入れせず、等しく滅ぼそうとしている」という態度だけを見たら、公平だし清々しささえ感じる。
そんでフランケンシュタイン博士の吹き替えは、『ドラえもん』の旧スネ夫役だった肝付兼太。だからスネ夫役と違って声がめちゃくちゃカッコいい。甲高いのにしゃがれてるカッコよさ……クリント・イーストウッドやルパン三世などでお馴染みだった山田康雄っぽい声でめちゃくちゃカッコいい声。
ちなみに本作の予告編で旧ドラえもん役だった大山のぶ代が予告編のナレーションしたのがウケたので他のキャラも『ドラえもん』の新旧どちらのバージョンの声優も吹き替えしている。肝付兼太が洋画吹き替えよくしてたのは僕が生まれる前の古い洋画ばっかりだからあまり観てなかったけど「旧スネ夫の人の声かっけぇなぁ」という発見があった。この肝付兼太の吹き替えが、イカれてるけど「あ、そうなの?」と柔らかい喋り方だけど「改造すると決めた相手は優しく語りかけながら絶対に殺す」という博士のキャラとマッチして博士のキャラの魅力を倍増させていた。
そういう感じで全体的に「映画としてはやっぱり凄く下手くそだしショボかった。しかし武器人間とフランケンシュタイン博士の魅力は本物だ」という結論。特に武器人間ね。ショボいとは言ったが見かけばかり綺麗だがつまんない大作よりずっと面白かったし。
だから本作の後に、大手配給会社が出資して潤沢な制作費で本作の続編、またはハリウッド・リメイクとかされたら良かったのにとも思った。
監督には悪いが監督は製作総指揮に回って上手い人を監督に雇うとかさ……色んな武器人間のアクションや映像が観たいよ。
なんか映画は単純なのに「こっちは良くないが、こっちは良い」みたいなモヤモヤした全くバズりそうもない感想になった。
だけど最初に言ったように、それが感想ですからね。
そんな感じでした
Frankenstein's Army (2013) - IMDb
Frankenstein's Army | Rotten Tomatoes
Frankenstein’s Army (2013) Letterboxd
武器人間 | Filmarks映画
