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『匿名メッセージは誰なのか:高校ネットいじめスキャンダル』(2025)/『Untold: 疑惑のチェックメイト』(2026)/『クイーン・オブ・チェス』(2026)

最近、Netflixのドキュメンタリー3本観た。
嫌がらせメール、疑惑のチェス、チェス女性王者という作品。
どれも面白かったのだが、どれも面白さや「どう感じればいいか」など、どれも大体誰が観ても似た感想になるであろう事が想像できるので「わざわざ感想書かなくてもいいか」と思ってFilmarksに短く書いて終わりにしようと思ってたが、でも面白かったからブログにも書いとくかと思い、短めで三本立てにする事にした。

ネタバレなし

 


 

『匿名メッセージは誰なのか:高校ネットいじめスキャンダル』(2025)

原題:Unknown Number: The High School Catfish 監督:スカイ・ボーグマン 撮影:ブライアン・ゴスライン 編集:ハンス・オーレ・アイカー 音楽:イアン・ハルトクイスト 制作会社:Campfire Studios Terminal B TV 配給:Netflix 製作国:アメリカ 上映時間:94分 配信開始日:2025年8月29日

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〈STORY〉
ある十代カップルのスマホに執拗に送られてくる嫌がらせメッセージ。送り主の正体、そして目的とは...。衝撃の真相に迫るドキュメンタリー。

映画YOUTUBE『BLACK HOLE』でオススメされてて興味を持ったので観た。
内容も映像も素晴らしく、真相も思いのほか早めに(再生して三分の二くらいで)判明して残り三分の一は犯人に迫る。これは数年前に話題になった事件らしいが実際の事件を知らなかったので「意外な真相」も楽しめた。
アメリカの田舎町、美男美女で性格も良いスポーツ好きの十代カップル(中学生くらいだったかな?)。双方ともに家族とも近所とも仲が良い。
女子の方に卑猥な嫌がらせメールが一日100件それが1年以上続く。男子の方には「別れた方が良い」的なメール。どうも「犯人は男子に気があって、女子の方を嫌って別れさせる」のが目的っぽいし「犯人は女性(またはそう思わせたい男性)」というのがうかがえる。
男子と付き合いたい女子の同級生の嫉妬?才色兼備の二人への妬み?女子が好きな男が「架空の嫌がらせ女子」を装って男子と別れさせたい?
双方の両親、校長先生、町の保安官……なども生徒たちに調査や聞き込みするが全くわからない。
仕方ないので保安官はFBIに調査を依頼。FBIは発信先をあっさり特定。
「犯人」は思いもやらぬ者で驚き。
ドキュメンタリーの構造を使ったメタ読みを上手く突いた……と書くと、かなりネタバレしてしまっている気もするがとにかく驚き。そしてしばらくすると頭の中がハテナでいっぱいになってくる。疑問で溢れた脳で観る残りの時間が本作の真骨頂だろう。
捕まった犯人が受け答えする時、どこを見ているのかわからないドヨンと濁った目と「ボンヤリした曖昧な表情」で悪びれず自己弁護のような世迷言ばかり言う様が「何で?なんで?」という気持ちが更に高まる、そして非常に居心地の悪い気持ちになる。
観ているだけのこちらも「……まぁまぁ……、そういうことで……次のチェスのドキュメンタリー観よか?」と、まるで飲み会などで、近くの奴がとんでもない失言をしてしまった時のような感覚に持っていかれる。
以前の犯人の画像や映像も出るが、どちらかというと明朗快活でルックスも良い感じなのだが、事件後は何十歳も老け込んだように見えたのが印象的。
現実から目を背けて逃避し続け、更に表の仮面が剥がれたことにより歪んだ内面が白日のもとに晒されたことが影響してそうなったのか?
犯人の自供も「本当の心の内(具体的に何がしたかったのか)を話すといよいよヤバい」ので、「行ったことは自分のしたことで間違いない。その動機と内実は……」と話した後半は明らかに適当なことを言っている。それもまた非常にドヨンとした陰鬱な気持ちにさせられる。
ミステリー作品ならば全てが明らかになるし、犯人も明確な動機(損得や怨恨など)がある。そして真相が明らかになれば悪としての素顔を明らかにする。だが、これは現実なので全ては明らかにはならず(まぁ万人が「こういうことだろう」と察せられはするが)「そんな事しても仕方ないだろう」と疑問がたくさん生まれてくる。ミステリー作品の犯人のように合理的に動かないし捕まった後の態度も歯切れが悪い。だから観ていて凄く居心地が悪くなる。「これが我々の住んでいる世界だ」と突きつけられるからだ。
被害者の女子はまだ大学生くらいだが、大人になって犯人への依存がなくなればいいな。

 

 


 

『Untold: 疑惑のチェックメイト』(2026)

原題:Untold〈Season.6 Episode.2〉”Chess Mates” 監督:トーマス・タンクレッド 製作国:アメリカ 配信:Netflix 上映時間:74分 配信開始日:2026年4月7日

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〈STORY〉
チェスグランドマスター同士の対局が、"大人のおもちゃ"をめぐる奇妙なスキャンダルへと発展した――

これもまた『BLACK HOLE』でオススメされてて興味を持って観たやつ。
この『Untold』は、スポーツの「努力!勝利!栄光!」……などではなく、スポーツ界の珍事件やスキャンダルを取り上げるドキュメンタリーシリーズ(本作はそのシーズン6の第2話にあたるが、Netflixでは各エピソードがそれぞれ独立した作品として配信されている)。
史上最強のチェスのグランドマスター、マグヌス・カールセンに、新進気鋭の新星ハンズ・ニーマンが挑み、ところが格下のハンズがマグヌスにまさかの勝利?
敗れたマグヌスは「途中からAI使ってない?」と異議申し立てをする。この疑惑が焦点。
まずマグヌスはめっちゃ強い。将棋でいうと羽生善治名人みたいな現人神。
僕はチェスは近年好きになってきてまだ初心者レベルだがそれでも知ってる。YOUTUBEで「マグヌスが、かなり強くて有名なプロのチェスプレイヤー複数人と同時に指して退屈で寝ながらも勝利していた」という、めちゃくちゃわかりやすい「マグヌス強すぎ動画」を最初に観て、そのいかにも強そうな名前と共に脳に刻まれた。
対するハンズは、公園チェスで腕を磨き、Chess.comのチェス対戦を配信して、大袈裟なリアクションや対戦相手への煽りなど派手なパフォーマンスで頭角を現してきた。少し迷惑系YOUTUBERっぽいキャラなので、あまり好感度の高くないタイプのキャラ。
つまり「誰もが認める神マグヌス vs. 生意気な炎上系新人ハンズ」という図式。
ハンズは初出演した問題の大会……2022年のシンクフィールド・カップで善戦はしていたが「まぁ、マグヌスには勝てないだろう。っていうか誰も勝てないし」っていう状態でマグヌスに勝利!これでチェス界はざわつぐが対局後のマグヌスの発言「ハンズの雰囲気が途中から急に変わった。途中からAI使ってない?」これで大騒ぎに。
まずマグヌスは強すぎるし尊敬されてるという前提があり、ハンズは頭角を表したばかり(とはいえグランドマスターになってる時点でハンズも死ぬほど強いのだが)、そして常日頃から対戦相手を煽ったりして人心を苛つかせるキャラであるということ。ファンからすると「生意気なハンズがチートした」と思いたい、だからどんどんそっちに話がいってしまう。
対局は生配信されていた。だがイヤホンが怪しいとか、何か受信できる機械を持ってないか?とか、果ては「リモコンで操れるアナルビーズがある。ハンズはアナルで指し手を教わっていたのでは?」という意見が出て、これが面白すぎたため「アナルビーズ説」が広まっていく。
ここでハンズは「僕は以前、若かりし頃、Chess.comでチートしたことがある」と白状し「でも最近はもうしてないし、マグヌス戦では自分の力で戦った」と語る。
この申し開きはなかなか上手いと思った。この時、Chess.comでのチートは当時は公になっていなかった。それをわざわざ自白した上で「今はやってない」と言う、これは信憑性ある。
一方ハンズは「マグヌスはChess.comと新事業を始める直前だ。だから僕を潰したかったんだ」と言う。確かに新事業の直前で生意気な新星ハンズに負けたのはカッコ悪いだろう。
だが「生意気なハンズがマグヌスに勝つなんて怪しい!」「この申し開きは信憑性ある」「マグヌスとChess.comはハンズを潰したかったのでは?」どれも「雰囲気」に寄った憶測に過ぎず、チートの真偽を明らかにするものではない。
試合当日は勿論、金属探知機でチェックしていたし生配信していたので、普通に考えるとチートは出来ないように見える。しかしミームになった「アナルビーズ説」のような事が行われていたとしたら、それはもう後から証拠を見つけることはできない。
Chess.comは疑惑の試合を、自社で開発した「チート判別システム」にかける。10代のハンズがChess.comでチートした時はこれで判明した。
しかし「チート判別システム」は「疑惑の試合でハンズはチートしていなかった」と出る。これでひとまず幕引きだ。
しかし、ハンズは元々強い、そんな彼が普通に指して岐路となる局面で一手や二手だけAIを使ったら……、それは現在の「チート判別システム」でも見抜くのは不可能。つまり「チートした証拠は出なかった。それが結論。しかし100%チートしてないと言い切れない」という何ともモヤモヤした結論となった。
この作品を観てても実際によくわからない。……どっちかというというと「ハンズ怪しくね?」という方向に持っていこうとしてる印象は受けたが。
ハンズは「10年後の俺と老いたマグヌスを見てくれ、それでわかる」と言う。
確かにハンズが安定した強さを示し続けられれば証明できるだろう。もしくは「チート判別システム」が進化しまくって「ここの一手だけAIだ!」とか、そんなことまでわかれば真偽は明らかになるのかも。よくわからない。
関係ないけど僕が好きなプレイヤーは、本作でちょこちょこ出てきて解説してるヒカル・ナカムラ選手。

 



『クイーン・オブ・チェス』(2026)

原題:Queen of Chess 監督:ロリー・ケネディ 脚本&製作:マーク・ベイリー、ケビン・マカレスター 撮影:イムレ・ユハース 編集:アジン・サマリ・ ジェシー・オーバーマン 音楽:カミロ・フォレロ、 クリス・ブロカト 製作国:アメリカ 配信:Netflix 上映時間:93分 配信開始日:2026年2月6日

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〈STORY〉
チェスの天才、ユディット・ポルガー。若くしてチェス界屈指の名手に名を連ねるべく、疑念や性差別、そして王者ガルリ・カスパロフに彼女が挑んだ姿に迫る――

『Untold: 疑惑のチェックメイト』‬観て「もっとチェスのドキュメンタリーないか?」で検索してこれ観た。
共産主義国家だったハンガリー。ある風変わりな父親が「天才の自伝」を読み漁って天才の共通点を知り、独自の天才を作り上げてやる!と実の子を使った「実験」。
父は、三姉妹を学校に行かせず一番適正に合っていた「チェス」を猛特訓。
ポルガー三姉妹は強豪プレイヤーになり、中でも次女ユディット・ポルガーは世界トップクラスのプレイヤーになった。
女性の地位が低い時だったのでユディット少女に負けそうになったプレイヤーは思わず反則してしまったり、ユディットに敗れても不貞腐れて握手しない、負けた後で「あの子との試合は本気じゃなかったから」などと言ってしまう。
ユディットは「だったら言い訳できんくらい、男の10倍勝ちまくったるわい!」と更に強くなり国内ナンバーワンになる。
現役の女子プレイヤーのボテズ姉妹も「最初きつかった」とか言ってたし、80年代の共産国家で女性がチェスやるのすら珍しかった頃はさぞかしキツかっただろう。ただしポルガー姉妹はクソ強かったのでそれを乗り越えた。いくら男が意地悪な言い訳してもチェスで負けたら負け惜しみにしかならない。剛腕で差別を無理やり乗り越えたポルガー姉妹。最初は国外で世界的な大会に出国する事を許さなかったハンガリーだが、国外からの「ポルガー姉妹を世界大会に出せ!」という外圧が強くなり、ポルガー姉妹は無事に世界大会に出れるようになる。全ての問題をチェスの強さでぶち壊す!本当に痛快なドキュメンタリー。
あ、そういえば『Untold: 疑惑のチェックメイト』(2026)の現役最強のマグヌスが少年の時にユディットにボコられてる場面も出てきて、意図せず大河ドラマも感じられたのもお得だった。
世界に出たユディット、幼い頃から憧れだった当時世界最強のガルリ・カスパロフと対戦。かなり良いところまでいったのだが、なんとピンチになったカスパロフは反則してユディットは負ける。全体的に劣勢だったし、その後もユディットはカスパロフにだけは長い間、勝てなかったのでカスパロフの反則がなかったとしても勝てたかどうかはわからないが、王者カスパロフでさえも少女ユディットに負けるわけにはいかん!と反則をしてしまった、というのが本作の肝の一つだろう。本作のポスター(今回のサムネイル画像)もユディットの「え?カスパロフ、反則した?」という咎める表情のアップ。
その後もカスパロフと何度も対戦するが彼にだけは勝てないユディット。
やがてユディットも大人になり、父の手を離れて医師の男性と恋をして結婚。
今までのユディットは、対局で負けそうな時には「玉砕覚悟の逆転狙い!」していて、結果的にポイントが上がらなかった。そこで夫の助言により「負けそうになったら特攻せず、ドローを狙う」ようにする。それによって彼女の総合ポイントがどんどん上がっていく、そして宿敵カスパロフの合宿に参加して、試合以外のカスパロフは普通の優しいおじさんである事を知り、そして宿願であったカスパロフからの勝利を手にする。
この作品は、まず風変わりな父がチェス姉妹を育て、姉妹は世界に行く。そこで今までは国による妨害や女性差別という壁を剛腕でぶっ壊してきたがカスパロフという「王の中の王」という真の強大な壁にぶつかる。この王の中の王は世界で最も強いので今までのような剛腕のみでは倒せない。ここでユディットは「恋愛して結婚、他業種の夫の助言を聞く」という、フィクションなら弱くなりそうな要素で逆に強くなり、遂に王を倒す。
「もともと僻地で強すぎただけの女性が、大人になって社会に入り結婚して他者を知り、それらを全て剛腕に乗せて更に強くなった」という、前述の二本と打って変わって爽やかで気持ちの良い作品だった。
子供の時から現在までずっと自然体で素敵なユディット本人や夫や姉妹や両親、年取っても負けず嫌いのカスパロフなど登場人物達も全員良い年の取り方をしていて始終ニコニコしていて幸せそうで気持ちが良い。強いけどユディットほどではなかった姉妹も「ユディットが突出して悔しい?いや、全然ないわ。ユディット最強!」とニコニコしてるし、国から虐待疑惑もあった父も「わしの実験成功じゃ!」と嬉しそう。現在の老紳士となったカスパロフも「反則?0.2秒くらい指が離れただけじゃない?覚えてないし」「ユディット?まぁまぁ強かったかな」とか負け惜しみ言いつつも憎めない。というか反則事件当時は苛立ってたそうだが後にユディットを合宿に招いて強くしてるしね。反則はいけない事だが当時の彼からしたら「ここで新人の少女に負けたら一生罵られるううう!!!」と必死だったのだろうと気持ちはわかる。
観終わってもモヤモヤさせられた『匿名メッセージは誰なのか:高校ネットいじめスキャンダル』(2025)と『Untold: 疑惑のチェックメイト』(2026)の次に本作を観たのは〆の口直しとしてピッタリだった。

 

 

チェックメイト


 

Unknown Number: The High School Catfish (2025) - IMDb
Unknown Number: The High School Catfish | Rotten Tomatoes
Unknown Number: The High School Catfish (2025) Letterboxd
匿名メッセージは誰なのか: 高校ネットいじめスキャンダル - Filmarks映画

"Untold" Chess Mates (TV Episode 2026) - IMDb
Untold: Volume 6, Episode 2 | Rotten Tomatoes
Untold: Chess Mates (2026) Letterboxd
Untold: 疑惑のチェックメイト - Filmarks映画

Queen of Chess (2026) - IMDb
Queen of Chess | Rotten Tomatoes
Queen of Chess (2026) Letterboxd
クイーン・オブ・チェス - Filmarks映画

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『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026)/V-MAXのくだり最高!


原題:Spider-Man: Brand New Day 監督:デスティン・ダニエル・クレットン 脚本:クリス・マッケナ、 エリック・ソマーズ、ジャスティン・クリツケス スタント・コーディネーター:パン・ジャン 製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル 原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ 製作会社:MARVELスタジオ、コロンビア ピクチャーズ、パスカル・ピクチャーズ 配給:ソニー・ピクチャーズ・リリーシング 製作国:アメリカ 上映時間:145分 上映日:2026年07月31日 シリーズ:MARVELスタジオ制作の『スパイダーマン』第4作目、MCU(MARVELシネマティック・ユニバース)第38作目

 

 

MCU制作のスパイダーマン4作目。
ジョン・ワッツが監督したホーム三部作(仮)が終わり、新たな日々が始まった。
過去3作は、クリフハンガーやサプライズや「連続ドラマの途中としての面白さ」に満ちていて公開時はどれも凄く興奮したが、単独作としての普遍的な完成度は「まぁまぁ」で、今となっては割とどうでもいい。
凋落しきったMCUだがMARVEL最後の砦「スパイダーマン」「アベンジャーズ」は外せない。MARVELの至宝”スパイダーマン”はアメコミ冬の時代でもヒットする特別な存在だからな(DCはバットマン)。そして「X-MENをフィーチャーした次のフェイズ7」への準備も着々としているMARVELスタジオ。

監督はデスティン・ダニエル・クレットン、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)をヒットさせて「アベンジャーズ」第4作目『アベンジャーズ:カーン・ダイナスティ』の監督に決まったが、カーンの人が訴えられて外され『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』(2026)に変更、監督もルッソ兄弟に替えられてしまった。その代わり「スパイダーマン」を監督する事に。
他にもMARVELテレビジョン制作になって好調なMCUドラマ『ワンダーマン』(2026)も監督した。これはMCUドラマでぶっちぎりに面白かったし主演がエミー賞にもノミネートされてシーズン2制作がアナウンスされた……が、先日シーズン2はキャンセルになった。僕の推測だがデスティン監督はスパイダーマン次回作やシャン・チーの続編とかで忙しかったからだろう。僕はというと『ワンダーマン』(2026)は面白かったし感動したしMCUドラマで一番好きだが、正直シーズン2が中止になって少しホッとした。あれで綺麗に終わってるので続きを無理に作らなくていいと思ったからだ。

ネタバレあり

 

 

 

〈これまでのピーター・パーカー/スパイダーマン〉

アメリカ、NYクイーンズを拠点として、犯罪者を捕まえたりアベンジャーズとして宇宙からの脅威とも戦ってきたピーター・パーカー/スパイダーマン
能力は、怪力と壁張り付きとスパイダーセンス(危機察知能力)。またウェブ・シューター(クモ糸発射装置)を自作して使用している。
最愛のメイおばさんが戦いに巻き込まれ命を落とし、ピーターはショックを受ける。
更に〈マルチバースの乱れ〉を修復した影響で、世界中の人々の記憶から"ピーター・パーカー"が消える。もちろん恋人MJ親友ネッドの記憶からも。
ピーターは「もう愛する人を巻き込みたくない」という想いからMJやネッドに真相を告げず、孤独に戦い始めた。

〈これまでの、本作のゲストキャラ&組織〉

フランク・キャッスル/パニッシャー
殺人をも厭わない元軍人のダークヒーロー。妻子を殺した復讐を済ませ、PTSDになるが乗り越えて自警活動を再開したばかり。

エレーナ・ベロワ/ブラック・ウィドウ(2代目)
元スパイ。アベンジャーズの戦死したナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウの義妹。ニュー・アベンジャーズを結成した。

ブルース・バナー/ハルク
ガンマ線に被爆して危険な怪力の大男ハルクに変身するアベンジャーズの一員。かつて洗脳されて暴れて恐れられたトラウマがあり、ハルク化の制御に気を遣っている。

ダメージ・コントロール(組織)通称”DODC
メタ・ヒューマンや地球外の技術、重大犯罪を取り締まる政府組織。しかし行き過ぎた強硬姿勢も目立つ。

ザ・ハンド(組織)
怪しい秘術を使う忍者集団。かつてデアデビルを始めとしたディフェンダーズに壊滅させられた。※過去作では日本でだけ「ヤミノテ」という名前になっていた。

前作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)から3年後。
ピーター・パーカー/スパイダーマン(演:トム・ホランド)は大学に進学せず、アパートに一人暮らししてスパイダーマンとしてNYの犯罪者やスーパーヴィランと戦っていた。
「ピーター・パーカーに関しての記憶」を失ってしまった元恋人のミシェル・ジョーンズ通称”MJ”(演:ゼンデイヤ)や元親友ネッド・リーズ(演:ジェイコブ・バタロン)は、ピーターと三人で通いたかったMIT(マサチューセッツ工科大学)に2人で通い楽しい日々を過ごしている。
ピーターは、ネッドのInstagramで楽しそうな2人を見ることだけを楽しみに日夜、犯罪と戦っている。
メイおばさん(演:マリサ・トメイ)を戦いに巻き込んでしまい喪ってしまった事から、2人を巻き込みたくないのだ。
私生活は完全に終わっているピーターだが、ヒーロー活動は順調でザ・ハンドを含めた犯罪組織を3つも壊滅させ、スーパーヴィランを何人も捕らえてNY市長にも感謝される(ちなみにこの市長は『デアデビル:ボーン・アゲイン』〈シーズン2〉(2026)でキングピンが失脚して繰り上がって市長になった市長補佐の人)。
ピーターが普段話す相手と言えばアシスタントのE.V.(演:ラナオミ・ワッツ)、そして連携を取り合って犯罪者に対処しているジーン・デウォルフ刑事(演:ライザ・コロン=ザヤス)。しかしE.V.はAIだしデウォルフとは犯罪の話だけで友達ではない。そしてE.V.もデウォルフも共に、孤独そうなピーターを心配している。
観ていて、ピーターに対しては「人生で一番楽しい数年間を棒に振って可哀想」という同情心と「いや、2人を護りながらまた友達になればいいやん」という2つの気持ちが湧いてくる。また「ドクター・ストレンジの魔術によって全世界の人の記憶からピーターのことだけ消えた」という突飛な設定も「ピーターを曇らすためだけに発生した無茶苦茶な設定だな」と、10分に1回くらいアホらしくなりまたいかんいかんと気を取り直す瞬間がある(原作由来ではあるけど、その原作でも散々「魔法で記憶が?」と長年笑われてたしね)。
まぁ、とにかくそんな現状。

ある日、ダメージ・コントロールの支部を襲う暴走車両を発見したピーターは、犯罪者をすぐ殺そうとするフランク・キャッスル/パニッシャー(演:ジョン・バーンサル)を静止しつつ犯人を止める(以前、スパイダーマンがパニッシャーを助けて以来、顔見知りのようだ)。
しかし暴走車両に乗っていた人物には記憶がなく、暴走車両ドライバーの行動を引き継ぐかのように近くにいたダメージ・コントロール(以下DODC)警備兵が動く。そしてピーターの心の中の大事な部分(メイおばさんと住んでた昔のアパートで、メイと一緒にいる空間)に何者かの精神が入ってこようとする、しかしピーターはテレパシーに強いみたいで”謎のテレパス”の侵入を防いだ。
どうやらこの犯人は「半径10m以内にいる他人の心に次々と乗り移り操ることが出来る」テレパスだとピーターは理解した。
MJが恋人とキスするところを見たピーターは具合が悪くなり翌朝、手首の穴から直接ウェブ(蜘蛛の糸)が発射されるようになっていた。E.V.の分析によると「孤独のストレスで、蜘蛛の潜在能力が覚醒しかけている」という。ピーターはこれ以上特殊になることを恐れ抑制する手段を探す。
ピーターは「他人とは違う特殊な力」のせいでメイおばさんを失い仲間たちをも失うことが怖くて自ら孤独になっている。しかし、そのせいで「特殊な力」が更に特殊になり、それがピーターを苦しめる……ピーターの悩みが円環構造になっており永久機関のようにピーターを無限に苦しめている。これがピーターや本作のヴィラン、あとハルクとかにも通じる本作のテーマで、結末ではこれが一つに集約される。あまりに芸術的な構成なので「これ本当に(殆どの作品がつまらなくなってから凄く長い)MCU作品?」と驚いた。

 

 


スパイダーマンは、ニューアベンジャーズのリーダー、エレーナ・ベロワ(演:フローレンス・ピュー)を訪ねて”謎のテレパス”について尋ねるがエレーナも知らない。しかし「連続でDODCを襲っている犯人は”V-MAX”を探しているらしい」という事がわかった。しかし”V-MAX”が何なのかはわからない。「V-MAX」という名称の雰囲気、DODCにあるという事などから”何らかの超兵器”ではないかと推測するピーターたち。
ニュー・アベンジャーズはもっと規模の大きい脅威に対抗するチームなので、憑依するテレパスについてはスパイダーマンが見つけ出すしかない。ダメージ・コントロール新長官ビル・メッツガー(演:トラメル・ティルマン)もスパイダーマンを頼る。
”謎のテレパス”はスパイダーマンの宿敵の一人マック・ガーガン/スコーピオン(演:マイケル・マンド)を操り、それを倒すスパイダーマン。しかしスパイダーマンの蜘蛛化がどんどん激しくなり凶暴化が増してきてきた、抑えないと……。
ピーターは、大学で教鞭をとっていた天才生物学者ブルース・バナー/ハルク(演:マーク・ラファロ)を訪ねる。バナーは自ら開発した装置でハルク化を抑制している。ピーターは己の蜘蛛化の”変異”を抑制するヒントが欲しかったのだ(個人的には、それだけではなく突然変異の己の力に悩まされるハルクに共感して話をしたかったのだと思った)。
これで己と、ついでに”謎のテレパス”の超能力を防ぐ計画。
”テレパス”は、自分の邪魔ばかりするスパイダーマンを何とかしたい。しかしピーターにはテレパス耐性がある。そこで”テレパス”はピーターの部屋に侵入し「ピーター・パーカー=スパイダーマン」「MJのこと」など全てを知り、MJを狙う。
ここで、助けられたMJはスパイダーマンにキスする。これは『スパイダーマン』(2002)のオマージュだろう、キリないから書かないけど本作は原作コミックや過去のスパイダーマン映画のオマージュが数多く散りばめてある。それは今までのMCU作品によくあったサプライズのためのサプライズやオタク心をくすぐるだけで中身は空虚だったイースターエッグとは違い、有機的に物語に作用する血の通ったオマージュのように感じた。
キスでピーターを思い出すMJ……残念、中身は”謎のテレパス”だった。ピーターの人の良さに呆れる”謎のテレパス”。だが僕も騙されて「キスで記憶が戻るとか……ちょっとな」と残念だったので「キスで記憶が戻ると信じるとか、お花畑かよ」という”テレパス”の煽りが本当に嬉しかった。何で嬉しかったのかというとデスティン監督が観客の先回りして「そーいうつまんない展開はやらないから安心してくれ」と言われた気がしたからだ。
ここ数年のMCU作品とかディズニー作品は本気でそういうしょうもない展開をやりがちだったのでまんまと過小評価して本作を観てたんだなと思った。だから、この「スパイダーマンとMJ(中身は”謎のテレパス”)のキスシーン」で「あ、MCU作品とはいえ、本作はどうやら面白いみたいだな」と、椅子に座った姿勢を正した。
ゼンデイヤは本人自身や他の役が派手なので忘れてたけどMCU版MJ(ミシェル・ジョーンズ)って陰キャ設定だったね。久々にMJに会った気がした。ピーターの真実を知っても「凄くよく分かったし貴方は良い人だけど……でも全然知らんし……」と気まずそうに正直に語る様が本当にナチュラルで素晴らしかった。本作のピーターとMJの絡みは最後まで凄く良い。
互いの自宅は”謎のテレパス”に知られているのでスパイダーマンはMJと共に、パニッシャーのアジトに匿ってもらう。
MCU版スパイダーマン名物の「ピーター/スパイダーマンに絡むおじさん」、アイアンマン、ニック・フューリー(中身スクラル)、ミステリオ、ドクター・ストレンジ……に続き、本作ではパニッシャーのようだ(ついでにハルクも少々……)。
ピーターは、パニッシャーとMJの協力で突然変異抑制デバイスが完成。これを”謎のテレパス”に刺せば彼女の超能力を止められる。

そして”謎のテレパス”の正体は孤児の家出少女ジーン・グレイ(演:セイディ・シンク)だと判明。しかし超能力を持っている事以外の情報はない。
このキャラ、「半径10m程度の人間に次々と憑依する」という能力で、近くのAが喋って遠くのBが続きを喋って……と、リレーのように憑依していく演出が、ありそうでない演出で面白かった。普通、フィクションの憑依って限界がないものが多いが本作の場合「10m以上遠くの者には憑依できない」この若きジーンならではの「制限つきの超能力」が映画を面白くしていた。超能力を弱くすることで面白くするとは、と驚いた。
セイディ・シンクがX-MENのジーン役ということは徹底的に伏せられていたが(公開数日経った今も伏せられている)状況的にジーン確定だと知れ渡っていたし僕もそう思っていた。何よりも「セイディ・シンク」っていうのが、もうジーンだ。これがアラサーくらいの売れっ子女優ならジーンと思わなかっただろうが、セイディ・シンクなら若いしフェイズ7から始まると思われるX-MENの中心になって、それがヒットしても10数年間ジーンをやれる。ここでMCUがやりがちなスカシは「ジーン役……だと思わせてスパイダーマンに登場する超マイナー超能力ヴィランでした~!」みたいな、こういう「誰も当てられなかったが、その代わり誰も楽しくないサプライズ」もよくする、MCUは。でも今は切羽詰まってるしSONYとMARVELは「ピーターのスパイダーマンには本気」なのでそういったMCUがやりがちなガッカリすかしはやらないだろうと思っていた。誰もが観るスパイダーマン新作でX-MENへの引きをやるのは理に叶ってるし。
それでいてセイディ・シンクのジーンは本当に素晴らしい(というか『ストレンジャー・シングス』があるから観なくてもどんな感じか想像つくし)。それに何よりも大人になって、瞳がデカいまま小顔が更に引き締まってめちゃくちゃ美しい。ミュータント(突然変異)っぽい美しさだ。『X-MEN』についてはキャストが決まり始めてるがその話はまた今度……。
それにしても本作のゲストキャラは面白いと思う。
まず大活躍するパニッシャー。スパイダーマン+パニッシャーはNYのヴィジランテ同士、コミックでも珍しくない組み合わせだが、こと実写版で言うとパニッシャーはNetflix制作ドラマとMARVELテレビジョン制作のDisney+のMCU作品『デアデビル:ボーン・アゲイン』〈シーズン1〉(2025)『パニッシャー:ワン・ラスト・キル』(2026)  にしか出てない。配信しか出てないキャラが映画に、しかも大作のスパイダーマンに出るのが珍しい。だけど「とりあえずマルチバースじゃなくてストリートベースの渋いスパイダーマンになりそうだな」と思った。だが次に「ハルクが出る」と発表があってハテナが浮かんだ。パニッシャー同様スパイダーマンとハルクの絡みもたまにある。だけど「パニッシャー+ハルク」この組み合わせが、パワーに差がありすぎて不可解。ジーンが出るのはわかっててジーンは想像つくけど「そこにパニッシャーとハルクを?わからん……」と読めなかった。でも読めないってのは映画好きにとって嬉しいことなので楽しみだった。
エレーナは、滅多に再登場しないフェイズ4以降のキャラにしては珍しく、多く登場している。「ニューアベンジャーズのリーダー」として『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』でも出番多いっぽいし本作にも出てるし……もうキャプテン・マーベルはおろかソーやサムよりアベンジャーズになっている(というか彼女以外で作品またいでアベンジャーズ活動するキャラ自体殆ど居ないが)。僕は嫌いだが世間では好評だった『サンダーボルツ*』(2025)の監督ジェイク・シュライアーはフェイズ7でMCU版『X-MEN』を監督するし、それもエレーナ優遇の理由の一つかも。エレーナとか原作では全然人気ないのにね。だが、そういうわけでエレーナは作品間を繋ぐキャラとして最近出がちなのであまり驚きはなかった。
忍者集団ザ・ハンドは原作通りの真っ赤な出で立ち。女性リーダーを頭にして大人数で一匹の大きな龍みたいに動いて攻撃してきて、これもジーンの憑依能力同様新鮮で面白かった。これは絶対に、一向に『シャン・チー』2を作らせてもらえないデスティン監督がシャン・チー用に温めてたアクションなんだろうと思った。
あと「B級ヴィランが多く出る」という情報は「ああ、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(2025)みたいにダイジェストでスパイディーに倒されるのね」と想像がついた。
だから、とにかく「ピーターの個人的な悩み」+「若きジーン・グレイ」+「パニッシャーとハルク」この組み合わせがカオスで、そこが楽しみだった。
他の映画ならいかにも駄作になりそうな混沌加減だが、本作はこれらが互いに上手く作用して「ピーターの悩み(MJとネッドに会いたい、能力の覚醒が怖い)」という大きな軸を後押ししており、「他人と違うことで苦しむ」というピーターとジーン(ついでにハルク)共通の苦しみにも作用していて、最初から最後まで面白かった。
そしてスパイダーマンにパニッシャーが出ると聞いた時に、パワーの差もあるけどパニッシャーの持ち味「犯罪者は子供だろうが容赦なく殺す」というパニッシャーの持ち味が「スパイダーマンに出たから殺しは無しで、ピーターとワチャワチャして」って感じだったらパニッシャーの持ち味消える!と心配だった。しかし本作でパニッシャーは「犯罪者や危険な存在は絶対殺すマン」「根は優しいおじさん」という相反する持ち味を両立させていて、これが地味に凄いと思った(っていうかジーンが頑張ってなければほんとに死んでたし……)。
唯一残念だったのはハルクかな?「己の力を恐れて抑制する天才科学者」というピーターの先輩役で出たのはいいが「いつものようにジーンに洗脳されて暴れるのかな?もうやったしそれはないか」と思ってたら、本当にジーンに洗脳されて大暴れした。最後は「僕、暴れたのか?教えてくれ、誰か傷ついた人はいたのか……」と泣きそうな顔で、運ばれていって報道されて……可哀想すぎるだろう。ハルク単独作が来ないと可哀想すぎる。
後半、ジーンがDODCに捕まり回想が始まり、ピーターが助けに行くので「ああ、ピーターが救出して和解か」と思っていたら、なんと作中ずっと謎だった”V-MAX”を遂に見つけたジーンが覚醒……この「”V-MAX”とは何なのか?」の仕掛けはマジで神だった、もう本当に「MCUにポッと出てきてその作品内で猛威を奮って以降まったく出てこない兵器に付けられてそうな名称」だもんね、モロに。絶対に予想できないし、そして分かれば全てを察する素晴らしいアイデアだった。
話を戻して覚醒したジーンは大暴れ……というジーンのパートが長過ぎる!しかもピーターが救うわけではなく自力で覚醒して”人間ども”に復讐……このパート、完全に『スパイダーマン』ではなく『X-MEN』になってる。セイディ・シンクもX-MENもこのくだりも好きだが、それは置いといて本作は『スパイダーマン』だぞ?と、スパイダーマン側が心配になった。
するとジーンがラスボスになるとは……「謎の超能力少女ジーンがヴィラン」→「ヴィランじゃなかった、DODCは今まで通り嫌な組織」→「スパイダーマンがジーンを救出……する前にジーン覚醒してラスボス化」という流れは練りに練られており本当に予想を超えてきた。そこにパニッシャーをひとつまみ……多くの一般客に馴染みのないパニッシャーをわざわざ起用した意味が終盤わかる。
ピーターもまた「他人と違う自分」つまり蜘蛛の変異を恐れず覚醒して乗りこなす。だがオメガ級ミュータントであるジーンからすれば覚醒したスパイダーマンなど何の脅威でもない。ジーンは以前は入れなかったピーターの心に侵入する。そこでメイおばさんに遭い、そして……という決着は『サンダーボルツ*』(2025)で好評だったセントリー攻略を思わせる。だが「人柄の良さ」もピーターの能力だと思えば、これは実にピーターらしい決着の付け方だと納得した。
そして冒頭からピーターを苦しめていた悩み(他人と違う自分が愛する人を苦しめる、だから会いたいけど会えない)、これもピーターがジーンとの触れ合いで「ありのままの自分を受け入れる」と悟った瞬間に自分の新たな蜘蛛パワー覚醒も乗りこなせた。そして「ピーターの心の奥の人柄」でジーンを癒し自分自身をも癒す。そしてピーターはようやく孤独であることをやめる……いいハッピーエンド。このままで居て欲しいね。

本作は、ストリートレベルのヒーロー、アベンジャーズ、後のX-MEN、忍者、色んなヴィラン……などバラエティ豊かすぎて、一作でMarvelユニバース全部やってる感じで良かった。それでいてピーターという芯があるのでブレてないし。それと退院する時のピーターがパニッシャーに狂ったような不思議な笑い方する場面よかった。

ちょっと観たばかりなので感想の書き方の順番が散らかってて良い文章じゃないけど臨場感あるからこのままUPした。良かったところは書けたし。
MCUはお祭りクロスオーバーやサプライズなど「観た当日は面白いが、普遍的に面白いものは凄く少ない」印象だが、本作は『アベンジャーズ』(2012)『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)などのように、時間が経っても面白さがあまり目減りしない作品じゃないだろうか?まだ分からんけどそんな気がする。

次のMCUは12月18日にいよいよ『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』(2026)!……と言いたいところだがノスタルジアだらけの予告編見ても1mmも心が動かなかった。さすがに大勢出るし色々仕掛けもあるだろうから観に行った当日は興奮するでしょうけどね。でも数日経てばどうでもよくなる予感が凄くある。予告で唯一心が動きそうになったのはフェイズ4以降のキャラが少なすぎる中シャン・チーが出てたとこだけ。まぁそれも「アジア人が居ないからアジア枠でシャン・チー入れとこう!」というのが透けて見えるが。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で本来めちゃくちゃサブキャラのウォンが妙に出番多かったのと同じアリバイアジア人だろうな。そんな醒めきった気持ちが裏返る面白いものならいいが。
とりあえず本作は素晴らしかった。以上。

 

 

 

そんな感じでした

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〈スパイダーマン関連作〉
『アメコミ・ヒーロー大全』(2017-2018) 全2話/小学生みたいな邦題から繰り出された神番組!アメリカ近代史とヒーロー80年 - gock221B
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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)/予想を裏切り期待に応えるMCUの到達点 - gock221B
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『ホワット・イフ…?』〈シーズン1〉全9話 (2021)/本編での活躍少なかったキャラの活躍が嬉しい。”行動せず観てるだけなんて気持ち悪い”というファンへのメッセージ👨‍🦲 - gock221B
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)/元々スパイダーマンの哀しい運命が必須なとこ好きじゃなかったからマイルスの抵抗は嬉しい。でも情報力多くて疲れた - gock221B
『スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド』〈シーズン1〉(2025) 全10話/トゥームストーンの紆余曲折! - gock221B
『サンダーボルツ*』(2025)/映画自体やキャラは面白かったけど序盤のタスクマスターのくだりでシャッ!と心のシャッターが閉じて、最後まで何もフォローなかったのでシャッターに鍵を掛けた。二度と開くことはない - gock221B
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『パニッシャー:ワン・ラスト・キル』(2026)/良かったけど、開始5分で子犬が惨殺されるので犬好き注意 - gock221B

 

〈デスティン・ダニエル・クレットン監督作〉
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)/シャン・チーとケイティと中盤までのアクションとストーリーが最高 - gock221B
『ワンダーマン』(2026) 全8話/これは最高だったし瞬間最高速的にトレヴァーがMCU全キャラで一番好きかも - gock221B

 


 

Spider-Man: Brand New Day (2026) - IMDb
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Spider-Man: Brand New Day (2026) Letterboxd
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『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)/作品テーマが拷問からビンラディン殺害への執念へと移行させるのが上手かった


原題:Zero Dark Thirty 監督&制作:キャスリン・ビグロー 脚本&制作:マーク・ボール 制作:ミーガン・エリソン 製作総指揮:コリン・ウィルソンその他 撮影:グリーグ・フレイザー 編集:ウィリアム・ゴールデンバーグ、ディラン・ティチェナー 音楽:アレクサンドル・デスプラ 製作会社:アンナプルナ・ピクチャーズ 配給会社:コロンビア ピクチャーズ 製作国:アメリカ 上映時間:157分 公開日:2012年12月19日(日本は2013年2月15日)

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特に理由はないがたまたま観てなかったキャスリン・ビグローの映画(『ハウス・オブ・ダイナマイト』(2025))観たら物凄く良かったので、過去作も観ることにしてこれ観た。

CIAがオサマ・ビン・ラディンを何年も捜索して殺害に至る実話を元にしたフィクション。

ネタバレあり



🕌

 

 

STORY
アメリカ同時多発テロ事件から2年後の2003年
CIA分析官マヤ(演:ジェシカ・チャスティン)は、オサマ・ビン・ラディン捜索チームに抜擢されるが捜査は難航し、同僚は次々と消えていく。
2010年、狂気を孕んだ執念を燃やすマヤは標的の隠れ家を突き止め、2011年、遂にオサマ・ビン・ラディン殺害作戦が実行される時が来た――

マヤがCIAパキスタン支部に到着したところから始まる。
第1幕は、CIAの先輩である情報将校ダン(演:ジェイソン・クラーク)がオサマ・ビン・ラディンの過激派テロ組織アルカイダのアメリカ同時多発テロ事件関係者を拷問しまくっている印象が強い。
第2幕は、仲間が様々な理由で消えていき残ったマヤがビン・ラディン捜索に取り憑かれていく様を描く。第3幕はマヤが突き止めたビン・ラディン邸をアメリカ海軍特殊部隊が強襲する様子を描く。

ダンがアルカイダの男アマール(演:レダ・カテブ)を強化尋問術(ブッシュ政権が採用していた過酷な拷問)で責める。
Enhanced interrogation techniques - Wikipedia
シンプル暴力、水責め、フードを被せる、強制的に横になれないように腕を吊って睡眠妨害、爆音でハードロックを流す、飲食や医療の剥奪、トイレに行かせず失禁させたり、マヤの前で男性器を露出させて放置して性的羞恥を与える、棺のような狭い箱に押し込める、たまに飲み物など与える(鞭に対する飴)……など(性的暴行は「許可された強化尋問」には含まれていない)。
しかしアマールは吐かない。
そこでマヤは意識朦朧となったアマールに「記憶がないようだけど貴方は4日間寝てない間に私たちに情報を教えてくれた」と嘘をつき、諦めたアマールは追加情報を吐く。その中には「ビン・ラディンの連絡係アブ・アフメド」の情報があった。
公開時、様々な論争があったっぽいが「拷問を正当化している」というものもあったようだ。中でもマヤがビンラディンに繋がる重要な情報を拷問で引き出した事が「拷問の正当化に繋がる」と問題視されたようだ。確かにマヤはダンの過酷な拷問で疲弊して意識朦朧としたアマールを騙して情報を引き出した。これは一見「拷問じゃ吐かないので賢い主人公マヤが機転を利かせて別の手段で引き出した」とも見える。しかしマヤは拷問されまくって疲弊したアマールを騙して引き出してるので「拷問の延長上にある尋問」で引き出したことになり「拷問でビンラディンを見つけたと描いた」と言われても確かにそうかもしれない。そして、その後もマヤは暴力役の同僚を使ってガンガン強化尋問(拷問)する様子があった。マヤの騙し尋問以降、拷問がされなければその印象も少ないだろうが「先輩ダンのシンプル拷問→新人マヤの変化球尋問(ただし拷問で疲弊した間隙で)→後任マヤのシンプル拷問」……という構成によって「マヤが変化球で引き出したが拷問の日々の中でちょっと香りの違う尋問があっただけ」という印象で、やはり「拷問でビンラディンを引き出した」と言われても仕方ない。だから、この批判には一定の理由があると思う。しかし、それでも映画そのものは拷問を礼賛してはいない。
だが本作の前半で長々と見せられる拷問は、観ていて悲惨だし気が滅入るものとして描いている。見せられたマヤは引いてるし行っていたダンは施設で飼っていた猿を可愛がって精神のバランスを取り猿が死んでしまうと気を病んで尋問の任務をやめて帰国する、だからまず前向きな雰囲気では描いていない。そして2009年にオバマ政権になって拷問は廃止され世間から叩かれる様も間接的に描いていた。その際もマヤたちは「拷問が必要なのに!」とも「やっぱ拷問アカン、しゃあないな」ともつかない無表情。
何が言いたいかというと、この一連まとめて「割と誠実に描いてるんじゃない?」ということ。現在「拷問はよくない世界」に生きてる我々だが、劇中のマヤたちは最初「拷問が推奨されていた世界の住人」で、途中から「拷問はよくない世界の住人」に変わった。
現実的に拷問はあまり成果を発揮しなかったそうだし良くないものとして封印された。そこに異論はない。だが現在が「拷問はよくない世界」だからといって「拷問が推奨されていた世界」だった第1幕を「拷問はひどいし全然駄目だ!情報も全然引き出せないや!」と恣意的に描いてしまうとそれはそれでプロパガンダ的な嘘くささがある。「拷問は辛い」から吐く奴も少しは居ただろうし。
そんな色んなことを加味すると「先輩ダンは拷問しまくり、マヤは機転を利かせて拷問の延長線上にある少し捻った尋問で重要な情報を引き出した。だがその後マヤも拷問を行っていた」という本作の描き方はバランスが取れている。本作は拷問を英雄的にも、「こんなの駄目!」と条件反射的に批判するものとしても描いていない。当時のCIAが信じていた手法、その後に否定されていく過程、そして現場にいた人々の変化まで含めて描いている。だから誠実な印象を受けた。

 

 

100人以上拷問しまくって精神が疲弊した情報将校ダンは帰国、親友になった上級分析官ジェシカ(演:ジェニファー・イーリー)は爆破テロで死亡、上司であるジョセフ支局長(演:カイル・チャンドラー)は身元リークにより殺害予告を受け、安全保障上の理由で帰国。マヤの最初の仲間は次々と居なくなるが、マヤはビン・ラディン捜索に執着していく。
ちなみにジェシカにはジェニファー・マシューズという実在したCIA職員のモデルがおり「情報提供者だと思って呼んだら二重スパイの自爆犯だった」という爆破テロも実際の出来事に基づいている。
Jennifer Matthews - Wikipedia

ついでに主人公マヤはアルフレダ・フランシス・ビコウスキーというCIA職員をベースに(ただし、そう明言されているわけではない)複数の「ビン・ラディンを捜索した女性CIA職員たち」を合わせてマヤという一人のキャラクターに凝縮した存在らしい。
Alfreda Frances Bikowsky - Wikipedia
親友ジェシカを失ったマヤはビン・ラディン捜索に狂気まじりの執念を燃やしていく。
マヤは「ビン・ラディンの連絡係アブ・アフメド/別名サイード」を何年もかけて追い、パキスタン内に彼が住んでいる巨大複合施設を発見。アフメドだけでなくビン・ラディンも住んでいることを確信する。
施設発見と同時期にマヤもテロに遭遇し、危険が増したので帰国してワシントンDC本部から捜索を続ける。
この”施設”にいる”敷地から出ない長身の男”が十中八九ビン・ラディンであることは明らかだが万が一、人違いだったら国際問題になる。それでなくてもホワイトハウスは中東戦争時の「大量破壊兵器」が空振りだったのでアメリカ政府としては「施設の中の男=ビン・ラディンを示す証拠」がないと実行したくない。
しかし「敷地から出ない長身の男」のステルスは完璧で、一向に証拠を出さない。
マヤは長官や上層部に「ビンラディンは100%居る」と主張し、遂にビン・ラディン殺害作戦が決行される。

第3幕は、2011年5月2日ゼロ・ダーク・サーティ(深夜0時半頃を示す軍用語)にアメリカ海軍特殊部隊によって行われたビン・ラディン殺害ミッションがリアルに描かれて終わる。
ステルスヘリで敷地内に降りた特殊部隊が、施設の三人の男を射殺して、「ビン・ラディンの死体」やPCのHDやファイルなどの資料を奪い、急いで立ち去った。パキスタン軍が急行するまでに全てを終える必要があった。
「ビン・ラディンの死体」がビン・ラディン本人だと確認したマヤ。
9年に及ぶ仕事が終わったマヤは帰国するために乗った「誰も乗っていない巨大な軍用貨物機」で一人静かに泣いて映画は終わる。
本当なら共に軍用機に乗る同僚とかいてもおかしくないが、ここは単純にライフワークを終えて「空っぽ」になったマヤの心そのものを表すため一人だけ巨大な軍用貨物機に乗った映像で映画が終わったのだろう。
マヤは「ビン・ラディンを殺す=自分の全て」が空っぽになってしまい泣く。
何故そんな感じなのか、何故そこまでビン・ラディンを殺したかったのかというのは「同僚の仇」「被害者の仇」「正義のため」などは勿論あっただろうが、それらは脇に置いといて「マヤ本人がそれをしたいから」ということを強く感じた。例えばリークされて途中で去ったマヤの上司ジョセフ支局長は「仕事として対テロミッションをこなしている」感じで描かれていた、そのためマヤはあり得ないくらいキレてジョセフ支局長を罵倒して「正気か?」と呆れさせる。ジョセフ支局長に「熱意」があったのか仕事としてこなしていただけなのかはよくわからないが、一つ言えるのはマヤが凄くこれにのめり込んでいたということだけ。「犠牲者の仇」「正義執行」などの奥にある(ように私には見えた)「マヤのよくわからない執念」についてはマヤ本人でないとわからないが、一つ言えるのはそれが「彼女のしたい仕事」だったからそうした、そしてそれがライフワークというもので、それを完遂して無くなったから泣いた……と、そういうことだけはわかる。

映画は見応えあって面白かった。
最初は「拷問の映画か?」ってくらい拷問ばかりの映画だったのだが、中盤で自然と「マヤの執念」「一人称で描く臨場感あるビン・ラディン殺害ミッション」へと移行するのが上手かった。
「国家の正義」等よりも、マヤのモデルとなったCIA女性職員たち、そしてそれを監督したビグロー自身の投影によるマヤというキャラクターの妄執と終焉を描いた印象。この手の映画は全部そうだが「個人の想い」を描くものなので「ここが事実と違う!」とか言っても仕方ない、少しでも事実と違うのが許せない人は劇映画もドキュメンタリーも観ず最初から事実の記事とかを読むしかない(ドキュメンタリーも個人の意思によって切り抜かれたフィクションに過ぎない)。そして本作では、拷問のくだりでも触れたがキャスリン・ビグローのバランス感覚が一番印象に残った。



そんな感じでした

キャスリン・ビグロー監督作〉
『ハウス・オブ・ダイナマイト』(2025)/本当に最初から最後まで面白かったし、レベッカ・ファーガソンの複雑過ぎる表情が素晴らしかった - gock221B

 


 

Zero Dark Thirty (2012) - IMDb
Zero Dark Thirty | Rotten Tomatoes
Zero Dark Thirty (2012) Letterboxd
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『イベント・ホライゾン』(1997)/コズミック・ホラー+幽霊船+マッドサイエンティスト+『エイリアン』+『ヘルレイザー』+アメフトのキャプテン


原題:Event Horizon 監督:ポール・W・S・アンダーソン 脚本:フィリップ・アイズナー 製作:ローレンス・ゴードン、ロイド・レヴィンほか 音楽:マイケル・ケイメン、オービタル 配給:パラマウント 製作国:アメリカ、イギリス 上映時間:95分 公開日:1997年8月15日(日本は1997年11月15日)

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先日サム・ニールが亡くなった。彼を偲んで、大好きなジョン・カーペンターの『マウス・オブ・マッドネス』(1994)や、彼の一番有名な代表作『ジュラシック・パーク』(1993)や『ポゼッション』(1981)あたりを観ようと思っていたのだが、Xで本作についてのポストを見かけた。「光速を突破して地獄に行った宇宙船が地獄の一部を持ち帰った」という面白そうな話だと知り、海外のコズミック・ホラーを紹介するYouTubeでも取り上げられてて興味を惹かれたので、U-NEXTで観た。

監督は、妻のミラ・ジョボヴィッチ主演の映画を作り続けてるポール・W・S・アンダーソンというので一瞬観る気が失せたが「制作初期段階でクライヴ・バーカーが助言した」という情報で観る気が上がったので結局観た。

公開時は、制作費を回収できず爆死。
だが後にビデオソフトで発売されるとカルト的な人気が出た、それで未公開部分も足したディレクターカット版を再上映しようとしたがカットした部分のオリジナルフィルムが紛失や損壊されていて叶わなかった……らしい。自分はこの映画全く知らなかった、ポスターとか表面的には「宇宙船で事故が起きるらしい」という感じで出演者も渋くて地味なので見かけたかもしれないが「面白くなさそうだな」と思い脳のメモリからすぐ消えたと思われる。
実際に観たら傑作とは言わないが面白かった。というか完全にホラーだった。
秘密を持った巨大宇宙船で幻覚に襲われ気が狂って自滅していくホラー。
「幽霊船+マッドサイエンティスト+『ヘルレイザー』+『エイリアン』」って感じ。
だったら、そのように売ればよかったのに「宇宙サバイバルもの」みたいな顔してたから、真面目な宇宙ものだと思って観に行った観客は「なんやこれ……」としか思わず、それで口コミも広がらず爆死したのではないだろうか。

ネタバレあり

 

 

🌌

 

 

STORY
西暦2047年7年前に消息を絶った宇宙船“イベント・ホライゾン号”からのSOS信号が確認される。
ミラー艦長(演:ローレンス・フィッシュバーン)ら救助隊はイベント・ホライゾン号を造ったウェアー博士(演:サム・ニール)を伴って調査におもむき、無人のイベント・ホライゾン号内に到着。だが救助隊の宇宙船は謎の故障、そして彼らはイベント・ホライゾン内でに襲われていく――

という話。

早い段階で明かされるがウェアー博士(演:サム・ニール)が造ったイベント・ホライゾン号は心臓部に人工ブラックホールがあり、これによって時空を歪めて光速を超える速度で移動できる(正確には速度ではなくワープ)。
毎度おなじみの「科学者が難しい説明」を始めたら面白黒人の乗組員に「英語でOK?」と言われて「グラビア写真の、直線なら離れていた地点を折り重ねることによって同じ位置にして鉛筆で貫く」という説明を見せられる(一体何本のハリウッド映画でこのくだり観てきたことか……)。
重力駆動装置「コア」によってゲートを開き、そこに飛び込みとんでもない遠い世界に行くという仕組みだ。
イベント・ホライゾン号は7年前にこの重力駆動装置「コア」で「どこなのかもわからない遠い世界」に行き、そして今帰ってきたのでその結果を見ようとしてるのが今。

観てると、宇宙空間は宇宙というよりもまるで「霧の立ち込めた夜の海」のように描写されている。
そして救助船内は、非常に生活感あって少し散らかっていて湿気を感じる。工場内のような雰囲気。乗組員も帽子被ったり煙草を吸ったり汗をじんわりかいていて生活感が強い。つまり『エイリアン』(1979)のノストロモ号みたいな「作業船や工場の中のようなテイストで描かれた宇宙船」、そして謎めいたイベント・ホライゾン号の内部は「こんな装飾は宇宙船には要らないだろう?」ってくらいカッコいい装飾が施されてる。これは『エイリアン』(1979)のスペースジョッキーの巨大宇宙船のようなノリ。
次に宇宙空間だけど、宇宙船のドッキングとか作業したらめちゃくちゃ音が出るという『スター・ウォーズ』的な「音が出る宇宙」的な描き方。
『インターステラー』(2014)などの近年の宇宙を描いたリアルな描写ではなく
「ここは”宇宙”ってことで一つ観てくださいね」といった感じで、『インターステラー』(2014)的な宇宙より一段階フィクションに寄っている感じ。

要は何が言いたいのかというとこの映画は、近年の「リアルな宇宙と宇宙船を舞台にしたSF映画」ではなく「表面的には”宇宙と宇宙船”を舞台にしているが、本質的には”呪われた巨大船に救助にいった船員たちが幻に襲われる怪奇ホラー映画」という事が言いたかった。『エイリアン』(1979)がそうだったように。

 

 

『エイリアン』(1979)で乗組員を襲うのは完璧宇宙生物ゼノモーフ(エイリアン)とWユタニ社のアンドロイドだった。
本作では、この呪われたイベント・ホライゾン号そのものとサム・ニール演じるウェアー博士となる。呪われた幽霊船とマッドサイエンティストが襲ってくる。
物語とともに明かされるが、イベント・ホライゾン号は、オリジナルの乗組員が残した映像で語ったところによると「地獄」に行き、オリジナルの乗組員たちは恐怖のあまり目玉をくり抜き互いを素手で引きちぎり喰い合って全滅したらしき事がわかる。
主人公たちも一人また一人と幻覚に冒されて自滅していく。
イベント・ホライゾン号自身が意思を持って乗組員たちを襲っている事に気づいたミラー艦長(演:ローレンス・フィッシュバーン)は総員避難させてイベント・ホライゾン号をミサイルで破壊して地球に帰ろうとするのでイベント・ホライゾン号が大事なウェアー博士はそれを邪魔する。
ウェアー博士は、自分が造った凄い宇宙船だから……というだけでなく、以前仕事にかかりきりで孤独を感じた妻が自殺した過去がある。だから前の乗組員が言う「地獄」へ行けば妻に会える、もしくは贖罪の気持ちで「地獄」に行って自らを罰しようと思っているのかもしれない。どちらにしてもウェアー博士は完全に狂っているので自分の自殺にミラー艦長たち乗組員たちを道連れにしたいのかもしれない。

 

 

大まかなストーリーとしては「幻を見せて間接的に自滅させようとする幽霊船」「”幽霊船で地獄に行く”のに付き合わせようとするマッドサイエンティスト」この2つに乗組員たちは襲われる、というホラー映画。
この映画で、一番魅力的なのは「人工ブラックホールを使ったエンジンで宇宙の果ての”地獄”に行って感染したイベント・ホライゾン号」だろう。
そして、イベント・ホライゾン号の乗組員たちが言っていた、この宇宙の果てにあるという”地獄”。この”地獄”は最後まで出てこないし「とにかく聖書に出てくる地獄よりも恐ろしい世界」としか語られない。この”地獄”が全く描かれないところに想像力をかきたてられて痺れる。コズミック・ホラーってやつ?
※人間の理解を遥かに超えた強大な存在や、宇宙を前にした時の絶対的な無力感・恐怖を描くジャンル
本作を好きな人のうち、オカルト好きは「人工ブラックホールで次元を超えて、聖書などに出てくる”あの地獄”にガチで行ったんだ」と解釈する人もいる。それはそれで面白いが、僕は単純に「恐ろしすぎる惑星とか次元に行った」派、その方が面白い。
描かれていないので「とんでもなく邪悪な悪魔のような超生物が居た惑星」「多次元に行ってしまい理解できなさすぎて乗組員が勝手に狂った」「別に邪悪でも何でもないのだが常識が違いすぎて地球人にとっては凄い精神攻撃されたと思い込んで狂った」「自傷したくなるウイルスに罹った、船内にもウイルスが残っていた」……とか幾らでも考えられる。……ウイルスは一番つまんないな、ウイルスにするくらいならガチ地獄に行った方が面白いわ。
人間、一番怖いのは暗闇にある見えない何か……つまり自らの恐怖心、だと思うので本作の”地獄”は「わからない」っていうのが旨味になってますよね。
やたらとグロテスクに自傷したり他人の人体を解体したがるってのがクライブ・バーカーが助言した部分だろうな絶対に。
そういう感じで最初にも書いたが、傑作でもないが充分面白かった。未公開シーンを足して最初からホラーとして宣伝すればヒットしたかもしれないので惜しかった。
ポール・W・S・アンダーソンの映画で唯一面白かったかも(あと『バイオハザード』(2002)のサイコロステーキくらいか)。
こういう……コズミック・ホラーっていうの?全くほんの少しも敵わず、全力を出して逃げるのがやっと……みたいなホラーが大好きなんですよね。
でも若い時は万能感のせいか「悪をぶっ潰して終わって欲しい」と思っていたので真逆だ。だから加齢のせいかも。悪をぶっ潰しても全然面白くない。全く敵わない……という無力感を持ちつつも抗うものが観たい、要はそれが人生だからかもしれない。

それとローレンス・フィッシュバーン演じるミラー艦長が米兵のリーダー的というかアメフトのキャプテン的というか「誰の命も絶対に諦めらめない!俺が今助けに行くから頑張れ!」って感じの頼りになるキャラで「80~90年代のハリウッド映画のヒーローってこんな性格多かったよなぁ」と懐かしくなった。近年ではこの手のキャラクターは殆ど居ない。権力者や警察の腐敗が報道されるせいか、実業家やインフルエンサーなどの「賢く一攫千金がカッコいい」という風潮のせいか。あるいはそれら色んなことの複合的な理由かよくわかんないけど。でも久しぶりに見ると本作のローレンス・フィッシュバーンみたいな、アメフト部キャプテンみたいな清廉潔白なキャラも新鮮でいいかも?
なんか久々にこういうキャラ観たせいか「自分もこんなに他人のために頑張りたい」と、六歳児のようにくもりなき心で思えた。

 

 

そんな感じでした

 


 

Event Horizon (1997) - IMDb
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