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『ARGYLLE/アーガイル』(2024)/主人公エリーの秘密が明らかになる前の平凡だった時の主人公や本編の方が面白かったし、どんでん返しが5回も6回も起き続けると「もうどうでもいいから結果だけ教えろ」という気持ちになる😾


原題:Argylle 監督&制作:マシュー・ヴォーン 脚本:ジェイソン・フックス 製作会社:マーヴ・スタジオ 上映時間:139分 製作国:イギリス、アメリカ 公開:2024年2月2日(日本は2024年3月1日) シリーズ:『アーガイル』トリロジー第一作目、マシュー・ヴォーンのスパイ映画ユニバース(仮名)第4作目

 

キック・アス』(2010)一作目、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)、『キングスマン』シリーズなどでお馴染みのマシュー・ヴォーンの新作。
この人の映画はいつも凄く良い部分と、ちょっとどうかな……という部分がいつも同居している。人によってその部分が違う。
多かったのは『キングスマン』(2014)のクライマックスでギャグみたいに敵を皆殺しに描いたところが苦手という人は当時多かった。僕は、そういうところは「最初から殺人をギャグとして描きたい人なんだな」と思って気にならなかったが、『キングスマン』(2014)で生き残ったサブキャラを『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)で大して意味なくバンバン殺したのが印象悪かった(あの同級生の女の子とかその師匠やハゲの仲間ね)。面白半分の殺人は気にならなかったが仲間を適当に殺すのは嫌だったということで、この2つは根底では同じものがあるのかもしれない。彼の映画は、つまらないものはなくどれも面白いと思うのだが他にも細かい気になる事が多々あり「ハズレはなしどれも面白いけどイマイチ手放しで最高!と絶賛しきれない監督」という印象。
本作は主演のブライス・ダラス・ハワードサム・ロックウェルが好きな俳優だし、ヘンリー・カヴィルもスパイものも好きだから久々に観に行った感じ。

ネタバレあり

 

 

 

 

愛猫アルフィーと暮らす内気な人気小説家エリー・コンウェイ(演:ブライス・ダラス・ハワード)はスパイ小説『アーガイル』シリーズの著者。
スパイ小説『アーガイル』の内容は劇中で少しだけ観れるが「角刈りスパイのアーガイル(演:ヘンリー・カヴィル)やマッチョ相棒のワイアット(演:ジョン・シナ)、仲間のキーラ(演:アリアナ・デボーズ)等が大活躍する」という内容。
ところがエリーの執筆したスパイ小説『アーガイル』の内容が偶然、現実のスパイ組織や陰謀に酷似しすぎていたため実在するスパイ組織から命を狙われる。
実家に帰省しようとしたエリーは男たちに狙われるが、組織の陰謀を正したいスパイエイダン(演:サム・ロックウェル)がエリーを助ける。
こうしてエリー&猫は現実のスパイ、エイダンと敵の陰謀を探しながら逃避行する――

という内容。
ヘンリー・カヴィル演じる角刈りスパイ”アーガイル”が主人公だと思ってたら、ブライス・ダラス・ハワード演じる小説家が主人公だった。ポスターや予告でアーガイルばかり目立ってるから彼が主人公かと思った。だけどブライス・ダラス・ハワードも好きだから別に構わない。
ブライス・ダラス・ハワードは映画一家に生まれた映画サラブレッド女優。2000年代は痩せた少女を魔法で無理やり大人にしたって印象の美女だったが若い時はあまり興味なかったが約10年前の『ジュラシック・ワールド』(2015)辺りから体型がふっくらし始めてきて気になってきた。下半身が全体的に太く上半身もほどほどに太い……でも太りすぎずくびれとかはある、そして元々細いせいか顔は細いまま、そんで未だに少女っぽい雰囲気が残ってる……という中年男性が最も好みそうな中年女性の体型。ふくらんだり痩せたりを繰り返してるが本作はかなりふっくらしてる塩梅で顔も丸い。だがどんくさい小説家という役だし合っていると言えば合っている。
あと『マンダロリアン』〈シーズン1-3〉『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022)で4話も監督しており、SWシリーズの監督の一人でもある。そういう感じで色んな魅力がある。
もう一人の主人公スパイのエイダン役はサム・ロックウェルで、僕はかなり好きなのだが彼は調子に乗った嫌な奴の役が最も輝くが、こういうワイルドで強い男役はあんまり合ってないような気がした。
「おとなしい女性が、荒っぽいタフガイ男性と冒険する」という『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)とか『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984)とか最近だと観てないけど『ザ・ロストシティ』(2022)とか?、地味に昔からよく作られるタイプの映画。男はワイルド男主人公に、女性はタフガイに守られるおとなしい女性に、それぞれ感情移入して楽しむ、そんでタフガイと女性は冒険を通じて愛が芽生えてラストでキス……と、こう書いててもやはり今もうこんなハーレクイン小説みたいな筋書きは古い。今だと男も女も戦って別にくっついたりしないのが主流。
そう思いながら2人と一匹の冒険を観てると、変化があった。
ここからネタバレが増えていくので、自分で観たい人は御注意。

 

 

「小説家の書いた内容が現実の陰謀と偶然一致してたから狙われた」という事ではなく
「エリーは実は凄いスパイのレイチェル・カイルだった。敵に小説家だと洗脳されて、敵が知りたい秘密を小説として描くのを待っていた」
という事でエリー……レイチェルの知っていた現実は現実ではなかった。
そしてエイダンはレイチェルと恋人同士でもあった相棒、エリーが書いていたスパイ小説でいうとジョン・シナが演じていたマッチョ相棒。エイダンはマッチョではないがエリーの潜在意識に眠る「頼もしい相棒兼恋人エイダン」をマッチョなキャラとして書いていたのだろう。
という事で中盤は、レイチェル&エイダンというWスパイの活躍を描く映画に変化した。
ここでも「両親だと思っていた2人は陰謀組織のボスと洗脳を担当した心理学者だった」とか「エイダンと共に悪を暴こうとしていたレイチェルは実は二重スパイで本当は悪のスパイだったのでエイダンを撃つ」「いやいや本当は正義を演じつつ悪を演じてるだけの正義のスパイだった、エイダンも無事」
……といった感じでどんでん返し……ってほどじゃないけどひねりの効いた展開が続く。
で、終盤はレイチェルとエイダンがシンプルに大活躍して組織を壊滅させる。
カラフルな色とりどりの催涙弾を撃って、その煙の中で愛し合うレイチェルとエイダンが互いを見つめ合ったままダンスのようにスローモーションで回転しながら敵を撃ち殺していく。これは『キングスマン』(2014)で好評だった(そして一部に不評でもあった)上級市民皆殺し描写を思わせるマシュー・ヴォーンっぽいシーンだった。
その後は重油で滑るし引火が怖いのでナイフ・ファイティングになる。レイチェルはスケートが得意だったらしいという自分の記憶を信じてフィギュア・スケートのように滑って敵を全員斬り殺す。
そんで何だかんだ細かい捻りを加えつつ敵組織を壊滅させて一件落着する。
レイチェルが強すぎてハラハラしないので一回、猫が入ったリュックサックに敵の銃弾が命中して「ニャッ!」と猫が叫ぶ。ピンチを抜けた後でリュックを確認したら猫は無事だった。しかしマシュー・ヴォーン監督は大して意味なく味方を殺したりするので「マシュー・ヴォーンなら流れ弾で猫をころしかねない」と猫がめちゃくちゃ心配だった(本作で唯一ハラハラしたシーン)。
……と書くと何だか楽しそうな映画に思えるが(実際ある程度は面白い)「エリーは実はスパイのレイチェルだった」と明らかになって以降の、どんでん返しにつぐどんでん返しやアクションの数々!……よりも、エリーと猫とスパイが普通に逃避行してる方が楽しかった。
どんくさ小説家のエリーもエイダンに「君が書いた小説は全部、すごいスパイや敵組織の行動と一致してるくらい凄いんだ!だから、ここで小説ならどうするか考えてみて!」といった感じで「エリーが内気でどんくさくて全く戦闘はできないがスパイ小説家ならではの想像力を活かす、そしてそれをスパイのエイダンが実行する」……というこの平凡な前半の方が面白かった。
中盤以降は「エリーは凄いスパイのレイチェルだったので普通に強いし、エイダンと協力して敵を倒しました」という、こっちの方が正直つまんなかったんですよね。
スパイのレイチェルより、陰キャ猫おばっさんエリーの方が魅力的だったし。
凄いスパイにはとても見えないふっくら体型熟女のレイチェルが暴れまくる映像は新鮮なものがあったが……。
またエイダンが事ある毎に、どんくさいエリーと猫をなじったりする。本作の中に入ってエイダンになったつもりで考えたら「愛し合っていた恋人兼凄腕の相棒だったレイチェルが憎い敵組織に洗脳されて内気でどんくさい小説家に変えられた」のだから「小説家エリーとか嫌だ!猫も好きじゃなかったやん!」と嫌う気持ちはわからないでもない。だけど、さっきエリーもレイチェルも同時に知った僕から見たら「エリーの方がキャラも本編も面白かったぞ」という気持ちが強い。だからそういう観客視点で見るとエイダンがエリーを貶すのは嫌だった。
エリーの正体以外にも、本作は明らかになる真相がめちゃくちゃ多い。「スパイ映画はそういうもの」という事はあるが、それにしても多い。
「アーガイルが主人公だと思ってたらエリーが主人公だった」というスタート地点もちょっとしたどんでん返しと言えるし。
だが「実は真相はこうだった!」というのが、ここまで多いと正直どうでもよくなってきて「もうどうでもいいから結果だけ教えろよ……」という気分になってくる。やっぱメリハリが大事ですよね。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 (2022)も、最初は凄い映像や展開を面白いと思ったが、凄い展開や映像が二時間近く延々と続くから後半一時間くらいもうどうでもいいと思って眠くなったし。
やはり「以外な真相」は2、3個くらいで良かったのではないか?
あとこれは只の好みですが『キングスマン』シリーズもそうなんだけど佳境になるとスローモーションでダンスみたいな戦闘になる演出があんまり好みじゃないというのもあります。あとマシュー・ヴォーン映画でよくある人の死が軽いのも、倫理的とかは別に気にならないんですが「話の都合で敵が勝手に死んだだけ」みたいに敵を倒すことのカタルシスも減っちゃうからあんまり好きじゃないかも。レイチェルがナイフを両手に持ったままスケートみたいにスライディングしたらナイフが触れてもない敵が全員即死するんですよね。「『レイチェルはスケートみたいに滑りながら凄いナイフ・ファイティングで敵を倒した』それを楽しい感じで映像化したらこうなったんだ」という意味なんだろうけどやっぱり殺すなら真面目に殺してほしい。『ジョン・ウィック』シリーズも割と劇画漫画っぽいアホらしさがあるけど一応、ちゃんと殺してはいるじゃん。撃ち方だけはリアルだったりするし。やっぱ殺人をダンスシーンにするのは好きじゃないかも。これが楽しくて良いって人もいるんだろうけどね。

 

 

そしてラストもやはり以外な真相?が明らかになる。今まで小説家エリー(レイチェル)が創造したと思っていたアーガイル(演:ヘンリー・カヴィル)が現実世界でエリー(レイチェル)に会いに来て映画は終わる。
実在したアーガイルは角刈りではなく後ろ髪が新日レスラーみたいに長い80年代サーファー風だった。「変な髪型」というのがアーガイルの特徴なのね。
アーガイルはエリーの創作ではなく、レイチェルがスパイ時代に実際に出会ったアーガイルのことが潜在意識に残ってて、エリーがそれを書いたって事?アーガイルの真相は続編でどうぞってことかな。
そしてアメコミ映画のようにポストクレジットシーンがある。20年前の酒場で看板には「キングスマン」と描かれており、実在したアーガイルの若き姿オーブリー・アーガイル(ルイス・パートリッジ)が姿を見せて銃を受け取る。
さっき検索したら、この映画は『アーガイル』三部作の一作目らしい。
で、続編はこの若いアーガイルを主人公に描いて、完結となる第3作目では本作でレイチェル達と現実アーガイルが出会ったところから始まるらしい。
ラストでアーガイルが現実世界に出てきてどういうことかと考えてる間に、ポスクレでそのアーガイルの若い時が描かれ、更に「本作は『キングスマン』(2014)と世界を共有するシネマティック・ユニバースだ」と言われたわけで、妙な情報の多さにくらくらした……いや、情報自体は順序立てて考えれば特に複雑じゃないんだけどさ。
まず本作自体に対して「なんか最後まで楽しめるくらいには面白かったけど、でもイマイチだったな」と思ってるラストで現実アーガイルが出てきて「うわ、また観なアカンんの……?」と不安になってきたところで、そもそも「変な髪型してる」という以上の何の情報もないので「実在したアーガイル」に全く興味もってないのに、更にその「興味ないアーガイルのエピソード1だ!」と言われても「いや、まず今出たばかりのヘンリー・カヴィルを先に紹介してくれよ。いや、まて別にそれも興味ないので続き作るのやめてくれないか?」という気持ちにさせられる。しかも「キングスマンと世界を共有するシネマティック・ユニバース」と聞かされたらね。元々『キングスマン』シリーズは嫌いじゃないけどかといってそこまで好きでもないからね。「めちゃくちゃおもんなさそうだからスルーしてた『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)を観なきゃいけなくなった……」と新たな義務視聴が増えてしまった。
昨今のシネマティック・ユニバース疲れしてるライト映画ファン同様に僕も疲れてます。主にMCU全48作品観てきてるせいで……。「MCU嫌なら観るのやめたら?と思うかもしれないが基本は好きで観てるわけだし16年間観てきてる今更やめるという手はない。
結構、色んなどんでん返しやら面白バトルやおもしろキャラとか色々と面白そうな要素は満載なのに全体的につまんないという不思議な映画でした。
そういう感じでアマプラに『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)あったしタダだから今から観ます。

 

 

 

そんな感じでした

〈マシュー・ヴォーン監督作〉
『キングスマン』(2014)/愛と師によって最強の紳士に成長しレイシストを皆殺しにする映画☂ - gock221B
『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)/ファンが望む要素を推し進めた続編っぽさとユニバース化の準備☂ - gock221B
『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)/期待せずスルーしてたが何となく観たら過去作やアーガイルより面白かった。観ないとわかんないもんですね🕴 - gock221B
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Argylle (2024) - IMDb
Argylle | Rotten Tomatoes

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