gock221B

映画やドラマの感想ブログ 😺🐱 殆どのページはネタバレ含んだ感想になってますので注意 😺 短い感想はFilmarksに https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

『パスト ライブス/再会』(2023)/年取りすぎたせいか劇中の主人公2人ほどは入り込めなかったが映像の美しさと主演の演技やラストのエモさにはグッと来ました👩🏻🧔🏻‍♂️👨🏻


原題:Past Lives 監督&脚本:セリーン・ソン 配給会社:A24 製作国:アメリカ 上映時間:106分 公開:2023年6月2日(日本は2024年4月5日)

 

 

第96回アカデミー賞の作品賞と脚本賞にノミネートされた韓国人の男女の恋愛映画。

過激な作品がウケるカンヌ受賞作品の面白さに比べて、アカデミー賞ノミネート作品って割と真面目かつ白人中心でしょうもないイメージが何十年も続いていた。それでもノミネートに面白い映画が入ることが増えても結局つまんない方が作品賞に輝くことが多い。
だけど『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)くらいから、人種的だったり政治的要素があればエンタメ作品もノミネートされることが増え、韓国映画や邦画がノミネートされるようになり、ここ数年では「アカデミー賞にノミネートされてるから観てみよう」と思うくらい面白い作品が扱われるようになった(個人的に『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)はめちゃくちゃ嫌いなんだが、そういう話じゃなくて昔はこんな映画絶対に入らなかったし)。
そんでノミネートされる作品も面白くなったからなのか加齢のせいなのか、アカデミー賞内部で起こる政治性や事件なども面白いものが多かった。去年や今年のアカデミー賞とか、そこら辺の面白い映画より面白かったしね(記事書けばよかった、時事性が高すぎて当日に書かんと意味ないから後から書いてもアカン)。
今年のアカデミー賞作品賞ノミネート作品、今のところ全部面白いので、全部観ることにした。これも今までした事なかったね(ひょっとして観てなかっただけで今までのも面白かったのかもしれない)。
今のところ観たやつを好きな順に並べると、『落下の解剖学』(2023)『オッペンハイマー』(2023)『バービー』(2023)『哀れなるものたち』(2023)『アメリカン・フィクション』(2023)、本作……って感じか。感想書く前に最下位にはしてしまったが別に嫌いなわけじゃないけどね。
まだ未見のアカデミー賞作品賞ノミネート作品は『関心領域』(2023)、『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(2023)、『マエストロ:その音楽と愛と』(2023)、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)……と4本なのでもう少しだ。この全部観るのは、ジャンルも違うし本来なら観ないような作品も観れてめちゃくちゃ面白いので来年からもやろうと思った。アカデミー賞自体はもう『オッペンハイマー』(2023)の圧勝で終わっちゃってるので全部観たうえで競馬みたいな楽しみ方することは出来ないが面白いのでOKです。
そういえばここ数年ノミネート作品観た時も面白かった。
劇場やレンタルやサブスクでは、何の映画を観るか決めるのは自分なのでついついお馴染みのジャンルを観てしまいがちで本来自分が観なさそうな作品を見る機会は昔より減りがち。昔ならばTVで映画を見る機会が多かったので放映するものを観ざるを得なかった。だがそれによって思いもよらぬ新しいものに出会える率も高かった。他には恋愛や同棲などしたら本来自分だけじゃ観なかったり読まなかったものに触れる機会が増える。「賞レースに入った作品全部観る」は、それらと似たような映画ロシアンルーレットが楽しめていいかもしれないな。🔫

監督のセリーンさんは、主人公同様に欧米に引っ越した韓国出身の女性監督。自分の経験を活かして長編デビュー作である本作を撮ったらアカデミー賞作品賞にノミネートされたって、すごいね。

ネタバレあり。今回は割と最後まで全部書いてるタイプの感想なので注意です……
でも観た時、酔ってたので記憶が少し曖昧meです

 

 

 

 

韓国・ソウルで同じ小学校に通う12歳の女児ノラと男子ヘソン
成績優秀な2人は互いに淡い恋心を抱いていたが、ノラの家族が海外移住することになり2人は離ればなれになる。

12年後ノラ(演:グレタ・リー)はニューヨークで作家を目指しており、ヘソン(演:ユ・テオ)は兵役を終えていた。2人は24歳
ヘソンはFacebook的なSNSでノラのことを探しており、そんなヘソンを見つけたノラは返信し、2人はモニター越しに12年ぶりの再会を果たす。
2人はしばらくビデオチャットを楽しんでいたが、恋心が募ったノラは「自分は作家になりたいとか明確に目標を持ってここで暮らしてるのだがビデオチャットやりすぎて四六時中あなたの事を考えて心が常に韓国に飛んでいる。もうチャットは辞めよう」と、電脳空間での逢瀬を辞める事を告げる。ノラは自己実現中だし韓国に住むつもりはない、ヘソンもいきなりアメリカに住む金もないしそもそも最初からそんなつもりがない。違う惑星に住んでるようなものだ。2人は再び互いを好きなまま離ればなれになった。
ヘソンは地元、韓国で常に同じ居酒屋でいつめんと飲んでいる。この居酒屋、韓国映画やドラマに昔からよーく出てくる居酒屋。なんか平屋で通りが見える全面ガラス張りで、鍋とか焼き肉をつつきながら透明のお猪口みたいなので飲む感じ。韓国の映画やドラマに出てくる庶民の……特に男が行く飲み屋ここ20年くらい、ずっとこれだな?

更に12年後36歳となったノラとヘソン。ノラはアメリカ人作家のアーサー(演:ジョン・マガロ)と結婚していた。ヘソンも12年前の別離の直後に同じ町の女の子と付き合い始めたが最近うまくいってないっぽい。
ヘソンは7年くらい前?に結婚する時、夫アーサーと韓国に訪れ、ヘソンとも会おうとしたがヘソンはそのメールに返信せず会わなかったようだ。
ヘソンは、はるばるニューヨークまで旅行しにきた。この旅行が、ノラに会うためなのか、たまたまなのか、恋人と上手くいってないから気晴らしの旅行なのかは、ちょっと劇場でトイレ行った時に見逃したのかしたたか酔ってたせいか、よく覚えていない。
とにかくニューヨークに来たヘソンはノラに再開する。24年ぶりに。
ヘソンと、生身と生身で24年ぶりの再会を果たしたノラは
「わぁー久しぶり……生のヘソンだ……。わァ……あっはははは……」と照れて笑ったり横を向いたりする。この場面の演技が本当にめちゃくちゃリアルで、一気に惹き込まれた。正直言って僕は40代後半という高齢者で主人公2人の干支一回り上なせいか、2人の恋模様に今ひとつのめり込めてなかったのだが、この時のノラ役の女優の演技が上手すぎて、観てる自分がノラでありヘソンでもあり家でノラが盗られるんじゃないかと心配している夫アーサーでもあり……と思えるくらいVR的な感じで三人のキャラの中に引っ張り込まれた。忘れてたけど自分もこういった場面が20、30代の時にあったな?とか無理やり引っ張り出される感じ?これが本作の長所だろうと思った。
その他、単純に映像とかカット割りとか物語の進み方も単純に良かった。だけど、そーいう映像の良さを具体的にどう語っていいのか、映像のボキャブラリーがなさすぎて上手く語れない。とりあえず美しくて観ていたくなる映像でした、それ以上に上手く言う専門的な言い方を知らない。
ヘソンは24年前の子供の時に、ノラが突然引っ越して行き場のない怒りに囚われたこと、12年前に後先考えずネットで初恋のノラを探してチャットできるようになったが後先考えてなかったので繋がりがすう消えてしまったこと、自分が現在の彼女と上手くいってないこと、彼女は良いとこの子だし自分はもっと金持ちにならなければ彼女に釣り合う男だとみなされない、と悲痛な叫びをノラに聞かせる。
ノラとヘソンは2人でNY観光しノラはヘソンを伴って帰宅。ヘソンは夫アーサーに丁寧に挨拶してホテルに帰宅。デジャブ。
帰宅したノラはヘソンのことを「良い男性だけど欧米の目から見れば少し前時代的な典型的な”韓国の男”だ」と語る。
ノラの夫アーサーは「君がヘソンに盗られるんじゃないかと不安だったよ。僕には君たちのような韓国人同士の意思疎通もなければ24年に渡る時の重さもない」的なことを冗談まじりに語る。
ノラは「私が今更あなたを捨ててヘソンと逃避行を?そんな……ありえないわよ笑」と、夫アーサーを安心させる言葉を言う。
翌日はノラ&アーサー夫婦とヘソンが三人で街で過ごす。
色々回って、ヘソンが韓国へと帰国する時が近づき、ノラの夫アーサーは妻を信じて帰宅。ノラはヘソンをタクシー乗り場まで送る。2人は見つめ合う。
ノラとヘソンは互いを24年前から現在まで想いあっている。だが2人の状況が互いを結び付けなかった。2人が24年ぶりに過ごしたこの2日も、2人は言葉をなくして何度か50秒くらい無言で見つめ合ったりした。今もしている。
……自分がノラの夫アーサーだったら、自分の妻が百回不倫SEXするよりも、この”本気の”見つめ合い数回の方がキツいと思う(だってお互いが本気だから)。
ノラは勿論、ノラに「いかにも韓国って感じの男らしい男」と評されたヘソンも、馬鹿じゃないので結婚しているノラの夫アーサーを無視して不倫などはしない。その代わり2人は互いが結ばれない今世を冗談交じりに嘆いて笑う。
タクシーが来て2人は24年前と同じ構図で、いつものように互いに何も干渉しないまま離れ離れになる。

自分がヘソン君の年齢の時……を思い起こすと、こんなやっても仕方ないことはしなかったなとは思うが一応気持ちはわかる。
「ヘソン、お前は24歳の時に全てを捨ててノラを追って渡米しとけ!それがダメなら二度と恋心を見せず只の幼馴染の友人に徹しとけ!」……と、言うことは簡単だ。自分はヘソンじゃないし自分のマインドをコントロールできるようになったヘソンより一回り年上のおじ(中年男性)だからね。だがヘソンに寄り添って考えるなら、どうしてもノラと物理的に逢って自分の気持ちをぶつけないことには前に進めなかったのだろう。そして二人共常識や思いやりがあるのでアーサーをないがしろには出来ないので不倫などはせず別れる(とはいえ、どっちか片方がグッ!と来たら、もう片方はそれを容易に受け入れてたとは思う)。
ノラは帰宅する。そしてアーサーに縋り付いて声を出して号泣する。
そこでノラの気持ちが観てる僕の中に入ってきて凄く釣られて泣きたい感情が湧いた。

主人公2人と同じ様に、24歳または36歳くらいだったらもっとグッ!……と来てた気がする。残念ながら今の僕は40代後半の初老なのでそこまで来ず「不倫するなら不倫、綺麗な思い出を残しておきたいなら最初から会うな!逢ったとしても30秒間見つめ合ったりすな!それってSEXより良くないから」としか思えなかったのが残念だ。だけどそんな事は言いたくない。劇中のヘソンやノラは真摯に互いの運命に向き合ってるからね。……とは言いつつ「ヘソンは36歳にもなってあまりに無邪気すぎないか?」とか「奪い取る気持ちもないんだから幸せに暮らしてるノラ夫婦に近づいてノラと数十秒間見つめ合うという視線FUCKすなよ、というか最初からNYに会いにくるな!こんな時間あるなら地元の自分の彼女と上手くいくよう動け」……と言いたい気持ちもあったけど、まぁ映画だしよしとしましょう。
だけど、24年ぶりに再会して照れるノラの仕草、そしてラストのノラの号泣。これはさしもの(さすがの)僕もグッ!と心臓を掴まれました。

ノラや監督同様の女性?または24歳か36歳くらいの似た想いをした人なら全編良かったかもしれない。僕は、加齢により、良かったのは映像と2つのシーン(24年ぶりに逢って照れるノラ、三度目の別離をして夫に縋って号泣するラストのノラ)だけでしたね。
もっと一回り又は二周り若い時に観たかったな、とは思ったけど客観的に考えるとなかなか良かった気もしました。

まだ未見のアカデミー賞ノミネート作品は、『関心領域』(2023)、『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(2023)、『マエストロ:その音楽と愛と』(2023)、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)……残り4本なので全部見て順位を決めたい。残りの4本で一番観たいのは再来月公開の『関心領域』(2023)ね。

 

 

 

 

そんな感じでした
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Past Lives (2023) - IMDb
Past Lives | Rotten Tomatoes

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『オッペンハイマー』(2023)/映画自体はノーランの中でも1番おもろかったくらい傑作だったが、オッピーもノーランもダウニーJrも……人類全体の未来といった漠然としたものや身内への愛はありそうだが他国のことは選択肢にも入らないレベルで意識になさそう🍄


原題:Oppenheimer 監督&脚本&制作:クリストファー・ノーラン 製作:エマ・トーマス、チャールズ・ローヴェン 音楽:ルドウィグ・ゴランソン 撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ 編集:ジェニファー・レイム プロダクションデザイン:ルース・デ・ヨンク 原作:カイ・バード、マーティン・J・シャーウィン 『オッペンハイマー』(2005) 配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(日本はビターズ・エンド) 製作国:アメリカ 上映時間:180分 公開:2023年7月21日(日本は2024年3月29日)

 

 

クリストファー・ノーランの新作。
ノーランの映画は途中までかなり嫌いだったのだが『インセプション』(2010)くらいで「いや嫌いじゃないかも……」と思い始め『インターステラー』(2014)以降は普通に楽しみに観る監督になりました。

「原爆の父」ロバート・オッペンハイマー博士の伝記映画。
ロバート・オッペンハイマー - Wikipedia
先日の第96回アカデミー賞で13部門にノミネートされ。そのうち作品賞、監督賞、編集賞、撮影賞、作曲賞、主演男優賞、助演男優賞……など獲りまくり七冠達成した。

日本公開めちゃ遅れ
アメリカ本国での公開は去年の7月だったが日本での公開は遅れに遅れて、もうとっくにアメリカでは映像ソフトが発売されてかなり経つ今頃公開された。
内容は「決して原爆を肯定しているものではない」という情報は早くから聞こえていたが、単純に原爆だの日本軍だのを描いた映画を公開すると過去に、特定の社会的思想を持つ人達が、映画の内容は特に観ないまま抗議したり物理的な邪魔したりして上映中止運動するので、それを嫌った日本の大手映画配給会社は手をこまねき、結局、8ヶ月遅れでビターズ・エンドが公開する事になった(この遅れた理由は全部、推測だがアカデミー賞13部門ノミネートされて七冠を獲って大ヒットした、日本の映画ファンが大好きなノーランの新作が遅れに遅れた理由はそれしかない)。
ちなみに日本公開版ポスターも↓

こんな感じで「念には念を」ってことなのかアメリカ本国のポスター(左)には原爆だったり爆炎やキノコ雲などのどれかがポスターに必ずデザインされていたが、日本版のポスター(右)は日本の特定の社会的思想を持つ人を刺激しないようにかデザインから原爆は外されており原爆実験の時の鉄塔だけポスターにデザインされているのでオッペンハイマーのことを知らない人が見たら「鉄塔を発明したおじさんの映画かな」と思いそうなデザインになった。ポスター見ただけで抗議してくるような日本の特定の社会的思想を持つ人は「オッペンハイマー」の名前を知ってるので、そういう人を避けたいのであればデザインから原爆を除けただけでなく邦題も『おじさん』(2023)にすれば日本の特定の社会的思想を持つ人も「漠然とした素のおじさんの映画かな」と思わせることもできただろうに。どちらにしても間抜けな話だ。

バーベンハイマー
去年の夏、同時期に公開されて大ヒットした『バービー』(2023)と本作をコラージュしたミームバーベンハイマー〉が流行った。
原爆という深刻すぎる題材を扱った本作と、ジェンダー問題を扱った映画だがパット見はカラフルな服装の笑顔のバービーが活躍する『バービー』(2023)とを組み合わせちゃおう!というセンスはネットでありがちだし理解できる。
バーベンハイマー - Wikipedia
だが一般人がミームで遊んでるだけなら日本人たちも「こら~!はしゃぎすぎよ~」とΖガンダムのファみたいに腹を立てるだけで済んでたが『バービー』(2023)を配給するワーナーもX公式アカウントで無神経な感じで宣伝にバーベンハイマーを使ったことで「線越えたな?またぐなよオイ!」と本式に(本格的に)怒りだす日本人たちも増えて報道されたりして、遂にはワーナージャパンX公式アカウントまで怒りだし、アメリカの本家ワーナーX公式アカウントも「……なんか、ゴメンネ?」という非常にキョトンとした雰囲気で謝罪して幕を閉じた。
僕はというと「確かに不謹慎なことは間違いないし良い気はしないが、原爆を知らん人らの生み出したミームだしこんなもんだろ」という感じで特に何の感情も湧かなかった。
正直なところワーナーX公式アカやミームで遊んでた人たちも「え……?ミームに対して怒るの?電話やホームパーティを叱るママみたいに?……というか日本人が自分の意思を持って俺達に話しかけてくるとわー?笑」といった感じでアメリカ人同士が互いに顔を見合わせてクスクス笑ってる様が容易に想像できた。すぐ下のダウニーJrシカト事件とも繋がってくる話だが、不謹慎だからどうのこうのという以前の段階で、何かをする前に「これしたらあいつら怒るかも?」と、脳裏に浮かんで取捨選択する対象にすらなっていない感じするよね。

上流白人男性ダウニーJrが無意識にアジアン俳優キー・ホイ・クワンを超シカトした件
本作と第96回アカデミー賞といえば七冠達成という快挙以外にも助演男優賞を受賞したロバート・ダウニーJrのレイシスト疑惑も話題になった。前年受賞者でありダウニーJrの受賞を陽気で発表して呼び込んでくれたキー・ホイ・クワンが手渡すトロフィーを、まるでパーティ会場のウェイターからカクテルを受け取るかのように、ハグや握手はおろか目も合わせず受け取った。これが国内外で「えっ無視した?」と話題に。
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これ観たアジア系の人が「ああっ、これよく白人にやられがちな、透明人間みたいな扱いされるやつ!」と話題になった。個人的には、ダウニーJrがアジア人を嫌って「あっ汚らわしいアジア人だ。無視してやろう!」と故意にレイシスト的に無視する方がまだマシで、ついついキー・ホイ・クワンなど居ないかのように無意識に無視してしまった……というのがより哀しいものがある。
僕はダウニーJrはレイシストなどではなく、それ以前の問題……マジで「キー・ホイ・クワンが視えてなかった」んだと思った。いつものトニー・スターク的なカッコいいセレブ動作で動きつつスピーチを頭の中で反復していたのか、いつものクセが出た感じ。
ダウニーJrがキー・ホイ・クワンを無視する……と見せかけてキーを指さして「冗談だよ」と互いに笑いあってハグする場面を観たかったものだ(ダウニーJr的なムーブ)。
無視されたキー・ホイ・クワン本人は、子役スターだったがハリウッドでアジア人に役は無いので振り付けしたり保険証すら貰えないくらい困窮した状態になったりして数年後にアジア人ばかり主演した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 (2022)が作られて大ヒットして、オスカーもここ数年多様性がブームだったので「こいつらに賞あげようぜ」というノリで奇跡的に受賞できて「母さん、僕オスカー獲ったよ!」と号泣して皆の涙を誘ったし、今年の発表時も「受賞者は……はっロバ-ト・ダッ二ージュニアぁああ!」とハイテンションで迎え入れてくれたのに完全にシカトされる様、無視されたキー氏は場を盛り下げないように「行っちゃった!おめでとうダウニーJr!」といった感じで全力でニコニコし続けたりと居た堪れないものがあった。……同様にキーと夫婦役だったミシェール・ヨーもエマ・ストーンジェニファー・ローレンスに  無視されるかたちになったが後日ヨー様が「あれは2人が親友だから、私が引いただけだから誤解よ!」とフォローした。確かにそうだったんだろうけど白人は誰も言い訳すらせずキーとかヨーなどアジア人だけが全力で汗だくフォローする様が何かを象徴してるよね。そんでダウニーJrや他の白人俳優たちも皆レイシストとは思わないし熱心で良い人だと思うのよ。ただ、上記のバーベンハイマーの話の続きになるけど本当にアジア人とかが気に掛ける対象じゃなかっただけ、それが土壇場で出てしまった感じだろう。
ダウニーJrのファンやアカデミー賞を紹介する仕事をしている映画評論家やタレントの人らだけが「ダウニーJrはオスカー獲って緊張してただけだよ!」などと擁護していた。あと「賞が終わった後でダウニーJrはキーと握手したり記念写真撮ってるよ!」とか頑張っていたが「そりゃ握手したり写真撮ったりするだろ親の仇でもないんだから……それが普通だしそれも仕事なんだから……」としか思えなかった。あと「ダウニーJrはオスカー獲って緊張してたんだ!」という擁護もあったが「ダウニーJrがオスカー受賞のステージなんかで緊張するわけないだろ!」と思った。ファンの方がダウニーJrを低く見積もっててファンじゃない僕の方が彼を高く見積もってる状況が可笑しかった。
だが本作のダウニーJrが演じたストローズは嫌な奴だし、アイアンマンことトニー・スタークも身内や世界のために命をかけるヒーローだが割とマジでこういう事やりそうなキャラなので僕の中ではイメージダウンにはならなかった(『アイアンマン3』(2013)でも自分のファンの待ち合わせを無視してヴィラン化させてたし)。
無視事件は置いといても助演男優賞『バービー』(2023)でケンを演じたライアン・ゴズリングにあげて欲しかった気分もある(※だがこの感想ページの最後で、やはりダウニーJrで良かったという結論になった)。
『バービー』(2023)は本作よりも大ヒットしたが、どういうわけか今年のオスカーではうっすらコケにされる役割になって助演ゴズリングはノミネートされたが女性陣はノミネートすらされなかった(今年のオスカーは「女やマイノリティに賞あげるブームに異論を唱えるのをやめるのをそろそろやめようぜ!」という雰囲気を感じた)。
今年のアカデミー賞ものすごく色んな事がいっぱいあり映画より面白かったので幾らでも書けたので記事にすればよかった……3日以内に書かないと遅いので書く機を逃した。
割と関係ない話を本編の感想より長くしてしまったが、これも本編の内容に繋がってくる感想のうちなので宜しいですね?
オッペンハイマー本人について特別に詳しいわけでもないので、ただの感想。

ネタバレあり

 

 

 

 

理論物理学J・ロバート・オッペンハイマー(演:キリアン・マーフィー)の半生。
そしてマンハッタン計画原子力爆弾を開発しトリニティ実験するくだり。
そして戦後、赤狩りの中、ソ連スパイ疑惑を受けたオッペンハイマーが受けた聴聞
その数年後、オッペンハイマーと対立していた野心家の凡人ルイス・ストローズ(演:ロバート・ダウニーJr)の公聴会
大きく分けて、これらが時系列シャッフルで並行して描かれる。

 

この映画自体も、これの時系列シャッフルも全て「オッペンハイマーはどういう人物なのか?」という一点を描いてるだけなので特に難しいことはない、知識にない知らない話が出ることもあるだろうが、とにかくこれは原爆や第二次世界大戦よりも「オッペンハイマーという男」を描いてるだけなので、それに気付けば困ることはない。『エヴァンゲリオン』が「シンジ君の話、それだけ」というポイントを抑えてれば他の謎とか設定は全て飾りなので本筋を追うのに全く難解でもなんでもないのとよく似ている。

 

一番古い時間軸はオッペンハイマーが大学生の時、教授の机の上に置いてあるリンゴに青酸カリを注射する。翌朝、目が覚めたオッペンハイマーは「……いや、やべえええ!やべー事したああ!」と焦って大学に行ってリンゴを捨てる。その教授を憎んでたか?と思ったが、後に「いや、むしろ教授のことは好きだった」とか言い出すし、よくわからない。初っ端からオッペンハイマーのヤバいところを描いてくる。彼の〈死神〉的な側面を強調したかったのか?映画の序盤、オッピーとストローズの聴聞会やオッピーの反省がバラバラで描かれるので、まだオッピーのことを掴みかねてる時だったので何で教授のリンゴに毒をいれたのかピンとこなかった(また、アメリカ映画でリンゴといえば知恵の実がどうのこうの言うのはやめとこう。なんか恥ずかしくなってリンゴのように顔真っ赤になりたくないから)。

 

オッピー役のキリアン・マーフィ『インターステラー』(2014)主人公のマシュー・マコノヒーに顔がそっくりだった。主演と映画監督って顔がだんだん似てくるんだけど、ノーランもこの系統のユダヤ人っぽい白人俳優をよく出す印象あるね。他にもリーアム・ニーソンも似てる。なんかわかる?目の部分が少し窪んでる感じの顔の白人。

 

その後、本人が凄く鬱っぽいのに精神科医やってるジーン・タトロック(演:フローレンス・ピュー)と出会いから別れまでを数分で描いて、次に後に彼の妻キャサリンオッペンハイマー(演:エミリー・ブラント)となる学者兼人妻キティと出会って数分でキティが妊娠して離婚して結婚出産してキッチンドランカーになってすぐ治ったりする。この辺のスピード感があまりに早すぎて笑ってしまった。

ジー役のピュー氏はかなりモロなSEXシーンが何度かある、特に聴聞会で結婚した後のオッペンハイマージーンと会ってたって話してる時に正妻キティが、聴聞会で質問を受けているオッペンハイマーに全裸のジーンが跨ってFCKしてる幻視はかなり面白い(本作はこういう感じで漫画みたいに実にわかりやすい幻覚みたいなシーンが多くて楽しい)。またジーンは「花束が嫌い」というキャラでオッペンハイマーが花束を渡しても毎回2秒後にはゴミ箱に投げ捨ててしまう!だけど速攻で捨てるにも関わらずオッペンハイマーが花束を渡す時に嫌みを言いつつ嬉しそうなオーラを発散するので本当は嫌じゃないんだろう。「精神が複雑ゆえにオッペンハイマーの好意を素直に受けられないが内心は嬉しがっている」という性格を長ーい映画の中の序盤で数分で見せるには、この「花束即捨て、でも嬉しそう?」のアイデアはめちゃくちゃ冴えてるなと思った。
ただジーン役のピュー氏は生命力あふれすぎてて、とても自死する人物には見えなかったが……。

正妻キティは、オッピーと時に喧嘩しつつも最後までオッペンハイマーを支える。本物がそういう人物なのかどうかは知らないが殆ど笑ってる時がなく終始、曇り空のような不機嫌そうな顔をしている……というかこのキャラがエミリー・ブラント史上一番キレイだと思った。ことある毎にオッペンハイマーに「アンタ、なんで闘わないの!」と鼓舞したり、聴聞会をキティも受けさせられた時の、敵の意地悪弁護士みたいな奴とやり合う様がめっちゃカッコよかった。「その”言い方”が気に入らない。”共産主義との関係”とか訊いてくるけど共産主義との”関係”なんて初めからないんだからそんな事訊かれても困るし、だからそもそもその”訊き方”が気に入らないって話よ」みたいな台詞(うろ覚え)が凄いカッコよかった。トーンポリシング的な意味での”言い方”批判ではなく「お前の”言い方”での話に合わせると私が不利になるから、お前の”言い方”で話はしない!笑」という意味での”言い方”批判。僕もうかなり中年なんで映画の台詞を真似したくはあまりならなくなったが、これは久々に厨二病的な心が反応して真似したくなった。キティは「水爆の父」をめっちゃ嫌ってて終盤(将来の映像)顔を合わせた時に怒ったブルドッグみたいな表情で睨むところも最高だった。
というか、このオッピーの妻キティ、好きなタイプかも……。
だけどアカデミー賞の時にエミリー・ブラントは「このドレス、イケてない?原爆みたいで!」とか言ってた(この映画こんな話ばっかり)。

 

あと意外なキャスティングだと物理学者役してたジョシュ・ハートネット久しぶりに観た。最初は90年代に期待のイケメンとして出てきたが何故か長年B級映画みたいなのにしか出ない謎の俳優になってた(理由は知らん、何か問題を起こしたのかな?)久々に大作出てるの観た。
あと要所要所で出てくるアルバート・アインシュタイン(演:トム・コンティ)役、誰かと思ったら『戦場のメリークリスマス』(1983)のローレンス役の人だった。アインシュタインはさすがに浮世離れした妖精みたいな神秘的な人物という雰囲気で撮られていた気がする(それとも誰もが知ってるアインシュタインの格好を見たら、誰もが「特別な気分」になってしまうだけかも)。
あとはノーラン作品の常連とかノーランがキャスティングしそうな印象の人たちが多く出てくる。かなりメンツが豪華。

 

いよいよ〈マンハッタン計画〉に任命されたオッペンハイマー。この計画でのオッピーの相棒とも言えるレズリー・グローヴス准将(演:マット・デイモン)。2人は『七人の侍』(1954)よろしくマンハッタン計画メンバーを集め、オークリッジに計画のための工場や町を作り、皆で家族ごと住み、研究の日々……そしてトリニティ実験……。
マンハッタン計画 - Wikipedia
「僕らの国の市民の命が大量に奪われた大量破壊兵器”を開発してるシーン」というところに目を瞑れば「仲間を集めて→試行錯誤→大勝負に出て成功」……という映画の中で最も活気があって素直に面白い盛り上がるくだりだった。

 

そして御存知の通り、実際にヒロシマナガサキに投下され、終戦……。
ヒロシマナガサキに投下された惨状は画面には映らない。オッペンハイマーはただ投下の事実をラジオやレポートで聞くだけ。
最初は計画の成功や戦争の勝利に喜んでいたオッピーだったが、原爆の威力は作ったオッペンハイマー自身が一番良くわかっているためか徐々に罪悪感のような気持ちが酸のようにオッペンハイマーを侵す。
炭になった死体や、爆風で顔が剥がれていく女性の幻覚を見たりする。
その幻覚の死体がどれも綺麗なのは、オッペンハイマーヒロシマナガサキの惨状を直視しておらず想像してるだけだからなのだろう。スライドでヒロシマの惨状を見せられる時もオッピーは目を逸らす。誰しも、自分がした結果で何10万人もの何の罪もない人達が苦しんで死んだ様を具体的に直視したくはないだろう。
原爆投下された広島や長崎の惨状は劇中に出てこない。
ここに批判があったり、逆に「いや、これはオッペンハイマー主観で彼を描く映画であってヒロシマとかは主題じゃないんだよ」「原爆落とされた日本の描写はないがオッペンハイマーは後半原爆作った事をめちゃくちゃ気にしてる」という擁護もある。割とどれも一理あるし、どれも抜けている。
アメリカ人は原爆を喰らったらどうなるか知らない(というか興味がない)。ハリウッド映画に原爆出てくると大抵、カッと光って人がカッコよく骨になる。確かに爆心地は綺麗に蒸発するだろうがむしろ一瞬で死なない距離で被爆した人がどうなるか知らない。だから日本人としては被爆したオバサンとか少女が身体中にガラスが刺さって皮膚が垂れ下がりゾンビみたいに歩いて川に入って水飲んで苦しんで絶命するところを欧米人に見せたい気持ちもある。
僕は広島出身なので小学生の時に毎年、夏休みに集められ女の子がドロドロに溶けて死ぬ『はだしのゲン』とか『かわいそうな象』などの鬱映画を毎年見せられてめちゃくちゃトラウマだったせいか大人になるまで戦争のことは嫌だから思考停止するようになった(これはこれで逆効果な気もする)。
だけど擁護派が言うようにこれは原爆の悲惨さを伝える映画じゃなくてオッペンハイマーの映画であってヒロシマナガサキの映画じゃないんだよね。そんな圧倒的にグロい描写入れたらオッペンハイマーとかどうでもよくなっちゃうし映画の主題から外れてしまう、という意見もわかる。それが見せたければ見せたい人たちが大勢が見たがる原爆の映画作って大勢が観る状況にもっていく必要があるってことか。
というか、色々と批判も擁護もどっちも考えてみたけど、それ以前に直感的に「そもそもノーランはヒロシマナガサキ被爆者とか割とマジで興味ないんだろう」と思った。

 

終戦後、英雄となったオッペンハイマーだったがストローズに嵌められてスパイ容疑をかけられ聴聞会で丸裸にされる。実際に全裸のオッペンハイマーが椅子に座る幻覚シーンが視えたりして、この聴聞会シーンはどれも面白い。
これは裁判などではなくオッピーの敗北は最初から決まっているリンチ会みたいなもの。密室で一方的に色んな秘密を妻の前で暴かれ私刑で抹殺される。そしてオッピーを恨むストローズは「奴には敗北さえ与えん!」というクソデカ感情でもってオッピーを潰す。裁判などにかけると殉教者になってしまう、だから誰も見てない密室でリンチして「曖昧な敗北」を与える。……なんか腐女子が好きそうなキャラだなストローズ。ストxオピBLとか描かれそうだ。
オッペンハイマーは自分の名誉を護るためか?負けることが決まってる聴聞会に出続け、自分を売ってしまうかつての仲間とも握手したりする……この辺は、故吾妻ひでお先生が失踪したりアル中になった時に「ホームレスになったり肉体労働で歳下に使われても平気だったな、僕は漫画が描けるし確固たるプライドがあったから」と言ってたのを思い出しただけ、オッピーには別の理由があったのかも?たとえば原爆を作り出した罪悪感から、責め苦を敢えて浴びたがっている……とかそういうキリスト教的な考えがあったのかもしれん。実のところそのへんはよくわからなかった。
で、オッペンハイマーを逆恨みして嵌めるストローズは、あまりにしょうもない切っ掛けだったし最初から最後まで何してるかよくわからんおじだったし何か勝手に滅んでいくし終始「何だったんだろうあいつ……」という感じが拭えないキャラだった。
割とストローズは見たまんま、只のしょうもない人物なんだろう。
アインシュタインも言ってたけど、オッペンハイマーはストローズに嵌められなくてもアメリカ自体によって落とされ、落とされた後に上げられて遺恨を消して一件落着……という全く同じ結果になってただろうし、そうなるとますますストローズは居ても居なくても関係ない男に思える。自身が疑心暗鬼になってるのと同様、歯牙にもかけられてない感じが凄い。
ストローズにあるのは前述した分不相応な野望とオッピーへのクソデカ感情だけだ。
だからこの映画、「バットマンとジョーカー」みたいな感じの「オッペンハイマーとストローズ」って映画に一見見えるが、そうではなくて最初に言ったように本作は最初から最後まで「オッペンハイマーという男についての映画(その成果としての原爆)」であって、ストローズなんてものはオッペンハイマーの行動によって生まれた只の反作用……オッピーの影の擬人化にすぎないんだろう。
そして「オッピーとアインシュタイン最初の出会い(ついでにストローズ)」を寄りで再び回想し、2人が何を言ってたのかオッピーが何を思ったかで映画は終わる。
ストローズは2人が俺のこと無視する話してたに違いない!と小学生みたいな疑心暗鬼妄想してたが、天才2人は凡人ストローズなんかの話は全くしておらず、ストローズとは違って本当に大事な、未来の世界について話していた。2人が個人的な感情を捨てた「本当に大事な話」をしている背後に、ずっと自分のことしか考えていない卑小なストローズが遠くに突っ立ってるのを同じフレームに入れてるのも可笑しかった。まぁストローズは我々全員……しょうもない事ばかり考えて抜きん出た人の脚を引っ張るだけの「凡人」の集合体なんだろうな。
そう考えるとストローズはやっぱ重要な役だったね。
……というかこのページ書き始めた時はダウニーJrの無視事件や、劇中のしょうもない人格のせいでストローズに興味なかったが、この行まで書くとストローズの良さがどんどん自分の中で膨れ上がってきた!二回目見る時はストローズ中心に観よう。
やっぱり助演男優賞もゴズリングよりダウニーJrで良かった。
原爆による大気の連鎖反応とオッピーのドゥームズデイ・クロック的な懸念をシンクロさせるカッコいい感じで終わる。

 

一言で言うとかなり面白かった。キャストも撮影も素晴らしかったし。
ノーラン作品の中では『インターステラー』(2014)の次か……又は本作が一番良かったかも?
ただ自分が広島出身の日本人なせいか、ノーランの日本の被爆者への興味の無さが気になるのでアメリカ人と同じ勢いで称賛する気持ちにもなれないところがある。
ただ、この興味のなさって別にノーランに悪気は一切ないと思う。劇中で描いたように原爆誕生によって世界は「原爆がある世界」へと永遠に変わってしまった事を懸念しているし世界平和を望んでるだろうし普通に家族や友達に対しても善人だろうと思う。
ただ、本当に曇りなき感じでガチで興味ない気がする。
「原爆を投下した先のヒロシマナガサキの人達」という漠然とした集合体に対しての情はあると思う。だが「身体中にガラスが刺さって皮膚が溶けて水を飲んで苦しみ抜いて死んだ広島の少女」といった感じの具体的な被爆者への興味はゼロ……そういう塩梅ではないだろうか。意味わかる?要は「軍師目線」って事だよね。
徹頭徹尾、才能あるノーランが天才オッペンハイマーに感情移入して作った凄く面白い映画ってことなんだよね。
そんなノーラン=オッピー、「無視しようとしたわけじゃなく、ガチで視界に入ってなくてキー・ホイ・クワンを無視したダウニーJr」、「バーベンハイマーのミームを楽しむが日本人のことや原爆には興味ないアメリカ人」とか、くどくど書いてきたことが全部繋がってるように僕は感じられましたね。
ただ何度も書いたが「私達は、差別されてる犠牲者だ!」とか言いたいのではなく「そもそも、そう言って聞き入れられる段階にすら言ってないから、まずそれを自覚して未来のことを考えるべき」そんな事を思いましたね。
薄々感じてはいたが、あまり国外に出ないから気づかないふりしてた「欧米の白人が他国……特にアジア人に最も興味ない」って事実を考えさせられるよね。
直接関係はないけどウクライナとかパレスチナの問題とかも現在進行系だしね。
劇中のストローズの事を蔑んで書きましたが、凡人ストローズにすらなれてないという自覚を持って、ちゃんと聞き取れるような発信していくなど一歩一歩の前進が大事なんだと思った。
映画は総合的に確かに良かった、傑作と言ってもいい。ただ白人と同じようには盛り上がれない。そんな感じですかね。

 

 

 

 

そんな感じでした

『インターステラー』(2014)/今まで、この監督あまり好きじゃなかったがこれは文句なく面白かった🌌 - gock221B
『TENET テネット』(2020)/今どき珍しい純粋悪を倒す正義の味方という勧善懲悪アクション……そこに「逆行」をひとつまみ……🕛 - gock221B

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Oppenheimer (2023) - IMDb
Oppenheimer | Rotten Tomatoes

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『アメリカン・フィクション』(2023)/”白人が喜びそうな黒人っぽい小説”を望まれて仕方なく大衆が喜びそうな本を書いたら大ヒットしてしまった黒人作家のコメディ。本題と本題以外の人間ドラマが相互作用しあってて凄く楽しかった🧑🏾‍🦲


原題:American Fiction 監督&脚本&製作:コード・ジェファーソン 原作:パーシバル・エベレットの小説 『Erasure』(2001) 製作国:アメリカ 上映時間:118分 公開日:2023年12月15日(日本は2024年2月27日)

 

 

これ、最初に結論をいうとかなり面白かったです。
この映画のことは知らなかったが第96回アカデミー賞の賞レースに参加してたし「黒人作家が、特に書きたくないけど『白人が望む黒人っぽい小説』を戯れで書いたら大ヒットしてしまい悩む」という、一行のあらすじだけで既に多くの映画より面白いので観た。

本国アメリカでは話題作だが日本で劇場公開はなく、知らない間にアマプラで配信されていた。
アメリカではこんなに評価されてるのに劇場公開ないのか」……と思うが、(日本では)有名ではない俳優しか出ていないし、黒人作家のおじさんの人種問題のコメディというのでは客が入らないと判断されたのかもしれない。

第96回アカデミー賞で、作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、作曲賞など数多くノミネートされ、脚色賞を受賞した。
監督はこれが初監督作。ブログに感想書いてないけど死後の世界を描いて面白かったドラマ『グッド・プレイス』(2016-2020)とか、黒人ヒーローのフーデッド・ジャスティスのオリジンやアメリカ史上最悪の虐殺事件だが歴史から長年消されていたタルサ暴動のくだりが凄かったドラマ版『ウォッチメン』(2019)などの脚本書いてた人。人種問題を面白く書く人という印象。
そんなコード監督がパーシバル・エベレットの小説 『Erasure』(2001)を読んで興味を持って映画化したのがこれ。

ネタバレあり

 

 

 

 

セロニアス・”モンク”・エリソン(演:ジェフリー・ライト)はもう何年も出版していない売れない作家。普段は大学教授として教鞭をとっており文学賞の審査員を務めたりもしておりちょっとした権威でもある。
その名前は、やはりジャズピアニストを想起させるみたいで”モンク”と呼ばれている。僕もセロニアス・モンクのCD持ってたわ。あと故ファラオ・サンダースも20年くらい前にブルーノートに演奏聴きにいったことある(握手したファラオの手は温かかった。あとメニューがめっちゃ高いのでビール飲むのが精一杯だった)。だがジャズは全く知らんのでこの2人のCDしか持ってなかったけど。
Thelonious Monk - Live At Berliner Jazztage (1969) - YouTube
モンクは出版社に「もっと売れそうな黒人っぽい話を書いてくれ」と言われる。
どうもモンクは神話を再解釈した感じの高尚なものを書いていたらしい。だから全然黒人っぽくない。日本のエンターテイメント作品がアメリカでウケるには「侍、忍者、ヤクザ、芸者、寿司、アニメ、任天堂、怪獣、原宿ファッション、東京の町並み、HENTAI」……そういうものじゃないとウケないじゃない。NYあるあるとかスタバあるあるなどの作品を描いたとしたら「いや、それ俺らできるから俺等が出来ない日本っぽいものを出してよ」となるだろう。こう書くとアメリカ白人が「売りやすいように黒人っぽいもの書いてくれ」というのもわからないでもないよね。しかし言われた黒人作家からしたら”黒人”という人種でしか見られてないという非人間的な扱いされてると感じ「自分は◯◯という作家、一人の人間だ!」と憤る気持ちもよく分かる。
モンクは久しぶりに帰省する。その途中で同じく黒人の女性作家シンタラ(演:イッサ・レイ)を見かける。シンタラは皆が読みたがっているような”黒人のリアル”を本に書いて人気を博していた。
そこでセロニアスはヤケクソになり如何にも白人が喜びそうな……暴力、発砲、貧困、ろくでもない父親、ドラッグ……等にまみれた小説を書き上げ出版社に提出。それは書いたモンク自身が「こんなものクソだ」と思ってるようなものだった。半ば冗談や嫌がらせのつもりで書いたのだが担当編集者は「ええやん!これ」と出版することを決めてしまう。
そこで絶対に出版してほしくないモンクは本のタイトルに「FUCK」と名付け、出版社の人たちは一瞬固まり最初は難色を示していた、モンクは「しめしめこれで出版はされないぞ」と思っていたが「……いや、その方が”リアル”かもしれない!タイトルは『FUCK』で行きましょう!」と出版が決まってしまう。
そんなつもりじゃなかったモンクは頭は抱える。そんな低俗な本を大学教授セロニアスとして出すわけにはいかないので「刑務所から出て執行猶予中に逃亡した黒人犯罪者」といった荒っぽい設定と偽名を持った「架空の黒人作家」を『FUCK』著者とした。


モンクが『FUCK』出版を断りきれないのは理由がある。
帰省して看護師している姉のリサ(演:トレーシー・エリス・ロス)に久しぶりに会うが、姉は持病かなんかで突然急死してしまう。そして高齢の母アグネス(演:レスリー・アガムズ)が軽い認知症だとわかる。夜間に海を徘徊したりして危険なのでお手伝いさんだけでは世話が無理なので介護施設に入れるしかない。しかも、なるべく良い所に……(ちなみにこのママ役はどっかで見たことあるなと思ったら『デッドプール』シリーズの、デップーの友達の盲目老婆ブラインド・アル役の人だった)。
だから大金がいるのだ。『FUCK』は最初から映画化も約束されており出版するだけで莫大な金が貰えるのだ。
『FUCK』出版、大ヒット、映画化決定……などと、モンクの思惑とは裏腹に「匿名低俗作家モンク」は「本当に書きたいものを書くモンク」とは裏腹に、面白いようにサクセスしていく。
この「モンクが乗り気ではないが要請によって書いた、白人が喜びそうな黒人っぽい本」という本作の核となるアイデアは本当にキャッチーなので、その事ばかり書いてるが本作を見ると本編の半分か、それ以上はモンクの私生活描写が描かれている。
モンクが帰省して会ってたら急死してしまった姉、認知症の傾向が見られる母、死んだ厳格な父は天才医師だったが秘密があり自死したらしいこと、ゲイの弟クリフ(演:スターリング・K・ブラウン)は陽気だが世間の目を気にして行けない場が多い、長年世話してくれてた家政婦ロレイン(演:マイラ・ルクレシア・テイラー)は町の優しそうな男性と結婚する。そしてモンク自身は実家の隣に住む弁護士の女性コラライン(演:エリカ・アレクサンダー)と知り合い付き合い始める。
てっきりモンクが偽名で出版した本を中心にしたコメディかと思ってたが「本:モンクの私生活」は割と5:5くらいで私生活の描写が多い。私生活6くらいあるかも。
で、これがめちゃくちゃ面白い。
こうやって並べると、何だかつまらない出来事が多そうに思えるが、凄く軽快だし台詞も面白く(姉の遺書も楽しかった)、楽しい場面は素直に楽しいし悲しい出来事もベタベタ描かずサラッと描いててとてもいい。僕メソメソした描写マジで嫌い、実人生でもウジウジした愚痴とか聞きたくないし(それを自分に聞かせるなら1万円ほしい)、だから邦画とか日本のドラマやアニメにも湿っぽいものが多いから嫌いなもの多いし(湿っぽくなければ好きなものも多い)。
とにかく、モンクの本についてのドタバタが楽しいのは勿論だが、モンクの人間ドラマが思いのほか面白かったのが嬉しい誤算でした。

そこで浮かび上がってくるのは、モンクの人生は楽しいことも悲しいことも人に言えない秘密や一言で言い表せないことなど実に様々という事。それが人間なので当たり前ですけどね。
ここで「誰がどんな物語を書くのを望まれてるか?」という本題に戻るが、そうなると「こんな色んな複雑さを持つモンクが書いたものよりも、モンクが思いつきで他人になったつもりで書き飛ばしたものの方が好まれる」という出版界、映画界、そしてそれぞれの読者や観客って一体なんなのか?というか全員なにもかんがえていないのではないか?という感じであらゆる問題を浮き彫りにしていく。

皮肉なことにモンクは本の賞の審査員も務めており、自分が書いた『FUCK』の審査もせざるを得なくなる。五人の審査員の中には、モンクが『FUCK』をヤケクソで書く切っ掛けとなった、大勢が求められる苛烈な黒人小説を書いて売れた黒人女性の作家シントラも居た。シントラは『FUCK』作者がモンクだとは当然知らないが「なんか、この本、低俗だしっぽくない?」と言う。
モンクは、自分と同じ立場に立たされ尚且つモンクがでっちあげた本だと看過したシントラに興味を抱いて色々質問する。
モンクは基本的には賢くて優しい男性だが、根本に自分より賢くない(とモンクが思ってる)他人を見下すところがある。ここまでも『FUCK』について悩んでて恋人コララインに「君レベルの人にはわからないよ!」みたいな事を言って怒らせたり、ゲイの弟と今まであまり仲良くなかったのもそれで、根本のところにクソ野郎としてのモンクも要て、そこが面白い。ママは夫が浮気してたことも知っていてモンクに似ているという「あんたは天才よ、パパもそうだったの。天才は孤独なのよ。わかってくれる人が居ないから……」とモンク寄りの事を言ってくれる。言ってる内容はそうだけどモンクの短所は只のクソ野郎要素なだけの気がするが……。
そういえば急死してしまったお姉ちゃんも、モンクが人の間違いを指摘したりする時に疑問形で「それしたら良くなるの?」みたいに、わざと訊き返す事によって相手の過ちを相手自身に悟らせようとする喋り方するのだが、そのやり口に対して「あんたのそういう他人を見下した態度マジで嫌いだわ。素直に『良くないと思う』って言えばいいやろ」と注意される。僕も、このわかってるくせに知らない振りして訊いて相手に悟らせる喋り方嫌いなのでお姉ちゃんに強く共感した。
シントラに対しても「君のヒットした本、あんなもん読んでないけどどうせ(僕の『FUCK』同様に)でっちあげだろ」と言って、シントラに「ちょっと待って?読んでないのに私の本を腐すわけ?」と至極当然の言い返しされたりして面白い。
そして『FUCK』はクソだとわかってるモンクとシントラは『FUCK』受賞に反対するが、残りの三人の白人審査員は「何言ってるんだ『FUCK』は最高だよ!」と多数決で負け、受賞してしまう。
喧嘩したままの恋人コララインにメールで謝罪するモンク。
そしてモンクは審査員として『FUCK』の授賞式に行く、恋人コララインも来る……そして……というところから時間が少し飛ぶ。

ネタバレ。この映画のラストでは映画化される『FUCK』の脚本を、監督によって「黒人っぽい小説書いて」と言われた『FUCK』執筆時と全く同じような事を強いられる。
このラストは多分、コップを揺さぶるように「誰がどんなものを創作するのを求められているか」といった問題を再び議題に上げる。
書きたくもない『FUCK』を書かされたモンクは、それを脚本にする際に更に「黒人っぽい結末」を書かされる。
ホラー映画のラストで、頑張ってバケモノを倒したのにラストで更に新しいバケモノが出てきて終わるようなオチにして、監督は「映画の脚本もこうだよ」と言いたいのだろう。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)のラストで「キスしてないけど編集者が望むから著作権をくれるならキスした事にしてやる」みたいなことを描いてた場面に似てるね。
集中してみてたので時間を飛ばさず普通に見せてほしかった気もするが、それって自分も劇中の”愚かな読者”と同じって事だよね。それを観てる人に味合わせるためのこの結末だったって事かな。

冒頭、モンクと喧嘩する大学教授役で『マルホランド・ドライブ』(2001)でダイナーの裏に住む恐ろしい顔の女の顔を見て即死する男の役、同じくデヴィッド・リンチ『ツイン・ピークス The Return』(2017)で何か悪い事してた男ダンカン役のアイツだ!と気付いた。調べたら凄い数の脇役してる人みたい。

 

 

 

 

そんな感じでした

🧑🏾‍🦲👨🏾‍🦱👩🏾👩🏾‍🦱👩🏾🧑🏾‍🦲👨🏾‍🦱👩🏾👩🏾‍🦱👩🏾🧑🏾‍🦲👨🏾‍🦱👩🏾👩🏾‍🦱👩🏾🧑🏾‍🦲👨🏾‍🦱👩🏾👩🏾‍🦱👩🏾🧑🏾‍🦲👨🏾‍🦱👩🏾👩🏾‍🦱👩🏾🧑🏾‍🦲

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American Fiction (2023) - IMDb
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『PERFECT DAYS』(2023)/リアルな『ウィリーズワンダーランド』的な映画。全編小さな幸福を追求する孤立初老主人公を肯定したいが実際には緩やかな自傷行為🚻


監督&脚本:ヴィム・ヴェンダース 製作総指揮&主演:役所広司 脚本:高崎卓馬 撮影:フランツ・ラスティグ 美術:桑島十和子 スタイリング:伊賀大介 製作国:日本/ドイツ 上映時間:124分 公開日:2023年12月22日(ドイツは2023年12月21日)

 

 

公開日は昨年末だったみたいだけど近所の劇場では延々と上映し続けてるから観に行った。
ヴィム・ヴェンダース監督脚本の日本とドイツの合作。
ヴェンダースの映画ってあんまり観ないのだが検索してみたが最後に観たのってサラ・ポーリーとかティム・ロスが出てるという理由で観た『アメリカ、家族のいる風景』(2005)以来観てないから19年ぶりに観たことになるのか。
2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、役所が日本人俳優としては「誰も知らない」柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を撮ったり第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされたりもした。

「東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを世界的な建築家やクリエイターが改修するTHE TOKYO TOILET プロジェクト」とやらに賛同したヴェンダースが東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いたらしい。これが原因で一部で叩かれたりもしていた。

ネタバレあり

 

 

 

 

東京渋谷トイレ清掃員として働く独身中年男性平山(演:役所広司)。
毎朝持って帰った植物に水をやること、家の前の自販機でコーヒーを買ってトイレ清掃に出発すること、仕事が終わったら銭湯に行くこと、洗濯はコインランドリーでしている、カセットテープの音楽を聴くこと、古本の文庫本を読むこと、小さなフィルムカメラで木々の写真を撮って現像して保存すること、いつも決まった地下の居酒屋やスナックで食事すること……淡々とした同じ毎日を繰り返しているが彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちていた――

そんな映画。
もともと東京は好きだし、それがヴェンダースっぽい美しい映像で撮られている。
そして全編を通して、平山は上記のトイレ掃除とお楽しみルーティンを繰り返す。おじさんが日々のルーティンをこなす映像というのはYOUTUBEでもたまにあるが妙に中毒性ある。それをやってるのが役所広司だし撮ってるのはヴェンダースなので凄く心地良い映像で観ていて気持ちいい。
トイレ掃除も、劇中出てくるのは「THE TOKYO TOILET プロジェクト」とやらの凄く綺麗でハイテクなトイレばかりなので観ていて不快ではない。うんちとか付いてないからね(僕はどんなにリアリティのためでも映画の劇中にうんちとかゲロとかは出してほしくないタイプなので助かった)。
映画を観てたら「帰宅したら自部屋を掃除してお茶入れて読書したい!」という欲求が強烈に生まれてくる。
平山が寝る度に、その日あった事を夢で見てるんだけど、本当に平山が夢見てるシーンの回数が多すぎて面白かった。夢見るシーン10回くらいなかった?催眠にかかりそうだったわ。

 

 

役所広司演じる平山は極端に寡黙な男。だもんで台詞は極端に少ない(たまに口を開くと、あまりに発声してないせいか寝起きみたいな声になってるところがさすが役所広司と思った)。
平山には普段から会う恋人、家族、友人、ペット等は特にいない。……しいて言うなら5、6年通っているスナックのママ(演:石川さゆり)と少し良い雰囲気というくらいか。互いに淡い好意は抱いているようだが特に関係を進展させようとはしていない。そういったものをほぼ放棄しているのが平山。
あとは仕事の頼りない後輩タカシ(演:柄本時生)や行きつけの店の人達や、よく顔を合わすが会話をするわけではない舞踏ホームレス(演:田中泯)や、いつも平山が座るベンチの隣のベンチで弁当食べてるOL(演:長井短)、トイレに◯✕ゲームの紙を差し込んで平山と対局している誰だかわからない者……など「街のいつメン」くらい。
平山の年齢もよくわからない。演じている役所広司は検索したところ何と60代後半だった。だが役所広司はスタイルがよく髪ドフサのイケメンであるためハッキリ言って役所広司の容姿を見ただけでは平山の年齢がわからない。仮に60代としておこう。
映画は中盤……あたり?まで平山は労働や毎日繰り返してる趣味を楽しんでいるだけで人間ドラマは起きない。というか平山は無口なので台詞もほぼない。

 

 

柄本時生演じるやる気のないタカシが、狙っている金髪女子アヤちゃん(演:アオイヤマダ)を巡って平山の領域に(ほんの少しだけ)侵入してくるだけだ。
タカシはトイレ清掃の仕事に対してやる気がなく遅刻したりサボり気味だし金借りてきたりするので平山は少し白い目で見ている。しかしタカシは思いのほか温かみのあるところがありダウン症の少年でらちゃん(演:吉田葵)に自分の耳を自由に触らせている。これを見た平山は初めて笑顔を見せるので観てるこちらも嬉しくなった。
だがタカシはこの仕事をしたくないので映画後半で飛んでしまう。一人で夜までシフトしなきゃならなくなった平山は事務所に電話して声を荒げるし、でらちゃんは寂しそうな顔を見せるしで少し胸が傷んだ。だけど青年ってやつはバイトを飛ぶものだ。平山に電話一本入れただけマシと言えなくもない。タカシは若さゆえ自我が固まっておらず、ダウン症の子に優しくしたり良いことするのも、逆に平山にタカったり仕事飛んだりするのも、良くも悪くも純粋で空っぽゆえだろう。
また平山のカセットを無断で持ち出したアヤちゃんが平山にカセットを返しに来る。
車でもう一度だけ音楽を聞いて平山の頬にキスして去り、平山は驚く。
ここは、「中年男性~初老男性のファンタジー」って感じがして少し嫌だった。
まるで柳沢きみおの漫画『大市民』で、若者たちが妙に主人公おじを慕ってたような寒い展開だ。ただし平山は人柄や趣味が良いし演じてるのが役所広司なのでルックスも良いイケジジイなのでかろうじて成立していたが。
またアヤちゃんは少し泣いてた、タカシはアヤちゃんと上手くいかなかった的な事を行ってたしアヤちゃんは「タカシ何か言ってた?」と平山に訊いて少し泣く。少しだけ気になるが平山は突っ込んで訊いたりする性格ではないので結局タカシとアヤちゃんに何があったのかは全くわからない。
それにしてもタカシは「いい加減さ」「若者特有の厚かましさ」を誇張しすぎて若干、コントみたいなキャラになっていた。古本屋の店主(演:犬山イヌコ)もね。

 

後半くらい?平山がいつものようにアパートに帰ると少女が座っている。
少女ニコ(演:中野有紗)はどうやら平山の妹の娘……姪。家出してきたみたいで平山は最初ニコが誰だか分からなかったので何年も会っていなかったようだ。
ニコは平山文庫からパトリシア・ハイスミス『11の物語』の「すっぽん」を読んで感情移入する。支配的な母親と暮らす少年が反抗心を抱く小説らしいので、母と喧嘩したっぽい。
ニコは平山に懐いておりトイレ清掃に着いてきたり、平山と同じくカメラで写真を撮ったりカセットの音楽を聴いたり平山と自転車で銭湯に行ったり一緒に創作した歌を唄ったりして、かなり爽やかな時間が流れる。
ニコが言うには、母は「兄さん(平山)は住む世界が違う」と語り、それ以上は平山について話そうとしない事を語る。
それを受けた平山はこの世界の小さな色々を楽しんでいることを語る。
アヤちゃんの時はジジイファンタジーって感じで嫌だったが、ニコの場合は嫌じゃなかった。あとくどいようだが平山を演じてるのが優しそうな役所広司というのもデカい。それに本作をずっと観てたら、平山が死ぬ時に彼が行きた証が何もないまま平山が消えてしまう感じがして切ないので、せめてニコくらいは伯父さん(平山)の何かを受け継いでほしいと、ただの観客なのに勝手ながらそう思ってしまう。
やがて平山がこっそり電話したので、ニコの母親&平山の妹ケイコ(演:麻生祐未)が娘を迎えに来るのだが、運転手付きの車に乗っておりお金持ちだという事がうかがえる。
数年ぶりに会った平山とケイコの僅かな会話で、どうやら平山も金持ちのエリートだったっぽい雰囲気を感じた。そして平山と父は確執があり認知症になって曖昧になってしまった状態の父にさえ平山は会いたくない様子が伺える。
その後も、スナックのママの元夫(演:三浦友和)との触れ合い(これもまた影踏みとかしてかなりポエティック、だが日曜劇場ドラマみたいにおじ同士が具体的な事ばかりしても味気ないのでこれくらいは許してほしいきもちになった、三浦友和も長くなさそうだし……)

 

 

そんな感じで淡々とした平山の生活に、小さな人間ドラマが幾つか差し込まれ、いつものようにトイレ清掃に出かける平山のドアップの笑顔で映画は終わる。ただしその笑顔はやがて泣き顔に変わりそしてまた笑顔に変わり再び泣き顔になる……?すごい演技だが正直、役所広司の顔のドアップをずっと見せられてゲシュタルト崩壊気味になって平山が泣いているのか笑っているのかよくわからなくなってきた。
そういう狙いなのかな?
この最後の泣き笑いの平山の感情……というのは情けない話だが正直よくわからなかった。彼の笑顔や美しい朝日、そして流れる音楽などは正に「今日もまた彼のPERFECT DAYSが始まる……!」っていうポジティブな映像で終わるのだが、僕には逆の意味に思えた。
ニコママが平山を指して「兄さんは私とは住む世界が違う」というのは単純に、ニコママはタカシ達……つまり最大公約数的な殆どの人達と同じような幸福を追求しているが(なるべく多く儲けて、良い結婚して、良い子を育てる)、平山はそうではない、孤立しようとしてるし普通とは違う幸せに向かっている。一言で言うとニコママは兄を指して「世捨て人」と言いたかったのだろう。ラストシーンを観て、哀しみを感じたのは平山が泣いていたからではなく、そもそもラストよりずっと前の時間から……平山のささやかな小さい幸せを追求する生活を観ていても、観てると心地いい映像だし楽しかったが、全体的にこの映画は「PERFECT DAYS……ではないよ」と言ってるようにしか見えない。この映画タイトルは反語にしか思えないんですよね。
何か、父と何かがあって実家から離れ、極力人と会わない最低限の仕事をしている。だから迎えに来た妹は、否定するわけではないがアパート住まいやトイレ清掃してる事に驚いていたよね。
どう観ても、平山は別に給料の高い仕事はとても出来なかったりするわけではなく、本来は高い能力を持っていながら、わざと多くの人が嫌がりそうな単純作業に従事して安いアパートに住んでるようにしか見えない。こういう生活が悪い訳ではないが(……というかそういう僕もほぼ平山みたいなもんだし)単純に平山は、自分の小さな幸福を追求しつつも、自傷してますよね。だからケイコも平山本人も今まで目を逸らしていたその事実をまともに見てしまい、2人は泣いたのだろう。
平山は毎日働いて部屋も体型も服装も綺麗に保ち(ちなスタイリングは日本最高峰の伊賀大介)……そんな小さな幸福を追求する孤立生活で自己完結しても、姪が数日遊びに来て他人と関わらざるを得なくなっただけで崩壊する、それが平山の「パーフェクトデイズ」だったわけです。
平山は過去に何かあってこうなったらしいし彼の臨んだ幸福を否定する訳ではないですが、安易に平山に憧れるのは止めておきましょう(そういう人たまにいるらしいので……)。

ヴェンダースは小津のイメージだったらしいが小津というより、映画の方向性は全然違うんだけど僕は「厭世的な寡黙初老が単純労働して小さな幸福を追求して自己完結する」系映画としてニコラス・ケイジ主演の低予算ホラーコメディ、『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021)に似てると思った。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Perfect Days (2023) - IMDb
Perfect Days | Rotten Tomatoes

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『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)/期待せずスルーしてたが何となく観たら過去作やアーガイルより面白かった。観ないとわかんないもんですね🕴


原題: The King's Man 監督&脚本&制作:マシュー・ヴォーン 脚本:カール・ガイダシェク 制作:デヴィッド・リード、アダム・ボーリング 原作:マーク・ミラー&デイヴ・ギボンズ 製作国:イギリス、アメリカ 上映時間:131分 公開日:イギリスorアメリカは2021年12月22日(日本は2021年12月24日) シリーズ:『キングスマン』シリーズ、マシュー・ヴォーンのスパイ映画ユニバース(仮)第3作目

 

 

『キングスマン』(2014)『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)の前日譚。
独立スパイ組織キングスマン結成秘話。
『ARGYLLE/アーガイル』(2024)を観て、そういえば前日譚のやつ観てないなと思い、アマプラ見放題にあったので観た。
公開時はコロナ禍の緊急事態宣言の時……だったかな?コロナが無くても何か地味そうだな……と思って物凄く興味なかったのだが実際観たら一番面白かった。観ないとわかんないもんですね。

ネタバレあり

 

 

 

 

国家に属さない秘密のスパイ組織〈キングスマン〉誕生秘話。
1914年〈羊飼い〉と呼ばれる怪人のもとに世界各国から集まった怪人達〈闇の狂団〉は世界各国の中枢に潜り込み、従兄弟同士であるイギリス、ドイツ、ロシアの各最高指導者を裏から操り破滅的な第一次世界大戦を起こそうと企んでいた。

何者かが暗躍している事を察知した英国貴族オーランド・オックスフォード公(演:レイフ・ファインズ)、その息子コンラッド(演:ハリス・ディキンソン)、執事ショーラ(演:ジャイモン・フンスー)とポリー・ワトキンズ(演:ジェマ・アータートン)達は秘密結社に立ち向かう。
彼らは世界大戦を止めることができるか――

みたいな話。
観る前は「なんか地味だな……主人公もレイフ・ファインズだし」とか思ってたが、第一次世界大戦当時の実在した政治家や怪人物たちがわんさか出てくる。
……という内容が、同じくイギリスの怪人アラン・ムーア(『ウォッチメン』書いた人)のアメコミの中で僕が一番好きな『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』シリーズ(1999-2012)に似てるなと思いどんどん惹き込まれていった(『リーグ……』はイギリスの童話や小説や映画など、ありとあらゆるイギリスの架空のキャラクターが一堂に会して秘密結社と戦う内容)。

主人公のオーランド・オックスフォード公は、英国軍人だったが戦いに嫌気が差し、退役してからは不殺の誓いを立てて赤十字の活動を行っていたが、やがて国家に頼らない独立した諜報機関設立を目指す。
ロシアの怪僧グリゴリー・ラスプーチン(演:リス・エヴァンス)が世界大戦の引き金になる情報を諜報員から聞いたオーランド達はラスプーチンをブッ殺すためにロシアに飛んだ。また、成人直前で戦争に行きたくてたまらない息子コンラッドもオーランドの諜報機関キングスマンの前身)に加わり共にロシアへ。
そこで、脚が悪かったオーランドはラスプーチンに脚をベロベロ舐めまわして治してもらったり、ラスプーチンラスプーチンで怪しいと思っていたオーランドの脚をわざわざ治した後で殺そうとする。オーランドは息子や仲間たちと力を合わせてラスプーチンを倒す。
本作を観た人が、やたらとラスプーチンが良いと言ってた通り、ここまでの時間は、主人公のオーランド達があまりに真面目すぎたためか興味が持てないまま観てたのだが、ラスプーチンの登場で一気に目が覚めて映画に惹き込まれた。
90年代の格ゲー『ワールド・ヒーローズ』シリーズもまた実在の英雄が戦うというゲームで、そこに出てきたラスプーチンはクルクル回転してスカートで敵を斬ったり男も女も秘密の花園に引きずり込み何やら怪しいことをしてダメージを与えるというインパクトの強いキャラだった。
本作のラスプーチンもまた、ロシアバレエをを踊りながらクルクル回転して攻撃したり、男も女も問わずSEXしまくるという感じで、ワーヒーとほぼ同じキャラクターだったので「やっぱラスプーチンってこういう印象なんだな」と思った。
ルックスもバッチリだし、そのキャラクターも死を全く恐れず、いやむしろ死ぬのも気持ちよさそうだから「できそうなら殺してくれ?」って感じでオーランドたち全員を相手にする、本当に「怪人」という異名がピッタリのナイスキャラクターだった。
あまりにインパクト強すぎたので、てっきりラスプーチンが〈羊飼い〉に下剋上を果たしてラスボスになるかと思ってたらあっさり死んで、中ボスだったので意外だった。

 

父と共にラスプーチン退治した息子コンラッドは、そのまま父のチーム入りするのかと思いきや、父の反対を振り切り軍に入り大戦に参加。英雄的な活躍をするもののあっさり戦死してしまう。これも又意外だった。
というか冒頭は、オーランドの妻が戦死してしまいオーランドは「息子は絶対に護るぞ」と誓うところから始まった。だから息子の従軍に反対してたのだが、息子はそれを窮屈に感じ、結局戦争に行って死んでしまった。
妻を喪い、フィクションでは「未来」を象徴すると言ってもいい息子まで喪うとはね、老兵が妻や子を見送ってまでも戦い続ける……という話は意外と少ない展開だし「そういえばマシュー・ヴォーンってツイストが効いた展開が得意だったな」と思い出し、本作への興味がどんどん湧いてきた。
オーランドは落ち込んで飲んだくれるが執事ポリーの激もあり、立ち直り闇の教団潰しへと再起する。
戦う映画では大抵、第二幕ラストで敗北して第三幕で再起して勝利する……そんな構成が多い。だが、まさか希望に溢れた若い息子が死ぬなんて……。しかも戦場での誤解が原因となった同士討ち……という避けられた死。息子コンラッドも死の直前、自分の戦争行きをずっと止めていた父オーランドを振り切って戦地入りした事を悔いていたり、思いがけず心を動かされた。
『キングスマン』シリーズを単純に拡張するためだけの前日譚だと舐めてたけど、オーランド父子のドラマが思いのほか分厚かった。正直言って『キングスマン』(2014)『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)『ARGYLLE/アーガイル』(2024)より本作の方がずっと惹き込まれた。それら三作は英国っぽいブラックジョークが強く、それもまた良いんだけどどれも少し引っかるところもあったんですよね。そこは個人差があると思うけど。本作の場合すごく丁度よかった。
で、いよいよラスボス〈羊飼い〉とのラストバトル。
〈羊飼い〉は劇中、ずっと顔が隠れていて正体は誰か?と観てる人に想像させる。
中盤でオーランドの盟友であるキッチナー指揮官(演:チャールズ・ダンス)が魚雷を喰らって死亡した。
で、そのキッチナーを演じてたチャールズ・ダンスって『ゲーム・オブ・スローンズ』〈シーズン1-8〉(2011-2019)で恐ろしく冷酷無比な領主タイウィン・ラニスター役してたイギリスの有名な俳優なんですね。そんなキッチナーも何もせず死んでしまったし〈羊飼い〉の髪型とか背格好もキッチナーを思わせるよう描いてたから「〈羊飼い〉は絶対、キッチナーだろうな~」と思ってました。
でも、ここも捻りを加えててキッチナー……だと思わせてキッチナーではなかった。
だが、ここは本当に「〈羊飼い〉の正体はキッチナーだと何度も観る人に思わせて……違う小者っぽい奴でした~!」という引っかけがやりたいだけだったので「ここは素直にキッチナーの人のラスボスが観たかったな」と思った。
だが後から思えば、〈羊飼い〉はやたらと家畜や部下に八つ当たりする小者っぽいキャラだったので最初からヒント出してたんだよね。
そして目的を果たしたオーランドはキングスマンを結成。そこには亡き息子の戦友(アーロン・テイラー・ジョンソン)の姿が……彼はランスロットの称号を得た。オーランドは勿論アーサーね。
アメリカ大統領はウイスキーのステイツマンをやたら飲んでたし諜報組織〈ステイツマン〉も出来るんでしょうな……それとももう出来てるのかな?もうステイツマンの設定も忘れちゃってよくわかんないけど。
で、〈羊飼い〉は一旦倒すが狂団には生き残りが居て、まだ健在。そして新メンバーにはレーニンヒットラーの姿が……という感じで続きが観たくなった。いや、はっきり言って現代のキングスマンより面白いと思うのは僕だけ?歴史上の人物や事件をいっぱい使えるってのが良いよね。
でも本作は確かヒットはしなかった気もするし、次の作品はキングスマン3っぽいし、本作の続きは今のところ作られるかどうかよくわからない。
観る前は地味だと思って観なかったがいざ観てみると、過去2作や『ARGYLLE/アーガイル』(2024)より面白かった。食わず嫌いして観もせず決めつけないでちゃんと観るべきだなと思った。
ラスプーチン戦もエレベーター攻防戦も〈羊飼い〉戦のアクションも良かったしね!
なんというか現代のキングスマン系は、装備などがハイテクすぎたりアクションが漫画チックすぎるところがちょっとなと思ってたけど本作は、昔の話のせいか割と普通のスパイものっぽかったんですよね(ラスプーチンなどの怪人以外)そこが良かったです。

 

 

 

そんな感じでした

gock221b.hatenablog.comgock221b.hatenablog.com『ARGYLLE/アーガイル』(2024)/主人公エリーの秘密が明らかになる前の平凡だった時の主人公や本編の方が面白かったし、どんでん返しが5回も6回も起き続けると「もうどうでもいいから結果だけ教えろ」という気持ちになる😾 - gock221B
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The King's Man (2021) - IMDb
The King's Man | Rotten Tomatoes

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