gock221B

映画やドラマの感想ブログ 😺🍿🐱 ネタバレあり 😺 Filmarksも https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022)/女性記者2人が告発記事でワインスタインを滅ぼすまで。実際の加害描写は1秒も無いにも関わらず異常に胸が痛くなる👩🏻‍🦰👩🏻


原題:She Said 製作総指揮&原作:ミーガン・トゥーイー、ジョディ・カンター『その名を暴け ―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』(2019) 監督:マリア・シュラーダー 脚本:レベッカ・レンキェヴィッチ 製作総指揮:ブラッド・ピット、リラ・ヤコブ 製作:デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー 製作国:アメリカ 上映時間:135分 公開日:2022年11月18日(日本は2023年1月13日)

 

 

ニューヨーク・タイムズ紙の2人の女性記者が、ハリウッドに何十年も君臨した有名映画制作者ハーヴェイ・ワインスタインの性加害事件を報道し、それは#MeToo運動が広がるきっかけとなった。
2017年にその記事が出るまでの二人の被害の証言集めの模様を、二人が回顧録に書き、それを劇映画化したもの。

ハーヴェイ・ワインスタイン - Wikipedia
ハーヴェイ・ワインスタインといえば映画プロデューサーでも一番有名ってくらい有名だったし、彼の活躍してた時が、僕が10代後半くらいからずーっと全盛期だった。特に彼はクエンティン・タランティーノをずっとプロデュースしててタランティーノとも仲良かった覚えがあるので報道された時かなり衝撃だった。あと被害を受けた女優も知ってる人ばかりだしワインスタインのことを思い出すと未だに気分が悪くなる。
そして彼のプロデュースする映画を何十……何百?数はわからんけど相当観て楽しんだり感動したり課金してたわけで、そうなると超遠回しで彼の性加害に自分も加担してた事に気づいてしまうからなのかもしれないねこの気分の重さは……。
その当時の報道やネット記事も見てたしドキュメンタリーとかも観てたので本作の内容も、実際知ってるままだった。本作にはワインスタインの性加害の場面とかワインスタイン本人も出てこないんだが、それでも観るのが気が重くて後回しにしてたのだが、2023年の未見映画残り数本になってきたので仕方なく観た。

ネタバレあり……だが、本作の内容はつい5年前の事実なのでネタバレもクソもないという感じがある。

 

 

 

 

Story
日刊新聞紙ニューヨーク・タイムズの女性記者ミーガン・トゥーイー(演:キャリー・マリガン)は、ドナルド・トランプ大統領のセクハラ事件の告発記事を発表したが被害者女性やミーガンや被害者には嫌がらせがあり、アメリカ社会もトランプへのバッシングに向かわず、結果的に上手くいかなかった。

数カ月後、同じくニューヨーク・タイムズジョディ・カンター(演:ゾーイ・カザン)は「ハリウッド映画界の有名プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインが日常的にセクハラ性暴力を行なっている」という告発情報を得て、ジョディとミーガンが中心となりワインスタインの性加害情報を集め始める――

という内容。
最初に「ミーガン記者がトランプのセクハラ事件を訴える記事を書いたが、勇気を出して告発した被害者や自身も世間から傷つけられただけで上手くいかなかった」という、一度敗北したところから始まる。これを描くのがミソだろう。性加害被害者にとっても記者たちにとっても夜の女性たち全体からしてもリベンジの物語と観ることができる。
トランプを告発した被害者が、報道されたら人糞が送りつけられたりミーガンに卑猥な嫌がらせ電話がかかってきたりしてきつい。

やがてミーガンとジョディはワインスタインの被害者の証言集めを開始。
しかし被害者たちは被害について言いたがらない。
「言っても無駄」という事を心底わかっていて心が折れている、被害者の心境を思うと胸が痛い、というか本作は被害のシーンとか加害者の姿は一切映らないもにも関わらず重苦しくて観るのがなかなかしんどい。というか直接的な場面が映ってない方が却って色んな事に思いを巡らせてしまい、余計にしんどい気がするのは僕だけでしょうか。
そもそも被害者である女優やワインスタインの下で働く女性社員が、加害者や会社を訴えたとしても、加害者であるワインスタインは映画界で評価も興行成績も全て手にしている超大物であるため、彼に反抗するという事は自分の夢である映画業界でのキャリアがほぼ潰えてしまうことになる。
それでも構わないと、訴えたとしても加害者からは示談を勧められるし、相手が巨大であるため協力者は得られない。また、示談に応じてしまうと”秘密保持契約”にサインさせられ、もう他言できなくなる。
他言できなくなる事で加害者は安泰のまま、被害者は心が死んだままになり、また被害が周知できないので加害者はまた何も知らない新しい女性をレイプしたりセクハラし、被害者が訴えようとしたりしてきたら示談を勧め……というデス・スパイラルが数十年間、続き現在(2017年)もそれが続いている……。
ワインスタインの周囲の者も、ワインスタインのしている事を知ってたり好ましくない人物だと思いつつも彼があまりに大物すぎるため、抗議しないのは勿論、告発しようとするものが居ても止める(彼らもまた自らの意志とは関係なくワインスタインの一部になってるからね)。
それが”宇宙の法則”(1990~2010年代の映画界の力学)だからだ。
なかなか進展しない証言集めに苛立つミーガンとジョディがカフェに居ると、よりにもよってチャラチャラした男がしつこいナンパを繰り返し、ミーガンが「今私たちは大事な話ししてるからあっち行ってってさっきから言ってるだろうがこのクソ野郎ーーーーっ!」と激昂。観てるこちらもワインスタインの性加害や進まない証言集めを観てのストレスがMAXの時にこのシーンを入れたタイミングが上手い。


ミーガンとジョディが被害者の証言を集めていることをワインスタイン陣営が知ったのか、ミーガン&ジョディや被害者が妨害工作に遭ったりする。しかしワインスタインの部下も本気でそれをしたいからじゃないせいか妨害工作がめちゃくちゃ荒くて、却って証言する勇気がなかった被害者の怒りに火を点けて逆効果だったりする。
ワインスタイン自らニューヨーク・タイムズに乗り込んできたり講義の電話をかけてきたりするが、ワインスタインの性加害のやり方同様にすごく荒い、彼の権力が通用する領域ではそれで良かったのだが、パワーがあまり届かないNYタイムズ編集長やミーガン&ジョディには通用しない。

やがてミーガンとジョディの地道な証言集めは実を結び、匿名で自らが受けた被害について語る女性、情報や証拠を提示する者たちが現れ、ニューヨーク・タイムズの上司や編集長らも二人をバックアップし、最初は名乗り出る者が一人も居なかったのにアシュレイ・ジャッド(演:アシュレイ・ジャッド)を始めとして何人か名乗り出て記事の信憑性を強化し、編集者一同で何度もワインスタイン告発記事を確認し、遂に編集長が出版ボタンをクリックする。
Click!!

記事により翌月には82人の被害者の女性たちがワインスタインによる性加害を告発。
映画界の帝王ワインスタインは大バッシングを受け、2018年5月ニューヨーク市警に逮捕された。3年後の2020年2月、NYで性的暴行で禁錮23年の実刑となり、後にロサンゼルス・ロンドンでも起訴されている。
今でもニュースで裁判に向かうワインスタインを見かけるが、でっぷり肥えた巨体は観る陰もなく萎んでおり介助を受けて歩いていたりする。それは演技かもしれないが、告発によって映画生命が絶たれたのは当然のこと、それだけでなく実際の寿命も縮んでると思う(だってもう天から地の底にまで堕ちて尊敬も失いすることもないし)。
2人の記事は世界的な#MeToo運動へと繋がった。その証言が、職場や法律の改善に繋がり性暴力について議論され続けている。
日本でワインスタインのニュースを報じる時、注目してTVやラジオをチェックしてたが「まぁ、日本ではそんな事はないとは思いますが……」と、まるで同じ台本を読んでるかのような文言をキャスターが言ってたのが印象的だった。
その数年後、外圧によって故ジャニー喜多川を始めとして巨大な芸能界や各界の大者が告発され始めたのは御存知の通り……(子供の頃から悪い噂は知ってたが何も変わらないんだろうなと思ってた大物が次々と告発されて、単純に気分いいです)。

そういう事で、こういった事柄にしては珍しく悪が裁かれて世界の改善が前進したハッピーエンドといっていい結末だったと思う。
しかし実被害を受けた人からすれば被害を受けないことが一番だったのだし、無関係の第三者がめでたしめでたしと言うのは無責任なので控えたい。見てるだけだからな。
今こうしてる間にも何の責めも受けず安泰の加害者や、無念のまま消えた被害者の人たちも大勢いるんだろうしね。ジェフリー・エプスタインも獄中で”謎の死”を遂げたパフ・ダディの映画とかも作られるのかな。

ミーガン役のキャリー・マリガンは10年以上くらい前から「理不尽な暴力に立ち向かう等身大の女性」役をよくしてますよね。ジョディ役のゾーイ・カザンも凄い素敵だったですね……。そんな感じでした。

二人の記者の証言集めや全体の流れや情報は、記事やドキュメンタリーで知ってた通りで新鮮味はなかったが改めて観とかないといけないと思ってたのでやっと観終わってよかった。
そういえば「もう告発記事が載せます」って時にワインスタインから何度も「グウィネス・パルトローの証言もあるんか!?」「グウィネス・パルトローは何て言ったか!?」「本当にグウィネス・パルトローの証言はないんか!?」とグウィネス・パルトローの証言ばかりを異常に気にしてたのが印象に残った(グウィネスが一番有名で人気女優だから?)。

2023年の第95回アカデミー賞に、受賞はなくともノミネートはされるべきだったと思った。

 

 

 

 

そんな感じでした

👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻👩🏻‍🦰👩🏻

She Said (2022) - IMDb
She Said | Rotten Tomatoes
SHE SAID/シー・セッド その名を暴け - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画www.youtube.com

#sidebar { font-size: 14px; }